本試験問題(2025年実施)
令和7年度行政書士試験の過去問50問
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- 50問
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- 60問・300点満点(択一式・多肢選択式・記述式)
- 本試験
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問2基礎法学
解答 0/50・正解 0
裁判員制度に関する次の記述のうち、裁判員法*の規定に照らし、誤っているものはどれか。 (注) * 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律
令和7年度の全50問|問題文・正解・解説
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問2
基礎法学裁判員制度に関する次の記述のうち、裁判員法*の規定に照らし、誤っているものはどれか。 (注) * 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律
- 1裁判員は、衆議院議員の選挙権を有する者の中から、くじその他の作為が加わらない方法で選任される。
- 2一定の事由があれば、検察官、被告人または弁護人は、裁判所に対して、選任された裁判員の解任の請求をすることができる。
- 3裁判員は、地方裁判所で行われる一定の刑事裁判の訴訟手続に参加する。
- 4裁判員の関与する判断は、合議体を構成する裁判官の意見を聞いた上で、裁判員の過半数の意見によって行われる。
- 5裁判員が、その関与する判断のための評議の秘密を漏らしたときは、当該裁判員は、刑罰を科される。
正解:4
解説
正解は肢4です。裁判員の関与する判断は、裁判員法67条1項により、構成裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見によって行われます。裁判官の意見を聞いた上で裁判員の過半数で決するのではないため、肢4が誤りです。肢1は同法13条が衆議院議員の選挙権を有する者の中から選任する旨を定め、くじその他の作為が加わらない方法による選任決定は同法37条1項が定めており、肢2は同法41条が検察官・被告人・弁護人による解任請求を認め、肢3は同法2条1項が対象事件を地方裁判所の一定の刑事裁判に限り、肢5は同法108条が評議の秘密を漏らした裁判員への罰則を置いており、いずれも正しい記述です。
問3
憲法法の下の平等に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。
- 1尊属殺を通常の殺人よりも高度の道義的非難に値するものとみなし、その刑罰を通常の殺人よりも加重する規定については、社会的身分による差別を行うものとして、通常よりも厳格な基準でその合憲性が審査されなければならない。
- 2所得税の賦課・徴収に際して、給与所得者と自営業者等との間で異なる取り扱いを行う法律の規定については、それが人種・信条・性別など憲法14条1項の列挙する事由による差別に該当しないので、立法者の裁量を広く認めることができる。
- 3女性のみに再婚禁止期間を定めた民法の規定の合憲性を判断する際には、性別による差別が憲法24条にいう個人の尊厳と深く関わるため、性別以外による法的取り扱いの区別に比べて厳格な基準で審査が行われなければならない。
- 4子にとって自ら選択・修正する余地のない事柄を理由にその子に不利益を及ぼすことは許されず、子を個人として尊重し、権利を保障すべきだという考えが確立されてきており、嫡出でない子の法定相続分を差別する規定の合理性は失われている。
- 5憲法25条の定める生存権は個人の尊厳と密接に関係する権利であり、これに関係する法的取り扱いの区別の合憲性については、立法者がその裁量を踰越していないか厳格かつ慎重に審査されなければならない。
正解:4
解説
正解は肢4です。最大決平成25年9月4日は、子にとって自ら選択・修正する余地のない事柄を理由に不利益を及ぼすことは許されず、子を個人として尊重する考えが確立されてきたとして、嫡出でない子の相続分を嫡出子の2分の1とする民法900条4号ただし書前段を憲法14条1項に違反するとしました。肢1の尊属殺重罰規定違憲判決(最大判昭和48年4月4日)は加重の程度が極端である点を問題としたもので厳格な審査基準を用いていません。肢2の給与所得課税(最大判昭和60年3月27日)、肢3の再婚禁止期間(最大判平成27年12月16日)、肢5の生存権(最大判昭和57年7月7日)も、記述のような審査の枠組みを採っていません。なお肢3が題材とする民法733条の再婚禁止期間は令和4年法律第102号により削除され、令和6年4月1日以降は再婚禁止期間の定めそのものが存在しません。最大判平成27年12月16日は、削除前の同条のうち100日を超える部分を憲法14条1項・24条2項に違反するとした判例です。
問4
憲法取材・報道の自由に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当でないものはどれか。
- 1公正な刑事裁判の実現を保障するために、報道機関の取材活動によって得られたものが証拠として必要と認められるような場合には、取材の自由がある程度の制約をこうむることとなってもやむを得ない。
- 2報道機関の取材の手段・方法が一般の刑罰法令に触れなくても、取材対象者の個人としての人格の尊厳を著しく蹂躪する等、法秩序全体の精神に照らし社会観念上是認できない態様である場合には、正当な取材活動の範囲を逸脱する。
- 3不法行為の成立を前提としない反論権は、特に公的事項に関する批判的記事の掲載をちゅうちょさせ、憲法が保障する表現の自由を間接的に侵す危険につながるおそれも多分に存し、当然に認められるものではない。
- 4報道の公共性、報道のための取材の自由に対する配慮に基づき、司法記者クラブ所属の報道機関の記者に対してのみ法廷におけるメモの採取を許可したとしても、法の下の平等には反しない。
- 5報道関係者の取材源は、それがみだりに開示されると将来の自由で円滑な取材活動に一定の支障は生じうるが、公正な裁判の実現のためには取材源を明らかにする必要があり、民事訴訟法上の証言拒絶が認められうる職業の秘密には該当しない。
正解:5
解説
正解は肢5です。最決平成18年10月3日は、報道関係者の取材源は民事訴訟法197条1項3号にいう「職業の秘密」に当たり、保護に値する秘密であれば証言を拒絶できるとしました。取材源が職業の秘密に該当しないとする肢5が妥当ではありません。肢1は博多駅事件(最大決昭和44年11月26日)、肢2は外務省秘密漏えい事件(最決昭和53年5月31日)、肢3は反論権を否定したサンケイ新聞事件(最判昭和62年4月24日)、肢4は法廷でのメモ採取に関する最大判平成元年3月8日の判示に沿う妥当な記述です。
問5
憲法国会の召集に関する次の文章の空欄ア〜エに当てはまる語句の組合せとして、妥当なものはどれか。 憲法は、国会についてア制を採用し、内閣がその召集を実質的に決定する権限を有するものとした上で、52条、53条及び54条1項において、常会、イ会及びウ会の召集時期等について規定している。そのうち憲法53条は、前段において、内閣は、イ会召集決定をすることができると規定し、後段において、いずれかの議院の総議員の4分の1以上によるイ会召集要求があれば、内閣は、イ会召集決定をしなければならない旨を規定している。これは、国会と内閣との間における権限の分配という観点から、内閣がイ会召集決定をすることとしつつ、これがされない場合においても、国会のアを開始して国会による国政の根幹に関わる広範な権能の行使を可能とするため、各議院を組織する一定数以上の議員に対してイ会召集要求をする権限を付与するとともに、このイ会召集要求がされた場合には、内閣がイ会召集決定をする義務を負うこととしたものと解されるのであって、個々の国会議員のイ会召集要求に係るエを保障したものとは解されない。(最三小判令和5年9月12日民集77巻6号1515頁)
- 1ア=会期 イ=特別 ウ=臨時 エ=権限又は権能
- 2ア=立法期 イ=臨時 ウ=特別 エ=権限又は権能
- 3ア=会期 イ=特別 ウ=臨時 エ=権利又は利益
- 4ア=立法期 イ=特別 ウ=臨時 エ=権限又は権能
- 5ア=会期 イ=臨時 ウ=特別 エ=権利又は利益
正解:5
解説
正解は肢5です。憲法は国会について会期制を採り、52条で常会、53条で臨時会、54条1項で解散総選挙後の特別会の召集を定めています。53条後段の総議員の4分の1以上による召集要求は、国会の会期を開始させて国政の根幹に関わる権能の行使を可能にするためのものであり、最三小判令和5年9月12日は、これが内閣に臨時会召集決定の義務を負わせたものであって、個々の国会議員の召集要求に係る権利又は利益を保障したものとは解されないとしました。したがってア=会期、イ=臨時、ウ=特別、エ=権利又は利益の組合せが妥当です。
問6
憲法内閣総理大臣に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- 1内閣総理大臣は、大日本帝国憲法では内閣の首長と位置づけられていたが、実際の運用では、他の国務大臣と対等な地位にあるものとして扱われていた。
- 2内閣総理大臣は、衆議院議員の中から国会の議決により指名されるが、衆参両院で指名の議決が異なった場合には、衆議院の議決が優越する。
- 3内閣総理大臣に事故のあるときは、予め指定された国務大臣が臨時にその職務を行うが、その場合でも、衆議院の解散のような内閣総理大臣に一身専属的な権限は行使できないと解されている。
- 4国務大臣は、内閣総理大臣の同意がなければ、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された国務大臣は、内閣総理大臣の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。
- 5法律及び政令には、すべて主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする。
