本試験問題(2024年実施)
令和6年度行政書士試験の過去問50問
収録している50問を、1問ずつ答え合わせしながら進みます。間違えた問題は 関連論点の要点整理へ直行でき、解答はこの端末に自動保存されます。
- 50問
- 収録数
- 60問・300点満点(択一式・多肢選択式・記述式)
- 本試験
未収録の問題:問1・58〜60は、試験実施機関が著作権の関係で公表していないため収録していません。
問2基礎法学
解答 0/50・正解 0
訴訟の手続の原則に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。
令和6年度の全50問|問題文・正解・解説
収録している50問を、正解と解説つきで通して読めます。上の演習で 間違えた問題を見直すときや、特定の論点がどう問われたかを確かめたいときに使ってください。 正解番号は行政書士試験研究センターの公表資料に基づきます。
問2
基礎法学訴訟の手続の原則に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。
- 1民事訴訟手続において、裁判長は、口頭弁論の期日または期日外に、訴訟関係を明確にするため、事実上および法律上の事項に関し、当事者に対して問いを発し、または立証を促すことができる。
- 2刑事訴訟手続において、検察官は、犯人の性格、年齢および境遇、犯罪の軽重および情状ならびに犯罪後の状況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。
- 3非訟事件手続において、裁判所は、利害関係者の申出により非公開が相当と認める場合を除き、その手続を公開しなければならない。
- 4民事訴訟手続において、裁判所は、判決をするに当たり、口頭弁論の全趣旨および証拠調べの結果をしん酌して、自由な心証により、事実についての主張を真実と認めるべきか否かを判断する。
- 5刑事訴訟手続において、検察官は、起訴状には、裁判官に事件につき予断を生ぜしめる虞のある書類その他の物を添付し、またはその内容を引用してはならない。
正解:3
解説
正解は肢3です。非訟事件手続法30条は「非訟事件の手続は、公開しない。ただし、裁判所は、相当と認める者に傍聴を許すことができる」と定めており、非公開が原則です。利害関係者の申出により非公開とする場合を除き公開しなければならないとする肢3が妥当ではありません。肢1は民事訴訟法149条1項の釈明権、肢2は刑事訴訟法248条の起訴便宜主義、肢4は民事訴訟法247条の自由心証主義、肢5は刑事訴訟法256条6項の起訴状一本主義を、それぞれ条文どおりに述べたもので妥当です。
問3
憲法人格権と夫婦同氏制に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例の趣旨に照らし、妥当でないものはどれか。
- 1氏名は、社会的にみれば、個人を他人から識別し特定する機能を有するものであるが、同時に、その個人からみれば、人が個人として尊重される基礎であり、その個人の人格の象徴であって、人格権の一内容を構成する。
- 2氏は、婚姻及び家族に関する法制度の一部として、法律がその具体的な内容を規律しているものであるから、氏に関する人格権の内容も、憲法の趣旨を踏まえつつ定められる法制度をまって、初めて具体的に捉えられる。
- 3家族は社会の自然かつ基礎的な集団単位であるから、氏をその個人の属する集団を想起させるものとして一つに定めることにも合理性があり、また氏が身分関係の変動に伴って改められることがあり得ることは、その性質上予定されている。
- 4現行の法制度の下における氏の性質等に鑑みると、婚姻の際に「氏の変更を強制されない自由」が憲法上の権利として保障される人格権の一内容であるとはいえない。
- 5婚姻前に築いた個人の信用、評価、名誉感情等を婚姻後も維持する利益等は、憲法上保障される人格権の一内容とはいえず、当該利益を婚姻及び家族に関する法制度の在り方を検討する際に考慮するか否かは、専ら立法裁量の問題である。
正解:5
解説
正解は肢5です。最大判平成27年12月16日は、婚姻前に築いた個人の信用、評価、名誉感情等を婚姻後も維持する利益は憲法上保障される人格権の一内容とはいえないとしつつ、これらは婚姻及び家族に関する法制度の在り方を検討するに当たり憲法24条の要請や指針を踏まえて考慮すべき事項であるとしました。専ら立法裁量の問題とする肢5が妥当ではありません。肢1から肢4は、氏名が人格権の一内容であること、氏の内容が法制度をまって具体化されること、氏の変更を強制されない自由が憲法上の権利とはいえないことなど、同判決の判示に沿う妥当な記述です。
問4
憲法インターネット上の検索サービスにおいて、ある人物Xの名前で検索をすると、Xの過去の逮捕歴に関する記事等が表示される。Xは、この検索事業者に対して、検索結果であるURL等の情報の削除を求める訴えを提起した。これに関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当でないものはどれか。
- 1個人のプライバシーに属する事実をみだりに公表されない利益は、法的保護の対象となるというべきであり、過去の逮捕歴もこれに含まれる。
- 2検索結果として提供される情報は、プログラムによって自動的に収集・整理・提供されるものにすぎず、検索結果の提供は、検索事業者自身による表現行為とはいえない。
- 3検索事業者による検索結果の提供は、公衆の情報発信や情報の入手を支援するものとして、インターネット上の情報流通の基盤としての役割を果たしている。
- 4当該事実を公表されない法的利益と、当該情報を検索結果として提供する理由に関する諸事情を比較衡量した結果、前者が優越することが明らかな場合には、検索事業者に対してURL等の情報を当該検索結果から削除することを求めることができる。
- 5過去の逮捕歴がプライバシーに含まれるとしても、児童買春のように、児童への性的搾取・虐待として強い社会的非難の対象とされ、罰則で禁止されている行為は、一定の期間の経過後も公共の利害に関する事柄でありうる。
正解:2
解説
正解は肢2です。最決平成29年1月31日は、検索結果の提供は検索事業者自身による表現行為という側面を有し、同時にインターネット上の情報流通の基盤としても大きな役割を果たしているとしました。表現行為とはいえないとする肢2が妥当ではありません。肢1の逮捕歴がみだりに公表されない法的利益に含まれること、肢3の情報流通の基盤としての役割、肢4の比較衡量により前者が優越することが明らかな場合に削除を求めうるという判断枠組み、肢5の児童買春が一定期間の経過後も公共の利害に関する事柄でありうる点は、いずれも同決定の判示に沿う妥当な記述です。
問5
憲法教育に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当でないものはどれか。
- 1義務教育は無償とするとの憲法の規定は、授業料不徴収を意味しており、それ以外に、教科書、学用品その他教育に必要な一切の費用を無償としなければならないことまでも定めたものと解することはできない。
- 2教科書は執筆者の学術研究の結果の発表を目的とするものではなく、また、教科書検定は検定基準に違反する場合に教科書の形態での研究結果の発表を制限するにすぎないので、教科書検定は学問の自由を保障した憲法の規定には違反しない。
- 3公教育に関する国民全体の教育意思は、法律を通じて具体化されるべきものであるから、公教育の内容・方法は専ら法律により定められ、教育行政機関も、法律の授権に基づき、広くこれらについて決定権限を有する。
- 4国民の教育を受ける権利を定める憲法規定の背後には、みずから学習することのできない子どもは、その学習要求を充足するための教育を自己に施すことを大人一般に対して要求する権利を有するとの観念が存在している。
- 5普通教育では、児童生徒に十分な批判能力がなく、また、全国的に一定の教育水準を確保すべき強い要請があること等からすれば、教師に完全な教授の自由を認めることはとうてい許されない。
正解:3
解説
正解は肢3です。旭川学力テスト事件(最大判昭和51年5月21日)は、国が必要かつ相当と認められる範囲において教育内容を決定する権能を有するとしつつ、子どもの自由かつ独立の人格としての成長を妨げるような介入は許されないとして、国家教育権説と国民教育権説のいずれをも極端かつ一方的として排斥しました。公教育の内容・方法が専ら法律により定められ教育行政機関も広く決定権限を有するとする肢3は妥当ではありません。肢1は最大判昭和39年2月26日、肢2は教科書検定を合憲とした判例、肢4・肢5は旭川学テ判決の判示に沿う妥当な記述です。
問6
憲法選挙制度の形成に関する国会の裁量についての次の記述のうち、最高裁判所の判例の趣旨に照らし、妥当でないものはどれか。
- 1都道府県が歴史的にも政治的、経済的、社会的にも独自の意義と実体を有する単位である以上、参議院の選挙区選出議員に都道府県代表的な意義を付与し、その枠内で投票価値の平等の実現を図ることは、憲法上許容される。
- 2小選挙区制は、死票を多く生む可能性があることは否定し難いが、死票はいかなる制度でも生ずるものであり、結局のところ選挙を通じて国民の総意を議席に反映させる一つの合理的方法ということができる。
- 3同時に行われる二つの選挙に同一の候補者が重複して立候補することを認めるか否かは、国会が裁量により決定することができる事項であり、衆議院議員選挙で小選挙区選挙と比例代表選挙との重複立候補を認める制度は憲法に違反しない。
- 4政党を媒体として国民の政治意思を国政に反映させる名簿式比例代表制を採用することは国会の裁量に属し、名簿登載者個人には投票したいがその属する政党には投票したくないという意思を認めない非拘束名簿式比例代表制もまた同様である。
- 5参議院の比例代表選出議員について、政党が優先的に当選者となるべき候補者を定めることができる特定枠制度は、選挙人の総意によって当選人が決定される点で、選挙人が候補者個人を直接選択して投票する方式と異ならず、憲法に違反しない。
正解:1
解説
正解は肢1です。最大判平成24年10月17日は、参議院議員について都道府県を選挙区の単位としなければならないという憲法上の要請はなく、都道府県代表的な意義を有するという点も投票価値の平等の要請を後退させる理由にはならないとしました。したがって肢1が妥当ではありません。肢2の小選挙区制と死票、肢3の重複立候補制については最大判平成11年11月10日、肢4の非拘束名簿式比例代表制については最大判平成16年1月14日、肢5の特定枠制度については最判令和2年10月23日(第二小法廷)が、いずれも国会の裁量に属し憲法に違反しないとしています。なお最大判令和2年11月18日は参議院選挙区選出議員の定数配分規定の合憲性に関する判決で、特定枠制度について判断したものではありません。
問7
憲法国会議員の地位・特権に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- 1両議院の議員には国庫から相当額の歳費を受ける権利が保障されており、議員全員を対象とした一律の措置としてであっても、議員の任期の途中に歳費の減額を行うことはできない。
- 2両議院の議員は、国会の会期中は、法律の定める場合を除いては逮捕されることがなく、また所属する議院の同意がなければ訴追されない。
- 3両議院の議員には、議院で行った演説、討論、表決について免責特権が認められているが、議場外の行為については、議員の職務として行ったものであっても、免責の対象とならない。
- 4参議院の緊急集会は、衆議院の解散中に開催されるものであるが、その際にも、議員に不逮捕特権や免責特権の保障が及ぶ。
- 5議院が所属議員に科した懲罰には、議院自律権の趣旨から司法審査は及ばないのが原則であるが、除名に関しては、手続の適正さについて審査が及ぶとするのが最高裁判所の判例である。
