本試験問題(2023年実施)
令和5年度行政書士試験の過去問48問
収録している48問を、1問ずつ答え合わせしながら進みます。間違えた問題は 関連論点の要点整理へ直行でき、解答はこの端末に自動保存されます。
- 48問
- 収録数
- 60問・300点満点(択一式・多肢選択式・記述式)
- 本試験
未収録の問題:問1・6・56・58〜60は、試験実施機関が著作権の関係で公表していないため収録していません。
問2基礎法学
解答 0/48・正解 0
法人等に関する次のア〜オの記述のうち、妥当なものの組合せはどれか。 【ア】いわゆる「権利能力なき社団」は、実質的には社団法人と同様の実態を有するが、法人格がないため、訴訟上の当事者能力は認められていない。 【イ】法人は、営利法人と非営利法人に大別されるが、合名会社やそれと実質的に同様の実態を有する行政書士法人、弁護士法人および司法書士法人は非営利法人である。 【ウ】一般社団法人および一般財団法人は、いずれも非営利法人であることから、一切の収益事業を行うことはできない。 【エ】公益社団法人および公益財団法人とは、一般社団法人および一般財団法人のうち、学術、技芸、慈善その他の法令で定められた公益に関する種類の事業であって、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与する事業を行うことを主たる目的とし、行政庁(内閣総理大臣または都道府県知事)から公益認定を受けた法人をいう。 【オ】特定非営利活動法人(いわゆる「NPO法人」)とは、不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与することを目的とする保健、医療または福祉の増進その他の法令で定められた特定の活動を行うことを主たる目的とし、所轄庁(都道府県の知事または指定都市の長)の認証を受けて設立された法人をいう。
令和5年度の全48問|問題文・正解・解説
収録している48問を、正解と解説つきで通して読めます。上の演習で 間違えた問題を見直すときや、特定の論点がどう問われたかを確かめたいときに使ってください。 正解番号は行政書士試験研究センターの公表資料に基づきます。
問2
基礎法学法人等に関する次のア〜オの記述のうち、妥当なものの組合せはどれか。 【ア】いわゆる「権利能力なき社団」は、実質的には社団法人と同様の実態を有するが、法人格がないため、訴訟上の当事者能力は認められていない。 【イ】法人は、営利法人と非営利法人に大別されるが、合名会社やそれと実質的に同様の実態を有する行政書士法人、弁護士法人および司法書士法人は非営利法人である。 【ウ】一般社団法人および一般財団法人は、いずれも非営利法人であることから、一切の収益事業を行うことはできない。 【エ】公益社団法人および公益財団法人とは、一般社団法人および一般財団法人のうち、学術、技芸、慈善その他の法令で定められた公益に関する種類の事業であって、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与する事業を行うことを主たる目的とし、行政庁(内閣総理大臣または都道府県知事)から公益認定を受けた法人をいう。 【オ】特定非営利活動法人(いわゆる「NPO法人」)とは、不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与することを目的とする保健、医療または福祉の増進その他の法令で定められた特定の活動を行うことを主たる目的とし、所轄庁(都道府県の知事または指定都市の長)の認証を受けて設立された法人をいう。
- 1ア・ウ
- 2ア・エ
- 3イ・ウ
- 4イ・オ
- 5エ・オ
正解:5
解説
正解は肢5です。エは公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律2条・4条のとおりで、一般社団・財団法人のうち公益目的事業を主たる目的とし行政庁の公益認定を受けたものをいいます。オも特定非営利活動促進法2条2項・10条のとおりです。アは権利能力なき社団にも民事訴訟法29条により当事者能力が認められる(最判昭和39年10月15日)ため誤り、イは合名会社が営利法人であり行政書士法人(行政書士法13条の3)等も社員への利益分配が予定されるため誤り、ウは一般社団・財団法人も収益事業を行えるため誤りです。
問3
憲法基本的人権の間接的、付随的な制約についての最高裁判所の判決に関する次のア〜エの記述のうち、妥当なものの組合せはどれか。 【ア】選挙における戸別訪問の禁止が、意見表明そのものの制約ではなく、意見表明の手段方法のもたらす弊害の防止をねらいとして行われる場合、それは戸別訪問以外の手段方法による意見表明の自由を制約するものではなく、単に手段方法の禁止に伴う限度での間接的、付随的な制約にすぎない。 【イ】芸術的価値のある文学作品について、そこに含まれる性描写が通常人の性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反することを理由に、その頒布が処罰される場合、そこでの芸術的表現の自由への制約は、わいせつ物の規制に伴う間接的、付随的な制約にすぎない。 【ウ】裁判官が「積極的に政治運動をすること」の禁止が、意見表明そのものの制約ではなく、その行動のもたらす弊害の防止をねらいとして行われる場合、そこでの意見表明の自由の制約は、単に行動の禁止に伴う限度での間接的、付随的な制約にすぎない。 【エ】刑事施設の被収容者に対する新聞閲読の自由の制限が、被収容者の知ることのできる思想内容そのものの制約ではなく、施設内の規律・秩序の維持をねらいとして行われる場合、そこでの制約は、施設管理上必要な措置に伴う間接的、付随的な制約にすぎない。
- 1ア・イ
- 2ア・ウ
- 3ア・エ
- 4イ・ウ
- 5イ・エ
正解:2
解説
正解は肢2です。アは戸別訪問の禁止を合憲とした最判昭和56年6月15日、ウは裁判官が積極的に政治運動をすることの禁止を合憲とした最大決平成10年12月1日(寺西判事補事件)の説示で、いずれも意見表明そのものではなく手段方法や行動の規制に伴う間接的・付随的な制約にすぎないとしました。イはわいせつ文書の規制に関する最大判昭和44年10月15日(悪徳の栄え事件)がそのような構成を採っておらず、エはよど号ハイジャック新聞記事抹消事件(最大判昭和58年6月22日)が障害発生の相当の蓋然性を要求する枠組みによっており、いずれも妥当ではありません。
問4
憲法国務請求権に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- 1憲法は何人に対しても平穏に請願する権利を保障しているので、請願を受けた機関はそれを誠実に処理せねばならず、請願の内容を審理および判定する法的義務が課される。
- 2立法行為は、法律の適用段階でその違憲性を争い得る以上、国家賠償の対象とならないが、そのような訴訟上の手段がない立法不作為についてのみ、例外的に国家賠償が認められるとするのが判例である。
- 3憲法が保障する裁判を受ける権利は、刑事事件においては裁判所の裁判によらなければ刑罰を科せられないことを意味しており、この点では自由権的な側面を有している。
- 4憲法は、抑留または拘禁された後に「無罪の裁判」を受けたときは法律の定めるところにより国にその補償を求めることができると規定するが、少年事件における不処分決定もまた、「無罪の裁判」に当たるとするのが判例である。
- 5憲法は、裁判は公開の法廷における対審および判決によってなされると定めているが、訴訟の非訟化の趨勢をふまえれば、純然たる訴訟事件であっても公開の法廷における対審および判決によらない柔軟な処理が許されるとするのが判例である。
正解:3
解説
正解は肢3です。憲法32条の裁判を受ける権利は、刑事事件では31条・37条1項と結びつき、裁判所の裁判によらなければ刑罰を科されないという自由権的側面をもちます。肢1は請願法5条が誠実な処理を求めるにとどまり審理・判定の法的義務まで課していないため誤り、肢2は在宅投票制度廃止事件(最判昭和60年11月21日)が立法行為一般を国家賠償の対象から除いていないため誤り、肢4は少年審判の不処分決定が憲法40条の「無罪の裁判」に当たらないとした最判平成3年3月29日に反し、肢5は純然たる訴訟事件には公開の対審・判決を要するとした最大決昭和35年7月6日に反するため誤りです。
問5
憲法罷免・解職に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- 1衆議院比例代表選出議員または参議院比例代表選出議員について、名簿を届け出た政党から、除名、離党その他の事由により当該議員が政党に所属する者でなくなった旨の届出がなされた場合、当該議員は当選を失う。
- 2議員の資格争訟の裁判は、国権の最高機関である国会に認められた権能であるから、両院から選出された国会議員による裁判の結果、いずれかの議院の議員が議席を失った場合には、議席喪失の当否について司法審査は及ばない。
- 3閣議による内閣の意思決定は、慣例上全員一致によるものとされてきたので、これを前提にすれば、衆議院の解散の決定にあたり反対する大臣がいるような場合には、当該大臣を罷免して内閣としての意思決定を行うことになる。
- 4最高裁判所の裁判官は、任命後初めて行われる衆議院議員総選挙の際に国民の審査に付されるが、その後、最高裁判所の長官に任命された場合は、任命後最初の衆議院議員総選挙の際に、長官として改めて国民の審査に付される。
- 5裁判官は、公の弾劾によらなければ罷免されず、また、著しい非行があった裁判官を懲戒免職するためには、最高裁判所裁判官会議の全員一致の議決が必要である。
正解:3
解説
正解は肢3です。閣議は慣行上全員一致によるため、内閣の意思決定に反対する国務大臣がいる場合、内閣総理大臣は憲法68条2項により当該大臣を罷免したうえで決定を行うことになります。肢1は公職選挙法99条の2が議席を失う場合を他の名簿届出政党等への所属に限り除名・離党を含めていないため誤り、肢2は憲法55条が資格争訟の裁判を各議院の権能としているため誤り、肢4は憲法79条2項の国民審査が任命後初の総選挙とその後10年経過ごとであり長官就任を機に改めて行われないため誤り、肢5は、憲法78条後段が定めるのは行政機関による懲戒処分の禁止であって懲戒の種類は定めておらず、懲戒が戒告または1万円以下の過料に限られ懲戒免職が存在しないことの根拠は裁判官分限法2条であるため誤りです。
問7
憲法財政に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- 1国会が議決した予算の公布は、法律、政令、条約などの公布と同様に、憲法上、天皇の国事行為とされている。
- 2国会による予算の修正をめぐっては、内閣の予算提出権を侵すので予算を増額する修正は許されないとする見解もあるが、現行法には、予算の増額修正を予想した規定が置かれている。
- 3予算が成立したにもかかわらず、予算が予定する支出の根拠となる法律が制定されていないような場合、法律が可決されるまでの間、内閣は暫定的に予算を執行することができる。
- 4皇室の費用はすべて、予算に計上して国会の議決を経なければならないが、皇室が財産を譲り受けたり、賜与したりするような場合には、国会の議決に基く必要はない。
- 5国の収入支出の決算は、内閣が、毎年そのすべてについて国会の承認の議決を得たうえで、会計検査院に提出し、その審査を受けなければならない。
正解:2
解説