正解:5
解説
正解は肢5です。憲法74条は、法律及び政令にはすべて主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とすると定めています。肢1は、大日本帝国憲法に内閣の規定はなく内閣総理大臣は同輩中の首席にすぎないとされたのに対し、日本国憲法66条1項が首長と位置づけたもので記述が逆です。肢2は憲法67条1項が「国会議員の中から」指名するとしており衆議院議員に限られません。肢3は内閣法9条の臨時代理に権限の制限は置かれておらず、肢4は憲法75条が定めるのは在任中の訴追に対する同意であって逮捕ではないため、いずれも妥当ではありません。
問7
憲法法令の形式に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- 1皇室典範は、皇室会議が定める規則であるが、憲法の授権により、皇位の継承や摂政など、本来は法律で定めるべき事項を規定することができる。
- 2衆参各議院の規則は、会議その他の手続及び内部の規律に関する事項を広く規定しており、本会議における議事や議決の定足数、議事を非公開にするための要件などの議事に関する重要事項も、専ら各議院の規則が定めている。
- 3憲法は、内閣が定める政令についてのみ、法律の委任を条件に罰則を設けることを認めているので、各省大臣が定める省令については、法律の委任によって罰則を設けることはできない。
- 4最高裁判所は、訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について規則を定める権限を有するが、下級裁判所に関する規則を定める権限を、下級裁判所に委任することができる。
- 5会計検査院は、憲法上独立性が保障された機関であることから内部組織に関する自律権が認められており、その組織・権限は専ら会計検査院自身が定める規則によって規定される。
正解:4
解説
正解は肢4です。憲法77条1項は最高裁判所に訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する規則の制定権を与え、同条3項は下級裁判所に関する規則を定める権限を下級裁判所に委任することができるとしています。肢1は皇室典範が憲法2条にいう法律であって皇室会議の規則ではないため誤りです。肢2は議事の定足数(憲法56条1項)や秘密会の要件(57条1項)を憲法自身が定めており、肢3は法律の委任があれば省令にも罰則を置くことができ(国家行政組織法12条3項)、肢5は憲法90条2項が会計検査院の組織及び権限を法律で定めるとしているため、いずれも誤りです。
問8
行政法行政行為(処分)に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。
- 1瑕疵なく成立した授益的処分について、事後の事情の変化を理由に講学上の撤回をすることは、かかる撤回ができる旨を定める明文の規定が法律または条例にあるときに限られる。
- 2重大かつ明白な瑕疵を有する処分は当然に無効とされるが、処分の瑕疵が明白であるかどうかは、処分の外形上、客観的に誤認が一見看取し得るものであるかどうかにより決まる。
- 3一定の争訟手続に従って当事者を手続に関与せしめ、紛争の終局的解決を図ることを目的とする処分であっても、当該処分をした行政庁は、特別の規定がない限り、当該処分を取り消すことができる。
- 4既になされた授益的処分について、講学上の職権取消しができるのは、当該授益的処分の成立時に違法があるときに限られ、不当があるにすぎない場合は除外される。
- 5処分の成立時点において瑕疵があった場合、事後の事情の変化により当該瑕疵が解消するに至ったとしても、その瑕疵は治癒されることはなく、当該処分はそれを理由として取り消されるか、または当然に無効であるとされる。
正解:2
解説
正解は肢2です。最判昭和36年3月7日は、行政処分を当然無効とする瑕疵の明白性は、処分の外形上、客観的に誤認が一見看取し得るものであるかどうかにより決すべきものとしました。肢1は、法令に明文の根拠がなくても公益上の必要に基づき授益的処分を撤回できるとした最判昭和63年6月17日に反します。肢3は争訟裁断的行為の不可変更力を認めた最判昭和29年1月21日に反し、肢4は職権取消しの対象に違法だけでなく不当も含まれる点で誤りです。肢5は瑕疵の治癒を一切認めない点で判例に反し、いずれも妥当ではありません。
問9
行政法行政罰に関する次のア〜エの記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。 【ア】財団法人の理事の就任に関する登記が法定期間内に行われなかったことに対して科される過料は、非訟事件手続法に基づく手続によって科されるが、中立性のある裁判所によって、当事者の陳述の機会を設けた上で科されるものであり、かつ即時抗告も可能であることから、憲法上の適正手続の要請に反しているとはいえない。 【イ】カルテル行為を行ったことによって独占禁止法*違反被告事件において罰金刑が確定している者に対し、さらに独占禁止法の規定に基づき課徴金の納付を命ずることは、課徴金を課せられるべき違反者の行為を犯罪とし、それに対する刑罰として、これを課する趣旨でないことは明らかであるから、二重処罰の禁止には違反しない。 【ウ】所得税の確定申告において虚偽記載を行い所得税を脱税したことにより、懲役刑と罰金刑を併科された者に対して、さらに重加算税を科すことは、重加算税が申告納税を怠った者に対し、その行為の反社会性ないし反道徳性に着目し、これに対する制裁として科せられるものでもあるから、二重処罰の禁止に抵触する。 【エ】刑事裁判において正当な理由がなく証言を拒んだ場合に、刑事訴訟法に基づき裁判官により秩序罰として科される過料と、同法に基づき通常の刑事手続により科される罰金は、法廷秩序の維持という点で目的が共通しているから、両者を併科することは許されない。 (注) * 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律
- 1ア・イ
- 2ア・ウ
- 3イ・ウ
- 4イ・エ
- 5ウ・エ
正解:1
解説
正解は肢1です。アは最大決昭和41年12月27日で、過料は行政上の秩序罰であり、中立的な裁判所が当事者に陳述の機会を与えて科し即時抗告も認められる以上、憲法上の適正手続の要請に反しないとされました。イは最判平成10年10月13日で、独占禁止法の課徴金は違反行為の抑止のための行政上の措置であって刑罰ではないため、罰金との併科は二重処罰の禁止に反しないとされています。ウは追徴税と罰金の併科を合憲とした最大判昭和33年4月30日に反するため誤り、エは秩序罰である過料と刑罰である罰金は性質を異にし併科できるため誤りです。
問10
行政法行政行為の附款に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- 1行政庁は、行政行為に附款を付すことができる旨の法令の根拠が存在しない場合でも、裁量の範囲内で行政行為に附款を付すことができる。
- 2行政庁は、行政行為について撤回権を留保する附款を付すことができるが、このような附款を付さなかった場合には、法令に根拠のない限り、行政行為を撤回することはできない。
- 3行政行為の附款は行政庁の意思表示の一部を形成するものであるから、道路占用許可に付された使用料の納付などの負担を課す附款に違反した場合、当該占用許可は許可の時点に遡って無効となる。
- 4道路の占用許可について、開始と終了の具体的な日付を示す附款は、講学上の「条件」に該当する。
- 5行政行為の附款において、行政庁が負担として課すことができるのは作為義務に限られ、不作為義務を課すことはできない。
正解:1
解説
正解は肢1です。附款は行政行為の効果を制限し又は義務を付加するものであり、行政庁に裁量が認められる行政行為については、附款を付しうる旨の明文の規定がなくても、裁量の範囲内で附款を付すことができます。肢2は、撤回権の留保がなくても公益上の必要があれば撤回できるため誤りです。肢3は負担に違反しても本体の行政行為が当然に遡って無効となるわけではなく、肢4は開始と終了の具体的な日付を示す附款は講学上の「期限」であって条件ではありません。肢5は負担として不作為義務を課すことも可能であり、いずれも妥当ではありません。
問11
行政法行政手続法が定める弁明の機会の付与に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- 1不利益処分の名宛人となるべき者として弁明の機会の付与の通知を受けた者は、代理人を選任することができる。
- 2不利益処分の名宛人となるべき者として弁明の機会の付与の通知を受けた者は、行政庁に対し、弁明を記載した書面(弁明書)を提出する時までの間、当該不利益処分の原因となる事実を証する資料の閲覧を求めることができる。
- 3弁明を記載した書面(弁明書)が提出された後、当該不利益処分に利害関係を有する者が当該弁明書の閲覧を求めた場合、行政庁は、正当な理由があるときでなければ、その閲覧を拒むことができない。
- 4弁明を記載した書面(弁明書)の提出を受けた行政庁は、当該弁明についての調書及び報告書を作成しなければならない。
- 5行政庁は、弁明を記載した書面(弁明書)が提出された後に新たな事情が生じたときは、弁明書を提出した者に対しその再提出を求めなければならない。
正解:1
解説
正解は肢1です。行政手続法31条は、聴聞に関する15条3項・4項及び16条を弁明の機会の付与について準用しており、通知を受けた者は16条1項により代理人を選任することができます。肢2・肢3の文書等の閲覧は18条が聴聞についてのみ定めるもので、31条は準用していません。肢4の調書及び報告書の作成は24条が定める聴聞固有の手続であり、弁明の機会の付与では要求されていません。肢5のように新たな事情が生じたときに弁明書の再提出を求めるという規定も置かれていないため、いずれも妥当ではありません。
問12