正解:4
解説
正解は肢4です。参議院の緊急集会は衆議院の解散中に開かれるものですが、国会法100条1項は緊急集会中の参議院議員について院外の現行犯罪の場合を除き参議院の許諾がなければ逮捕されないと定め、憲法51条の免責特権も及ぶと解されています。肢1は歳費の減額を禁ずる憲法上の規定はなく、裁判官の報酬(79条6項・80条2項)とは異なります。肢2は50条が定めるのは不逮捕特権で、在任中の訴追に同意を要するのは国務大臣です(75条)。肢3は議院の活動として職務上行われた行為であれば議場外でも免責が及びます。肢5は、国会の議院が所属議員に科した懲罰については憲法58条2項の議院自律権に属する事項として司法審査は及ばないと解されており、除名につき手続の適正さの審査が及ぶとした最高裁判例も存在しないため妥当ではありません。なお、地方議会議員に対する出席停止の懲罰について司法審査が及ぶとした最大判令和2年11月25日は、国会の議院の懲罰とは別の問題です。
問8
行政法行政行為(処分)に関する次の記述のうち、法令の定めまたは最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。
- 1処分に瑕疵があることを理由とする処分の取消しは、行政事件訴訟法上の取消訴訟における判決のほか、行政不服審査法上の不服申立てにおける裁決または決定によってのみすることができる。
- 2金銭納付義務を課す処分の違法を理由として国家賠償請求をするためには、事前に当該処分が取り消されていなければならない。
- 3処分取消訴訟の出訴期間が経過した後に当該処分の無効を争うための訴訟としては、行政事件訴訟法が法定する無効確認の訴えのみが許されている。
- 4処分Aの違法がこれに後続する処分Bに承継されることが認められる場合であっても、処分Aの取消訴訟の出訴期間が経過している場合には、処分Bの取消訴訟において処分Aの違法を主張することは許されない。
- 5瑕疵が重大であるとされた処分は、当該瑕疵の存在が明白なものであるとまでは認められなくても、無効とされる場合がある。
正解:5
解説
正解は肢5です。最判昭和48年4月26日は、課税処分について、瑕疵が明白であるとまではいえない場合であっても、処分により被る不利益を甘受させることが著しく不当と認められる例外的な事情があるときは当然無効となりうるとしました。肢1は行政庁が職権で処分を取り消すこともできるため誤りです。肢2は、処分の違法を理由とする国家賠償請求にあらかじめ取消判決等を得ることを要しないとした最判昭和36年4月21日に反します。肢3は現在の法律関係に関する訴えによることも可能であり、肢4は違法性の承継が認められる場合には後行処分の取消訴訟で先行処分の違法を主張できるため誤りです。
問9
行政法行政立法に関する次の記述のうち、法令の定めまたは最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。
- 1行政手続法が定める意見公募手続の対象となるのは、法規命令のみであり、行政規則はその対象とはされていない。
- 2法律の規定を実施するために政令を定めるのは内閣の事務であるが、その法律による委任がある場合には、政令に罰則を設けることもできる。
- 3法律による委任の範囲を逸脱して定められた委任命令は違法となるが、権限を有する機関が取り消すまでは有効なものとして取り扱われる。
- 4通達の内容が、法令の解釈や取扱いに関するもので、国民の権利義務に重大なかかわりをもつようなものである場合には、当該通達に対して取消訴訟を提起することができる。
- 5行政手続法が適用される不利益処分の処分基準において、過去に処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定が加重される旨の定めがある場合には、当該処分基準の定めに反する後行の処分は当然に無効となる。
正解:2
解説
正解は肢2です。憲法73条6号は法律の規定を実施するために政令を制定することを内閣の事務とし、同号ただし書は法律の委任がある場合に限り政令に罰則を設けうるとしています(内閣法11条も同旨)。肢1は行政手続法2条8号が命令等に審査基準・処分基準・行政指導指針を含めており、行政規則も意見公募手続の対象となります。肢3は委任の範囲を逸脱した命令は無効であって取消しを待ちません。肢4は通達の処分性を否定した最判昭和43年12月24日に反し、肢5は処分基準が行政規則であってこれに反する処分が当然に無効となるものではないため、いずれも妥当ではありません。
問10
行政法行政法における一般原則に関する最高裁判所の判例について説明する次の記述のうち、妥当なものはどれか。 (注) * 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律
- 1特定の事業者の個室付浴場営業を阻止する目的で町が行った児童福祉法に基づく児童福祉施設の認可申請に対し、県知事が行った認可処分は、仮にそれが営業の阻止を主たる目的としてなされたものであったとしても、当該処分の根拠法令たる児童福祉法所定の要件を満たすものであれば、当該認可処分を違法ということはできないから、当該個室付浴場営業は当然に違法となる。
- 2特定の事業者の廃棄物処理施設設置計画を知った上で定められた町の水道水源保護条例に基づき、当該事業者に対して規制対象事業場を認定する処分を行うに際しては、町は、事業者の立場を踏まえて十分な協議を尽くす等、その地位を不当に害することのないよう配慮すべきであるが、このような配慮要請は明文上の義務ではない以上、認定処分の違法の理由とはならない。
- 3法の一般原則である信義則の法理は、行政法関係においても一般に適用されるものであるとはいえ、租税法律主義の原則が貫かれるべき租税法律関係においては、租税法規に適合する課税処分について信義則の法理の適用により当該課税処分を違法なものとして取り消すことは、争われた事案の個別の状況や特段の事情の有無にかかわらず、租税法律主義に反するものとして認められない。
- 4地方公共団体が将来にわたって継続すべき施策を決定した場合でも、当該施策が社会情勢の変動等に伴って変更されることがあることは当然であるが、当該地方公共団体の勧告ないし勧誘に動機付けられて施策の継続を前提とした活動に入った者が社会観念上看過することのできない程度の積極的損害を被る場合において、地方公共団体が当該損害を補償するなどの措置を講ずることなく施策を変更することは、それがやむをえない客観的事情によるのでない限り、当事者間に形成された信頼関係を不当に破壊するものとして違法となる。
- 5国の通達に基づいて、地方公共団体が被爆者援護法*等に基づく健康管理手当の支給を打ち切った後、当該通達が法律の解釈を誤ったものであるとして廃止された場合であっても、行政機関は通達に従い法律を執行する義務があることからすれば、廃止前の通達に基づいて打ち切られていた手当の支払いを求める訴訟において、地方公共団体が消滅時効を主張することは信義則に反しない。
正解:4
解説
正解は肢4です。宜野座村工場誘致事件(最判昭和56年1月27日)は、地方公共団体の勧告等に動機づけられて施策の継続を前提とする活動に入った者が、社会観念上看過することのできない程度の積極的損害を被る場合に、補償等の措置を講ずることなく施策を変更することは、やむをえない客観的事情によるのでない限り、信頼関係を不当に破壊するものとして違法となるとしました。肢1は余目町個室付浴場事件(最判昭和53年5月26日)、肢2は紀伊長島町水道水源保護条例事件(最判平成16年12月24日)、肢3は最判昭和62年10月30日、肢5は最判平成19年2月6日に、それぞれ反します。
問11
行政法会社Xは、宅地建物取引業法(以下「宅建業法」という。)に基づく免許を受けて不動産取引業を営んでいる。ところが、Xの代表取締役であるAが交通事故を起こして、歩行者に重傷を負わせてしまった。その後、自動車運転過失傷害の罪でAは逮捕され、刑事裁判の結果、懲役1年、執行猶予4年の刑を受けて、判決は確定した。宅建業法の定めによれば、法人の役員が「禁錮以上の刑」に処せられた場合、その法人の免許は取り消されるものとされていることから、知事YはXの免許を取り消した(以下「本件処分」という。)。この事例への行政手続法の適用に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- 1本件処分は、許認可等の効力を失わせる処分であるが、当該許認可等の基礎となった事実が消滅した旨の届出に対する応答としてなされるものであるから、行政手続法のいう「不利益処分」には当たらない。
- 2本件処分は、刑事事件に関する法令に基づいて検察官、検察事務官または司法警察職員がする処分を契機とするものであるので、行政手続法の規定は適用されない。
- 3本件処分は、その根拠となる規定が法律に置かれているが、地方公共団体の機関がする処分であることから、行政手続法の規定は適用されない。
- 4本件処分は、申請に対する処分を取り消すものであるので、本件処分をするに際して、行政庁は許認可等の性質に照らしてできる限り具体的な審査基準を定めなければならない。
- 5本件処分は、法令上必要とされる資格が失われるに至ったことが判明した場合に必ずすることとされている処分であり、その喪失の事実が客観的な資料により直接証明されるものであるので、行政庁は聴聞の手続をとる必要はない。(参考条文)宅地建物取引業法(免許の基準)第5条① 国土交通大臣又は都道府県知事は、第3条第1項の免許を受けようとする者が次の各号のいずれかに該当する場合又は免許申請書若しくはその添付書類中に重要な事項について虚偽の記載があり、若しくは重要な事実の記載が欠けている場合においては、免許をしてはならない。一〜四 略五 禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者六 以下略② 以下略(免許の取消し)第66条① 国土交通大臣又は都道府県知事は、その免許を受けた宅地建物取引業者が次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該免許を取り消さなければならない。一 第5条第1項第1号、第5号から第7号まで、第10号又は第14号のいずれかに該当するに至ったとき。二 略三 法人である場合において、その役員又は政令で定める使用人のうちに第5条第1項第1号から第7号まで又は第10号のいずれかに該当する者があるに至ったとき。四 以下略② 以下略
正解:5
解説
正解は肢5です。行政手続法13条2項2号は、法令上必要とされる資格が失われるに至ったことが判明した場合に必ずすることとされている不利益処分で、その喪失の事実が裁判所の判決書等の客観的な資料により直接証明されたものについては、意見陳述のための手続を要しないとしており、本件処分がこれに当たります。肢1は2条4号ニの届出を契機とする処分ではなく不利益処分に当たり、肢2は3条1項5号の適用除外が検察官等のする処分に限られ、肢3は3条3項の適用除外が条例・規則に根拠を置く処分に限られ、肢4は審査基準が申請に対する処分の制度であるため誤りです。なお2025年6月1日から懲役・禁錮は拘禁刑に一本化され、宅地建物取引業法5条1項5号も現在は「拘禁刑以上の刑」と規定されています。
問12
行政法行政指導についての行政手続法の規定に関する次のア〜エの記述のうち、妥当なものの組合せはどれか。 【ア】行政指導に携わる者は、当該行政指導をする際に、行政機関が許認可等をする権限を行使し得る旨を示すときは、その相手方に対して、当該権限を行使し得る根拠となる法令の条項等、行政手続法が定める事項を示さなければならない。 【イ】地方公共団体の機関がする行政指導については、その根拠となる規定が法律で定められている場合に限り、行政指導に関する行政手続法の規定が適用される。 【ウ】法令に違反する行為の是正を求める行政指導で、その根拠となる規定が法律に置かれているものを受けた相手方は、当該行政指導が当該法律に規定する要件に適合しないと思料するときは、当該行政指導をした行政機関に対し、当該行政指導の中止その他必要な措置をとることを求めることができる。 【エ】意見公募手続の対象である命令等には、審査基準や処分基準など、処分をするかどうかを判断するための基準は含まれるが、行政指導に関する指針は含まれない。