正解は肢2です。予算の増額修正の可否には争いがありますが、国会法57条の3は予算の修正について内閣に意見を述べる機会を与える旨を定めており、増額修正を予想した規定が現行法に存在します。肢1は憲法7条1号の公布の対象が憲法改正・法律・政令・条約であり予算を含まないため誤り、肢3は法律の根拠なく支出はできないため誤り、肢4は憲法8条が皇室の財産の授受にも国会の議決を要求するため誤り、肢5は憲法90条1項が決算をまず会計検査院の検査に付し内閣が検査報告とともに国会へ提出するとしており順序が逆であるため誤りです。
問8
行政法行政行為の瑕疵に関する次のア〜オの記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。 【ア】ある行政行為が違法である場合、仮にそれが別の行政行為として法の要件を満たしていたとしても、これを後者の行為として扱うことは、新たな行政行為を行うに等しいから当然に許されない。 【イ】普通地方公共団体の長に対する解職請求を可とする投票結果が無効とされたとしても、前任の長の解職が有効であることを前提として、当該解職が無効とされるまでの間になされた後任の長の行政処分は、当然に無効となるものではない。 【ウ】複数の行政行為が段階的な決定として行われる場合、先行行為が違法であるとして、後行行為の取消訴訟において先行行為の当該違法を理由に取消しの請求を認めることは、先行行為に対する取消訴訟の出訴期間の趣旨を没却することになるので許されることはない。 【エ】行政行為の瑕疵を理由とする取消しのうち、取消訴訟や行政上の不服申立てによる争訟取消しの場合は、当該行政行為は行為時当初に遡って効力を失うが、職権取消しの場合は、遡って効力を失うことはない。 【オ】更正処分における理由の提示(理由附記)に不備の違法があり、審査請求を行った後、これに対する裁決において処分の具体的根拠が明らかにされたとしても、理由の提示にかかる当該不備の瑕疵は治癒されない。
- 1ア・イ
- 2ア・エ
- 3イ・オ
- 4ウ・エ
- 5ウ・オ
正解:3
解説
正解は肢3です。イは、解職請求の投票が無効とされても、それまでに後任の長がした行政処分は当然には無効とならないとした最大判昭和35年12月7日の趣旨に沿います。オは更正処分の理由附記の不備が審査裁決で具体的根拠が明示されても治癒されないとした最判昭和47年12月5日のとおりです。アは違法行為の転換が判例上認められる場合がある(最大判昭和29年7月19日)ため、ウは違法性の承継を認めた最判平成21年12月17日があるため、エは職権取消しも原則として遡及効を有するため、いずれも妥当ではありません。
問9
行政法行政上の法律関係に関する次のア〜エの記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。 【ア】社会保障給付における行政主体と私人との間の関係は、対等なものであり、公権力の行使が介在する余地はないから、処分によって規律されることはなく、もっぱら契約によるものとされている。 【イ】未決勾留による拘禁関係は、勾留の裁判に基づき被勾留者の意思にかかわらず形成され、法令等の規定により規律されるものであるから、国は、拘置所に収容された被勾留者に対して信義則上の安全配慮義務を負わない。 【ウ】食品衛生法の規定により必要とされる営業の許可を得ることなく食品の販売を行った場合、食品衛生法は取締法規であるため、当該販売にかかる売買契約が当然に無効となるわけではない。 【エ】法の一般原則である信義誠実の原則は、私人間における民事上の法律関係を規律する原理であるから、租税法律主義の原則が貫かれる租税法律関係には適用される余地はない。
- 1ア・イ
- 2ア・エ
- 3イ・ウ
- 4イ・エ
- 5ウ・エ
正解:3
解説
正解は肢3です。イは未決勾留による拘禁関係について国が信義則上の安全配慮義務を負わないとした最判平成28年4月21日、ウは食品衛生法違反の無許可販売であっても売買契約が当然に無効となるものではないとした最判昭和35年3月18日の判示どおりです。アは生活保護の開始決定や変更決定が行政処分として行われるなど、社会保障給付にも公権力の行使が介在するため妥当ではなく、エは租税法律関係にも信義則の適用の余地があることを認めた最判昭和62年10月30日に反するため妥当ではありません。
問10
行政法在留期間更新の許可申請に対する処分に関する次のア〜オの記述のうち、最高裁判所の判例(マクリーン事件判決〔最大判昭和53年10月4日民集32巻7号1223頁〕)に照らし、妥当なものの組合せはどれか。 【ア】在留期間更新の判断にあたっては、在留規制の目的である国内の治安と善良の風俗の維持など国益の保持の見地のほか、申請者である外国人の在留中の一切の行状を斟酌することはできるが、それ以上に国内の政治・経済・社会等の諸事情を考慮することは、申請者の主観的事情に関わらない事項を過大に考慮するものであって、他事考慮にも当たり許されない。 【イ】在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由の有無にかかる裁量審査においては、当該判断が全く事実の基礎を欠く場合、または事実に対する評価が明白に合理性を欠くこと等により当該判断が社会通念に照らし、著しく妥当性を欠くことが明らかである場合に限り、裁量権の逸脱、濫用として違法とされる。 【ウ】在留期間更新の法定要件である「在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由」があるかどうかに関する判断について、処分行政庁(法務大臣)には裁量が認められるが、もとよりその濫用は許されず、上陸拒否事由または退去強制事由に準ずる事由に該当しない限り更新申請を不許可にすることはできない。 【エ】外国人の在留期間中の政治活動について、そのなかに日本国の出入国管理政策や基本的な外交政策を非難するものが含まれていた場合、処分行政庁(法務大臣)がそのような活動を斟酌して在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるものとはいえないと判断したとしても、裁量権の逸脱、濫用には当たらない。 【オ】外国人の政治活動は必然的に日本国の政治的意思決定またはその実施に影響を及ぼすものであるから、そもそも政治活動の自由に関する憲法の保障は外国人には及ばず、在留期間中に政治活動を行ったことについて、在留期間の更新の際に消極的事情として考慮することも許される。
- 1ア・イ
- 2ア・オ
- 3イ・エ
- 4ウ・エ
- 5ウ・オ
正解:3
解説
正解は肢3です。マクリーン事件判決(最大判昭和53年10月4日)は、在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由の有無について法務大臣に広範な裁量を認め、その判断が全く事実の基礎を欠くか社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかな場合に限り違法となるとしました(イ)。また外国人の在留中の政治活動を消極的事情として斟酌しても裁量権の逸脱・濫用に当たらないとしています(エ)。アは在留中の一切の行状のほか国内外の諸事情の考慮も許される点、ウは上陸拒否事由等に準ずる事由への限定がない点、オは外国人にも政治活動の自由の保障が及ぶとした点に反します。
問11
行政法行政手続法(以下「法」という。)の規定に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- 1法の規定において用いられる「法令」とは、法律及び法律に基づく命令のみを意味し、条例及び地方公共団体の執行機関の規則はそこに含まれない。
- 2特定の者を名あて人として直接にその権利を制限する処分であっても、名あて人となるべき者の同意の下にすることとされている処分は、法にいう不利益処分とはされない。
- 3法の規定が適用される行政指導には、特定の者に一定の作為または不作為を求めるものに限らず、不特定の者に対して一般的に行われる情報提供も含まれる。
- 4行政指導に携わる者が、その相手方に対して、当該行政指導の趣旨及び内容並びに責任者を明確に示さなければならないのは、法令に違反する行為の是正を求める行政指導をする場合に限られる。
- 5行政機関が、あらかじめ、事案に応じ、行政指導指針を定め、かつ行政上特別の支障がない限りこれを公表しなければならないのは、根拠となる規定が法律に置かれている行政指導をしようとする場合に限られる。
正解:2
解説
正解は肢2です。行政手続法2条4号ハは、名あて人となるべき者の同意の下にすることとされている処分を不利益処分から除外しています。肢1は同条1号が「法令」に条例及び地方公共団体の執行機関の規則を含めているため誤り、肢3は同条6号の行政指導が特定の者に一定の作為または不作為を求めるものに限られるため誤り、肢4は35条1項が行政指導一般について趣旨・内容・責任者の明示を求めているため誤り、肢5は36条が同一の行政目的で複数の者に行政指導をしようとする場合一般に行政指導指針の策定と公表を義務づけているため誤りです。
問12
行政法行政手続法の定める聴聞に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1聴聞の当事者または参加人は、聴聞の終結後であっても、聴聞の審理の経過を記載した調書の閲覧を求めることができる。
- 2聴聞の当事者および参加人は、聴聞が終結するまでは、行政庁に対し、当該事案についてした調査の結果に係る調書その他の当該不利益処分の原因となる事実を証する資料の閲覧を求めることができる。
- 3当事者または参加人は、聴聞の期日に出頭して、意見を述べ、証拠書類等を提出し、主宰者の許可を得て行政庁の職員に対し質問を発することができる。
- 4当事者または参加人は、聴聞の期日への出頭に代えて、主宰者に対し、聴聞の期日までに陳述書および証拠書類等を提出することができる。
- 5当事者または参加人が正当な理由なく聴聞の期日に出頭せず、陳述書等を提出しない場合、主宰者は、当事者に対し改めて意見を述べ、証拠書類等を提出する機会を与えなければならない。
正解:5
解説
正解は肢5です。行政手続法23条1項は、当事者が正当な理由なく聴聞の期日に出頭せず陳述書等も提出しない場合、主宰者は改めて意見を述べ証拠書類等を提出する機会を与えることなく聴聞を終結することができると定めており、機会を与える義務はありません。肢1は24条4項が調書及び報告書の閲覧請求を認めており聴聞終結後も求められる点、肢2は18条1項、肢3は20条2項、肢4は21条1項の定めどおりで、いずれも正しい記述です。
問13
行政法行政手続法が定める行政庁等の義務に関する次のア〜エの記述のうち、努力義務として規定されているものの組合せとして、正しいものはどれか。 【ア】申請者以外の利害を考慮すべきことが法令において許可の要件とされている場合に、公聴会を開催すること 【イ】申請に対する処分を行う場合の審査基準を定めて公にしておくこと 【ウ】不利益処分を行う場合の処分基準を定めて公にしておくこと 【エ】申請に対する処分の標準処理期間を定めた場合に、それを公にしておくこと
- 1ア・ウ
- 2ア・エ
- 3イ・ウ
- 4イ・エ
- 5ウ・エ
正解:1
解説
正解は肢1です。アの公聴会の開催等は行政手続法10条が「意見を聴く機会を設けるよう努めなければならない」とする努力義務、ウの処分基準は12条1項が「定め、かつ、これを公にしておくよう努めなければならない」とする努力義務です。これに対しイの審査基準は5条1項が「定めるものとする」、同条3項が「公にしておかなければならない」として法的義務とし、エの標準処理期間も6条が定めること自体は努力義務としつつ、定めたときは公にしておくことを義務づけています。
問14
行政法不作為についての審査請求に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- 1不作為についての審査請求は、当該処分についての申請をした者だけではなく、当該処分がなされることにつき法律上の利益を有する者もすることができる。
