借地借家法・民法
賃借人が死亡したら契約はどうなる?相続・残置物を解説【賃貸管理士】【2026年度試験対応】
賃借人が死亡しても普通の賃貸借は原則として相続されます。同居者の承継、終身建物賃貸借との違い、残置物を処分する前の確認を整理します。
要点 5件・基本問題 5問・解説の確認問題 3問読む → 覚える → 解くまでこのページで完結
- 法令基準日
- 2026-04-01
- 最終確認日
- 2026-08-15
- 確認
- chintaikanrishi-critical-review-2026-08-15

2026年度試験対応。法令基準日:2026-04-01。
まず押さえるポイント
普通の建物賃貸借は、賃借人の死亡だけでは当然に終了せず、賃借権や契約上の義務は原則として相続人に引き継がれます。契約の終了と室内の家財の処分は、それぞれ権限を確認する必要があります。
法令基準日:2026-04-01 / 解説更新日:2026-09-08
賃借権も原則として相続の対象になる

普通の賃貸借:原則として相続:死亡だけで自動終了しない。相続人がいない居住用賃貸借:一定の同居者が承継する場合あり:借地借家法36条の要件を確認。終身建物賃貸借:制度上、本人の死亡時に終了:通常の賃貸借と区別する
図を大きく見る民法896条は、一身専属のものを除き、被相続人の権利義務を相続人が承継すると定めています。賃借人が亡くなったという事実だけで、貸主が契約を終了させたり、部屋を次の入居者に貸したりできるわけではありません。
まず契約の種類、相続人の有無、誰が解約や明渡しに対応する権限を持つかを確認します。緊急連絡先に記載された人と相続人は同じとは限らず、連絡先であることだけで家財の処分権限が生じるものでもありません。
| 項目 | 基本ルール | 注意点 |
|---|---|---|
| 普通の賃貸借 | 原則として相続 | 死亡だけで自動終了しない |
| 相続人がいない居住用賃貸借 | 一定の同居者が承継する場合あり | 借地借家法36条の要件を確認 |
| 終身建物賃貸借 | 制度上、本人の死亡時に終了 | 通常の賃貸借と区別する |
相続人がいない場合の同居者の承継
居住用の建物で、賃借人が相続人なしに死亡した場合、事実上の夫婦・養親子と同様の関係にあった同居者は、借地借家法36条によって賃借人の権利義務を承継します。単なる友人やルームメート全員を保護する条文ではありません。
この同居者が、相続人なしに死亡したことを知った後1か月以内に貸主へ反対の意思を表示した場合は承継しません。「死亡日から必ず1か月」とせず、何を知った時から数えるかも確認します。
解約の権限と残置物の処分権限は別
室内の家具や衣類なども相続財産となり得るため、貸主が所有する建物の中にあるという理由だけで自由に廃棄できません。解約について合意できたことから、家財処分の権限まで当然にあるとは判断しないでください。
国土交通省・法務省のモデル契約条項は、生前の死後事務委任契約で、契約解除や残置物処理に関する権限・手順を整える仕組みです。指定された物の取扱い、処分までの期間、契約終了などの条件を確認し、ひな形があるだけで無条件の処分が認められると考えないようにします。
終身建物賃貸借・公営住宅と分けて読む
終身建物賃貸借は、通常の借家契約と異なり、死亡時に終了する制度です。高齢者が入居しているというだけで、すべての賃貸借がこの制度になるわけではありません。契約の名称と制度の要件を確認します。
令和7年度問7では、相続人のいない場合の同居者や公営住宅などが出題されています。普通の民間賃貸住宅の原則を、公営住宅など制度の異なる住宅へそのまま当てはめないことが判断のポイントです。
出題例の原本・年度別問題
過去の出題を手がかりに、判断する条件を整理します。このページの説明と確認問題は合トレのオリジナルです。
- 令和7年度 問7
賃借人死亡時の承継と住宅制度の違いを確認する
公式の公表資料を確認する
オリジナル確認問題で判断する
○か×かを選び、理由を確認してください。実際の過去問を転載したものではありません。
この解説の一次資料
- e-Gov:民法896条確認日:2026-09-08
- e-Gov:借地借家法36条確認日:2026-09-08
- 国土交通省:残置物の処理等に関するモデル契約条項確認日:2026-09-08