- 1ア・イ
- 2ア・ウ
- 3イ・ウ
- 4イ・エ
- 5ウ・エ
正解:2
解説
正解は肢2です。アは行政手続法35条2項が、許認可等をする権限を行使し得る旨を示すときは、その根拠となる法令の条項、当該条項に規定する要件、権限の行使が要件に適合する理由を示さなければならないと定めており正しい記述です。ウは36条の2第1項が、法律に根拠を置く是正のための行政指導について、要件に適合しないと思料する相手方に中止その他必要な措置を求めることを認めており正しい記述です。イは3条3項により地方公共団体の機関がする行政指導は根拠規定の如何を問わず同法の適用がなく、エは2条8号ニが行政指導指針を命令等に含めているため誤りです。
問13
行政法審査基準と処分基準に関する次の記述のうち、行政手続法に照らし、妥当なものはどれか。
- 1審査基準を公にすることによって行政上特別の支障が生じる場合、行政庁が当該審査基準を公にしなかったとしても違法とはならない。
- 2処分基準は、不利益処分を行うに際して、その名あて人からの求めに応じ、当該名あて人に対してこれを示せば足りるものとされている。
- 3行政庁が審査基準を作成し、それを公にすることは努力義務に過ぎないことから、行政庁が審査基準を公にしなかったとしても違法とはならない。
- 4審査基準を公にする方法としては、法令により申請の提出先とされている機関の事務所において備え付けることのみが認められており、その他の方法は許容されていない。
- 5行政庁が処分基準を定めることは努力義務に過ぎないが、処分基準を定めた場合には、これを公にする法的義務を負う。
正解:1
解説
正解は肢1です。行政手続法5条3項は、行政庁は行政上特別の支障があるときを除き、法令により申請の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法により審査基準を公にしておかなければならないと定めており、特別の支障がある場合には公にしなくても違法とはなりません。肢3は同条1項が審査基準を定めることを義務としており努力義務ではありません。肢4は「その他の適当な方法」も認められ備付けに限られません。肢2と肢5は12条1項が処分基準の設定も公表も努力義務としている点を誤っており、いずれも妥当ではありません。
問14
行政法行政不服審査法における審査請求に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- 1審査請求は、審査請求人本人がこれをしなければならず、代理人によってすることはできない。
- 2審査請求人以外の利害関係人は、審査請求に参加することは許されないが、書面によって意見の提出をすることができる。
- 3多数人が共同して審査請求をしようとする場合、1人の総代を選ばなければならない。
- 4審査請求人本人が死亡した場合、当該審査請求人の地位は消滅することから、当該審査請求の目的である処分に係る権利が承継されるか否かにかかわらず、当該審査請求は当然に終了する。
- 5法人でない社団または財団であっても、代表者または管理人の定めがあるものは、当該社団または財団の名で審査請求をすることができる。
正解:5
解説
正解は肢5です。行政不服審査法10条は、法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものは、その名で審査請求をすることができると定めています。肢1は12条1項が代理人による審査請求を認めています。肢2は13条1項により利害関係人は審理員の許可を得て参加人として審査請求に参加することができます。肢3は11条1項が多数人の共同審査請求において3人を超えない総代を互選することが「できる」と定める任意的な制度です。肢4は15条1項が相続人その他処分に係る権利を承継した者による地位の承継を認めており、いずれも妥当ではありません。
問15
行政法行政不服審査法(以下「行審法」という。)に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- 1納付すべき金銭の額を確定し、一定の額の金銭の納付を命じ、または金銭の給付決定の取消しその他の金銭の給付を制限する不利益処分については、行審法の規定は適用されない。
- 2行審法が審査請求の対象とする「行政庁の不作為」には、法令に違反する事実がある場合において、その是正のためにされるべき処分がされていない場合も含まれる。
- 3地方公共団体の機関がする処分でその根拠となる規定が条例または規則に置かれているものについては、行審法の規定は適用されない。
- 4地方公共団体またはその機関に対する処分で、当該団体または機関がその固有の資格において処分の相手方となるものについては、行審法の規定は適用されない。
- 5行審法は、国または公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める審査請求で、自己の法律上の利益にかかわらない資格でするものについても規定している。
正解:4
解説
正解は肢4です。行政不服審査法7条2項は、国の機関又は地方公共団体その他の公共団体若しくはその機関に対する処分で、これらの機関又は団体がその固有の資格において処分の相手方となるものについては、同法の規定を適用しないと定めています。肢1のような金銭の納付を命ずる処分等に関する適用除外は行政手続法13条2項4号の意見陳述手続の規定であり、行審法にはありません。肢2は3条が不作為を法令に基づく申請に対して何らの処分もしないことに限り、肢3は条例・規則に根拠を置く処分にも行審法が適用され、肢5は自己の法律上の利益にかかわらない資格による不服申立ての規定がないため誤りです。
問16
行政法行政不服審査法(以下「行審法」という。)と行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)との違いに関する次のア〜オの記述のうち、妥当なものの組合せはどれか。 【ア】行訴法は、処分取消訴訟につき、出訴期間の制限を規定するとともに、「ただし、正当な理由があるときは、この限りでない」という規定(以下「ただし書」という。)を置いているが、行審法は、処分についての審査請求につき、審査請求期間の制限を規定しているものの、行訴法のようなただし書は置いていない。 【イ】行審法は、行政庁が不服申立てをすることができる処分をする場合には、原則として、処分の相手方に対し、当該処分につき不服申立てをすべき行政庁や不服申立てをすることができる期間を書面で教示しなければならないと規定しているが、行訴法は、取消訴訟を提起することができる処分をする場合につき、被告とすべき者や出訴期間を教示すべき旨を定めた明文の規定は置いていない。 【ウ】行訴法は、判決の拘束力について、「処分又は裁決を取り消す判決は、その事件について、処分又は裁決をした行政庁その他の関係行政庁を拘束する。」と定めているのに対し、行審法は、裁決の拘束力について、「裁決は、関係行政庁を拘束する。」と定めている。 【エ】行審法は、行訴法における取消訴訟と同様、審査請求について執行停止の規定を置くとともに、執行停止の申立てまたは決定があった場合、内閣総理大臣は、審査庁に対し、異議を述べることができる旨を定めている。 【オ】行訴法は、行政庁がその処分または裁決をしてはならない旨を命ずることを求める訴訟として「差止めの訴え」を設けているが、行審法は、このような処分の差止めを求める不服申立てについて明文の規定を置いていない。
- 1ア・イ
- 2ア・オ
- 3イ・エ
- 4ウ・エ
- 5ウ・オ
正解:5
解説
正解は肢5です。ウは行政事件訴訟法33条1項と行政不服審査法52条1項が、それぞれ取消判決と裁決の拘束力について記述のとおり定めており正しい記述です。オは行訴法3条7項が差止めの訴えを法定するのに対し、行審法には処分の差止めを求める不服申立ての規定がなく正しい記述です。アは行審法18条1項・2項にも「正当な理由があるときは、この限りでない」とのただし書が置かれています。イは行訴法46条1項が被告とすべき者や出訴期間の教示を定めており、エの内閣総理大臣の異議は行訴法27条のみに置かれた制度であるため誤りです。
問17
行政法処分取消訴訟における訴えの利益の消滅に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。
- 1公務員に対する免職処分の取消訴訟における訴えの利益は、免職処分を受けた公務員が公職の選挙に立候補した後は、給料請求権等の回復可能性があるか否かにかかわらず、消滅する。
- 2保安林指定解除処分の取消訴訟における訴えの利益は、原告適格の基礎とされた個別具体的な利益侵害状況が代替施設の設置によって解消するに至った場合には、消滅する。
- 3公文書非公開決定処分の取消訴訟における訴えの利益は、公開請求の対象である公文書が当該取消訴訟において書証として提出された場合には、消滅する。
- 4運転免許停止処分の取消訴訟における訴えの利益は、免許停止期間が経過した場合であっても、取消判決により原告の名誉・感情・信用等の回復可能性がある場合には、消滅しない。
- 5市立保育所廃止条例を制定する行為の取消訴訟における訴えの利益は、当該保育所で保育を受けていた原告ら児童の保育の実施期間が満了した場合であっても、当該条例が廃止されない限り、消滅しない。
正解:2
解説
正解は肢2です。長沼ナイキ訴訟(最判昭和57年9月9日)は、保安林の指定解除処分の取消しを求める原告適格の基礎とされた洪水や渇水の危険が代替施設の設置によって解消された場合には、訴えの利益は失われるとしました。肢1は公職の選挙に立候補して公務員の地位を失っても給料請求権等の回復可能性があるとした最大判昭和40年4月28日に反します。肢3は書証として提出されても訴えの利益は消滅しないとした最判平成14年2月28日、肢4は免許停止期間の経過により訴えの利益が消滅するとした最判昭和55年11月25日、肢5は保育の実施期間満了により訴えの利益が消滅するとした最判平成21年11月26日に反します。
問18
行政法抗告訴訟における判決について説明する次のア〜オの記述のうち、誤っているものの組合せはどれか。 【ア】裁判所は、相当と認めるときは、終局判決前に、判決をもって、処分が違法であることを宣言することができる。 【イ】申請を拒否した処分が判決により取り消されたときは、その処分をした行政庁は、速やかに申請を認める処分をしなければならない。 【ウ】処分または裁決を取り消す判決により権利を害された第三者で、自己の責めに帰することができない理由により訴訟に参加することができなかったため判決に影響を及ぼすべき攻撃または防御の方法を提出することができなかったものは、これを理由として、確定の終局判決に対し、再審の訴えをもって、不服の申立てをすることができる。 【エ】直接型(非申請型)義務付け訴訟において、その訴訟要件がすべて満たされ、かつ当該訴えに係る処分について行政庁がこれをしないことが違法である場合には、裁判所は、行政庁がその処分をすべき旨を命じる判決をする。 【オ】処分を取り消す判決は、その事件について処分をした行政庁その他の関係行政庁を拘束すると規定されているが、この規定は、取消訴訟以外の抗告訴訟には準用されない。
- 1ア・ウ
- 2ア・エ
- 3イ・エ
- 4イ・オ
- 5ウ・オ
正解:4
解説