- 2不作為についての審査請求について理由があり、申請に対して一定の処分をすべきものと認められる場合、審査庁が不作為庁の上級行政庁であるときは、審査庁は、当該不作為庁に対し当該処分をすべき旨を命じる。
- 3不作為についての審査請求は、審査請求が濫用されることを防ぐために、申請がなされた日から法定された一定の期間を経過しなければすることができない。
- 4不作為についての審査請求がなされた場合、審査庁は、必要があると認める場合には、審査請求人の申立てによりまたは職権で、裁決が下されるまでの仮の救済として一定の処分をすることができる。
- 5不作為についての審査請求の審理に際しては、迅速な救済を図るために、審査庁は、審理員を指名して審理手続を行わせるのではなく、審理手続を省いて裁決を下さなければならない。
正解:2
解説
正解は肢2です。行政不服審査法49条3項1号は、不作為についての審査請求に理由があり一定の処分をすべきものと認められる場合、不作為庁の上級行政庁である審査庁は当該不作為庁に対し当該処分をすべき旨を命ずると定めます。肢1は3条が申請をした者に限っているため誤り、肢3は3条が相当の期間の経過を要件とするにとどまり法定期間を置いていないため誤り、肢4は同法に仮の義務付けに相当する制度がないため誤り、肢5は9条1項により不作為についての審査請求でも審理員が指名されるため誤りです。
問15
行政法行政不服審査法が定める審査請求の裁決に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- 1審査庁が不利益処分を取り消す裁決をした場合、処分庁は、当該裁決の趣旨に従い当該不利益処分を取り消さなければならない。
- 2不利益処分につき、その根拠となった事実がないとしてこれを取り消す裁決を受けた処分庁は、事実を再調査した上で、同一の事実を根拠として同一の不利益処分を再び行うことができる。
- 3事実上の行為についての審査請求に理由がある場合には、処分庁である審査庁は、当該事実上の行為が違法又は不当である旨を裁決で宣言し、当該事実上の行為を撤廃又は変更する。
- 4審査庁は、処分庁の上級行政庁または処分庁でなくとも、審査請求に対する認容裁決によって処分を変更することができるが、審査請求人の不利益に処分を変更することは許されない。
- 5審査庁が処分庁である場合、許認可の申請に対する拒否処分を取り消す裁決は、当該申請に対する許認可処分とみなされる。
正解:3
解説
正解は肢3です。行政不服審査法47条2号は、事実上の行為についての審査請求に理由がある場合、処分庁である審査庁は違法または不当である旨を裁決で宣言するとともに、当該事実上の行為の全部または一部を撤廃し、または変更すると定めます。肢1は46条1項により審査庁自らが取り消すため誤り、肢2は52条1項の裁決の拘束力に反するため誤り、肢4は46条1項ただし書が上級行政庁でも処分庁でもない審査庁による変更を認めていないため誤り、肢5は46条2項2号が処分庁である審査庁は当該処分をするとしているため誤りです。
問16
行政法行政不服審査法が定める審査請求の手続に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1審査請求をすべき行政庁が処分庁と異なる場合、審査請求人は処分庁を経由して審査請求を行うこともできる。
- 2審査請求は書面により行わなければならないが、行政不服審査法以外の法律や条例に口頭ですることができる旨の規定のある場合には、審査請求人は審査請求を口頭で行うことができる。
- 3審査請求人は、裁決があるまでは、いつでも審査請求の取下げをすることができ、取下げの理由に特に制限は設けられていない。
- 4審査請求を受けた審査庁は、審査請求書に形式上の不備がある場合でも審理員を指名し、審理手続を開始しなければならず、直ちに審査請求を却下することはできない。
- 5審査請求人から申立てがあった場合には、審理員は原則として口頭意見陳述の機会を与えなければならず、口頭意見陳述には参加人だけでなく、審理員の許可を得て補佐人も参加することができる。
正解:4
解説
正解は肢4です。行政不服審査法23条により補正を命じられた審査請求人が期間内に補正をしないときは、24条1項により審査庁は審理手続を経ないで却下裁決をすることができ、審査請求が不適法であって補正することができないことが明らかなときも同条2項により同様です。肢1は21条1項の処分庁等を経由する審査請求、肢2は19条1項、肢3は27条1項、肢5は31条1項・3項の定めどおりで、いずれも正しい記述です。
問17
行政法以下の事案に関する次のア〜エの記述のうち、妥当なものの組合せはどれか。 Xは、A川の河川敷の自己の所有地に小屋(以下「本件小屋」という。)を建設して所有している。A川の河川管理者であるB県知事は、河川管理上の支障があるとして、河川法に基づきXに対して本件小屋の除却を命ずる処分(以下「本件処分」という。)をした。しかし、Xは撤去の必要はないとして本件処分を無視していたところ、Xが本件処分の通知書を受け取ってから約8か月が経過した時点で、同知事は、本件小屋の除却のための代執行を行うため、Xに対し、行政代執行法に基づく戒告および通知(以下「本件戒告等」という。)を行った。そこでXは、代執行を阻止するために抗告訴訟を提起することを考えている。 【ア】本件戒告等には処分性が認められることから、Xは、本件処分の無効確認訴訟を提起するだけでなく、本件戒告等の取消訴訟をも提起できる。 【イ】本件戒告等の取消訴訟において、Xは、本件戒告等の違法性だけでなく、本件処分の違法性も主張できる。 【ウ】Xが本件処分の通知書を受け取ってから1年が経過していないことから、Xが本件処分の取消訴訟を提起しても、出訴期間の徒過を理由として却下されることはない。 【エ】Xが本件戒告等の取消訴訟を提起したとしても、代執行手続が完了した後には、本件戒告等の効果が消滅したことから、当該訴訟は訴えの利益の欠如を理由に不適法として却下される。
- 1ア・イ
- 2ア・エ
- 3イ・ウ
- 4イ・エ
- 5ウ・エ
正解:2
解説
正解は肢2です。行政代執行法3条1項の戒告および同条2項の代執行令書による通知にはいずれも処分性が認められるため、Xはその取消訴訟を提起できます(ア)。もっとも代執行手続が完了すれば戒告等の効果は消滅し、訴えの利益を欠くとして却下されます(エ)。イは除却命令と代執行手続とで目的を異にし違法性の承継が認められないため、ウは行政事件訴訟法14条1項が処分を知った日から6か月としており通知書の受領から8か月が経過している以上出訴期間を徒過しているため、いずれも妥当ではありません。
問18
行政法行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)の準用規定に関する次の会話の下線部(ア)〜(ウ)について、その正誤を判定した組合せとして、正しいものはどれか。 学生A: 今日は行訴法の準用に関する規定について学ぼう。 学生B: 準用については主として行訴法38条に定められているけど、他の条文でも定められているよね。まずは出訴期間について定める行訴法14条から。 学生A: 行訴法14条については、(ア)無効等確認訴訟にも、その他の抗告訴訟にも準用されていない。訴訟の性質を考えれば当然のことだよ。 学生B: よし、それでは、執行停止について定める行訴法25条はどうだろう。 学生A: 行訴法25条は(イ)義務付け訴訟や差止訴訟には準用されていない。でも、当事者訴訟には準用されているのが特徴だね。 学生B: なるほど、当事者訴訟にも仮の救済が用意されているんだね。最後に、第三者効について定める行訴法32条はどうだろう。 学生A: 「処分又は裁決を取り消す判決は、第三者に対しても効力を有する」という規定だね。(ウ)これは義務付け訴訟にも差止訴訟にも準用されている。義務付け判決や差止め判決の実効性を確保するために必要だからね。
- 1ア=正しい イ=誤り ウ=正しい
- 2ア=正しい イ=誤り ウ=誤り
- 3ア=誤り イ=正しい ウ=誤り
- 4ア=誤り イ=誤り ウ=正しい
- 5ア=誤り イ=誤り ウ=誤り
正解:2
解説
正解は肢2です。アについて、出訴期間を定める行政事件訴訟法14条は38条の準用対象に含まれておらず、無効等確認訴訟その他の抗告訴訟に準用されていないため正しい記述です。イについて、25条の執行停止は38条3項により無効等確認訴訟に準用されますが、当事者訴訟について準用されるのは41条1項が挙げる23条・24条・33条1項・35条にとどまり25条は含まれないため誤りです。ウについて、第三者効を定める32条1項は義務付け訴訟にも差止訴訟にも準用されていない(38条3項が準用するのは32条2項のみ)ため誤りです。
問19
行政法行政事件訴訟法が定める抗告訴訟の対象に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。
- 1登録免許税を過大に納付して登記を受けた者が登録免許税法に基づいてした登記機関から税務署長に還付通知をすべき旨の請求に対し、登記機関のする拒否通知は、当該請求者の権利に直接影響を及ぼす法的効果を有さないため、抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらない。
- 2行政庁が建築基準法に基づいて、いわゆるみなし道路を告示により一括して指定する行為は、特定の土地について個別具体的な指定をしたものではなく、一般的基準の定立を目的としたものにすぎず、告示による建築制限等の制限の発生を認めることができないので、抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらない。
- 3労災就学援護費に関する制度の仕組みに鑑みると、被災労働者またはその遺族は、労働基準監督署長の支給決定によって初めて具体的な労災就学援護費の支給請求権を取得するため、労働基準監督署長が行う労災就学援護費の支給または不支給の決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。
- 4市町村長が住民基本台帳法に基づき住民票に続柄を記載する行為は、公の権威をもって住民の身分関係を証明し、それに公の証明力を与える公証行為であるから、それ自体によって新たに国民の権利義務を形成し、又はその範囲を確定する法的効果を有するため、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。
- 5都市計画法の規定に基づく用途地域指定の決定が告示された場合、その効力が生ずると、当該地域内においては、建築物の用途、容積率、建ぺい率等につき従前と異なる基準が適用され、これらの基準に適合しない建築物については建築確認を受けることができなくなる効果が生じるので、用途地域指定の決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。
正解:3
解説
正解は肢3です。最判平成15年9月4日は、被災労働者等は労働基準監督署長の支給決定によって初めて具体的な労災就学援護費の支給請求権を取得するという制度の仕組みに照らし、その支給・不支給決定の処分性を認めました。肢1は還付通知をすべき旨の請求に対する拒否通知の処分性を認めた最判平成17年4月14日、肢2は建築基準法42条2項のみなし道路の一括指定告示の処分性を認めた最判平成14年1月17日、肢4は住民票の続柄記載行為の処分性を否定した最判平成11年1月21日、肢5は用途地域指定の処分性を否定した最判昭和57年4月22日(第一小法廷)に、それぞれ反するため誤りです。
問20