- 国土交通省:終身建物賃貸借標準契約書確認日:2026-09-08
- 試験実施団体:過去の試験問題確認日:2026-09-08
使用貸借と賃貸借の違い
使用貸借は無償で借主個人との人的関係に基づく契約であるため、借主の死亡によって当然に終了する(597条3項)。貸主が死亡しても終了しない。これに対し賃借権は財産権であり相続される。相続人が複数いる場合、賃借権は相続人全員に不可分に帰属し、賃料債務は不可分債務として各相続人が全額の支払義務を負うと解されている。使用貸借には借地借家法の適用がない。
覚え方ただで借りたら死んだら終わり、お金を払って借りたら相続される
混同注意・比較表
貸主が死亡した場合と借主が死亡した場合
最初に、亡くなったのが貸主か借主かを確認します。どちらでも賃貸借は終わりませんが、相続人がいないときの扱いと賃料の請求のしかたが変わります。
| 事由 | 貸主が死亡した場合 | 借主が死亡した場合 | 理由・判断ポイント |
|---|---|---|---|
| 賃貸借契約はどうなるか | 終了せず、相続人が貸主の地位を承継する。相続人が不在でも賃貸借は終了しない | 終了せず、相続人が借主の地位を相続する。借主が死亡したら終了する旨の特約は無効 | 賃借権は財産権なので、当事者の死亡では契約が終わらないのが出発点です。 |
| 相続人がいない場合最重要 | 相続人が不在でも契約は続き、貸主の地位は相続の手続に従って処理される | 居住用建物なら、事実上の夫婦や親子関係にあった同居者が賃借権を承継する。相続人なしの死亡を知った後1か月以内に反対の意思を表示すれば承継しない | 同居者の承継は居住用建物で相続人がいない場合だけで、相続人がいるときは適用がありません。 |
| 遺産分割までの賃料 | 各相続人が自分の相続分に応じた額しか借主に請求できない | 貸主は相続人である借主の誰に対しても、賃料の全額を請求できる | 貸す側は持分の割合まで、借りる側は各自が全額という非対称を押さえます。 |
| 使用貸借だった場合 | 貸主が死亡しても使用貸借は終了せず、そのまま続く | 借主が死亡すると使用貸借は当然に終了し、相続人には引き継がれない | 無償の使用貸借は借主個人との関係なので、借主の死亡だけが終了原因になります。 |
賃貸借契約はどうなるか
- 貸主が死亡した場合
- 終了せず、相続人が貸主の地位を承継する。相続人が不在でも賃貸借は終了しない
- 借主が死亡した場合
- 終了せず、相続人が借主の地位を相続する。借主が死亡したら終了する旨の特約は無効
判断ポイント
賃借権は財産権なので、当事者の死亡では契約が終わらないのが出発点です。
相続人がいない場合
最重要- 貸主が死亡した場合
- 相続人が不在でも契約は続き、貸主の地位は相続の手続に従って処理される
- 借主が死亡した場合
- 居住用建物なら、事実上の夫婦や親子関係にあった同居者が賃借権を承継する。相続人なしの死亡を知った後1か月以内に反対の意思を表示すれば承継しない
判断ポイント
同居者の承継は居住用建物で相続人がいない場合だけで、相続人がいるときは適用がありません。
遺産分割までの賃料
- 貸主が死亡した場合
- 各相続人が自分の相続分に応じた額しか借主に請求できない
- 借主が死亡した場合
- 貸主は相続人である借主の誰に対しても、賃料の全額を請求できる
判断ポイント
貸す側は持分の割合まで、借りる側は各自が全額という非対称を押さえます。
使用貸借だった場合
- 貸主が死亡した場合
- 貸主が死亡しても使用貸借は終了せず、そのまま続く
- 借主が死亡した場合
- 借主が死亡すると使用貸借は当然に終了し、相続人には引き継がれない
判断ポイント
無償の使用貸借は借主個人との関係なので、借主の死亡だけが終了原因になります。
混同注意・比較表
敷金は貸主が代わると引き継がれ、借主が代わると引き継がれない
最初に確認するのは、交代したのが貸主か借主かです。同じ交代でも敷金が新しい当事者へ移るかどうかは正反対になり、精算する相手も変わります。
| 事由 | 貸主が交代した場合 | 借主が交代した場合 | 理由・判断ポイント |
|---|---|---|---|
| 敷金の承継最重要 | 新貸主に承継される | 新借主に承継されない | 結論が正反対なので、まず交代したのが貸す側か借りる側かを見分けます。 |