行政法個人情報保護法*によれば、個人情報保護委員会は、個人情報取扱事業者が同法の定める一定の規定に違反した場合において個人の権利利益を保護するため必要があると認めるときは、当該事業者に対し、必要な措置をとるべき旨を勧告することができ(同法148条1項)、そして、当該事業者が正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかった場合において個人の重大な権利利益の侵害が切迫していると認めるときは、当該事業者等に対し、その勧告に係る措置をとるべきことを命ずること(以下「命令」という。)ができる(同条2項)。 上記の勧告と命令に関する次のア〜エの記述のうち、行政手続法の定めに照らし、妥当なものの組合せはどれか。なお、上記勧告は処分(同法2条2号)ではなく行政指導であり(同条6号)、命令は処分であることを前提にする。 【ア】勧告は、命令を行う前に執られる弁明の機会の付与のための通知に該当する。 【イ】勧告に携わる者は、その相手方に対し、勧告の趣旨及び内容並びに責任者を明確に示さなければならない。 【ウ】勧告を受けた者は、これに続く命令が個人情報保護法に規定する要件に適合しないと思料する場合、個人情報保護委員会に対し、行政手続法の定めに従って、当該命令をしないよう求めることができる。 【エ】個人情報保護委員会は、命令をする場合、その名宛人に対し、原則として、同時にその理由を示さなければならない。 (注) * 個人情報の保護に関する法律
- 1ア・ウ
- 2ア・エ
- 3イ・ウ
- 4イ・エ
- 5ウ・エ
正解:4
解説
正解は肢4です。イは行政手続法35条1項が、行政指導に携わる者は相手方に対し当該行政指導の趣旨及び内容並びに責任者を明確に示さなければならないと定めており正しい記述です。エは同法14条1項が、不利益処分をする場合には名あて人に対し同時にその理由を示さなければならないと定めており正しい記述です。アは、弁明の機会の付与の通知は同法30条が定める書面によるものであり、行政指導である勧告はこれに当たりません。ウは、同法36条の3の処分等の求めは是正のためにされるべき処分等を求める制度であって、処分をしないよう求めるものではないため誤りです。
問13
行政法行政手続法が定める申請に対する処分に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- 1行政庁は、申請を拒否する処分については申請者に対し当該処分の理由を示さなければならないが、それは申請者からの求めがあった場合に限られ、当該申請者の求める形で行えば足りる。
- 2行政庁は、申請者に対し、当該申請にかかる審査の進行状況及び当該申請に対する処分の時期の見通しを示すよう努めなければならないが、それは申請者の求めに応じて行えば足りる。
- 3行政庁は、申請に対する処分について処分基準を定めなければならないが、その処分基準を定めるにあたっては、処分の性質に照らしてできる限り具体的なものとしなければならない。
- 4行政庁は、申請を拒否する処分をしようとする場合には、当該申請者について意見陳述のための手続を執らなければならないが、その手続は原則として弁明の機会の付与で足りる。
- 5行政庁は、申請がその形式上の要件に適合しない場合には、速やかに、当該申請者に対し相当の期間を定めてその補正を求めなければならず、補正を求めることなく許認可等を拒否してはならない。
正解:2
解説
正解は肢2です。行政手続法9条1項は、行政庁は申請者の求めに応じ、当該申請に係る審査の進行状況及び処分の時期の見通しを示すよう努めなければならないと定める努力義務規定です。肢1は8条1項が拒否処分と同時に理由を示すことを義務づけており、求めがあったときに示せば足りるのは客観的指標が明確な場合に限られます。肢3は申請に対する処分について定めるのは審査基準(5条)であって処分基準ではありません。肢4は申請拒否処分が2条4号ロにより不利益処分から除かれ意見陳述の手続を要せず、肢5は7条が補正を求めるか拒否するかを選択できるとしており誤りです。
問14
行政法行政不服審査法の規定に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- 1法人でない社団または財団で代表者または管理人の定めがあるものは、その名で審査請求をすることができる。
- 2審査庁は、必要があると認めるときは審査請求人の代理人の選任を命じることができるが、選任された代理人は、審査請求人のために、取下げを含めた当該審査請求に関する一切の行為をすることができる。
- 3審査庁となるべき行政庁は、審理員となるべき者の名簿を作成しなければならないが、当該名簿を公にする必要はない。
- 4処分についての審査請求は、複数人が共同してすることはできず、各自がそれぞれ審査請求をする必要がある。
- 5処分の申請に対する不作為について審査請求をすることができる者は、申請者に限られることはなく、当該処分がなされることにつき法律上の利益を有する者も含まれる。
正解:1
解説
正解は肢1です。行政不服審査法10条は、法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものは、その名で審査請求をすることができると定めています。肢2は12条が代理人による審査請求を認めるものの選任を命じる規定はなく、また取下げには特別の委任を要します。肢3は17条が、審理員となるべき者の名簿を作成したときは備付けその他の適当な方法により公にしておかなければならないとしています。肢4は11条が共同審査請求を前提に総代の互選を定め、肢5は3条が不作為についての審査請求をできる者を法令に基づく申請をした者に限っているため、いずれも妥当ではありません。
問15
行政法審査請求と再調査の請求との関係に関する次の会話の下線部ア〜エのうち、妥当なものの組合せはどれか。 学生A: 今日は行政不服審査法の定める審査請求と再調査の請求との関係について学んでいこう。 学生B: 再調査の請求は、処分庁自身がその処分の適否を再度見直すための仕組みだね。 学生A: まず、行政処分について、ア処分庁以外の行政庁に対して審査請求をすることができる場合には、処分庁に対して再調査の請求を当然にすることができる。 学生B: なるほど、実際には、租税や年金分野において多く提起されているようだね。 学生A: そして、イ再調査の請求は任意的なものであるので、再調査の請求ができる場合でも、直ちに審査請求を提起することもできる。 学生B: じゃあ、再調査の請求と審査請求の両方を同時に提起できるのかな? 学生A: ちょっと待って…。どうやら、ウ再調査の請求をすると、原則として、その決定を経た後でなければ審査請求はできないことになっている。 学生B: それでは、再調査の請求をしても、決定が出るのが遅れた場合にはどうなるのだろう? 学生A: その場合でも、決定を経ることなく、審査請求をすることができる。エこのような場合、行政不服審査法では、再調査の請求が棄却されたとみなされることになっている。 学生B: なかなか複雑な仕組みだね。正しく覚えておこう。
- 1ア・イ
- 2ア・ウ
- 3イ・ウ
- 4イ・エ
- 5ウ・エ
正解:3
解説
正解は肢3です。イは行政不服審査法5条1項ただし書が、審査請求をしたときは再調査の請求ができないと定める反面、再調査の請求ができる場合でも直ちに審査請求を選べることを示しており正しい記述です。ウは同条2項本文が、再調査の請求をしたときはその決定を経た後でなければ審査請求をすることができないとしており正しい記述です。アは、再調査の請求ができるのは法律にその旨の定めがあるときに限られ「当然に」ではありません。エは、同条2項1号が3月を経過しても決定がない場合に審査請求を認めるだけで、棄却とみなす規定は置かれていないため誤りです。
問16
行政法行政不服審査法が定める教示に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- 1行政庁は、利害関係人から、当該処分が不服申立てをすることができる処分であるかどうかや不服申立期間等につき教示を求められても、利害関係人は処分の相手方以外の者であることから、当該事項等を教示する必要はない。
- 2行政庁は、審査請求もしくは再調査の請求または他の法令に基づく不服申立てをすることができる処分を書面でする場合、当該処分の相手方に対し、不服申立てができること、不服申立てをすべき行政庁、不服申立てができる期間について、教示をしなければならないが、口頭による教示も認められている。
- 3行政庁は、利害関係人から、当該処分が不服申立てをすることができる処分であるかどうかや不服申立期間等につき書面による教示を求められた場合であっても、これに代えて口頭により教示をすることができる。
- 4処分庁により審査請求をすべき行政庁について誤った行政庁が教示された場合、誤って教示された行政庁に書面で審査請求がなされたときは、当該行政庁は、審査庁となるべき行政庁を改めて教示し、審査請求人に審査請求書を返送しなければならない。
- 5処分庁が不服申立てをすべき行政庁につき教示を怠った場合、当該処分に不服がある者は、処分庁に審査請求書を提出することができ、処分庁以外の行政庁に審査請求ができる処分であるときは、処分庁は、審査請求書を当該行政庁に送付しなければならず、送付された場合、初めから当該行政庁に審査請求がされたものとみなされる。
正解:5
解説
正解は肢5です。行政不服審査法83条1項は教示を怠った場合に処分庁へ不服申立書を提出できるとし、同条3項は処分庁以外の行政庁に審査請求ができる処分であれば処分庁が当該行政庁に送付しなければならないとし、同条4項は送付されたときは初めから当該行政庁に審査請求がされたものとみなすと定めます。肢1・肢2・肢3は、82条が利害関係人から求められたときの教示義務、書面でする処分についての書面教示、書面による求めに対する書面教示をそれぞれ定めている点に反します。肢4は22条1項が返送ではなく審査庁となるべき行政庁への送付を求めており誤りです。
問17
行政法抗告訴訟の対象に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。