行政法道路をめぐる国家賠償に関する最高裁判所の判決について説明する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- 1落石事故の発生した道路に防護柵を設置する場合に、その費用の額が相当の多額にのぼり、県としてその予算措置に困却するであろうことが推察できる場合には、そのことを理由として、道路管理者は、道路の管理の瑕疵によって生じた損害に対する賠償責任を免れ得るものと解するのが相当である。
- 2事故発生当時、道路管理者が設置した工事標識板、バリケードおよび赤色灯標柱が道路上に倒れたまま放置されていたことは、道路の安全性に欠如があったといわざるをえず、それが夜間の事故発生直前に生じたものであり、道路管理者において時間的に遅滞なくこれを原状に復し道路を安全良好な状態に保つことが困難であったとしても、道路管理には瑕疵があったと認めるのが相当である。
- 3防護柵は、道路を通行する人や車が誤って転落するのを防止するために設置されるものであり、材質、高さその他その構造に徴し、通常の通行時における転落防止の目的からみればその安全性に欠けるところがないものであったとしても、当該転落事故の被害者が危険性の判断能力に乏しい幼児であった場合、その行動が当該道路および防護柵の設置管理者において通常予測することができなくとも、営造物が本来具有すべき安全性に欠けるところがあったと評価され、道路管理者はその防護柵の設置管理者としての責任を負うと解するのが相当である。
- 4道路の周辺住民から道路の設置・管理者に対して損害賠償の請求がされた場合において、当該道路からの騒音、排気ガス等が周辺住民に対して現実に社会生活上受忍すべき限度を超える被害をもたらしたことが認定判断されたとしても、当該道路が道路の周辺住民に一定の利益を与えているといえるときには、当該道路の公共性ないし公益上の必要性のゆえに、当該道路の供用の違法性を認定することはできないものと解するのが相当である。
- 5走行中の自動車がキツネ等の小動物と接触すること自体により自動車の運転者等が死傷するような事故が発生する危険性は高いものではなく、通常は、自動車の運転者が適切な運転操作を行うことにより死傷事故を回避することを期待することができるものというべきであって、金網の柵をすき間なく設置して地面にコンクリートを敷くという小動物の侵入防止対策が全国で広く採られていたという事情はうかがわれず、そのような対策を講ずるためには多額の費用を要することは明らかであり、当該道路には動物注意の標識が設置され自動車の運転者に対して道路に侵入した動物についての適切な注意喚起がされていたということができるなどの事情の下においては、高速道路で自動車の運転者がキツネとの衝突を避けようとして起こした自損事故において、当該道路に設置または管理の瑕疵があったとはいえない。
正解:5
解説
正解は肢5です。最判平成22年3月2日は、高速道路上でキツネとの衝突を避けようとして生じた自損事故について、侵入防止対策に多額の費用を要し動物注意の標識も設置されていたなどの事情の下では設置管理の瑕疵はないとしました。肢1は予算措置の困却を理由とする免責を否定した最判昭和45年8月20日、肢2は原状回復が時間的に困難であった事案で瑕疵を否定した最判昭和50年6月26日、肢3は幼児の予測しえない行動による転落につき瑕疵を否定した最判昭和53年7月4日、肢4は受忍限度を超える被害があれば違法とした最判平成7年7月7日に反するため誤りです。
問21
行政法次の文章は、国家賠償法1条2項に基づく求償権の性質が問われた事件において、最高裁判所が下した判決に付された補足意見のうち、同条1項の責任の性質に関して述べられた部分の一部である(文章は、文意を損ねない範囲で若干修正している)。空欄ア〜エに当てはまる語句の組合せとして、正しいものはどれか。 国家賠償法1条1項の性質についてはア説とイ説が存在する。両説を区別する実益は、加害公務員又は加害行為が特定できない場合や加害公務員にウがない場合に、ア説では国家賠償責任が生じ得ないがイ説では生じ得る点に求められていた。しかし、最一小判昭和57年4月1日民集36巻4号519頁は、ア説かイ説かを明示することなく、「国又は公共団体の公務員による一連の職務上の行為の過程において他人に被害を生ぜしめた場合において、それが具体的にどの公務員のどのような違法行為によるものであるかを特定することができなくても、右の一連の行為のうちのいずれかに行為者の故意又は過失による違法行為があったのでなければ右の被害が生ずることはなかったであろうと認められ、かつ、それがどの行為であるにせよこれによる被害につき行為者の属する国又は公共団体が法律上賠償の責任を負うべき関係が存在するときは、国又は公共団体は損害賠償責任を免れることができない」と判示している。さらに、公務員の過失をエ過失と捉える裁判例が支配的となっており、個々の公務員のウを問題にする必要はないと思われる。したがって、ア説、イ説は、解釈論上の道具概念としての意義をほとんど失っているといってよい。(最三小判令和2年7月14日民集74巻4号1305頁、宇賀克也裁判官補足意見)
- 1ア=代位責任 イ=自己責任 ウ=有責性 エ=組織的
- 2ア=代位責任 イ=自己責任 ウ=有責性 エ=重大な
- 3ア=代位責任 イ=自己責任 ウ=職務関連性 エ=重大な
- 4ア=自己責任 イ=代位責任 ウ=有責性 エ=組織的
- 5ア=自己責任 イ=代位責任 ウ=職務関連性 エ=重大な
正解:1
解説
正解は肢1です。国家賠償法1条1項の責任の性質については、公務員個人の責任を国等が肩代わりするとみる代位責任説(ア)と、国等自身の責任とみる自己責任説(イ)が対立し、加害公務員を特定できない場合や加害公務員に有責性(ウ)がない場合の帰結に違いが生じるとされてきました。しかし最判昭和57年4月1日が加害公務員を特定できない場合にも賠償責任を認め、さらに公務員の過失を組織的(エ)過失として捉える裁判例が支配的となったため、両説を区別する実益は乏しくなったというのが引用された補足意見の趣旨です。
問22
行政法地方自治法が定める普通地方公共団体に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 1普通地方公共団体の区域は、地方自治法において「従来の区域」によるとされており、同法施行時の区域が基準となる。
- 2市町村の境界変更は、関係市町村の申請に基づき、都道府県知事が当該都道府県の議会の議決を経てこれを定め、国会が承認することによって成立する。
- 3都道府県の境界変更は、関係都道府県がその旨を定めた協定を締結し、総務大臣に届け出ることによって成立する。
- 4市となるべき普通地方公共団体の要件として、地方自治法それ自体は具体的な数を示した人口要件を規定していないが、当該都道府県の条例で人口要件を定めることはできる。
- 5市町村の境界に関し争論があるときは、都道府県知事は、関係市町村の申請に基づき又は職権で当該争論を裁判所の調停に付すことができる。
正解:1
解説
正解は肢1です。地方自治法5条1項は普通地方公共団体の区域を「従来の区域による」と定め、同法施行時の区域を基準としています。肢2は7条1項が市町村の境界変更を関係市町村の申請に基づき都道府県知事が議会の議決を経て定め総務大臣に届け出るとしており国会の承認を要しないため誤り、肢3は6条1項が都道府県の廃置分合・境界変更を法律で定めるとしているため誤り、肢4は8条1項1号が人口5万以上という要件を法律自身に置いているため誤り、肢5は9条1項の調停が自治紛争処理委員による調停であり裁判所の調停ではないため誤りです。
問23
行政法地方自治法(以下「法」という。)が定める直接請求に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。なお、以下「選挙権」とは、「普通地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権」をいう。
- 1事務監査請求は、当該普通地方公共団体の住民であれば、日本国民であるか否か、また選挙権を有するか否かにかかわらず、これを請求することができる。
- 2普通地方公共団体の事務のうち法定受託事務に関する条例については、条例の制定改廃の直接請求の対象とすることはできない。
- 3市町村の条例の制定改廃の直接請求における署名簿の署名に関し異議があるとき、関係人は、法定の期間内に総務大臣にこれを申し出ることができる。
- 4議会の解散請求は、日本国民たる普通地方公共団体の住民であって選挙権を有する者の総数のうち、法所定の数以上の連署をもって成立するが、この総数が一定数以上の普通地方公共団体については、成立要件を緩和する特例が設けられている。
- 5議会の解散請求が成立した後に行われる解散の住民投票において、過半数の同意があった場合、議会は解散するが、選挙権を有する者の総数が一定以上の普通地方公共団体については、過半数の同意という成立要件を緩和する特例が設けられている。
正解:4
解説
正解は肢4です。地方自治法76条1項は、議会の解散請求について選挙権を有する者の総数の3分の1以上の連署を要求しつつ、総数が40万を超える部分は6分の1、80万を超える部分は8分の1を乗じて算定するという緩和の特例を設けています。肢1は75条1項が事務監査請求を選挙権を有する者に限っているため誤り、肢2は74条1項が除外するのは地方税の賦課徴収等に関する条例のみであるため誤り、肢3は署名に関する異議の申出先が市町村の選挙管理委員会であるため誤り、肢5は78条が過半数の同意を要求し緩和の特例を置いていないため誤りです。
問24
行政法地方自治法に定める事務の共同処理(普通地方公共団体相互間の協力)に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1連携協約とは、普通地方公共団体が、他の普通地方公共団体と事務を処理するに当たっての連携を図るため、協議により、連携して事務を処理するための基本的な方針および役割分担を定める協約をいう。
- 2協議会とは、普通地方公共団体が、事務の一部を共同して管理・執行し、もしくは事務の管理・執行について連絡調整を図り、または広域にわたる総合的な計画を共同して作成するため、協議により規約を定めて設置するものをいう。
- 3機関等の共同設置とは、協議により規約を定め、共同して、議会事務局、附属機関、長の内部組織等を置くことをいう。
- 4事務の代替執行とは、協議により規約を定め、普通地方公共団体の事務の一部の管理および執行を、他の地方公共団体に委託する制度であり、事務を受託した地方公共団体が受託事務の範囲において自己の事務として処理することにより、委託した地方公共団体が自ら当該事務を管理および執行した場合と同様の効果が生じる。
- 5職員の派遣とは、当該普通地方公共団体の事務の処理のため特別の必要があると認めるとき、当該普通地方公共団体の長または委員会もしくは委員が、他の普通地方公共団体の長または委員会もしくは委員に対し、職員の派遣を求めるものをいう。
正解:4
解説
正解は肢4です。地方自治法252条の16の2の事務の代替執行は、協議により規約を定め、他の普通地方公共団体の事務の一部を「当該他の普通地方公共団体の名において」管理し執行する制度であり、受託団体が自己の事務として処理する事務の委託(252条の14)とは異なります。肢1は252条の2の連携協約、肢2は252条の2の2の協議会、肢3は252条の7の機関等の共同設置、肢5は252条の17の職員の派遣の説明として、いずれも正しい記述です。
問25
行政法空港や航空関連施設をめぐる裁判に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。