正解は肢4です。イは、拒否処分を取り消す判決の拘束力(行政事件訴訟法33条2項)により行政庁は判決の趣旨に従って改めて申請に対する処分をしなければならないものの、必ず申請を認める処分をすべきことになるわけではないため誤りです。オは、33条が38条1項により取消訴訟以外の抗告訴訟にも準用されているため誤りです。アは31条2項の終局判決前の違法宣言、ウは34条1項の第三者の再審の訴え、エは37条の2第5項の非申請型義務付け訴訟における認容判決の要件を、それぞれ条文どおりに述べたもので正しい記述です。
問19
行政法行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)が定める民衆訴訟および機関訴訟に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 1機関訴訟は、国または公共団体の機関相互間における権限の存否またはその行使に関する紛争についての訴訟であり、そのような紛争の一方の当事者たる機関は、特に個別の法律の定めがなくとも、機関たる資格に基づいて訴えを提起することができる。
- 2民衆訴訟とは、特に法律が定める場合に国または公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟で、自己の法律上の利益にかかわらない資格で何人も提起することができるものをいう。
- 3機関訴訟で、処分の取消しを求めるものについては、行訴法所定の規定を除き、取消訴訟に関する規定が準用される。
- 4公職選挙法が定める地方公共団体の議会の議員の選挙の効力に関する訴訟は、地方公共団体の機関たる議会の構成に関する訴訟であるから、機関訴訟の一例である。
- 5行訴法においては、行政事件訴訟に関し、同法に定めがない事項については、「民事訴訟の例による」との規定がなされているが、当該規定には、民衆訴訟および機関訴訟を除くとする限定が付されている。
正解:3
解説
正解は肢3です。行政事件訴訟法43条1項は、民衆訴訟又は機関訴訟で処分又は裁決の取消しを求めるものについては、原告適格を定める9条と10条1項を除き、取消訴訟に関する規定を準用すると定めています。肢1・肢2は42条が民衆訴訟及び機関訴訟を法律に定める場合において法律に定める者に限り提起できるとしており、「何人も」提起できるわけでも個別の法律の定めなしに提起できるわけでもありません。肢4の選挙の効力に関する訴訟は5条にいう民衆訴訟です。肢5は7条が民衆訴訟・機関訴訟を除外していないため、いずれも誤りです。
問20
行政法国家賠償に関する次のア〜エの記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、その正誤を正しく示す組合せはどれか。 【ア】教科用図書の検定にあたり文部大臣(当時)が指摘する検定意見は、すべて、検定の合否に直接の影響を及ぼすものではなく、文部大臣の助言、指導の性質を有するものにすぎないから、これを付することは、教科書の執筆者または出版社がその意に反してこれに服さざるを得なくなるなどの特段の事情のない限り、原則として、国家賠償法上違法とならない。 【イ】政府が物価の安定等の政策目標を実現するためにとるべき具体的な措置についての判断を誤り、ないしはその措置に適切を欠いたため当該政策目標を達成できなかった場合、法律上の義務違反ないし違法行為として、国家賠償法上の損害賠償責任の問題が生ずる。 【ウ】町立中学校の生徒が、放課後に課外のクラブ活動中の運動部員から顔面を殴打されたことにより失明した場合において、当該事故の発生する危険性を具体的に予見することが可能であるような特段の事情のない限り、顧問の教諭が当該クラブ活動に立ち会っていなかったとしても、当該事故の発生につき当該教諭に過失があるとはいえない。 【エ】市内の河川について市が法律上の管理権をもたない場合でも、当該市が地域住民の要望にこたえて都市排水路の機能の維持及び都市水害の防止など地方公共の目的を達成するために河川の改修工事をして、これを事実上管理することになったときは、当該市は、当該河川の管理につき、国家賠償法2条1項の責任を負う公共団体に当たる。
- 1ア=誤 イ=誤 ウ=正 エ=正
- 2ア=誤 イ=誤 ウ=正 エ=誤
- 3ア=誤 イ=正 ウ=誤 エ=誤
- 4ア=正 イ=正 ウ=誤 エ=誤
- 5ア=正 イ=正 ウ=正 エ=誤
正解:1
解説
正解は肢1です。アは、教科書検定における検定意見が単なる助言・指導にとどまらず不合格処分に直結しうるものであり、判例も検定における判断の過程に看過し難い過誤があれば国家賠償法上違法となる余地を認めていることから誤りです。イは、政府が物価の安定等の政策目標のためにとる措置の当否は、直ちに法律上の義務違反として国家賠償責任を生じさせるものではないとするのが判例であり誤りです。ウは町立中学校のクラブ活動中の事故につき顧問教諭の過失を否定した最判昭和58年2月18日により正しく、エは事実上管理する市が国家賠償法2条1項の責任主体となるとした最判昭和59年11月29日により正しい記述です。
問21
行政法国家賠償法1条に基づく責任に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。
- 1指定確認検査機関による建築確認に係る建築物について、確認をする権限を有する建築主事が置かれた地方公共団体は、指定確認検査機関が行った当該確認について、国家賠償法1条1項の国または公共団体としての責任を負うことはない。
- 2公権力の行使に当たる国または公共団体の公務員が、その職務を行うについて、過失によって違法に他人に損害を加えた場合には、国または公共団体がその被害者に対して賠償責任を負うが、故意または重過失の場合には、公務員個人が被害者に対して直接に賠償責任を負う。
- 3国または公共団体の公権力の行使に当たる複数の公務員が、その職務を行うについて、共同して故意によって違法に他人に加えた損害につき、国または公共団体がこれを賠償した場合においては、当該公務員らは、国または公共団体に対し、国家賠償法1条2項による求償債務を負うが、この債務は連帯債務であると解される。
- 4国家賠償法1条1項が定める「公務員が、その職務を行うについて」という要件につき、公務員が主観的に権限行使の意思をもってするものではなく、専ら自己の利をはかる意図をもってするような場合には、たとえ客観的に職務執行の外形をそなえる行為をした場合であったとしても、この要件には該当しない。
- 5都道府県警察の警察官が、交通犯罪の捜査を行うにつき故意または過失によって違法に他人に損害を加えた場合において、国家賠償法1条1項により当該損害につき賠償責任を負うのは国であり、当該都道府県が賠償責任を負うことはない。
正解:3
解説
正解は肢3です。最判令和2年7月14日は、公権力の行使に当たる複数の公務員が共同して故意により違法に加えた損害を国又は公共団体が賠償した場合、当該公務員らが国等に対して負う国家賠償法1条2項の求償債務は連帯債務であるとしました。肢1は、指定確認検査機関がした確認について建築主事が置かれた地方公共団体を当該処分に係る事務の帰属する公共団体とした最決平成17年6月24日に照らし、同団体の責任を否定する点で妥当ではありません。肢2は公務員個人が被害者に対して直接に責任を負わないとする判例、肢4は外形標準説を採った最判昭和31年11月30日、肢5は都道府県警察の警察官の職務行為につき当該都道府県が賠償責任を負うとする判例に、それぞれ反します。
問22
行政法普通地方公共団体の事務に関する次の記述のうち、地方自治法の定めに照らし、妥当なものはどれか。
- 1普通地方公共団体が処理する事務には、地域における事務と、その他の事務で法律またはこれに基づく政令により処理することとされるものとがある。
- 2都道府県の法定受託事務とは、国においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律またはこれに基づく政令に特に定めるものであり、都道府県知事が国の機関として処理することとされている。
- 3市町村の法定受託事務とは、国または都道府県においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律またはこれに基づく政令に特に定めるものであるから、これにつき市町村が条例を定めることはできない。
- 4法定受託事務は、普通地方公共団体が当該団体自身の事務として処理するものであるから、地方自治法上の自治事務に含まれる。
- 5地方自治法は、かつての同法が定めていた機関委任事務制度のような仕組みを定めていないため、現行法の下で普通地方公共団体が処理する事務は、その全てが自治事務である。
正解:1
解説
正解は肢1です。地方自治法2条2項は、普通地方公共団体は地域における事務及びその他の事務で法律又はこれに基づく政令により処理することとされるものを処理すると定めています。肢2は、法定受託事務も普通地方公共団体自身の事務であり、国の機関として処理する機関委任事務は1999年の地方分権一括法により廃止されました。肢3は14条1項により法定受託事務についても条例を制定することができます。肢4は2条8項が自治事務を法定受託事務以外のものと定義しており、肢5は法定受託事務が現に存在するため、いずれも妥当ではありません。
問23
行政法住民監査請求および住民訴訟に関する次の記述のうち、地方自治法の定めに照らし、妥当でないものはどれか。
- 1住民監査請求は、普通地方公共団体の住民が当該普通地方公共団体の監査委員に対して行う。
- 2住民訴訟は、あらかじめ、地方自治法に基づく住民監査請求をしていなければ、適法に提起することができない。
- 3住民訴訟で争うことができる事項は、住民監査請求の対象となるものに限定される。
- 4住民訴訟において原告住民がすることができる請求は、地方自治法が列挙するものに限定される。
- 5損害賠償の請求をすることを普通地方公共団体の執行機関に対して求める住民訴訟において、原告住民の請求を認容する判決が確定した場合は、当該原告住民に対して、当該損害賠償請求に係る賠償金が支払われることになる。
正解:5
解説
正解は肢5です。地方自治法242条の2第1項4号の訴訟は、当該職員又は相手方に損害賠償等の請求をすることを執行機関等に対して求めるものであり、認容判決が確定しても賠償金が支払われるのは当該普通地方公共団体に対してであって、原告住民が受け取るわけではありません。したがって肢5が妥当ではありません。肢1は242条1項が監査委員に対する請求と定め、肢2は監査請求前置、肢3は住民訴訟の対象が住民監査請求の対象に限られること、肢4は242条の2第1項が請求の類型を1号から4号に限定していることを、それぞれ正しく述べています。
問24
行政法普通地方公共団体の条例または規則に関する次の記述のうち、地方自治法の定めに照らし、妥当なものはどれか。
- 1普通地方公共団体の長が規則を定めるのは、法律または条例による個別の委任がある場合に限られる。
- 2普通地方公共団体は法令に違反しない限りにおいて条例を定めることができるが、条例において罰則を定めるためには、その旨を委任する個別の法令の定めが必要である。
- 3普通地方公共団体は、特定の者のためにする事務につき手数料を徴収することができるが、この手数料については、法律またはこれに基づく政令に定めるものを除いて、長の定める規則によらなければならない。
- 4普通地方公共団体の委員会は、個別の法律の定めるところにより、法令等に違反しない限りにおいて、その権限に属する事務に関し、規則を定めることができる。
- 5普通地方公共団体は条例で罰則を設けることができるが、その内容は禁錮、罰金、科料などの行政刑罰に限られ、行政上の秩序罰である過料については、長が定める規則によらなければならない。
正解:4
解説