- 1関税定率法(当時)の規定に基づく輸入禁制品に該当する貨物と認めるのに相当の理由がある旨の税関長による通知は、いわゆる観念の通知と見るべきものであるが、当該通知があった場合には、輸入申告者は貨物を適法に輸入する道を閉ざされるのであって、これは当該通知によって生ずるに至った法律上の効果と見るのが相当であり、当該通知は行政処分に当たる。
- 2交通反則金の納付の通告は、通告を受けた者において通告に係る反則金を納付すべき法律上の義務を生じさせるものであるから、行政処分に当たる。
- 3地方公共団体の水道事業において、水道料金を条例の適用範囲全域につき一律に値上げすることを内容とする水道給水条例が制定された場合、水道の利用者はかかる条例の施行によって値上げされた水道料金の支払義務を負うこととなるため、当該条例の制定行為は行政処分に当たる。
- 4登録免許税を過大に納付して登記を受けた者が、登記機関に対して税務署長への還付通知を行うように登録免許税法に基づいて請求した場合、当該通知を拒否する旨の登記機関による通知は、登記等を受けた者の手続上の地位を否定する法的効果を有さないため、行政処分に当たらない。
- 5都市計画法に基づく都市計画決定としてなされる工業地域指定は、これによって当該地域内において、建築物の建築を制限する法的効果が土地所有者等に対して生じることとなるため、具体的な権利侵害を伴うものであるから、行政処分に当たる。
正解:1
解説
正解は肢1です。最判昭和54年12月25日は、輸入禁制品に該当する旨の税関長の通知は観念の通知であるが、これにより輸入申告者は当該貨物を適法に輸入する道を閉ざされるという法律上の効果を生ずるとして、処分性を認めました。肢2は交通反則金の納付通告の処分性を否定した最判昭和57年7月15日、肢3は水道料金を改定する条例の制定行為の処分性を否定した最判平成18年7月14日、肢5は用途地域の指定の処分性を否定した最判昭和57年4月22日に反します。肢4は登録免許税の還付通知をすべき旨の請求に対する拒否通知に処分性を認めた最判平成17年4月14日に反し、妥当ではありません。
問18
行政法処分取消訴訟の出訴期間について定めた下記の規定に関する次の記述のうち、法令および最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。 行政事件訴訟法(行訴法)14条1項「取消訴訟は、処分…があったことを知った日から6箇月を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。」なお、本問では「処分…があったことを知った日」を「基準日」という。
- 1行訴法は、行訴法14条1項のほかに、処分の日から一定期間を経過したときは、取消訴訟を提起することができない旨の定めを置いているが、この定めには「正当な理由があるときは、この限りでない。」とのただし書きは付されていない。
- 2個人情報保護条例(当時)に基づく保有個人情報の一部開示決定に対する取消訴訟について、開示文書の内容の詳細や不利益性を認識した時が基準日となることから、基準日は、当該決定の通知書が到達した日ではなく、当該開示文書が到達した日とされる。
- 3行訴法14条1項が定める出訴期間の定めは、無効等確認訴訟の他、形式的当事者訴訟にも準用されることが行訴法において規定されている。
- 4審査請求をすることができる処分についてそれがなされた場合、当該処分に係る取消訴訟は、当該審査請求をした者については、行訴法14条1項の規定にかかわらず、当該審査請求を行った日が基準日とされる。
- 5都市計画法における都市計画事業の認可のように、処分が個別の通知ではなく告示をもって多数の関係権利者等に画一的に告知される場合には、当該告示があった日が基準日とされる。
正解:5
解説
正解は肢5です。最判平成14年10月24日は、都市計画事業の認可のように告示によって多数の関係権利者等に画一的に告知される処分については、行政不服審査法14条1項(当時)にいう「処分があったことを知った日」とは告示があった日をいうとしました。同じ文言を用いる行政事件訴訟法14条1項の基準日も同様に解されます。肢1は同条2項の1年の期間にも「正当な理由があるときは、この限りでない」とのただし書が付されています。肢2は決定の通知書が到達した日が基準日となり、肢3は14条が38条1項の準用対象に含まれず、肢4は14条3項が裁決があったことを知った日を基準とするため、いずれも妥当ではありません。
問19
行政法処分差止めの訴えに関する次のア〜オの記述のうち、法令および最高裁判所の判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。 【ア】処分差止めの訴えは、一定の処分がされることにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があるときに限り提起することができる。 【イ】処分差止めの訴えは、対象となる処分がされることにより生ずるおそれのある損害が、処分がされた後に取消訴訟等を提起して執行停止の決定を受けることなどにより容易に救済を受けることができないときに提起することができるとするのが判例である。 【ウ】処分差止めの訴えは、義務付けの訴えと同様、申請に対する処分を対象にする場合とそれ以外の処分を対象にする場合に区分され、訴訟要件と本案勝訴要件につき、それぞれ別個の定めが置かれている。 【エ】取消しの訴えについては、処分又は裁決を取り消す判決は、第三者に対しても効力を有する旨の規定が置かれているが、この規定は、処分差止めの訴えには準用されていない。 【オ】仮の差止めは、処分差止めの訴えを提起する前においても申し立てることができるが、本案について理由がないとみえるときは、仮の差止めの決定をすることができない。
- 1ア・イ
- 2ア・オ
- 3イ・エ
- 4ウ・エ
- 5ウ・オ
正解:3
解説
正解は肢3です。イは最判平成24年2月9日が、処分がされた後に取消訴訟等を提起して執行停止の決定を受けることにより容易に救済を受けられるとはいえない場合に、差止めの訴えの「重大な損害を生ずるおそれ」が認められるとしており正しい記述です。エは行政事件訴訟法38条1項が準用する条文に第三者効を定める32条が含まれていないため正しい記述です。アは37条の4第1項が「重大な損害を生ずるおそれ」を要件としており、償うことのできない損害と緊急の必要は仮の差止め(37条の5第2項)の要件です。ウの区分は義務付けの訴えのものであり、オも仮の差止めは訴え提起後に限られるため誤りです。
問20
行政法国家賠償法1条に関する次のア〜エの記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。 【ア】国家賠償法1条は「公権力の行使」によって生じた損害に適用されるが、ここにいう「公権力の行使」は、行政事件訴訟法において抗告訴訟の対象を表す「公権力の行使」と同じ意味であるから、国会議員が行う立法行為は、この概念には含まれないとするのが判例である。 【イ】国家賠償法1条は「公権力の行使」によって生じた損害に適用されるが、行政指導や情報提供などの非権力的行政作用も、ここにいう「公権力の行使」に含まれうるとするのが判例である。 【ウ】国家賠償法1条による賠償責任を認めるには、加害公務員が「職務を行うについて」他人に損害を与えていることが必要であり、公務員が職務執行の意思をもたずに私的な目的のためになした違法行為については、その外形のいかんにかかわらず、行政主体の賠償責任は成立しないとするのが判例である。 【エ】国家賠償法1条による賠償責任を認めるには、加害公務員が職務上尽くすべき注意義務に違反していることが必要であるが、公務員が法律解釈を誤って違法行為を行ったとしても、それにつき異なる見解が対立し、そのいずれについても相当の根拠が認められる場合には、行政主体の賠償責任は成立しないとするのが判例である。
- 1ア・イ
- 2ア・ウ
- 3ア・エ
- 4イ・エ
- 5ウ・エ
正解:4
解説
正解は肢4です。イは、国家賠償法1条の「公権力の行使」は、純粋な私経済作用と公の営造物の設置管理作用を除く行政作用を広く含むと解されており、行政指導や情報提供などの非権力的作用もこれに当たるため正しい記述です。エは最判平成16年1月15日などが、公務員が法律解釈を誤っても、これについて見解が対立し、いずれについても相当の根拠が認められる場合には過失を否定しており正しい記述です。アは、立法行為も「公権力の行使」に含まれるとした最判昭和60年11月21日に反します。ウは、私的な目的でされた行為であっても客観的に職務執行の外形を備えていれば責任が成立するとした外形標準説(最判昭和31年11月30日)に反し、誤りです。
問21
行政法国家賠償法に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。 (注) * 失火ノ責任ニ関スル法律
- 1国又は公共団体の損害賠償の責任については、民法の規定が補充的に適用されるとされており、失火責任法*もここにいう民法に含まれるが、消防署職員の消火活動が不十分なため残り火が再燃して火災が発生した事案は、失火責任法にいう「失火」に該当せず、失火責任法の適用はない。
- 2国又は公共団体の公権力の行使に当たる複数の公務員が、その職務を行うについて、共同して故意によって違法に他人に加えた損害につき、国又は公共団体がこれを賠償した場合において、当該加害公務員は、国又は公共団体に対し、各自が負う責任の度合いや資力の有無に応じて分割された求償債務を負う。
- 3市町村が設置する学校の教諭につき、当該教諭の給与を都道府県が負担する場合において、当該教諭がその職務を行うについて故意又は過失によって違法に生徒に損害を与えたときは、当該教諭の給与を負担する都道府県が、国家賠償法に基づく損害賠償の義務を負い、学校の設置主体である当該市町村は、同法に基づく損害賠償責任を負わない。
- 4公の営造物の設置又は管理に瑕疵があることによる国家賠償責任につき、当該営造物の設置又は管理に当たる者とその費用の負担者とが異なるときは、その双方が責任を負うことになるが、ここにいう設置費用の負担者には、当該営造物の設置費用につき法律上の負担義務を負う者のほか、この者と同等もしくはこれに近い設置費用を負担し、実質的には事業を共同して執行していると認められる一定範囲の者も含まれる。