- 1いわゆる「新潟空港訴訟」(最二小判平成元年2月17日民集43巻2号56頁)では、定期航空運送事業免許の取消訴訟の原告適格が争点となったところ、飛行場周辺住民には、航空機の騒音によって社会通念上著しい障害を受けるとしても、原告適格は認められないとされた。
- 2いわゆる「大阪空港訴訟」(最大判昭和56年12月16日民集35巻10号1369頁)では、空港の供用の差止めが争点となったところ、人格権または環境権に基づく民事上の請求として一定の時間帯につき航空機の離着陸のためにする国営空港の供用についての差止めを求める訴えは適法であるとされた。
- 3いわゆる「厚木基地航空機運航差止訴訟」(最一小判平成28年12月8日民集70巻8号1833頁)では、周辺住民が自衛隊機の夜間の運航等の差止めを求める訴訟を提起できるかが争点となったところ、当該訴訟は法定の抗告訴訟としての差止訴訟として適法であるとされた。
- 4いわゆる「成田新法訴訟」(最大判平成4年7月1日民集46巻5号437頁)では、新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法(当時)の合憲性が争点となったところ、憲法31条の法定手続の保障は刑事手続のみでなく行政手続にも及ぶことから、適正手続の保障を欠く同法の規定は憲法31条に違反するとされた。
- 5いわゆる「成田新幹線訴訟」(最二小判昭和53年12月8日民集32巻9号1617頁)では、成田空港と東京駅を結ぶ新幹線の建設について、運輸大臣の工事実施計画認可の取消訴訟の原告適格が争点となったところ、建設予定地付近に居住する住民に原告適格が認められるとされた。
正解:3
解説
正解は肢3です。最判平成28年12月8日(厚木基地)は、自衛隊機の運航に伴う騒音被害を理由とする周辺住民の差止請求について、行政事件訴訟法37条の4の差止訴訟として適法であるとしたうえで請求を棄却しました。肢1は新潟空港訴訟(最判平成元年2月17日)が周辺住民の原告適格を認めた点、肢2は大阪空港訴訟(最大判昭和56年12月16日)が民事上の差止請求を不適法とした点、肢4は成田新法訴訟(最大判平成4年7月1日)が同法の規定を憲法31条に違反しないとした点、肢5は成田新幹線訴訟(最判昭和53年12月8日)が原告適格を否定した点に反するため誤りです。
問26
行政法地方公共団体に対する法律の適用に関する次の説明のうち、妥当なものはどれか。 (注) *1 公文書等の管理に関する法律*2 行政機関の保有する情報の公開に関する法律
- 1行政手続法は、地方公共団体の機関がする処分に関して、その根拠が条例に置かれているものについても行政手続法が適用されると定めている。
- 2行政不服審査法は、地方公共団体には、それぞれ常設の不服審査機関(行政不服審査会等)を置かなければならないと定めている。
- 3公文書管理法*1は、地方公共団体が保有する公文書の管理および公開等に関して、各地方公共団体は条例を定めなければならないとしている。
- 4行政代執行法は、条例により直接に命ぜられた行為についての履行の確保に関しては、各地方公共団体が条例により定めなければならないとしている。
- 5行政機関情報公開法*2は、地方公共団体は、同法の趣旨にのっとり、その保有する情報の公開に関して必要な施策を策定し、これを実施するよう努めなければならないと定めている。
正解:5
解説
正解は肢5です。行政機関情報公開法25条は、地方公共団体に対し、同法の趣旨にのっとり保有する情報の公開に関し必要な施策を策定し実施する努力義務を課しています。肢1は行政手続法3条3項が条例・規則に根拠を置く地方公共団体の機関の処分を適用除外としているため誤り、肢2は行政不服審査法81条2項が条例により事件ごとに機関を置くことも認めており常設を義務づけていないため誤り、肢3は公文書管理法34条が条例の制定ではなく努力義務を定めるにとどまるため誤り、肢4は行政代執行法2条が条例により命ぜられた行為も同法の対象としているため誤りです。
問27
民法消滅時効に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし、誤っているものはどれか。
- 1債権者が権利を行使できることを知った時から5年間行使しないときは、その債権は、時効によって消滅する。
- 2不法行為による損害賠償請求権以外の債権(人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権を除く)は、その権利について行使することができることを知らない場合でも、その権利を行使できる時から10年間行使しないときには、時効によって消滅する。
- 3人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権は、その権利について行使することができることを知らない場合でも、その債権を行使できる時から20年間行使しないときには、時効によって消滅する。
- 4人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。
- 5債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から20年間行使しないときは、時効によって消滅する。
正解:4
解説
正解は肢4です。人の生命または身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効は、民法724条の2により724条1号の「3年間」が「5年間」に読み替えられるため、3年とする肢4は誤りです。肢1は166条1項1号、肢2は166条1項2号、肢3は167条が人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権について166条1項2号の10年を20年に読み替えている点、肢5は166条2項の定めどおりで、いずれも正しい記述です。
問28
民法Aが所有する甲土地(以下「甲」という。)につき、Bの所有権の取得時効が完成し、その後、Bがこれを援用した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。
- 1Bの時効完成前に、CがAから甲を買い受けて所有権移転登記を了した場合、Bは、Cに対して、登記なくして時効による所有権取得をもって対抗することができる。
- 2Bの時効完成後に、DがAから甲を買い受けて所有権移転登記を了した場合、Bは、Dに対して、Dが背信的悪意者であったと認められる特段の事情があるときでも、登記なくして時効による所有権取得を対抗することはできない。
- 3Bの時効完成後に、EがAから甲を買い受けて所有権移転登記を了した場合、その後さらにBが甲の占有を取得時効の成立に必要な期間継続したときは、Bは、Eに対し時効を援用すれば、時効による所有権取得をもって登記なくして対抗することができる。
- 4Bの時効完成後に、FがAから甲につき抵当権の設定を受けてその登記を了した場合、Bは、抵当権設定登記後引き続き甲の占有を取得時効の成立に必要な期間継続したときは、BがFに対し時効を援用すれば、Bが抵当権の存在を容認していたなどの抵当権の消滅を妨げる特段の事情がない限り、甲を時効取得し、その結果、Fの抵当権は消滅する。
- 5Bの時効完成後に、GがAから甲を買い受けて所有権移転登記を了した場合、Bは、Gに対して、登記なくして時効による所有権取得をもって対抗することはできず、その際にBが甲の占有開始時点を任意に選択してその成立を主張することは許されない。
正解:2
解説
正解は肢2です。時効完成後の第三者に対しては登記なくして時効取得を対抗できないのが原則ですが、その第三者が背信的悪意者と認められる特段の事情があるときは、登記がなくても対抗することができます(最判平成18年1月17日)。肢1は最判昭和41年11月22日、肢3は第三者の登記後さらに時効期間が経過した場合に関する最判昭和36年7月20日、肢4は抵当権設定登記後の占有継続による時効取得で抵当権が消滅するとした最判平成24年3月16日、肢5は占有開始時点を任意に選択できないとした最判昭和35年7月27日のとおりで、いずれも妥当です。
問29
民法Aが家電製品の販売業者のBに対して有する貸金債権の担保として、Bが営業用動産として所有し、甲倉庫内において保管する在庫商品の一切につき、Aのために集合(流動)動産譲渡担保権(以下「本件譲渡担保権」という。)を設定した。この場合に関する次の記述のうち、判例に照らし、妥当でないものはどれか。
- 1構成部分が変動する集合動産についても、その種類、場所および量的範囲が指定され、目的物の範囲が特定されている場合には、一個の集合物として譲渡担保の目的とすることができ、当該集合物につき、AはBから占有改定の引渡しを受けることによって対抗要件が具備される。
- 2本件譲渡担保権の設定後に、Bが新たな家電製品乙(以下「乙」という。)を営業用に仕入れて甲倉庫内に搬入した場合であっても、集合物としての同一性が損なわれていない限り、本件譲渡担保権の効力は乙に及ぶ。
- 3本件譲渡担保権の設定後であっても、通常の営業の範囲に属する場合であれば、Bは甲倉庫内の在庫商品を処分する権限を有する。
- 4甲倉庫内の在庫商品の中に、CがBに対して売却した家電製品丙(以下「丙」という。)が含まれており、Bが履行期日までに丙の売買代金を支払わない場合、丙についてAが既に占有改定による引渡しを受けていたときは、Cは丙について動産先取特権を行使することができない。
- 5甲倉庫内の在庫商品の中に、DがBに対して所有権留保特約付きの売買契約によって売却した家電製品丁(以下「丁」という。)が含まれており、Bが履行期日までに丁の売買代金をDに支払わないときにはDに所有権が留保される旨が定められていた場合でも、丁についてAが既に占有改定による引渡しを受けていたときは、Aは、Dに対して本件譲渡担保権を当然に主張することができる。
正解:5
解説
正解は肢5です。最判平成30年12月7日は、集合動産譲渡担保の目的物に売主が所有権を留保した動産が含まれる場合、判示の事情の下では譲渡担保権者は留保所有権者に対し譲渡担保権を主張できないとしました。肢1は目的物の特定と占有改定による対抗要件具備に関する最判昭和54年2月15日、肢3は通常の営業の範囲内の処分権限を認めた最判平成18年7月20日、肢4は集合動産譲渡担保権者が民法333条の第三取得者に当たり、特段の事情がない限り動産売買先取特権を行使できないとした最判昭和62年11月10日のとおりで、肢2も集合物の同一性が保たれる限り効力が及ぶため、いずれも妥当です。
問30
民法連帯債務者の一人について生じた次のア〜オの事由のうち、民法の規定に照らし、他の連帯債務者に対して効力が生じないものの組合せとして、正しいものはどれか。 【ア】連帯債務者の一人と債権者との間の混同 【イ】連帯債務者の一人がした代物弁済 【ウ】連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有する場合において、その連帯債務者がした相殺の援用 【エ】債権者がした連帯債務者の一人に対する履行の請求 【オ】債権者がした連帯債務者の一人に対する債務の免除
- 1ア・イ
- 2ア・ウ
- 3イ・エ
- 4ウ・オ
- 5エ・オ
正解:5
解説
正解は肢5です。民法441条は相対的効力を原則とし、絶対的効力が認められるのは更改(438条)、相殺の援用(439条1項)、混同(440条)に限られます。したがってエの履行の請求とオの免除は、他の連帯債務者に対して効力を生じません。アの混同は440条により弁済をしたものとみなされ、ウの相殺の援用は439条1項により債権が全ての連帯債務者の利益のために消滅し、イの代物弁済は弁済と同様に共同の免責を生じさせるため、いずれも他の連帯債務者に効力が及びます。
問31