正解は肢4です。地方自治法138条の4第2項は、普通地方公共団体の委員会は、法律の定めるところにより、法令又は当該団体の条例若しくは規則に違反しない限りにおいて、その権限に属する事務に関し規則その他の規程を定めることができると定めています。肢1は15条1項が長の規則制定権を個別の委任なしに認めています。肢2は14条3項が地方自治法自身の授権として条例に罰則を置くことを認め、肢3は228条1項が手数料を条例事項とし、肢5は同じく14条3項が過料も条例で定められるとしているため誤りです。なお同項の刑名は2025年6月1日から「2年以下の拘禁刑」に改められています。
問25
行政法公立学校をめぐる裁判に関する次のア〜オの記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。 【ア】公立高等専門学校の校長が学生に対し原級留置処分または退学処分を行った場合、裁判所がその処分の適否を審査するに当たっては、校長と同一の立場に立って当該処分をすべきであったかどうか等について判断し、その結果と当該処分とを比較してその適否、軽重等を論ずべきである。 【イ】教育委員会が、公立学校の教頭で勧奨退職に応じた者を校長に任命した上で同日退職を承認する処分をした場合において、当該処分が著しく合理性を欠きそのためこれに予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵が存するものといえないときは、校長としての退職手当の支出決定は財務会計法規上の義務に違反する違法なものには当たらない。 【ウ】公立学校の学校施設の目的外使用を許可するか否かは、原則として、当該施設の管理者の裁量に委ねられており、学校教育上支障がない場合であっても、学校施設の目的及び用途と当該使用の目的、態様等との関係に配慮した合理的な裁量判断により許可をしないこともできる。 【エ】公立高等学校等の教職員に対し、卒業式等の式典における国歌斉唱の際に国旗に向かって起立して斉唱することを命ずる旨の校長の職務命令がなされた場合において、当該職務命令への違反を理由とする懲戒処分の差止めを求める訴えについて、仮に懲戒処分が反復継続的・累積加重的にされる危険があるとしても、訴えの要件である「重大な損害を生ずるおそれ」があるとは認められない。 【オ】市立学校教諭が同一市内の他の中学校教諭に転任させる処分を受けた場合において、当該処分が客観的、実際的見地からみて勤務場所、勤務内容等に不利益を伴うものであるとしても、当該教諭には転任処分の取消しを求める訴えの利益が認められる余地はない。
- 1ア・イ
- 2ア・オ
- 3イ・ウ
- 4ウ・エ
- 5エ・オ
正解:3
解説
正解は肢3です。イは一日校長事件(最判平成4年12月15日)が、任命処分に予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵が存するといえない限り、退職手当の支出決定は財務会計法規上の義務に違反しないとしており正しい記述です。ウは学校施設の目的外使用の許否を管理者の裁量に委ねた最判平成18年2月7日により正しい記述です。アは神戸高専剣道実技拒否事件(最判平成8年3月8日)が、裁判所は校長と同一の立場に立って判断すべきではないとした点に反します。エは反復継続的な処分のおそれがある場合に重大な損害を認めた最判平成24年2月9日に反し、オも不利益を伴う転任処分について訴えの利益を認める余地があるため誤りです。
問26
行政法公文書管理法*について説明する次の記述のうち、誤っているものはどれか。 (注) * 公文書等の管理に関する法律
- 1公文書管理法に定める「行政文書」とは、同法の定める例外を除き、行政機関の職員が職務上作成しまたは取得した文書で、当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして当該行政機関が保有しているものであるとされる。
- 2公文書管理法は、行政機関の職員に対し、処理に係る事案が軽微なものである場合を除き文書を作成しなければならないという文書作成義務を定め、違反した職員に対する罰則を定めている。
- 3行政機関の職員が行政文書を作成・取得したときには、当該行政機関の長は、政令で定めるところにより、当該行政文書について分類し、名称を付するとともに、保存期間および保存期間の満了する日を設定しなければならない。
- 4行政機関の長は、行政文書の管理が公文書管理法の規定に基づき適正に行われることを確保するため、行政文書の管理に関する定め(行政文書管理規則)を設けなければならない。
- 5行政機関の長は、行政文書ファイル管理簿の記載状況その他の行政文書の管理の状況について、毎年度、内閣総理大臣に報告しなければならない。
正解:2
解説
正解は肢2です。公文書管理法4条は、行政機関の職員に対し、意思決定に至る過程等を合理的に跡付け又は検証することができるよう、処理に係る事案が軽微なものである場合を除き文書を作成しなければならないと定めていますが、これに違反した職員に対する罰則は置かれていません。したがって肢2が誤りです。肢1は2条4項の行政文書の定義、肢3は5条1項の整理に関する義務、肢4は10条1項の行政文書管理規則の制定義務、肢5は9条1項の内閣総理大臣への年次報告義務を、それぞれ条文どおりに述べたもので正しい記述です。
問27
民法失踪の宣告に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。
- 1不在者の生死が7年間明らかでない場合において、利害関係人の請求により家庭裁判所が失踪の宣告をしたときは、失踪の宣告を受けた者は、7年間の期間が満了した時に、死亡したものとみなされる。
- 2失踪の宣告を受けた者が実際には生存しており、不法行為により身体的被害を受けていたとしても、失踪の宣告が取り消されなければ、損害賠償請求権は発生しない。
- 3失踪の宣告の取消しは、必ず本人の請求によらなければならない。
- 4失踪の宣告によって失踪者の財産を得た者は、失踪の宣告が取り消されたときは、その受けた利益の全部を返還しなければならない。
- 5失踪の宣告によって失踪者の所有する甲土地を相続した者が、甲土地を第三者に売却した後に、失踪者の生存が判明し、この者の失踪の宣告が取り消された。この場合において、相続人が失踪者の生存について善意であったときは、第三者が悪意であっても、甲土地の売買契約による所有権移転の効果に影響しない。
正解:1
解説
正解は肢1です。民法30条1項は不在者の生死が7年間明らかでないときの失踪の宣告を定め、31条は普通失踪の場合に同項の7年の期間が満了した時に死亡したものとみなすとしています。肢2は失踪の宣告が死亡を擬制するにとどまり、実際に生存する者の権利能力を奪うものではないため誤りです。肢3は32条1項が本人又は利害関係人の請求によるとし、肢4は同条2項ただし書が現に利益を受けている限度での返還としています。肢5は同条1項後段の善意について当事者双方が善意であることを要すると解されており、いずれも妥当ではありません。
問28
民法無効および取消しに関する次の記述のうち、民法の規定に照らし、誤っているものはどれか。
- 1贈与契約が無効であるにもかかわらず、既に贈与者の履行が完了している場合、受贈者は受け取った目的物を贈与者に返還しなければならず、それが滅失して返還できないときは、贈与契約が無効であることを知らなかったとしても、その目的物の現存利益の返還では足りない。
- 2売買契約が無効であるにもかかわらず、既に当事者双方の債務の履行が完了している場合、売主は受け取った金銭を善意で費消していたとしても、その全額を返還しなければならない。
- 3秘密証書遺言は、法が定める方式に欠けるものであるときは無効であるが、それが自筆証書による遺言の方式を具備しているときは、自筆証書遺言としてその効力を有する。
- 4未成年者が親権者の同意を得ずに締結した契約について、未成年者本人が、制限行為能力を理由としてこれを取り消す場合、親権者の同意を得る必要はない。
- 5取り消すことができる契約につき、取消権を有する当事者が、追認をすることができる時以後に、異議をとどめずにその履行を請求した場合、これにより同人は取消権を失う。
正解:1
解説
正解は肢1です。民法121条の2第2項は、無効な無償行為に基づく債務の履行として給付を受けた者が、給付を受けた当時その行為が無効であることを知らなかったときは、その行為によって現に利益を受けている限度において返還の義務を負うと定めています。贈与は無償行為であり、現存利益の返還では足りないとする肢1が誤りです。肢2は同条1項の原状回復義務、肢3は971条の秘密証書遺言から自筆証書遺言への転換、肢4は120条1項が制限行為能力者自身による取消しを認める点、肢5は125条2号の法定追認を、それぞれ正しく述べています。
問29
民法甲土地(以下「甲」という。)を所有するAが死亡して、その子であるBおよびCについて相続が開始した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。
- 1遺産分割が終了していないにもかかわらず、甲につきBが虚偽の登記申請に基づいて単独所有名義で相続登記手続を行った上で、これをDに売却して所有権移転登記手続が行われた場合、Cは、Dに対して、Cの法定相続分に基づく持分権を登記なくして主張することができる。
- 2遺産分割により甲をCが単独で相続することとなったが、Cが相続登記手続をしないうちに、Bが甲に関する自己の法定相続分に基づく持分権につき相続登記手続を行った上で、これをEに売却して持分権移転登記手続が行われた場合、Cは、Eに対して、Eの持分権が自己に帰属する旨を主張することができない。
- 3Aが甲をCに遺贈していたが、Cが所有権移転登記手続をしないうちに、Bが甲に関する自己の法定相続分に基づく持分権につき相続登記手続を行った上で、これをFに売却して持分権移転登記手続が行われた場合、Cは、Fに対して、Fの持分権が自己に帰属する旨を主張することができない。
- 4Bが相続を放棄したため、甲はCが単独で相続することとなったが、Cが相続登記手続をしないうちに、Bの債権者であるGが甲に関するBの法定相続分に基づく持分権につき差押えを申し立てた場合、Cは、当該差押えの無効を主張することができない。
- 5Aが「甲をCに相続させる」旨の特定財産承継遺言を行っていたが、Cが相続登記手続をしないうちに、Bが甲に関するBの法定相続分に基づく持分権につき相続登記手続を行った上で、これをHに売却して持分権移転登記手続が行われた場合、民法の規定によれば、Cは、Hに対して、Hの持分権が自己に帰属する旨を主張することができない。
正解:4
解説
正解は肢4です。相続の放棄は民法939条により初めから相続人とならなかったものとみなす効果を有し、判例はこれを絶対的なものとして、放棄後に放棄者の持分を差し押さえた債権者に対しても、他の相続人は登記なくして対抗できるとしています。したがって差押えの無効を主張できないとする肢4が妥当ではありません。肢1は法定相続分については登記なくして対抗できるとする判例に沿い、肢2・肢3・肢5は899条の2第1項が、遺産分割、遺贈、特定財産承継遺言のいずれによる場合でも、法定相続分を超える部分は対抗要件を備えなければ第三者に対抗できないとしており妥当です。
問30
民法Aが所有する甲建物(以下「甲」という。)につき、Bのために抵当権が設定されて抵当権設定登記が行われた後、Cのために賃借権が設定され、Cは使用収益を開始した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。
- 1Bの抵当権設定登記後に設定されたCの賃借権はBに対して対抗することができないため、Bは、Cに対して、直ちに抵当権に基づく妨害排除請求として甲の明渡しを求めることができる。
- 2Bの抵当権が実行された場合において、買受人Dは、Cに対して、直ちに所有権に基づく妨害排除請求として甲の明渡しを求めることができる。