- 5国又は公共団体の公務員による一連の職務上の行為の過程において他人(被害者)に被害を生ぜしめた事案においては、それらの一連の行為を組成する各行為のいずれもが国又は同一の公共団体の公務員の職務上の行為にあたる場合であったとしても、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任が成立するためには、被害者において、当該事案における加害行為とそれを行った者を特定しなければならない。
正解:4
解説
正解は肢4です。最判昭和50年11月28日は、国家賠償法3条1項にいう費用の負担者には、法律上負担義務を負う者のほか、これと同等もしくはこれに近い費用を負担し、実質的には事業を共同して執行していると認められる者も含まれるとしました。肢1は消防職員の消火活動が不十分で残り火が再燃した事案にも失火責任法の適用を認めた最判昭和53年7月17日に反します。肢2は求償債務を連帯債務とした最判令和2年7月14日に反し、肢3は市町村が1条1項により責任を負い、給与を負担する都道府県も3条1項により責任を負うため誤りです。肢5は加害公務員の特定を要しないとした最判昭和57年4月1日に反します。
問22
行政法条例の適法性に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当でないものはどれか。
- 1ため池の破損等の原因となる堤とうの使用行為は憲法、民法の保障する財産権の行使の埒外にあることから、これを条例をもって禁止し、処罰の対象にしても憲法および法律に抵触するものとはいえない。
- 2地方自治法の定める相当に具体的な内容の事項につき、同法に基づき限定された刑罰の範囲内において、条例をもって罰則を定めることは憲法31条に反するとはいえない。
- 3暴走族による集会等を規制する暴走族追放条例は、その規制対象が本来的な意味における暴走族およびその類似集団による集会に限定されると解されることから、憲法21条1項、31条に反するとはいえない。
- 4国民健康保険の保険料率を定める国民健康保険条例が、市長に対して、条例の定める基準に基づき保険料率を決定・公示することを委任したとしても、そのことが憲法84条の趣旨に違反するとはいえない。
- 5集団行進および集団示威行為における交通秩序の維持を目的とする条例は、道路交通法と同一の行為を処罰することになるため、憲法31条に違反する。
正解:5
解説
正解は肢5です。徳島市公安条例事件(最大判昭和50年9月10日)は、条例が国の法令と別の目的に基づく規律であったり、同一の目的であっても法令が全国一律の規制を意図するものでない場合には法令に違反しないとしており、道路交通法と重なる規制を直ちに違憲・違法とはしていません。肢1は奈良県ため池条例事件(最大判昭和38年6月26日)、肢2は条例による罰則を合憲とした最大判昭和37年5月30日、肢3は広島市暴走族追放条例事件(最判平成19年9月18日)、肢4は旭川市国民健康保険条例事件(最大判平成18年3月1日)の判示に沿う妥当な記述です。
問23
行政法都道府県における知事と議会の関係に関する次の記述のうち、法令に照らし、妥当なものはどれか。
- 1議会の議決に属する事項については、軽易な事項であるか否かにかかわらず、議会が議決により知事の専決処分に委ねることはできない。
- 2知事は、議会における議決について異議があるときは、その議決が法令に違反しないものである場合であっても、当該議決を再議に付すことができる。
- 3再議の結果、議決がなお法令に違反すると知事が認める場合には、内閣総理大臣に対し審査を申し立てることができる。
- 4知事は、緊急を要するため議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであると認める場合には、議決事項を専決処分とすることができるが、後に議会がこれを承認しない場合には、当該専決処分は無効となる。
- 5議会により不信任が議決された場合には、知事は議会を解散することができるが、解散後初めて議会が招集された時に自動的に失職する。
正解:2
解説
正解は肢2です。地方自治法176条1項は、議会の議決について異議があるときは、長は理由を示してこれを再議に付することができると定めており、議決が違法であることは要件ではありません。肢1は180条1項が、軽易な事項で議会が議決により指定したものを専決処分にできるとしています。肢3は176条5項が都道府県知事の申立先を総務大臣としており内閣総理大臣ではありません。肢4は179条の専決処分について議会の承認が得られなくても処分の効力は失われず、肢5は178条2項が解散後初めて招集された議会で再び不信任の議決があったときに失職するとしているため、いずれも妥当ではありません。
問24
行政法普通地方公共団体に対する国又は都道府県の関与に関する次のア〜エの記述のうち、妥当なものの組合せはどれか。 【ア】各大臣は、その担任する事務に関し、都道府県の自治事務の処理が法令の規定に違反していると認めるときは、当該都道府県に対し、是正の要求をすることができる。 【イ】各大臣は、その担任する事務に関し、市町村の自治事務の処理が法令の規定に違反していると認めるときに、都道府県知事に対し、当該事務の処理について違反の是正のために必要な措置を講ずべきことを当該市町村に求めるよう指示をすることはできず、これを当該市町村に対し直接に指示することができる。 【ウ】都道府県知事は、市町村長の担任する自治事務の処理が法令の規定に違反していると認めるときは、各大臣の指示によることなく、当該市町村に対し、是正の要求をすることができる。 【エ】各大臣は、その所管する法律又はこれに基づく政令に係る都道府県の法定受託事務の処理が法令の規定に違反していると認めるときは、当該都道府県に対し、是正の指示をすることができる。
- 1ア・イ
- 2ア・エ
- 3イ・ウ
- 4イ・エ
- 5ウ・エ
正解:2
解説
正解は肢2です。アは地方自治法245条の5第1項が、各大臣は都道府県の自治事務の処理が法令の規定に違反していると認めるときは当該都道府県に是正の要求ができると定めており正しい記述です。エは245条の7第1項が、都道府県の法定受託事務について各大臣が是正の指示をできると定めており正しい記述です。イは、市町村の自治事務については245条の5第2項により各大臣が都道府県の執行機関に指示し、同条3項によりその執行機関が市町村に是正の要求をするのが原則であるため誤りで、ウもその指示を前提としない点で誤りです。なお緊急を要する場合等は同条4項により各大臣が直接求めることができます。
問25
行政法建築に関わる紛争に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。
- 1東京都建築安全条例に基づく安全認定を先行処分とする建築確認の取消訴訟において、当該安全認定について裁判所が審査できるのは、重大かつ明白な瑕疵があり無効か否かに限定される。
- 2建築主事は、建築確認の申請書を受理してから一定期間内に申請者に確認済証を交付しなければならないところ、この期間経過後も交付をしないことが適法とされるのは、当該申請者がそれにつき任意に同意をしているものと明確に認められる場合に限られる。
- 3建築確認は、建築工事の開始前に、当該建築物の計画が建築関係規定に適合することを公権的に判断する行為にすぎないため、建築確認に対する取消訴訟の係属中に、当該建築確認に係る建築工事が完了した場合、当該取消訴訟の訴えの利益は消滅する。
- 4民間の指定確認検査機関が行った建築確認につき、その取消訴訟を提起した原告が、この訴えを、損害賠償を求める訴えに変更することの許可を申し立てる場合、変更後の訴えの被告は、当該指定確認検査機関である民間法人となる。
- 5一級建築士により構造計算書に偽装が行われていた建築物の計画について、これを看過した建築主事による建築確認が国家賠償法の適用上違法となる余地はなく、当該建築確認の申請者である建築主による国家賠償請求は認められない。
正解:3
解説
正解は肢3です。最判昭和59年10月26日は、建築確認は当該建築物の計画が建築関係規定に適合することを公権的に判断する行為にすぎないから、確認に係る工事が完了した後は、確認の取消しを求める訴えの利益は失われるとしました。肢1は安全認定の違法を建築確認の取消訴訟で主張できるとした最判平成21年12月17日に反します。肢2は行政指導との関係で応答を留保することが直ちに違法とはならないとした最判昭和60年7月16日に反し、肢4は変更後の訴えの被告が建築主事を置く地方公共団体となるとした最決平成17年6月24日に反します。肢5も、建築主事は申請をした建築主との関係でも職務上の法的義務を負うとした最判平成25年3月26日に反し、妥当ではありません。
問26
行政法行政機関情報公開法*(以下「法」という。)に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。 (注) * 行政機関の保有する情報の公開に関する法律
- 1開示請求にかかる行政文書に個人に関する情報が含まれている場合、開示請求者は、法が定める範囲内で、行政機関において、特定の個人を識別することができないように個人情報を加工した情報を記載した新たな別の行政文書を作成し、その交付を求めることができる。
- 2法にいう「行政文書」とは、行政機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画及び電磁的記録であって、当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして、事案処理手続における決裁、縦覧を経た上で当該行政機関が保有しているものをいう。
- 3法は、国民主権の理念にのっとり、行政文書の開示を請求する権利につき定めることにより、政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにすることを目的としていることから、外国に在住する外国人は、行政文書の開示を請求する権利を有しない。