民法相殺に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし、誤っているものはどれか。
- 1差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え後に取得した債権が差押え前の原因に基づいて生じたものであれば、その第三債務者が、差押え後に他人の債権を取得したときでなければ、その債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができる。
- 2時効によって消滅した債権が、その消滅以前に相殺適状にあった場合には、その債権者は、当該債権を自働債権として相殺することができる。
- 3相殺禁止特約のついた債権を譲り受けた者が当該特約について悪意又は重過失である場合には、当該譲渡債権の債務者は、当該特約を譲受人に対抗することができる。
- 4債務者に対する貸金債権の回収が困難なため、債権者がその腹いせに悪意で債務者の物を破損した場合には、債権者は、当該行為による損害賠償債務を受働債権として自己が有する貸金債権と相殺することはできない。
- 5過失によって人の生命又は身体に損害を与えた場合、その加害者は、その被害者に対して有する貸金債権を自働債権として、被害者に対する損害賠償債務と相殺することができる。
正解:5
解説
正解は肢5です。民法509条2号は、人の生命または身体の侵害による損害賠償の債務を受働債権とする相殺を禁じており、過失によるものもこれに含まれます。したがって加害者が被害者に対する貸金債権を自働債権として相殺することはできず、肢5は誤りです。肢1は511条2項、肢2は508条、肢3は505条2項、肢4は509条1号が悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務を受働債権とする相殺を禁じている点で、いずれも正しい記述です。
問32
民法AとBとの間でA所有の美術品甲(以下「甲」という。)をBに売却する旨の本件売買契約が締結された。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし、妥当なものはどれか。
- 1Aは、Bが予め甲の受領を明確に拒んでいる場合であっても、甲につき弁済期に現実の提供をしなければ、履行遅滞の責任を免れない。
- 2Aは、Bが代金の支払を明確に拒んでいる場合であっても、相当期間を定めて支払の催告をしなければ、本件売買契約を解除することができない。
- 3Aが弁済期に甲を持参したところ、Bが甲を管理するための準備が整っていないことを理由に受領を拒んだため、Aは甲を持ち帰ったが、隣人の過失によって生じた火災により甲が損傷した。このような場合であっても、Bは、Aに対して甲の修補を請求することができる。
- 4Aが弁済期に甲を持参したところ、Bが甲を管理するための準備が整っていないことを理由に受領を拒んだため、Aは甲を持ち帰ったが、隣人の過失によって生じた火災により甲が滅失した。このような場合であっても、Bは、代金の支払を拒むことはできない。
- 5Aが弁済期に甲を持参したところ、Bが甲を管理するための準備が整っていないことを理由に受領を拒んだため、Aは甲を持ち帰ったが、隣人の過失によって生じた火災により甲が滅失した。このような場合であっても、Bは、本件売買契約を解除することができる。
正解:4
解説
正解は肢4です。受領遅滞中に当事者双方の責めに帰することができない事由によって履行が不能となったときは、民法413条の2第2項により債権者の責めに帰すべき事由によるものとみなされ、536条2項および567条2項により買主は代金の支払を拒むことができません。肢1は債権者があらかじめ受領を拒む場合は口頭の提供で足りる(493条ただし書)ため誤り、肢2は542条1項2号により無催告解除ができるため誤り、肢3と肢5は567条2項が追完請求も解除も認めていないため誤りです。
問33
民法契約の解除等に関する次のア〜オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものの組合せはどれか。 【ア】使用貸借契約においては、期間や使用収益の目的を定めているか否かにかかわらず、借主は、いつでも契約の解除をすることができる。 【イ】賃貸借契約は、期間の定めがある場合であっても、賃借物の全部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなったときには、当該賃貸借契約は終了する。 【ウ】請負契約においては、請負人が仕事を完成しているか否かにかかわらず、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。 【エ】委任契約は、委任者であると受任者であるとにかかわらず、いつでも契約の解除をすることができる。 【オ】寄託契約においては、寄託物を受け取るべき時期を経過しても寄託者が受寄者に寄託物を引き渡さない場合には、書面による寄託でも無報酬の受寄者は、直ちに契約の解除をすることができる。
- 1ア・イ
- 2ア・エ
- 3イ・ウ
- 4ウ・オ
- 5エ・オ
正解:4
解説
正解は肢4です。ウは民法641条が注文者の任意解除を「請負人が仕事を完成しない間」に限っているため、完成の有無を問わないとする点で妥当ではありません。オは657条の2第3項が、書面による寄託の無報酬受寄者について相当の期間を定めた催告を経てはじめて解除できるとしているため、直ちに解除できるとする点で妥当ではありません。アは598条3項、イは616条の2、エは651条1項の定めどおりで、いずれも妥当です。
問34
民法損益相殺ないし損益相殺的調整に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。
- 1幼児が死亡した場合には、親は将来の養育費の支出を免れるので、幼児の逸失利益の算定に際して親の養育費は親に対する損害賠償額から控除される。
- 2被害者が死亡した場合に支払われる生命保険金は、同一の損害についての重複填補に当たるので、被害者の逸失利益の算定に当たって支払われる生命保険金は損害賠償額から控除される。
- 3退職年金の受給者が死亡し遺族が遺族年金の受給権を得た場合には、遺族年金は遺族の生活水準の維持のために支給されるものなので、退職年金受給者の逸失利益の算定に際して、いまだ支給を受けることが確定していない遺族年金の額についても損害賠償額から控除されることはない。
- 4著しく高利の貸付けという形をとっていわゆるヤミ金融業者が元利金等の名目で借主から高額の金員を違法に取得し多大な利益を得る、という反倫理的行為に該当する不法行為の手段として金員を交付した場合、この貸付けによって損害を被った借主が得た貸付金に相当する利益は、借主から貸主に対する不法行為に基づく損害賠償請求に際して損害賠償額から控除されない。
- 5新築の建物が安全性に関する重大な瑕疵があるために、社会通念上、社会経済的な価値を有しないと評価される場合であっても、建て替えまで買主がその建物に居住していた居住利益は、買主からの建て替え費用相当額の損害賠償請求に際して損害賠償額から控除される。
正解:4
解説
正解は肢4です。最判平成20年6月10日は、著しく高利の貸付けという反倫理的行為の手段として交付された金員について、民法708条の趣旨に照らし、借主が得た貸付金相当額の利益を損益相殺ないし損益相殺的な調整の対象とすることは許されないとしました。肢1は養育費を控除しないとした最判昭和39年6月24日、肢2は生命保険金を控除しないとした最判昭和39年9月25日、肢5は居住利益を控除しないとした最判平成22年6月17日に反し、肢3は最大判平成5年3月24日が遺族年金に損害を填補する性質を認め支給の確定した分を控除するとした理解と異なるため、妥当ではありません。
問35
民法遺言に関する次のア〜オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。 【ア】重度の認知症により成年被後見人となった高齢者は、事理弁識能力を一時的に回復した場合であっても、後見開始の審判が取り消されない限り、遺言をすることができない。 【イ】自筆証書遺言の作成に際し、カーボン紙を用いて複写の方法で作成が行われた場合であっても、自書の要件を満たし、当該遺言は有効である。 【ウ】夫婦は、同一の証書によって遺言をすることはできない。 【エ】遺言において受遺者として指定された者が、遺言者の死亡以前に死亡した場合には、受遺者の相続人が受遺者の地位を承継する。 【オ】遺言は、遺言者が死亡して効力を生じるまでは、いつでも撤回することができるが、公正証書遺言を撤回するには公正証書遺言により、自筆証書遺言を撤回するには自筆証書遺言により行わなければならない。
- 1ア・エ
- 2ア・オ
- 3イ・ウ
- 4イ・エ
- 5ウ・オ
正解:3
解説
正解は肢3です。イはカーボン紙を用いた複写の方法による記載も自書の要件を満たすとした最判平成5年10月19日のとおり、ウは民法975条が2人以上の者が同一の証書で遺言をすることを禁じているとおりで、いずれも妥当です。アは973条1項が成年被後見人も事理弁識能力を一時回復した時に医師2人以上の立会いで遺言できるとしている点、エは994条1項が受遺者の先死により遺贈は効力を生じないとしている点、オは1022条が遺言の方式に従えば足りるとし同一の方式を要求していない点で、いずれも妥当ではありません。
問36
商法・会社法商行為に関する次の記述のうち、商法の規定に照らし、誤っているものはどれか。
- 1商行為の代理人が本人のためにすることを示さないで商行為をした場合であっても、その行為は、本人に対してその効力を生ずる。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知らなかったときは、代理人に対して履行の請求をすることを妨げない。
- 2商行為の受任者は、委任の本旨に反しない範囲内において、委任を受けていない行為をすることができる。
- 3商人である隔地者の間において承諾の期間を定めないで契約の申込みを受けた者が相当の期間内に承諾の通知を発しなかったときは、その申込みは、その効力を失う。
- 4商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けたときは、遅滞なく、契約の申込みに対する諾否の通知を発しなければならず、当該通知を発することを怠ったときは、その商人はその申込みを承諾したものとみなす。
- 5商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けた場合において、その申込みとともに受け取った物品があるときは、その申込みを拒絶したかどうかにかかわらず、申込みを受けた商人の費用をもって、その物品を保管しなければならない。
正解:5
解説
正解は肢5です。商法510条は、申込みとともに受け取った物品の保管義務について「申込者の費用をもって」保管しなければならないと定めており、申込みを受けた商人の費用とする肢5は誤りです。なお同条ただし書は、物品の価額が費用を償うのに足りないときや保管により損害を受けるときは保管義務を負わないとしています。肢1は504条、肢2は505条、肢3は508条1項、肢4は509条1項・2項の定めどおりで、いずれも正しい記述です。
問37