- 3AがCに対して有する賃料債権をEに譲渡し、その旨の債権譲渡通知が内容証明郵便によって行われた後、Bが抵当権に基づく物上代位権の行使として当該賃料債権に対して差押えを行った場合、当該賃料債権につきCがいまだEに弁済していないときは、Cは、Bの賃料支払請求を拒むことができない。
- 4Cのための賃借権の設定においてBの抵当権の実行を妨害する目的が認められ、Cの占有により甲の交換価値の実現が妨げられてBの優先弁済権の行使が困難となるような状態がある場合、Aにおいて抵当権に対する侵害が生じないように甲を適切に維持管理することが期待できるときであっても、Bは、Cに対して、抵当権に基づく妨害排除請求として甲の直接自己への明渡しを求めることができる。
- 5CがAの承諾を得て甲をFに転貸借した場合、Bは、特段の事情がない限り、CがFに対して有する転貸賃料債権につき、物上代位権を行使することができる。
正解:3
解説
正解は肢3です。判例は、民法372条が準用する304条1項ただし書の「払渡し又は引渡し」に債権譲渡は含まれないとして、賃料債権が譲渡され対抗要件が具備された後であっても、債務者が弁済する前であれば抵当権者は物上代位権を行使して差押えができるとしています。肢1・肢2は抵当権が使用収益権を含まず、また買受人との関係でも民法395条の引渡猶予があるため「直ちに」明渡しを求められません。肢4は所有者において適切な維持管理が期待できない場合に限り直接自己への明渡しを求めうるとする判例に反し、肢5は転貸賃料債権への物上代位を原則として否定した判例に反します。
問31
民法Aは、Bから金銭を借り受け、Cが、Aの同貸金債務を保証した。次の記述のうち、民法の規定に照らし、誤っているものはどれか。
- 1AがBに対し保証人を立てる義務を負う場合において、BがCを指名したときは、Cが弁済をする資力を有しなくなったときでも、Bは、Aに対し、Cに代えて資力を有する保証人を立てることを請求することはできない。
- 2AがBに対し保証人を立てる義務を負う場合において、BがCを指名するときは、Cは、行為能力者でなければならない。
- 3BのAに対する履行の請求その他の事由による時効の完成猶予及び更新は、Cに対しても、その効力を生ずる。
- 4Cの保証債務は、Aの債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのものを包含する。
- 5Cは、その保証債務についてのみ、違約金又は損害賠償の額を約定することができる。
正解:2
解説
正解は肢2です。民法450条1項は債務者が保証人を立てる義務を負う場合の保証人の要件として行為能力者であることと弁済の資力を有することを挙げますが、同条3項は債権者が保証人を指名した場合にはこれを適用しないとしています。BがCを指名した本問では行為能力者である必要はなく、肢2が誤りです。肢1も同条3項により資力を失っても代替を請求できず正しい記述です。肢3は457条1項の主たる債務者に生じた時効の完成猶予・更新の効力、肢4は447条1項の保証債務の範囲、肢5は同条2項の保証債務についての違約金等の約定を、それぞれ正しく述べています。
問32
民法A所有の動産甲(以下「甲」という。)を、BがCに売却する契約(以下「本件契約」という。)に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。
- 1Bが、B自身を売主、Cを買主として本件契約を締結した場合であっても、契約は原則として有効であり、Bは、Aから甲の所有権を取得してCに移転する義務を負うが、本件契約成立の当初からAには甲を他に譲渡する意思のないことが明確であり、甲の所有権をCに移転することができない場合には、本件契約は実現不能な契約として無効である。
- 2Bが、B自身を売主、Cを買主として本件契約を締結した場合であっても、契約は原則として有効であり、Bは、Aから甲の所有権を取得してCに移転する義務を負うところ、本件契約後にBが死亡し、AがBを単独相続した場合においては、Cは当然に甲の所有権を取得する。
- 3Bが、B自身をAの代理人と偽って、Aを売主、Cを買主とする本件契約を締結し、Cに対して甲を現実に引き渡した場合、Cは即時取得により甲の所有権を取得する。
- 4Bが、B自身をAの代理人と偽って、Aを売主、Cを買主として本件契約を締結した場合、Bに本件契約の代理権がないことを知らなかったが、そのことについて過失があるCは、本件契約が無効となった場合であっても、Bに対して履行または損害賠償の請求をすることができない。
- 5Aが法人で、Bがその理事である場合、Aの定款に甲の売却に関しては理事会の承認が必要である旨の定めがあり、Bが、理事会の承認を得ないままにAを売主、Cを買主とする本件契約を締結したとき、Cが、その定款の定めを知っていたとしても、理事会の承認を得ていると過失なく信じていたときは、本件契約は有効である。
正解:5
解説
正解は肢5です。判例は、法人の代表者が定款等による代表権の制限に反して行為した場合について民法93条1項ただし書を類推適用し、相手方が制限の存在を知っていても承認を得ていると信ずべき正当な理由があるときは行為は有効になるとしています。肢1は他人の権利の売買も有効であり、原始的不能でも契約は無効とならない(民法412条の2第2項)ため誤りです。肢2は他人物売主を相続した所有者が履行を拒絶できるとする判例に反し、肢3は即時取得が前主の無権利を治癒する制度であって代理権の欠缺を補うものではなく、肢4は117条2項2号ただし書により無権代理人が悪意であれば相手方に過失があっても責任を追及できるため誤りです。
問33
民法組合に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし、正しいものはどれか。
- 1組合の業務の決定は、組合契約の定めるところにより、一人または数人の組合員に委任することができるが、第三者に委任することはできない。
- 2組合の業務の執行は、組合契約の定めるところにより、一人または数人の組合員に委任することができるが、第三者に委任することはできない。
- 3各組合員の出資その他の組合財産は、総組合員の共有に属し、各組合員は、いつでも組合財産の分割を請求することができる。
- 4組合契約で組合の存続期間を定めた場合であるか、これを定めなかった場合であるかを問わず、各組合員は、いつでも脱退することができる。
- 5組合契約の定めるところにより一人または数人の組合員に業務の決定および執行を委任した場合、その組合員は、正当な事由があるときに限り、他の組合員の一致によって解任することができる。
正解:5
解説
正解は肢5です。民法672条2項は、組合契約の定めるところにより業務の決定及び執行を委任された組合員は、正当な事由がある場合に限り、他の組合員の一致によって解任することができると定めています。肢1・肢2は670条2項・3項が組合員だけでなく第三者への委任も認めているため誤りです。肢3は676条3項が清算前の組合財産の分割請求を禁じており、肢4は678条1項が存続期間を定めなかった場合等にいつでも脱退できるとする一方、存続期間を定めた場合は同条2項によりやむを得ない事由があるときに限られるため誤りです。
問34
民法不法行為に基づく損害賠償に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。
- 1不法行為による生命侵害の場合において、被害者の相続人であれば、常に近親者固有の慰謝料請求権が認められる。
- 2法人が名誉毀損を受けた場合、法人には感情がないので、財産的損害を除き、非財産的損害の賠償は認められない。
- 3交通事故による被害者が、いわゆる個人会社の唯一の代表取締役であり、被害者には当該会社の機関としての代替性がなく、被害者と当該会社とが経済的に一体をなす等の事情の下では、当該会社は、加害者に対し、被害者の負傷のため営業利益を逸失したことによる賠償を請求することができる。
- 4不法行為により身体傷害を受けた被害者は、後遺症が残ったため、労働能力の全部又は一部の喪失により将来において取得すべき利益を喪失した場合には、その損害について定期金ではなく、一時金による一括賠償しか求めることができない。
- 5交通事故の被害者が後遺症により労働能力の一部を喪失した場合に、その後に被害者が別原因で死亡したとしても、交通事故の時点で、その死亡の原因となる具体的事由が存在し、近い将来における死亡が客観的に予測されていたなどの特段の事情がない限り、死亡の事実は逸失利益に関する就労可能期間の認定において考慮されない。
正解:1・2・3・4・5
実施機関の訂正:試験実施機関が「全員正解」として公表しているため、正解番号はありません。どの選択肢を選んでも正解として扱われます。
解説
本問は試験実施機関が全員正解として扱いました。肢3は、被害者が個人会社の実質的な支配者で機関としての代替性がなく会社と経済的に一体をなす場合に、会社の逸失利益の賠償請求を認めた判例に沿い妥当です。肢5も、事故後に別原因で死亡しても、事故の時点で死亡の原因となる具体的事由が存在し近い将来の死亡が客観的に予測されていたなどの特段の事情がない限り、就労可能期間の認定において死亡の事実を考慮しないとする判例に沿い妥当です。妥当な肢が二つある以上一つに絞ることはできず、正解を欠く出題でした。肢1は民法711条が父母・配偶者・子に限る点、肢2は法人にも無形の損害の賠償が認められる点、肢4は逸失利益の定期金賠償を認めた判例がある点で誤りです。
問35
民法共同相続における遺産分割に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。
- 1共同相続人中の特定の1人に相続財産中の不動産の所有権を取得させる一方で当該相続人が老親介護を負担する義務を負う内容の遺産分割協議がなされた場合において、当該相続人が遺産分割協議に定められた介護を行わない場合には、他の共同相続人は債務不履行を理由として遺産分割協議自体を解除することができる。
- 2被相続人が、相続財産中の特定の銀行預金を共同相続人中の特定の1人に相続させる旨の遺言をしていた場合、当該預金債権の価額が当該相続人の法定相続分の価額を超えるときには、当該預金債権の承継に関する債権譲渡の対抗要件を備えなければ、当該預金債権の承継を第三者に対抗できない。
- 3共同相続人の1人が、相続開始後遺産分割の前に、被相続人が自宅に保管していた現金を自己のために費消した場合であっても、遺産分割の対象となる財産は、遺産分割時に現存する相続財産のみである。
- 4共同相続人は、原則としていつでも協議によって遺産の全部または一部の分割をすることができ、協議が調わないときは、家庭裁判所に調停または審判の申立てをすることができるが、相続開始から10年以上放置されていた遺産の分割については、家庭裁判所に対して調停または審判の申立てを行うことができない。
- 5相続財産中に銀行預金が含まれる場合、当該預金は遺産分割の対象となるから、相続開始後遺産分割の前に、当該預金口座から預金の一部を引き出すためには共同相続人の全員の同意が必要であり、目的、金額のいかんを問わず相続人の1人が単独で行うことは許されない。
正解:2
解説
正解は肢2です。民法899条の2第1項は、相続による権利の承継のうち法定相続分を超える部分について対抗要件を要求し、同条2項は債権を承継した相続人が遺言の内容を明らかにして債務者に承継を通知したときに共同相続人全員の通知とみなすとしています。預金債権も法定相続分を超える部分は債権譲渡の対抗要件を備えなければ第三者に対抗できません。肢1は遺産分割協議の債務不履行解除を否定する判例に反します。肢3は906条の2が処分された財産も遺産に含めうるとし、肢4は904条の3が10年経過後も分割の申立て自体を妨げず、肢5は909条の2が単独での払戻しを認めるため誤りです。
問36
商法・会社法匿名組合における匿名組合員に関する次の記述のうち、商法の規定に照らし、誤っているものはどれか。
- 1匿名組合員の出資は、営業者の財産に属する。