- 4法は、個人に関する情報について、それが一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる情報であるか否かにかかわりなく、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるものを不開示情報としている。
- 5行政機関の長は、開示請求に係る行政文書の一部に不開示情報が記録されている場合において、不開示情報が記録されている部分を容易に区分して除くことができるときは、法の定める場合を除き、開示請求者の求めに応じ、当該部分を除いた情報の概要を記載した新たな別の文書を作成し、これを交付しなければならない。
正解:4
解説
正解は肢4です。行政機関情報公開法5条1号は、個人に関する情報のうち、氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるものを不開示情報とする個人識別型を採っており、他人に知られたくないと望むことが正当かどうかを要件としていません。肢1・肢5のように新たな文書を作成して交付する義務は法に定められていません。肢2は2条2項が組織的に用いるものとして保有していることを要件とし、決裁や縦覧を経たことまで求めていません。肢3は3条が「何人も」開示請求できるとし外国に在住する外国人も請求権を有するため、いずれも誤りです。
問27
民法行為能力に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし、誤っているものはどれか。
- 1補助人の同意を得なければならない行為について、補助人が被補助人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被補助人の請求により、補助人の同意に代わる許可を与えることができる。
- 2後見開始の審判をする場合において、本人が被保佐人又は被補助人であるときは、家庭裁判所は、その本人に係る保佐開始又は補助開始の審判を取り消さなければならない。
- 3被保佐人が遺産の分割をする場合には、その保佐人の同意を得る必要はないが、被保佐人が相続の承認又は放棄をする場合には、その保佐人の同意を得なければならない。
- 4制限行為能力者が、行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。
- 5制限行為能力者の相手方が、制限行為能力者が行為能力者とならない間に、その法定代理人、保佐人又は補助人に対し、その権限内の行為について、1箇月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をした場合、これらの者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす。
正解:3
解説
正解は肢3です。民法13条1項6号は「相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること」を保佐人の同意を要する行為として掲げており、遺産分割についても同意が必要です。同意を得る必要がないとする肢3が誤りです。肢1は17条3項が補助人の同意に代わる家庭裁判所の許可を定め、肢2は19条1項が後見開始の審判の際に保佐開始又は補助開始の審判を取り消すべきものとし、肢4は21条が詐術を用いた制限行為能力者の取消権を否定し、肢5は20条2項が法定代理人等への催告に確答がないときを追認とみなしており、いずれも正しい記述です。
問28
民法代理人の行う代理行為に関する次のア〜オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。 【ア】任意後見契約に基づく任意代理人は、任意後見契約で定められた被後見人の財産に関する代理行為を行うのに対し、家庭裁判所の審判により選任された法定代理人である後見人は、家庭裁判所の審判において定められた被後見人の特定の財産行為についてのみ代理行為を行う。 【イ】法定代理人は、任意代理人と異なり、いつでも復代理人を選任することができるが、やむを得ない事由があるときは、本人に対してその選任及び監督についての責任のみを負う。 【ウ】法定代理人も任意代理人も、本人が死亡した場合には当然に代理権を失うが、任意代理については、本人と任意代理人との間に本人が死亡した後も代理権が存続する旨の合意がある場合には、本人が死亡した後も代理権が存続する。 【エ】代理人であった者がその代理権が消滅した後に、その代理権の範囲内において代理行為を行った場合、その者が当該代理人が任意代理人であったか法定代理人であったかを問わず、本人は、代理権の消滅について善意・無過失の第三者に対して、その責任を負う。 【オ】代理人が制限行為能力者であったとしても、当該代理人の代理行為を制限行為能力を理由として取り消すことはできず、これは当該代理人が他の制限行為能力者の法定代理人である場合でも同様である。
- 1ア・エ
- 2ア・オ
- 3イ・ウ
- 4イ・オ
- 5ウ・エ
正解:3
解説
正解は肢3です。イは民法105条が、法定代理人は自己の責任で復代理人を選任することができ、やむを得ない事由があるときは本人に対してその選任及び監督についての責任のみを負うと定めており正しい記述です。ウは111条1項2号により本人の死亡で代理権は消滅しますが、判例は本人の死亡後も代理権を存続させる旨の合意を有効としており正しい記述です。アは成年後見人が包括的な代理権を有する点で誤りです。エは112条1項が「他人に代理権を与えた者は」と規定し法定代理には及ばないと解される点で、オは102条ただし書が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為を除外している点で誤りです。
問29
民法即時取得に関する次のア〜オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。 【ア】Aは、相続により、被相続人Bが現に占有していた動産甲を、それが設置された不動産と共に承継したが、甲はCの所有物であった。この場合、甲がBの所有物でないことにつきAが善意・無過失であれば、Aは甲を即時取得する。 【イ】Aは、売買により動産乙を、現にそれを占有する未成年者Bから購入して現実の引渡しを受けたが、その後、Bの法定代理人Cが、AB間の売買契約を未成年を理由に取り消した。この場合、Bが未成年者であったことにつきAが善意・無過失であれば、Aは乙を即時取得する。 【ウ】Aは、売買により動産丙を、現にそれを占有するBから購入して現実の引渡しを受けた。丙が自動車である場合、丙が登録済みであるか否かにかかわらず、Aは丙を即時取得しない。 【エ】Aは、売買により動産丁を、それを占有代理人Cによって占有するBから購入し、BはCに今後Aのために占有するように指示してAがそれを承諾した。丁はAからBに寄託されているものであった場合、承諾時において丁がBの所有物でないことにつきAが善意・無過失であれば、後にその事実を知るに至ったとしても、Aは丁を即時取得する。 【オ】Aは、売買により動産戊を、現にそれを占有するBから購入したが、その際、AがBの元に戊を引取りにいくこととし、それまでの間、BがAのために占有することが合意された。戊はBが他から賃借したものであった場合、AがBから戊の現実の引渡しを受ける時点において、戊がBの所有物でないことにつきAが善意・無過失であれば、Aは戊を即時取得する。
- 1ア・ウ
- 2ア・オ
- 3イ・ウ
- 4イ・エ
- 5エ・オ
正解:5
解説
正解は肢5です。エは、指図による占有移転によっても即時取得が成立するとした判例に沿い、承諾の時に善意無過失であればその後に事実を知っても取得は覆りません。オは、占有改定では即時取得は成立しませんが、後に現実の引渡しを受けた時点で善意無過失であればその時に成立するため正しい記述です。アは相続が民法192条にいう「取引行為」に当たらず、イは即時取得が前主の無権利を治癒する制度であって行為能力の制限による取消しを覆すものではないため誤りです。ウは未登録の自動車には即時取得の適用があるため、いずれも妥当ではありません。
問30
民法Aは、Bとの間でA所有の建設機械甲(以下「甲」という。)をBに売却する旨の本件売買契約を締結し、甲をBに引き渡したが、弁済期が徒過したにもかかわらずBから代金の支払を受けていない。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。
- 1AはBに対して、催告した上で代金不払を理由として本件売買契約を解除する旨の通知を行った場合、その後Bは甲をCに売却して引き渡したとしても、Aは、Cに対して甲の返還を求めることができる。
- 2DがBから甲の修理を請け負い、修理を終えて甲をBに返還したが報酬の支払を受けていない場合においても、Aは、甲につき先取特権を行使して、Dに先立って優先弁済を受けることができる。
- 3BがEのために甲に質権を設定した場合においても、Aは、甲につき先取特権を行使して、Eに先立って優先弁済を受けることができる。
- 4BがFのために甲を譲渡担保に供して占有改定の方法により引き渡した場合においても、Aは、甲につき先取特権を行使することができ、Fはこれに対して異議を述べることはできない。
- 5本件売買契約において所有権留保特約が設けられていた場合、BがGのために甲を譲渡担保に供して占有改定の方法により引き渡したとしても、Aは、Bに対して留保所有権に基づいて甲の引渡しを求めることができ、Gはこれに対して異議を述べることはできない。
正解:5
解説
正解は肢5です。所有権留保売主は代金完済まで所有権を留保しており、買主から占有改定により譲渡担保の設定を受けた者は買主が有する以上の権利を取得できないため、Aは留保所有権に基づき甲の引渡しを求めることができます。肢1は、Cが解除の意思表示の後に登場した解除後の第三者であり、545条1項ただし書ではなく物権の復帰と譲渡との対抗問題として処理されるため、動産である甲については民法178条により先に引渡しを受けたCが優先し、AはCに返還を求められません。肢2は330条1項により動産の保存の先取特権が動産の売買の先取特権に優先し、肢3は334条により動産質権者が第一順位の先取特権者と同一の権利を有します。肢4は譲渡担保権者が333条の第三取得者に当たるため誤りです。