商法・会社法設立時取締役に関する次のア〜オの記述のうち、会社法の規定に照らし、誤っているものの組合せはどれか。なお、設立しようとする株式会社は、種類株式発行会社ではないものとする。 【ア】発起設立においては、発起人は、出資の履行が完了した後、遅滞なく、設立時取締役を選任しなければならないが、定款で設立時取締役として定められた者は、出資の履行が完了した時に、設立時取締役に選任されたものとみなす。 【イ】募集設立においては、設立時取締役の選任は、創立総会の決議によって行わなければならない。 【ウ】設立しようとする株式会社が監査等委員会設置会社である場合には、設立時監査等委員である設立時取締役は3人以上でなければならない。 【エ】発起設立においては、法人でない発起人は設立時取締役に就任することができるが、募集設立においては、発起人は設立時取締役に就任することはできない。 【オ】設立時取締役は、その選任後、株式会社が成立するまでの間、発起人と共同して、株式会社の設立の業務を執行しなければならない。
- 1ア・ウ
- 2ア・オ
- 3イ・ウ
- 4イ・エ
- 5エ・オ
正解:5
解説
正解は肢5です。エは、発起人も設立時取締役に就任することができ、募集設立の場合にこれを禁ずる規定も置かれていないため誤りです。オは、設立時取締役の職務が会社法46条1項の設立事項の調査であって設立中の会社の業務執行ではないため誤りです。アは38条1項および同条4項のみなし選任、イは88条1項、ウは39条3項が設立時監査等委員である設立時取締役を3人以上とする旨を定めている点で、いずれも正しい記述です。
問38
商法・会社法株式会社の種類株式に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、誤っているものはどれか。なお、定款において、単元株式数の定めはなく、また、株主総会における議決権等について株主ごとに異なる取扱いを行う旨の定めはないものとする。
- 1株式会社が2以上の種類の株式を発行する場合には、各々の種類の株式について発行可能種類株式総数を定款で定めなければならない。
- 2公開会社および指名委員会等設置会社のいずれでもない株式会社は、1つの株式につき2個以上の議決権を有することを内容とする種類株式を発行することができる。
- 3株式会社は、株主総会または取締役会において決議すべき事項のうち、当該決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議を必要とすることを内容とする種類株式を発行することができる。
- 4公開会社および指名委員会等設置会社のいずれでもない株式会社は、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役または監査役を選任することを内容とする種類株式を発行することができる。
- 5株式会社は、株主総会の決議事項の全部について議決権を有しないことを内容とする種類株式を発行することができる。
正解:2
解説
正解は肢2です。会社法は1株1議決権を原則とし(308条1項)、複数議決権を内容とする種類株式は認められていません。108条1項3号が認めるのは議決権を行使できる事項について制限を加える議決権制限株式にとどまるため、肢2は誤りです。肢1は108条2項柱書、肢3は108条1項8号の拒否権付種類株式、肢4は108条1項9号の取締役・監査役選任権付種類株式、肢5は108条1項3号により全部の事項について議決権を有しないものとすることも認められる点で、いずれも正しい記述です。
問39
商法・会社法役員等の責任に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、誤っているものはどれか。
- 1利益相反取引によって株式会社に損害が生じた場合には、株主総会または取締役会の承認の有無にかかわらず、株式会社と利益が相反する取引をした取締役または執行役は任務を怠ったものと推定する。
- 2取締役または執行役が競業取引の制限に関する規定に違反して取引をしたときは、当該取引によって取締役、執行役または第三者が得た利益の額は、賠償責任を負う損害の額と推定する。
- 3監査等委員会設置会社の取締役の利益相反取引により株式会社に損害が生じた場合において、当該取引につき監査等委員会の承認を受けたときは、当該取締役が監査等委員であるかどうかにかかわらず、当該取締役が任務を怠ったものと推定されることはない。
- 4非業務執行取締役等は、定款の定めに基づき、職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときは、定款で定めた額の範囲内であらかじめ株式会社が定めた額と最低責任限度額とのいずれか高い額を限度として責任を負うとする契約を株式会社と締結することができる。
- 5自己のために株式会社と取引をした取締役または執行役は、任務を怠ったことが当該取締役または執行役の責めに帰することができない事由によるものであることをもって損害賠償責任を免れることはできない。
正解:3
解説
正解は肢3です。会社法423条4項は、監査等委員会設置会社において取締役(監査等委員であるものを除く)が利益相反取引につき監査等委員会の承認を受けた場合に任務懈怠の推定を及ぼさないとしており、当該取締役が監査等委員である場合には推定が働きます。したがって「監査等委員であるかどうかにかかわらず」とする肢3は誤りです。肢1は423条3項、肢2は423条2項、肢4は427条1項の責任限定契約、肢5は428条1項の定めどおりで、いずれも正しい記述です。
問40
商法・会社法会計参与と会計監査人の差異に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、誤っているものはどれか。
- 1大会社、監査等委員会設置会社および指名委員会等設置会社は、会計監査人の設置が義務付けられているのに対して、当該いずれの会社形態においても、会計参与は任意に設置される機関である。
- 2会計参与は会社法上「役員」に位置づけられるが、会計監査人は「役員」に含まれない。
- 3会計参与は定時株主総会において選任決議が必要であるのに対して、会計監査人については、定時株主総会において別段の決議がなされなかったときは、再任されたものとみなす。
- 4会計参与は、取締役または執行役と共同して計算関係書類を作成するが、会計監査人は計算関係書類の監査を行う。
- 5会計監査人は、その職務を行うに際して取締役の職務の執行に関し不正の行為等を発見したときは、遅滞なく、これを監査役等に報告しなければならないが、会計参与にはこのような報告義務はない。
正解:5
解説
正解は肢5です。会社法375条1項は、会計参与も取締役の職務執行に関し不正の行為等を発見したときは遅滞なく株主(監査役設置会社では監査役)に報告しなければならないと定めており、報告義務がないとする肢5は誤りです。肢1は328条1項・2項の大会社の会計監査人設置義務、327条5項の監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社の会計監査人設置義務および326条2項、肢2は329条1項が役員を取締役・会計参与・監査役と定義している点、肢3は329条1項と338条2項のみなし再任、肢4は374条1項と396条1項の定めどおりで、いずれも正しい記述です。
問47
基礎知識いわゆるG7サミット(主要国首脳会議)に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- 12023年現在では、フランス、アメリカ、イギリス、ドイツ、日本、イタリア、カナダの7か国のみの首脳が集まる会議であり、EU(欧州連合)首脳は参加していない。
- 2議長国の任期は1月から12月の1年間で、事務レベルの準備会合や関係閣僚会合の開催を通じて、サミットの準備および議事進行を行う。
- 32023年の議長国はアメリカであり、日本はこれまで、1979年、1986年、1993年、2000年、2007年、2014年、2021年に議長国を務めた。
- 4フランスのジスカール・デスタン大統領(当時)の提案により、1975年に第1回サミットが開催されたが、日本が参加したのは1979年からである。
- 5開催地は、かつてはスイスのダボスに固定されていたが、現在では、議長国の国内で行っていることが通例である。
正解:2
解説
正解は肢2です。G7サミットの議長国は1月から12月までの1年間これを務め、シェルパ会合などの事務レベルの準備会合や関係閣僚会合を通じて首脳会合の準備と議事進行を担います。肢1はEUの首脳も参加しているため誤り、肢3は2023年の議長国が日本(広島サミット)であり、また日本が議長国を務めたのは1979年・1986年・1993年・2000年・2008年・2016年・2023年であって2007年・2014年・2021年ではないため誤り、肢4は1975年の第1回サミットに日本も参加しているため誤り、肢5は開催地が当初から議長国内であるため誤りです。なお令和5年度は現在の「基礎知識」ではなく旧「一般知識等」の科目として出題されたものです。
問48
基礎知識日本のテロ(テロリズム)対策に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。 (注) *1 平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法*2 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律
- 1日本が締結したテロ防止に関連する条約として最も古いものは、1970年締結の「航空機内で行われた犯罪その他ある種の行為に関する条約」(航空機内の犯罪防止条約)である。
- 22001年9月11日にアメリカで発生した同時多発テロ事件をきっかけとして、通称「テロ対策特別措置法」*1が制定された。
- 32015年9月、サイバーテロ対策の一環として「サイバーセキュリティ基本法」に基づき、サイバーセキュリティ戦略が閣議決定された。
- 4国際組織犯罪防止条約の締結に向けた「組織犯罪処罰法」*2の2017年の改正として、いわゆるテロ等準備罪が新設された。
- 52022年7月8日に奈良県で発生した安倍晋三・元首相銃撃事件をきっかけとして、内閣府に「テロ対策庁」が設置された。
正解:5
解説
正解は肢5です。2022年7月の安倍晋三元首相銃撃事件を受けて警察庁の警備部門の再編など体制の見直しは行われましたが、内閣府に「テロ対策庁」が設置された事実はなく、妥当ではありません。肢1は1963年採択の東京条約を日本が1970年に締結した点、肢2は2001年の同時多発テロを受けたテロ対策特別措置法の制定、肢3は2015年9月のサイバーセキュリティ戦略の閣議決定、肢4は2017年の組織犯罪処罰法改正によるテロ等準備罪の新設で、いずれも妥当です。
問49
基礎知識1960年代以降の東南アジアに関する次のア〜オの記述のうち、妥当でないものの組合せはどれか。 【ア】1967年に、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイの5か国が東南アジア諸国連合(ASEAN)を結成した。 【イ】ベトナムは、1986年からペレストロイカ政策のもとに、共産党一党体制を保ちながらゆるやかな市場開放を進めた。 【ウ】ラオスでは、内戦の終結を受けて、1993年の総選挙で元国王を支援する勢力が勝利して王制が復活した。 【エ】インドネシアでは、1997年のアジア通貨危機で市民の不満が高まり、1998年にスハルト政権が倒れて民政に移管した。 【オ】ミャンマーでは、2021年にクーデターが発生し、軍部が全権を掌握した。
- 1ア・イ
- 2ア・オ
- 3イ・ウ
- 4ウ・エ
- 5エ・オ
正解:3
解説
正解は肢3です。イについて、ベトナムが1986年に打ち出したのはドイモイ(刷新)政策であり、ペレストロイカはソ連のゴルバチョフによる改革の名称であるため妥当ではありません。ウについて、ラオスは1975年に王制を廃止してラオス人民民主共和国となっており、1993年に王制が復活した事実はないため妥当ではありません。アの1967年のASEAN結成時の原加盟5か国、エの1998年のスハルト政権の崩壊、オの2021年のミャンマー国軍によるクーデターは、いずれも妥当です。