- 2匿名組合員は、匿名組合契約に基づき営業者が負った債務について、当該匿名組合員が匿名組合の当事者であることをその債務に係る債権者が知っていたときには、当該営業者と連帯して弁済する責任を負う。
- 3出資が損失によって減少したときは、その損失をてん補した後でなければ、匿名組合員は、利益の配当を請求することができない。
- 4匿名組合員は、営業年度の終了時において、営業者の営業時間内に、営業者の業務及び財産の状況を検査することができる。
- 5匿名組合員が破産手続開始の決定を受けた場合、匿名組合契約は終了する。
正解:2
解説
正解は肢2です。商法536条4項は、匿名組合員は営業者の行為について第三者に対して権利及び義務を有しないと定めており、匿名組合員が営業者と連帯して弁済の責任を負うのは、537条により自己の氏若しくは氏名を営業者の商号中に用いること等を許諾した場合に限られます。債権者が匿名組合員の存在を知っていたというだけで責任を負うわけではなく、肢2が誤りです。肢1は536条1項、肢3は538条、肢4は539条1項、肢5は541条3号が、それぞれ記述のとおり定めており正しい記述です。
問37
商法・会社法株主の議決権に関する次のア〜オの記述のうち、会社法の規定に照らし、正しいものの組合せはどれか。 【ア】株主総会における議決権の全部を与えない旨の定款の定めは、その効力を生じない。 【イ】株式会社は、自己株式については、議決権を有しない。 【ウ】取締役候補者である株主は、自らの取締役選任決議について特別の利害関係を有する者として議決に加わることができない。 【エ】監査役を選任し、又は解任する株主総会の決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。 【オ】役員等がその任務を怠ったために株式会社に生じた損害を賠償する責任を負うこととなった場合に、当該責任を免除するには、議決権のない株主を含めた総株主の同意がなければならない。
- 1ア・ウ
- 2ア・エ
- 3イ・エ
- 4イ・オ
- 5ウ・オ
正解:4
解説
正解は肢4です。イは会社法308条2項が、株式会社は自己株式については議決権を有しないと定めており正しい記述です。オは424条が役員等の任務懈怠責任の免除には総株主の同意を要するとしており、議決権のない株主も含まれるため正しい記述です。アは108条1項3号が議決権制限種類株式を認めており、議決権の全部を与えない旨の定めも有効です。ウは取締役候補者である株主は特別の利害関係を有する者に当たらず議決権を行使できます。エは監査役の解任が309条2項7号の特別決議事項とされているため誤りです。
問38
商法・会社法監査等委員会設置会社の取締役の報酬等に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、誤っているものはどれか。
- 1取締役の報酬等に関する事項は、監査等委員である取締役とそれ以外の取締役とを区別して定めなければならない。
- 2監査等委員である取締役は、株主総会において、監査等委員である取締役の報酬等について意見を述べることができる。
- 3監査等委員会が選定する監査等委員は、株主総会において、監査等委員である取締役以外の取締役の報酬等について監査等委員会の意見を述べることができる。
- 4監査等委員である各取締役の報酬等について定款の定め又は株主総会の決議がないときは、当該報酬等は、株主総会で決議された取締役の報酬等の範囲内において、監査等委員である取締役の多数決によって定める。
- 5監査等委員である取締役を除く取締役の個人別の報酬等の内容が定款又は株主総会の決議により定められている場合を除き、当該取締役の個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針を取締役会で決定しなければならない。
正解:4
解説
正解は肢4です。会社法361条3項は、監査等委員である各取締役の報酬等について定款の定め又は株主総会の決議がないときは、株主総会で決議された報酬等の範囲内において「監査等委員である取締役の協議によって定める」としており、協議とは全員一致による決定を意味します。多数決とする肢4が誤りです。肢1は同条2項の区分決定、肢2は同条5項の監査等委員である取締役の意見陳述権、肢3は同条6項の監査等委員会の意見陳述、肢5は同条7項2号の個人別の報酬等の決定方針の取締役会決議を、それぞれ正しく述べています。
問39
商法・会社法株式交換に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、正しいものはどれか。
- 1株式交換完全親会社は、株式会社でなければならない。
- 2株式交換完全親会社は、株式交換完全子会社の発行済株式の一部のみを取得することとなる株式交換を行うことができる。
- 3株式交換完全親会社は、株式交換完全子会社の株主に対し、当該株式交換完全親会社の株式に代わる金銭等を交付することができる。
- 4株式交換完全親会社の反対株主は、当該株式交換完全親会社に対し、自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することはできない。
- 5株式交換契約新株予約権が付された、株式交換完全子会社の新株予約権付社債の社債権者は、当該株式交換完全子会社に対し、株式交換について異議を述べることはできない。
正解:3
解説
正解は肢3です。会社法768条1項2号は、株式交換完全親会社が株式交換完全子会社の株主に対しその株式に代わる金銭等を交付する場合の定めを株式交換契約に置くものとしており、対価を株式に限らず金銭等とすることができます。肢1は767条が株式交換完全親会社を株式会社又は合同会社としています。肢2は2条31号が発行済株式の「全部」を取得するものと定義しており一部の取得はできません。肢4は797条1項が反対株主の株式買取請求権を認め、肢5は789条1項3号が当該新株予約権付社債の社債権者による異議の申述を認めているため誤りです。
問40
商法・会社法会社訴訟に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、誤っているものはどれか。なお、定款に別段の定めがないものとする。
- 1株主総会の決議の内容が法令に違反するときは、当該株主総会決議の日から3か月以内に、訴えをもってのみ当該決議の取消しを請求することができる。
- 2会社の設立無効は、会社の成立の日から2年以内に、訴えをもってのみ主張できる。
- 3新株発行無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定したときは、当該判決において無効とされた行為は、将来に向かってその効力を失う。
- 46か月前から引き続き株式を有する株主は、公開会社に対し、役員等の責任を追及する訴えの提起を請求することができる。
- 5株式会社の役員の解任の訴えは、当該株式会社及び当該解任を請求された役員を被告とする。
正解:1
解説
正解は肢1です。株主総会の決議の内容が法令に違反する場合は会社法830条2項の決議無効確認の訴えによるもので、提訴期間の制限はなく、訴えによらずに無効を主張することもできます。決議の日から3か月以内の決議取消しの訴え(831条1項)の対象となるのは招集手続・決議方法の法令定款違反や決議内容の定款違反等であり、肢1が誤りです。肢2は828条1項1号、肢3は839条の将来効、肢4は847条1項の株主による責任追及の訴えの提訴請求、肢5は855条が会社及び当該役員を被告とすべきものとしており、いずれも正しい記述です。
問47
基礎知識政治に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。
- 1政党助成法は、衆議院または参議院に一定数以上の議席を有するか、議席を有して一定の国政選挙で有効投票総数の一定割合以上の得票があった政党に対して、政党交付金による助成を行う旨を規定している。
- 2マス・メディアなどの情報に対して、主体的に世論を形成するためなどに、それらを批判的に読み解く能力は、メディア・リテラシーと呼ばれる。
- 3政治資金規正法は、政治資金の収支の公開や寄附の規制などを通じ政治活動の公明と公正を確保するためのルールを規定している。
- 4有権者のうち、特定の支持政党を持たない層は、無党派層と呼ばれる。
- 5性差に起因して起こる女性に対する差別や不平等に反対し、それらの権利を男性と同等にして女性の能力や役割の発展を目指す主張や運動は、ポピュリズムと呼ばれる。
正解:5
解説
正解は肢5です。性差に起因して起こる女性に対する差別や不平等に反対し、女性の権利を男性と同等にしてその能力や役割の発展を目指す主張や運動はフェミニズムと呼ばれます。ポピュリズムは、既成のエリートや制度に対して「人民」の立場を強調する政治手法や運動を指す語であり、肢5が妥当ではありません。肢1の政党助成法による政党要件と交付金、肢2のメディア・リテラシー、肢3の政治資金規正法の目的、肢4の無党派層の説明は、いずれも妥当な記述です。
問48
基礎知識中東やパレスチナに関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。
- 11947年に、国際連合総会において、パレスチナをアラブ人国家とユダヤ人国家と国際管理地区とに分割する決議が採択された。
- 21948年に、イスラエルの建国が宣言されると、これに反発したアラブ諸国との間で第一次中東戦争が勃発した。
- 31987年に、イスラエルの占領地で始まり、大規模な民衆蜂起に発展したパレスチナ人による抵抗運動を、第一次インティファーダ(民衆蜂起)という。
- 41993年に、パレスチナ解放機構(PLO)とイスラエルとの間で暫定自治協定が結ばれ、(ヨルダン川)西岸地区・ガザ地区でパレスチナの先行自治が始まった。
- 52020年に、日本が仲介して、イスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)およびイランが、国交の正常化に合意した。
正解:5
解説
正解は肢5です。2020年にイスラエルとアラブ首長国連邦、バーレーンなどが国交正常化に合意したのはアブラハム合意と呼ばれるもので、仲介したのは米国であり日本ではありません。またイランはこの合意に参加しておらず、むしろ強く反発した側です。したがって肢5が妥当ではありません。肢1の1947年の国連総会によるパレスチナ分割決議、肢2の1948年のイスラエル建国宣言と第一次中東戦争、肢3の1987年に始まる第一次インティファーダ、肢4の1993年のオスロ合意(暫定自治協定)は、いずれも妥当な記述です。
問49
基礎知識日本円の外国為替に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- 11931年に金輸出が解禁されて金本位制に基づく日米英間の金融自由化が進み、ソ連・中国・ドイツの統制経済圏を包囲する自由経済圏が成立した。
- 21949年に1ドル=360円の単一為替レートが設定されたが、ニクソンショックを受けて、1971年には1ドル=308円に変更された。
- 31973年には固定相場制が廃止され、変動相場制に移行したため、その後の為替レートは、IMF(国際通貨基金)理事会で決定されている。
- 41985年のいわゆるレイキャビック合意により、合意直前の1ドル=240円から、数年後には1ドル=120円へと、円安ドル高が起きた。
- 52014年には、「戦後レジーム(ワシントン・コンセンサス)を取り戻す」ことを目指した通称「アベノミクス」により、1ドル=360円になった。
正解:2
解説