問31
民法Aを売主、Zを買主とする売買契約に基づいて発生したAのZに対する売買代金債権(以下「本件債権」という。)を、AがBに譲渡し、その旨の債権譲渡通知(以下「本件債権譲渡通知」という。)が内容証明郵便によって行われ、Zに到達した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。
- 1本件債権譲渡通知がZに到達する前に、ZがすでにAに対して本件債権を弁済していた場合、Zは、Bから本件債権の弁済を請求されたとしても、これを拒むことができる。
- 2Aは、本件債権をBに譲渡した直後にCに対しても譲渡し、その旨の債権譲渡通知が内容証明郵便によって行われ、これが本件債権譲渡通知と同時にZに到達した。Zが、Bから本件債権の弁済を求められた場合、同順位の対抗要件を具備したCの存在を理由として、これを拒むことができる。
- 3Aは、本件債権をBに譲渡した直後にCに対しても譲渡し、その旨の債権譲渡通知が内容証明郵便によって行われ、これが本件債権譲渡通知と同時にZに到達したため、Zが、本件債権につき弁済供託を行った場合、Bは、本件債権全額については供託金の還付を請求することはできない。
- 4本件債権譲渡通知がZに到達する前に、ZがすでにAに対して貸金債権を有している場合、当該通知の到達後に、Aに対して本件債権と当該貸金債権を相殺する旨の意思表示を行ったとしても、Zは、この相殺による本件債権の消滅をBに対して主張することができる。
- 5本件債権譲渡通知がZに到達した後になって、AZ間の売買契約の履行としてAから引き渡された目的物の品質が契約に適合しておらず、ZのAに対する損害賠償請求権が発生したため、Zは、Aに対して本件債権と当該損害賠償請求権を相殺する旨の意思表示を行った。Zは、この相殺による本件債権の消滅をBに対して主張することができる。
正解:2
解説
正解は肢2です。確定日付のある譲渡通知が同時に到達した場合、各譲受人は債務者に対して債権全額の弁済を請求することができ、債務者は他に同順位の譲受人がいることを理由に支払を拒むことはできないとするのが判例です。したがって肢2が妥当ではありません。肢1は通知到達前の弁済を譲受人に対抗できる点(民法468条1項)で妥当です。肢3は同時到達で供託された場合に各譲受人が債権額に応じて按分した額の還付を受けるとする判例に沿い、肢4は469条1項、肢5は469条2項1号が対抗要件具備時より前の原因に基づいて生じた債権による相殺を認めており、いずれも妥当です。
問32
民法AとBが、Cから連帯して400万円を借りている場合(AとBの負担部分は200万円ずつ)に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。
- 1Aが、Cに400万円を弁済するのに先立ち、Bに事前の通知をすることを怠った場合において、すでに弁済により共同の免責を得ていたBがAに事後の通知をしていなかったときは、Aは、Bに対して自己の免責行為を有効であるとみなすことができる。
- 2Aが、Cに400万円を弁済するのに先立ち、Bに事前の通知をしないで弁済をし、共同の免責を得た場合において、Bは、Cに対して200万円の反対債権を有していたときは、自己の負担部分の200万円について、Aの求償に対して相殺をもって対抗できる。
- 3Aが、Cに対して400万円の反対債権を有する場合において、Aが相殺を援用したときは、Aの負担部分の200万円についてのみ、Bの利益のためにも、その効力を生ずる。
- 4Cが、Aに対して債務を免除した場合において、Aの負担部分の200万円の限度で、Bは、Cに対して債務の履行を拒むことができる。
- 5AのためにCの貸金債権の消滅時効が完成した場合において、BがCに400万円を弁済したときは、Bは、Aに求償権を行使することができない。
正解:2
解説
正解は肢2です。民法443条1項は、他の連帯債務者があることを知りながら事前の通知をせずに弁済した者に対し、他の連帯債務者は債権者に対抗することができた事由をその負担部分について対抗できるとしており、Bは自己の負担部分200万円につき反対債権による相殺を主張できます。肢1は443条2項の適用には第二の弁済者が事前の通知をしたことを要するとする判例に反します。肢3は439条1項により相殺は債権全額について効力を生じ、肢4・肢5は441条の相対的効力の原則と445条により、免除や時効の完成があっても求償は妨げられないため誤りです。
問33
民法消費貸借契約に関する次のア〜オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。 【ア】消費貸借契約は書面によっても行うことができるが、書面でする消費貸借契約の貸主は、借主が消費貸借契約の目的物を受け取るまでの間は当該消費貸借契約を解除することができ、解除によって損害を受けた借主は、貸主に対してその損害の賠償を請求することができる。 【イ】金銭消費貸借契約の借主が、利息の支払を含む貸金返還債務を新しい消費貸借契約の目的とすることを貸主と合意したときは、これにより新たな消費貸借契約が成立するが、旧契約に付された利息の約定が利息制限法の上限利率を超過する場合には、その限りで当該新たな消費貸借契約は無効となる。 【ウ】消費貸借契約は原則として利息の発生を伴い、無利息とするためには特約が必要である。 【エ】消費貸借契約において、契約内容に適合しない物が借主に引き渡された場合、当該消費貸借契約が利息付きであるか無利息であるかにかかわらず、借主はその物の価額を返還することができる。 【オ】消費貸借契約において返還時期の定めがない場合、当該消費貸借契約が利息付きであるか無利息であるかにかかわらず、貸主は借主に対していつでもその貸借物の返還を求めることができ、借主は返還請求があった時から直ちに履行遅滞の責任を負う。
- 1ア・ウ
- 2ア・エ
- 3イ・エ
- 4イ・オ
- 5ウ・オ
正解:3
解説
正解は肢3です。イは民法588条の準消費貸借について、旧債務のうち利息制限法の制限を超える部分は無効であり、その部分については新たな消費貸借も成立しないと解されるため正しい記述です。エは590条2項が、利息の特約の有無にかかわらず、引き渡された物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないときは借主はその物の価額を返還することができると定めており正しい記述です。アは587条の2第2項が解除権を認めるのは借主であって貸主ではありません。ウは589条1項が特約がなければ利息を請求できないとし、オは591条1項が相当の期間を定めた催告を要するため誤りです。
問34
民法不当利得に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。
- 1盗品である動産甲を、盗品とは知らずに、甲と同種の物の販売業者から購入して引渡しを受けた買主が、所有者に甲を返還すべき場合、その買主は、所有者に対して、返還するまでの間における甲の使用利益相当額を支払わなければならない。
- 2他人物である動産乙の売買契約に基づいてその引渡しを受けた買主が、その後乙を所有者に返還して売買契約を解除した場合、その買主は売主に対して、返還するまでの間における乙の使用利益相当額を支払う義務を負わない。
- 3違法な賭博を目的とする契約に基づいて賭金を支払った者は、いつでも当該契約が無効であることを理由として、相手方に対して賭金の返還を求めることができる。
- 4不倫関係の維持を目的として丙建物(既登記建物)の所有者Aが丙建物を受贈者Bに贈与してこれを引き渡したが、所有権移転登記手続が未了であった場合、その贈与者Aは当該契約が無効であることを理由として、Bに対して丙建物の返還を求めることができる。
- 5Aを貸主、Bを借主とする金銭消費貸借契約において、AがBに対して有する貸金債権につき、BがCから騙取した金銭をもって弁済を行った場合、Cは、弁済として受領した金銭が騙取金である旨をAが知っていたか否かを問わず、Aに対してその返還を求めることができる。
正解:4
解説
正解は肢4です。判例は、既登記建物の贈与では引渡しだけでは民法708条にいう「給付」があったとはいえず、所有権移転登記手続を経て初めて給付があったことになるとしています。したがって登記が未了である以上、不法原因給付には当たらず、贈与者Aは契約の無効を理由に丙建物の返還を求めることができます。肢1は189条1項により善意の占有者は果実を取得し、使用利益も同様に解されます。肢2は他人物売買の解除で買主が使用利益の返還義務を負うとする判例に反し、肢3は708条本文により返還を請求できません。肢5は受領者の悪意又は重過失を要するとする判例に反し、誤りです。
問35
民法認知に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし、誤っているものはどれか。
- 1嫡出でない成年の子を、その父又は母が認知する場合には、子の承諾を得なければならない。
- 2父が胎内にある子を認知する場合には、母の承諾を得なければならない。
- 3認知は、認知の時からその効力を生ずる。
- 4認知をした父又は母は、その認知を取り消すことができない。
- 5子、その直系卑属又はこれらの者の法定代理人は、認知の訴えを提起することができるが、父又は母の死亡の日から3年を経過したときは、その訴えを提起することはできない。
正解:3
解説
正解は肢3です。民法784条本文は「認知は、出生の時にさかのぼってその効力を生ずる」と定めており、認知の時から効力を生ずるとする肢3が誤りです。ただし同条ただし書により、第三者が既に取得した権利を害することはできません。肢1は782条が成年の子の認知には子の承諾を要するとし、肢2は783条1項が胎児の認知には母の承諾を要するとし、肢4は785条が認知をした父又は母による認知の取消しを禁じ、肢5は787条ただし書が認知の訴えを父又は母の死亡の日から3年以内に限っており、いずれも正しい記述です。
問36