| 引き継がれる額・精算 | 旧貸主に対する未払賃料等を控除した残額が、新貸主に引き継がれる | 未払賃料等を控除した残額は旧借主に返還され、そこで精算が終わる | どちらも未払賃料等を先に差し引く点は共通で、違うのは残額の行き先です。 |
| そう扱う理由 | 承継されないと、オーナーが変わるたびに借主が敷金を差し入れ直すことになり負担が大きいため | 承継されると、旧借主が差し入れた敷金で新借主の未払賃料等が担保されてしまうため | 誰の債務を担保するための金なのかを考えると、結論を暗記せずに導けます。 |
| 前提となる条件 | 借主が先に引渡しや賃借権の登記という対抗要件を備えていること。備えていなければ賃貸借自体が引き継がれず、敷金も承継されない | 賃借権の譲渡について貸主の承諾があること。承諾を得た適法な譲渡でも敷金は移らない | 貸主交代でも、対抗要件がなければ新所有者は貸主にならず敷金も承継しません。 |
敷金の承継
最重要- 貸主が交代した場合
- 新貸主に承継される
- 借主が交代した場合
- 新借主に承継されない
判断ポイント
結論が正反対なので、まず交代したのが貸す側か借りる側かを見分けます。
引き継がれる額・精算
- 貸主が交代した場合
- 旧貸主に対する未払賃料等を控除した残額が、新貸主に引き継がれる
- 借主が交代した場合
- 未払賃料等を控除した残額は旧借主に返還され、そこで精算が終わる
判断ポイント
どちらも未払賃料等を先に差し引く点は共通で、違うのは残額の行き先です。
そう扱う理由
- 貸主が交代した場合
- 承継されないと、オーナーが変わるたびに借主が敷金を差し入れ直すことになり負担が大きいため
- 借主が交代した場合
- 承継されると、旧借主が差し入れた敷金で新借主の未払賃料等が担保されてしまうため
判断ポイント
誰の債務を担保するための金なのかを考えると、結論を暗記せずに導けます。
前提となる条件
- 貸主が交代した場合
- 借主が先に引渡しや賃借権の登記という対抗要件を備えていること。備えていなければ賃貸借自体が引き継がれず、敷金も承継されない
- 借主が交代した場合
- 賃借権の譲渡について貸主の承諾があること。承諾を得た適法な譲渡でも敷金は移らない
判断ポイント
貸主交代でも、対抗要件がなければ新所有者は貸主にならず敷金も承継しません。
01賃借人の死亡と相続の重要暗記項目
使用貸借と賃貸借の違い
使用貸借は無償で借主個人との人的関係に基づく契約であるため、借主の死亡によって当然に終了する(597条3項)。貸主が死亡しても終了しない。これに対し賃借権は財産権であり相続される。相続人が複数いる場合、賃借権は相続人全員に不可分に帰属し、賃料債務は不可分債務として各相続人が全額の支払義務を負うと解されている。使用貸借には借地借家法の適用がない。
覚え方ただで借りたら死んだら終わり、お金を払って借りたら相続される
ひっかけ注意使用貸借が「貸主」の死亡で終了するとする誤り、賃借権が相続されないとする誤りが狙われる。
賃借人の死亡と居住の承継
居住の用に供する建物の賃借人が相続人なしに死亡した場合、婚姻又は縁組の届出をしていないが事実上夫婦又は養親子と同様の関係にあった同居者は、賃借人の権利義務を承継する(借地借家法36条1項)。ただし相続人なしに死亡したことを知った後1か月以内に賃貸人へ反対の意思を表示すれば承継しない。承継した者は敷金に関する権利義務も引き継ぐ(同条2項)。事業用建物には適用がない。
覚え方相続人ゼロと居住用と内縁の同居者で承継、いやなら一か月以内に反対の意思表示
ひっかけ注意事業用建物にも適用されるとする誤り、反対の意思表示の期間を3か月とする誤りが狙われる。
賃借権の相続と賃料債務
賃借人が死亡すると賃借権は相続人に承継され、相続人が複数のときは賃借権を準共有する。判例は、一個の建物の使用収益の対価である賃料債務を性質上の不可分債務とし、賃貸人は各相続人に対して賃料全額を請求できるとする。契約の解除や解約申入れは相続人全員に対して行う必要があるため、実務では戸籍で相続人を確定し、代表者を定めて連絡窓口とする取扱いが行われる。
覚え方賃借権は準共有、賃料は一人ひとりが全額
ひっかけ注意「相続分に応じて分割される」は誤り。当然分割される賃料債権(受け取る側)と、不可分の賃料債務(支払う側)を混同させる。
相続人がいる場合の内縁配偶者