正解は肢2です。1949年、ドッジ・ラインの一環として1ドル=360円の単一為替レートが設定され、1971年のニクソン・ショックを経た同年12月のスミソニアン合意により1ドル=308円に切り上げられました。肢1の金輸出解禁は1930年に行われ翌1931年に再禁止されています。肢3は変動相場制の下で為替レートは外国為替市場の需給によって決まり、IMF理事会が決定するものではありません。肢4の1985年の合意はプラザ合意であり、その後生じたのは円高ドル安です。肢5もアベノミクスにより1ドル=360円になった事実はなく、いずれも妥当ではありません。
問50
基礎知識日本における外国人に関する次のア〜オの記述のうち、妥当なものの組合せはどれか。 【ア】外国籍の生徒も、全国高等学校体育連盟や日本高等学校野球連盟が主催する大会に参加することができる。 【イ】より広い業種での外国人の就労を可能とするために新たに設けられた在留資格「特定技能1号」には、医師も含まれる。 【ウ】徴税など、いわゆる公権力の行使にあたる業務を含め、外国籍の者も全国の全ての自治体で公務員として就労することができる。 【エ】名古屋出入国在留管理局の施設に収容されていたスリランカ人女性が2021年に死亡し、その遺族が国家賠償請求訴訟を行った。 【オ】特別永住者を含む外国人には、日本への入国時に指紋と顔写真の情報の提供が義務付けられている。
- 1ア・イ
- 2ア・エ
- 3イ・ウ
- 4ウ・オ
- 5エ・オ
正解:2
解説
正解は肢2です。アは、全国高等学校体育連盟や日本高等学校野球連盟が主催する大会に国籍による参加制限はなく、外国籍の生徒も参加できるため妥当です。エは、2021年に名古屋出入国在留管理局の施設に収容されていたスリランカ人女性が死亡し、その遺族が国家賠償請求訴訟を提起した事実があり妥当です。イは在留資格「特定技能1号」の対象分野に医師は含まれず、医師は在留資格「医療」によります。ウは公権力の行使や公の意思の形成への参画に携わる公務員には日本国籍が必要と解されており、オは特別永住者が指紋及び顔写真の提供義務を免除されているため、いずれも妥当ではありません。
問51
基礎知識ジェンダーに関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- 1世界経済フォーラムが毎年発表しているジェンダーギャップ指数において、2006年の開始以来、日本は常に上位10位以内に入っている。
- 2出生時に割り当てられた性別に対し苦痛を感じている人が受けるホルモン療法や性別適合手術等の医療技術のことを、フェムテックという。
- 3レインボーフラッグは、性の多様性を尊重するシンボルとして用いられている。
- 4複数の大学の医学部の入学試験で、性別を理由に男性の受験生が不当に減点されていたことが2018年に明らかになり、訴訟となった例もある。
- 5働く女性が妊娠・出産を理由に解雇・雇止めをされることや、妊娠・出産にあたって職場で受ける精神的・肉体的なハラスメントを、カスタマー・ハラスメントという。
正解:3
解説
正解は肢3です。レインボーフラッグは性の多様性を尊重するシンボルとして世界的に用いられており妥当です。肢1は、世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数において日本は一貫して下位にとどまり、上位10位以内に入ったことはありません。肢2のフェムテックは女性の健康課題を技術で解決する製品・サービスを指す語であり、性別違和に対する医療とは異なります。肢4は2018年に明らかになった医学部入試の不正で不当に減点されていたのは女性受験生であり、肢5の妊娠・出産を理由とする不利益取扱いやハラスメントはマタニティ・ハラスメントと呼ばれるため、いずれも妥当ではありません。
問52
基礎知識行政書士法に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- 1行政書士は、その事務所の見やすい場所に、その業務に関し受ける報酬の額を掲示しなければならない。
- 2行政書士は、自ら作成した官公署に提出する書類に係る許認可等に関する審査請求について、その手続を代理することはできない。
- 3国または地方公共団体の公務員として行政事務を担当した期間が通算して2年以上になる者は、行政書士となる資格を有する。
- 4破産手続開始の決定を受けた場合、復権をした後においても行政書士となる資格を有しない。
- 5地方公務員が懲戒免職の処分を受けた場合、無期限に行政書士となる資格を有しない。
正解:1
解説
正解は肢1です。行政書士法10条の2第1項は、行政書士はその事務所の見やすい場所に、その業務に関し受ける報酬の額を掲示しなければならないと定めています。肢2は、日本行政書士会連合会の研修課程を修了した特定行政書士であれば不服申立ての手続を代理できます(現行1条の4第1項2号・2項。出題時は1条の3で、令和7年法律第65号により条番号が繰り下がり、対象も「作成することができる書類」に拡大されました)。肢3は2条6号が行政事務を担当した期間を通算20年以上(高等学校卒業者等は17年以上)とし、肢4は2条の2第2号が復権を得ない者に限り、肢5は同条4号が懲戒免職の日から3年としているため誤りです。
問53
基礎知識住民基本台帳法に明示されている住民票の記載事項に関する次の項目のうち、妥当なものはどれか。
- 1前年度の住民税納税額
- 2緊急時に連絡可能な者の連絡先
- 3地震保険の被保険者である者については、その資格に関する事項
- 4海外渡航歴
- 5世帯主についてはその旨、世帯主でない者については世帯主の氏名及び世帯主との続柄
正解:5
解説
正解は肢5です。住民基本台帳法7条4号は、住民票の記載事項として「世帯主についてはその旨、世帯主でない者については世帯主の氏名及び世帯主との続柄」を掲げています。同条は氏名、出生の年月日、男女の別、戸籍の表示、住所、個人番号、選挙人名簿への登録、国民健康保険や介護保険などの被保険者資格に関する事項等を列挙しますが、肢1の住民税納税額、肢2の緊急連絡先、肢3の地震保険の被保険者資格、肢4の海外渡航歴はいずれも掲げられておらず妥当ではありません。なお令和7年5月26日からは氏名の振り仮名(7条1号の2)も記載事項とされています。
問54
基礎知識デジタル環境での情報流通に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。
- 1生成AIが、利用者からの質問を受けて、誤った情報をあたかも真実であるかのように回答する現象を、アノテーションという。
- 2情報が大量に流通する環境の中で、人々が費やせるアテンションや消費時間が希少になり、それらが経済的価値を持つようになることを、アテンションエコノミーという。
- 3SNSなどを運営する事業者が、違法コンテンツや利用規約違反コンテンツを削除することなどを、コンテンツモデレーションという。
- 4SNSなどで流通する情報について、第三者がその真偽を検証して結果を公表するなどの活動を、ファクトチェックという。
- 5SNSなどのアルゴリズムにより、自分の興味のある情報だけに囲まれてしまう状況を、フィルターバブルという。
正解:1
解説
正解は肢1です。生成AIが誤った情報をあたかも事実であるかのように出力する現象はハルシネーション(幻覚)と呼ばれます。アノテーションは機械学習に用いるデータへ正解ラベルや意味情報を付与する作業を指す語であり、肢1が妥当ではありません。肢2のアテンションエコノミー、肢3のコンテンツモデレーション、肢4のファクトチェック、肢5のフィルターバブルの説明は、いずれもこれらの用語の一般的な定義に沿う妥当な記述です。
問55
基礎知識欧米の情報通信法制に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。
- 1EUのデジタルサービス法(DSA)は、SNSなどのプラットフォーム事業者に対して、事業者の規模などに応じた利用者保護などのための義務を課している。
- 2EUのデジタル市場法(DMA)は、SNSなどのプラットフォーム事業者に対して、著作権侵害コンテンツへの対策を義務付けている。
- 3EUの一般データ保護規則(GDPR)では、個人データによるプロファイリングに異議を唱える権利や、データポータビリティの権利が個人に付与されている。
- 4米国では、児童オンラインプライバシー保護など分野ごとに様々な個人情報保護関連の連邦法が存在する。
- 5米国では、包括的な個人情報保護を定めた州法が存在する州がある。
正解:2
解説
正解は肢2です。EUのデジタル市場法(DMA)は、ゲートキーパーと指定された大規模プラットフォーム事業者に対し、自社サービスの優遇の禁止や相互運用性の確保などを義務づけて市場の競争性を確保する法律であり、著作権侵害コンテンツへの対策を義務づけるものではありません。違法コンテンツへの対応はデジタルサービス法(DSA)などが扱う領域であり、肢2が妥当ではありません。肢1のDSA、肢3のGDPRにおけるプロファイリングへの異議申立権とデータポータビリティの権利、肢4の米国の分野別連邦法、肢5の州単位の包括的な個人情報保護法の存在は、いずれも妥当です。
問56
基礎知識デジタル庁に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- 1デジタル庁は、総務省に置かれている。
- 2デジタル庁に対して、個人情報保護委員会は行政指導を行うことができない。
- 3デジタル庁には、サイバーセキュリティ基本法に基づくサイバーセキュリティ戦略本部が置かれている。
- 4デジタル庁は、官民データ活用推進基本計画の作成及び推進に関する事務を行っている。
- 5デジタル庁の所掌事務には、マイナンバーとマイナンバーカードに関する事務は含まれていない。
正解:4
解説
正解は肢4です。デジタル庁設置法4条は同庁の所掌事務を定め、官民データ活用推進基本法に基づく官民データ活用推進基本計画の作成及び推進に関する事務を掲げています。肢1はデジタル庁設置法2条1項により同庁は内閣に置かれる機関であって総務省の外局ではありません。肢2は個人情報保護法が行政機関等に対する個人情報保護委員会の指導・助言等を認めています。肢3のサイバーセキュリティ戦略本部はサイバーセキュリティ基本法25条により内閣に置かれ、肢5のマイナンバー及びマイナンバーカードに関する事務もデジタル庁の所掌に含まれるため、いずれも妥当ではありません。
問57
基礎知識個人情報保護法*に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。 (注) * 個人情報の保護に関する法律
- 1個人情報取扱事業者は、個人データの漏えい等が発生し、個人の権利利益を害するおそれが大きい場合には、個人情報保護委員会への報告を行わなければならない。
- 2個人情報取扱事業者は、違法または不当な行為を助長し、または誘発するおそれがある方法により個人情報を利用してはならない。
- 3個人情報取扱事業者は、個人データの第三者提供をした場合には、原則として、当該個人データを提供した年月日、当該第三者の氏名または名称その他の個人情報保護委員会規則で定める事項を記録しなければならない。
- 4学術研究機関が学術研究目的で個人情報を取り扱う場合には、個人情報取扱事業者の義務に関する規定は適用されない。
- 5国の行政機関や地方公共団体の機関にも、個人情報保護法の規定は適用される。
正解:4
解説
正解は肢4です。学術研究機関等については、令和3年の改正により一律の適用除外が廃止され、利用目的による制限、要配慮個人情報の取得、第三者提供の制限などの各義務ごとに、学術研究目的である場合の例外を個別に定める方式に改められました。義務に関する規定が一律に適用されないとする肢4が妥当ではありません。なお57条1項の適用除外が残るのは報道機関、著述業者、宗教団体、政治団体です。肢1は26条1項の漏えい等の報告義務、肢2は19条の不適正利用の禁止、肢3は29条1項の提供者の記録義務、肢5は第5章が行政機関等を規律していることから、いずれも妥当です。