問50
基礎知識日本の法人課税に関する次のア〜オの記述のうち、妥当なものの組合せはどれか。 【ア】法人税は法人の所得に対して課税する所得課税であり、企業の所得水準に応じて税率が決まる累進税率が採用されている。 【イ】子育てを社会全体で支える観点から、法人税の税率が引き上げられ、その財源を次世代育成支援に充当することとなった。 【ウ】地方自治体が課税する法人事業税には、法人の所得や収入に応じる課税だけではなく、法人の資本や付加価値に応じて課税される外形標準課税も導入されている。 【エ】OECD(経済協力開発機構)では、多国籍企業がその課税所得を人為的に操作し、課税逃れを行っている問題(BEPS:税源浸食と利益移転)に対処するため、BEPSプロジェクトを立ち上げて、日本もこれに参加している。 【オ】地方自治体による法人事業税や法人住民税は、地域間での偏在性が大きいが、その一部を国税化する改革が実施されたことはない。
- 1ア・ウ
- 2ア・オ
- 3イ・エ
- 4イ・オ
- 5ウ・エ
正解:5
解説
正解は肢5です。ウについて、法人事業税には所得割・収入割のほか、資本金1億円超の法人を対象とする資本割・付加価値割という外形標準課税が導入されています。エについて、OECDは多国籍企業による税源浸食と利益移転に対処するBEPSプロジェクトを立ち上げており、日本もこれに参加しています。アは法人税が累進税率ではなく比例税率を採る点、イは子育て財源のための法人税率引上げが行われていない点、オは地方法人税として一部が国税化されている点で、いずれも妥当ではありません。なお令和6年度税制改正により外形標準課税の対象法人が拡大され、2026年4月1日時点では、前事業年度に対象であった法人で資本金1億円以下でも資本金と資本剰余金の合計額が10億円を超えるものも対象となっています。
問51
基礎知識日本の金融政策に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- 1近年、日本銀行は、消費者物価指数の上昇率を年率2%とする物価安定目標を掲げ、金融緩和を推進してきた。
- 2諸外国ではマイナス金利政策を導入する事例があるが、マイナス金利政策の導入は、預金残高縮小をもたらすことから、日本では導入されていない。
- 3日本銀行は、地域振興を進めるために、地方銀行に対する独自の支援策として、都市銀行よりも低い金利で貸付けを行っている。
- 42024年には新しい日本銀行券が発行されるが、その際には、デジタル通貨の導入も同時に行われることとされている。
- 52022年、政府は、急速に進んだ円高に対処し、為替レートを安定化させるために、金利の引き上げを行った。
正解:1
解説
正解は肢1です。日本銀行は2013年に消費者物価の前年比上昇率2%の物価安定目標を掲げ、量的・質的金融緩和を進めてきました。肢2は日本銀行が2016年にマイナス金利政策を導入しているため誤り(なお2024年3月に解除されています)、肢3は日本銀行が地方銀行に限って低金利で貸し付ける制度を設けていないため誤り、肢4は2024年7月に新しい日本銀行券が発行されたもののデジタル通貨の導入は行われていないため誤り、肢5は2022年に進行したのが円安であり政府が行ったのは為替介入であるため誤りです。
問52
基礎知識日本における平等と差別に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。 (注) *1 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律*2 女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約*3 本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律*4 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律
- 11969年に同和対策事業特別措置法が制定されて以降の国の特別対策は2002年に終了したが、2016年に部落差別の解消の推進に関する法律が制定された。
- 2日本は1985年に男女雇用機会均等法*1を制定したが、女性差別撤廃条約*2はいまだ批准していない。
- 3熊本地方裁判所は、2001年にハンセン病国家賠償訴訟の判決で、国の責任を認め、元患者に対する損害賠償を認めた。
- 42016年に制定されたヘイトスピーチ解消法*3は、禁止規定や罰則のない、いわゆる理念法である。
- 5障害者差別解消法*4は、2021年に改正され、事業者による合理的配慮の提供が義務化されることとなった。
正解:2
解説
正解は肢2です。日本は1985年に男女雇用機会均等法を制定するとともに女性差別撤廃条約を批准しており、いまだ批准していないとする肢2は妥当ではありません。肢1は2016年の部落差別解消推進法の制定、肢3は2001年5月11日の熊本地裁判決が国の責任を認め賠償を命じた点、肢4はヘイトスピーチ解消法に禁止規定も罰則もない点、肢5は2021年改正の障害者差別解消法により事業者の合理的配慮の提供が義務化された点(2024年4月1日施行)で、いずれも妥当です。
問53
基礎知識日本の社会保障、社会福祉に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- 1社会保障は主に社会保険、公的扶助、社会福祉および公衆衛生からなるが、これらの財源の全額が租税でまかなわれている。
- 2第二次世界大戦後にアメリカで提唱された「ゆりかごから墓場まで」と称する福祉国家が日本のモデルとされた。
- 3生活保護の給付は医療、介護、出産に限定され、生活扶助、住宅扶助は行われない。
- 42008年に、75歳以上の高齢者を対象とした後期高齢者医療制度が整備された。
- 5児童手当は、18歳未満の児童本人に現金を給付する制度である。
正解:4
解説
正解は肢4です。2008年4月に高齢者の医療の確保に関する法律に基づき、75歳以上の者等を対象とする後期高齢者医療制度が施行されました。肢1は社会保険が保険料を主たる財源とするため誤り、肢2は「ゆりかごから墓場まで」がイギリスのベヴァリッジ報告に由来するため誤り、肢3は生活保護に生活扶助・住宅扶助を含む8種類の扶助があるため誤り、肢5は児童手当が父母等の養育者に支給されるため誤りです。なお児童手当は2024年10月から高校生年代まで対象が拡大され、所得制限も撤廃されました。
問54
基礎知識日本における行政のデジタル化に関する次のア〜オの記述のうち、妥当でないものの組合せはどれか。 【ア】RPAとはRobotic Process Automationの略で、ロボットの代行による作業の自動化、ないし導入するソフトウェア等を指すが、これにより人手不足の解消と職員の負担軽減を図ることが期待されている。 【イ】ガバメントクラウドとは、国の行政機関が、共通した仕様で行政サービスのシステムを整備できるクラウド基盤を指すが、セキュリティ上の理由から、地方自治体は利用できないものとされている。 【ウ】eLTAXとは、地方税について地方自治体が共同で運営するシステムであり、電子的な一つの窓口から各自治体への手続を実現しているが、国税については別のシステムとなっている。 【エ】LGWANとは、地方自治体や政府機関が機密性の高い情報伝達を行うために構築された閉鎖型のネットワークであり、自治体内や自治体間でのメールや掲示板の機能を持つ連絡ツールとしても活用されている。 【オ】オープンデータとは、二次利用が可能な公開データのことで、人手や労力・費用などのコストをかけずに多くの人が利用できるものであるが、自治体が保有する情報のオープンデータ化は禁止されている。
- 1ア・ウ
- 2ア・オ
- 3イ・エ
- 4イ・オ
- 5ウ・エ
正解:4
解説
正解は肢4です。イについて、ガバメントクラウドは地方公共団体情報システムの標準化・共通化の基盤としても位置づけられ、地方自治体も利用できるため妥当ではありません。オについて、官民データ活用推進基本法11条1項は国及び地方公共団体にオープンデータへの取組を求めており、自治体が保有する情報のオープンデータ化が禁止されている事実はないため妥当ではありません。アのRPA、ウのeLTAX、エのLGWANについての説明は、いずれも妥当です。
問55
基礎知識情報通信用語に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。
- 1リスクウェアとは、インストール・実行した場合にシステムにリスクをもたらす可能性のあるソフトウェアをいう。
- 2ランサムウェアとは、感染したコンピュータのデータを暗号化してロックし、使えない状態にしたうえで、データを復元する対価として金銭を要求するプログラムをいう。
- 3フリースウェアとは、無料トライアルなどを通して解除方法を知らせないままネットの利用者をサブスクリプションに誘導し、高額の利用料を請求するアプリをいう。
- 4ファームウェアとは、二軍を意味するファームからとられ、優れた性能を持ったアプリケーションのパフォーマンスを劣化させる悪性のプログラムである。
- 5クリッパー・マルウェアとは、感染したコンピュータのクリップボード情報を収集し悪用する機能を持つマルウェアをいい、仮想通貨を狙ったものが多い。
正解:4
解説
正解は肢4です。ファームウェアとは、機器に組み込まれてハードウェアを制御する基本的なソフトウェアを指すものであり、二軍を意味するファームに由来する悪性のプログラムではないため妥当ではありません。肢1のリスクウェア、肢2のランサムウェア、肢3のフリースウェア、肢5のクリッパー・マルウェアについての説明は、いずれも妥当です。とくにランサムウェアは国内でも病院や物流事業者への攻撃が相次いでおり、継続的な注意喚起が行われています。
問57
基礎知識個人情報に関する次のア〜エの記述のうち、妥当なものの組合せはどれか。 【ア】ある情報を他の情報と組み合わせることによって、不開示規定により守られるべき不開示情報が認識されるかを判断することを、モザイク・アプローチという。 【イ】EU(欧州連合)のGDPR(欧州データ保護規則)は、死者の情報の取扱いについて、加盟国の裁量に委ねている。 【ウ】日本では要配慮個人情報と呼ばれて、その取扱いに特に配慮を要する情報は、諸外国では機微情報(センシティブインフォメーション)と呼ばれ、その内容は日本を含め、各国において違いはない。 【エ】デジタル改革関連法の一部として、個人情報保護法*1の令和3(2021)年改正が行われ、行政機関個人情報保護法*2が廃止されて個人情報保護法に一元化された結果、個人情報保護法に規定される規律は、公的部門と民間部門について、まったく同一となった。(注) *1 個人情報の保護に関する法律*2 行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律
- 1ア・イ
- 2ア・エ
- 3イ・ウ
- 4イ・エ
- 5ウ・エ
正解:1
解説
正解は肢1です。アのモザイク・アプローチは、それ単独では不開示情報に当たらない情報でも、他の情報と組み合わせることによって不開示情報が認識されるかどうかを判断する考え方で、情報公開の実務で用いられます。イについて、GDPRは前文27で死者の個人データを規律の対象外としつつ、加盟国が死者に関する規則を定めることを妨げないとしています。ウは機微情報の範囲が国により異なるため、エは令和3年改正で個人情報保護法に一元化された後も公的部門と民間部門とで規律に違いが残るため、いずれも妥当ではありません。