相続人がいる場合には借地借家法36条は適用されず、賃借権は相続人に承継される。同居していた内縁配偶者は相続人が承継した賃借権を援用して居住を継続でき、賃貸人からの明渡請求は権利の濫用として認められないとするのが判例である。相続人からの明渡請求も権利の濫用となりうる。なお賃借人の死亡により個人根保証の元本が確定するため、以後発生する賃料は保証の対象外となる。
覚え方相続人がいれば三十六条は使えない、内縁は相続人の賃借権を援用して住み続ける
ひっかけ注意相続人の有無を無視して36条を適用させる出題が定番。内縁配偶者が保護されないわけではない点が違いである。
相続人が明らかでない場合の対応
相続人のあることが明らかでないとき、相続財産は法人となり、家庭裁判所は利害関係人または検察官の請求により相続財産の清算人を選任する(民法951条・952条)。未払賃料や明渡しについて利害関係を有する賃貸人は申立権者にあたる。選任後は清算人を相手方として、解除の意思表示、残置物の引取り、明渡しの協議を進める。相続人が全員相続放棄をした場合も、同様に清算人の選任が必要となる。
覚え方相続人が見つからなければ、家裁に清算人を頼む
ひっかけ注意貸主が室内の動産を勝手に処分するのが最大の誤り。相続人が不明であっても自力救済は許されない。
02試験で正誤を分けるチェック順
- 1相続人がいる場合、賃借権を含む賃借人の権利義務は相続の対象となる
問題文の限定語を先に拾い、上の暗記項目と照合してから結論を出します。
- 2相続人がいない居住用建物では、事実上の配偶者・養親子と同様の同居者の承継要件を確認する
問題文の限定語を先に拾い、上の暗記項目と照合してから結論を出します。
- 3その同居者は死亡を知った後1か月以内に賃貸人へ反対意思を表示すれば承継しない
問題文の限定語を先に拾い、上の暗記項目と照合してから結論を出します。
03この論点の根拠
- 内容の基準日
- 2026-04-01
- 復習方法
- 要点を確認した後、○×一問一答で条件の違いを見分ける
法改正により扱いが変わる場合があります。試験日程や申込みに関する情報は、 必ず公式案内も確認してください。
問題演習
賃借人の死亡と相続の○×一問一答
1/5問解答 0・正解 0
管理実務重要度 A
賃借権の相続と賃料債務
賃借人が死亡して相続人が複数いる場合、各相続人は、その相続分に応じた割合の賃料についてのみ賃貸人に対して支払義務を負う。
賃借人の死亡と相続の○×一問一答5問|問題と解説
この論点で収録している5問を、正誤と解説つきで通して読めます。 上の演習で迷った問題を見直すときに使ってください。
問1
賃借権の相続と賃料債務重要度A賃借人が死亡して相続人が複数いる場合、各相続人は、その相続分に応じた割合の賃料についてのみ賃貸人に対して支払義務を負う。
答え:×(誤り)
解説
誤り。賃料債務は性質上不可分であり、各相続人が賃料全額の支払義務を負う。
問2
賃借人の死亡と居住の承継重要度A居住の用に供する建物の賃借人が相続人なしに死亡した場合、婚姻の届出をしていないが事実上夫婦と同様の関係にあった同居者は、賃借人の権利義務を承継する。
答え:○(正しい)
解説
正しい。借地借家法36条1項の居住用建物の賃貸借の承継であり、内縁配偶者や事実上の養親子が対象となる。
問3
使用貸借と賃貸借の違い重要度A建物の使用貸借は借主の死亡によって終了するが、建物の賃貸借は賃借人が死亡しても終了せず、賃借権は相続人に承継される。
答え:○(正しい)
解説
正しい。使用貸借は借主の死亡で終了するが(民法597条3項)、賃借権は財産権として相続の対象となる。
問4
相続人が明らかでない場合の対応重要度B賃借人が死亡し、その相続人のあることが明らかでないときは、賃貸人は利害関係人として、家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立てることができる。
答え:○(正しい)
解説
正しい。賃貸人は利害関係人にあたり、相続財産清算人の選任を家庭裁判所に申し立てられる。
問5
相続人がいる場合の内縁配偶者重要度B借地借家法36条による居住用建物の賃貸借の承継は、賃借人に相続人がいる場合であっても、内縁の配偶者が同居していれば適用される。
答え:×(誤り)
解説
誤り。借地借家法36条は賃借人が相続人なしに死亡した場合に限られ、相続人がいる場合には適用されない。
賃借人の死亡と相続の問題を続けて解く
この論点に対応する5問を絞り込んで出題します。