商法・会社法交互計算に関する次の記述のうち、商法の規定に照らし、誤っているものはどれか。なお、当事者に別段の意思表示がないものとする。
- 1交互計算とは、商人間での平常取引において、一定の期間内の取引から生じる債権および債務の総額について相殺をし、それによって生じた残額の支払いを約することをいい、商人と商人でない者との間での平常取引では、交互計算を約することはできない。
- 2交互計算の当事者が相殺をすべき期間を定めなかったときは、その期間は、6か月とする。
- 3交互計算の当事者は、債権および債務の各項目を記載した計算書の承認をしたときは、当該計算書の記載の錯誤または脱漏の場合を除き、当該各項目について異議を述べることができない。
- 4交互計算に基づく相殺によって生じた残額については、債権者は、計算の閉鎖の日以後の法定利息を請求することができる。
- 5交互計算の各当事者は、いつでも交互計算の解除をすることができる。
正解:1
解説
正解は肢1です。商法529条は交互計算を「商人間又は商人と商人でない者との間で平常取引をする場合」に成立するものと定めており、当事者の一方が商人であれば足ります。商人間に限られるとする肢1が誤りです。肢2は531条が相殺をすべき期間の定めがないときを6か月とし、肢3は532条が計算書の承認後は記載に錯誤又は脱漏があったときを除き異議を述べられないとし、肢4は533条1項が計算の閉鎖の日以後の法定利息の請求を認め、肢5は534条前段が各当事者はいつでも交互計算の解除をすることができるとしており、いずれも正しい記述です。
問37
商法・会社法発起人に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、正しいものはどれか。
- 1発起人とは、定款に署名、記名押印または電子署名をした者をいうが、定款に署名、記名押印または電子署名をしていないものの、実質的に設立を企画し尽力した者であれば、会社の設立事務を行う義務と権限を有する発起人とみなされる。
- 2発起人は、設立時発行株式と引換えにする金銭の払込みまたは財産の給付についてあらかじめ定めた期日またはその期間内に出資の履行をしないときは、直ちに当該出資の履行により設立時発行株式の株主となる権利を失う。
- 3設立時募集株式と引換えに給付した現物出資財産の価額が当該現物出資財産について定款に記載され、または記録された価額に著しく不足するときは、当該現物出資財産を給付した引受人は、発起人および設立時取締役と連帯して、株式会社に対し当該不足額を支払う義務を負う。
- 4株式会社の成立により発起人が受ける報酬その他の特別の利益について定款の定めがない場合には、株式会社の成立の時までに、発起人の全員の同意または創立総会の決議によって当該事項を決定することができる。
- 5設立時発行株式を引き受ける者の募集をする場合には、発起人は、設立時募集株式と引換えにする金銭の払込みの期日または期間の末日のうち最も遅い日以後、遅滞なく、創立総会を招集しなければならない。
正解:5
解説
正解は肢5です。会社法65条1項は、設立時発行株式を引き受ける者の募集をする場合、発起人は払込みの期日又は期間の末日のうち最も遅い日以後、遅滞なく創立総会を招集しなければならないと定めています。肢1は発起人が定款に署名等をした者に限られ、実質的に設立を企画したにすぎない者は発起人となりません。肢2は36条が期日を定めた通知を経て初めて失権すると定めており「直ちに」ではありません。肢3は設立時募集株式の引受人が金銭の払込みのみを行うため不足額支払義務の主体とならず、肢4は28条3号が発起人の報酬等を定款の記載事項としているため誤りです。
問38
商法・会社法取締役会に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、誤っているものはどれか。
- 1取締役会は、募集社債の総額その他の社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項として法務省令で定める事項の決定を取締役に委任することができない。
- 2株式会社の取締役は、自己のために当該株式会社の事業の部類に属する取引をした場合には、当該取引後、遅滞なく、当該取引についての重要な事実を取締役会に報告しなければならない。
- 3取締役会を招集する取締役については、定款または取締役会で定めることもできる。
- 4取締役会の決議について特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができない。
- 5取締役会の決議に参加した取締役が、当該取締役会の議事録に異議をとどめないで署名または記名押印した場合には、当該決議に賛成したものとみなされる。
正解:5
解説
正解は肢5です。会社法369条5項は、取締役会の決議に参加した取締役であって議事録に異議をとどめないものは「その決議に賛成したものと推定する」と定めており、みなすとする肢5が誤りです。推定にとどまるため反証は可能です。肢1は362条4項5号が募集社債に関する重要事項の決定を取締役に委任できないとし、肢2は365条2項が競業取引後の重要な事実の報告を求め、肢3は366条1項ただし書が招集する取締役を定款又は取締役会で定められるとし、肢4は369条2項が特別の利害関係を有する取締役の議決参加を禁じており、いずれも正しい記述です。
問39
商法・会社法監査役および監査役会に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、誤っているものはどれか。
- 1会計監査人設置会社(監査等委員会設置会社および指名委員会等設置会社を除く。)は、監査役を置かなければならない。
- 2監査役は、特別取締役による議決の定めがあるときを除き、取締役会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べなければならない。
- 3公開会社でない株式会社(監査役会設置会社および会計監査人設置会社を除く。)は、その監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めることができる。
- 4監査役会設置会社においては、常勤の監査役は、監査役の中から株主総会の決議によって選任しなければならない。
- 5取締役、会計参与、監査役または会計監査人が監査役の全員に対して監査役会に報告すべき事項を通知したときは、当該事項を監査役会へ報告することを要しない。
正解:4
解説
正解は肢4です。会社法390条3項は「監査役会は、監査役の中から常勤の監査役を選定しなければならない」と定めており、選定するのは監査役会であって株主総会の決議によるのではありません。肢1は327条3項が会計監査人設置会社に監査役の設置を義務づけ、肢2は383条1項が監査役の取締役会への出席義務と意見陳述義務を定め、肢3は389条1項が公開会社でない株式会社について監査の範囲を会計に関するものに限定する定款の定めを認め、肢5は395条が監査役全員への通知があれば監査役会への報告を要しないとしており、いずれも正しい記述です。
問40
商法・会社法株券に関する次のア〜オの記述のうち、会社法の規定に照らし、正しいものの組合せはどれか。 【ア】株券発行会社における株式の譲渡は、当該株式を取得した者の氏名または名称および住所を株主名簿に記載し、または記録しなければ、当該株券発行会社その他の第三者にも対抗することができない。 【イ】株券発行会社が自己株式の処分により行う株式の譲渡は、当該株式に係る株券を交付しなくても、その効力を生ずる。 【ウ】株券発行会社の株券には、譲渡による当該株券に係る株式の取得について当該株券発行会社の承認を要することを定款で定めたときは、その旨を記載しなければならない。 【エ】株券発行会社の株主は、当該株券発行会社に対し、株券の所持を希望しない旨を申し出ることができ、当該株券は、当該株主が当該株券発行会社に提出したときに、無効となる。 【オ】株券発行会社の株式に係る株券を喪失した者は、非訟事件手続法の公示催告における除権決定により、当該株券を無効とすることができる。
- 1ア・イ
- 2ア・オ
- 3イ・ウ
- 4ウ・エ
- 5エ・オ
正解:3
解説
正解は肢3です。イは会社法128条1項ただし書が、自己株式の処分による株式の譲渡には株券の交付を要しないと定めており正しい記述です。ウは216条3号が、譲渡による株式の取得について会社の承認を要する旨を定款で定めたときは株券にその旨を記載しなければならないとしており正しい記述です。アは130条2項により、株券発行会社では株主名簿の記載は会社に対する対抗要件にとどまります。エは217条5項が株主名簿への記載又は記録をした時に株券が無効になるとしており、オは233条が株券について非訟事件手続法第4編の適用を排除しているため誤りです。
問47
基礎知識日本の住民投票に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- 1市町村合併の当否をめぐり住民投票が行われた事例はない。
- 2住民投票を実施するために制定される住民投票条例には、投票すべき課題に関してその都度制定される個別型と、将来に備えてあらかじめ住民投票の手続等を定めておく常設型がある。
- 3地方公共団体が整備する公共施設の建設の当否について住民投票が行われた事例はない。
- 4原子力発電所の設置に関して住民投票が行われた事例はない。
- 5いわゆる大阪都構想(大阪市を廃止して特別区を設置する構想)をめぐる住民投票は、国会決議に基づいて実施された。
正解:2
解説
正解は肢2です。住民投票条例には、特定の争点が生じた都度これに対応して制定される個別型と、あらかじめ発議の要件や投票資格などの手続を定めておく常設型があり、いずれも各地で採用されています。肢1は市町村合併の当否をめぐる住民投票がいわゆる平成の大合併期に多数実施されており誤りです。肢3も公共施設の建設をめぐる住民投票の例があり、肢4も新潟県巻町で原子力発電所の建設をめぐる住民投票が行われています。肢5のいわゆる大阪都構想の住民投票は、大都市地域特別区設置法に基づいて実施されたもので、国会決議に基づくものではありません。
問48
基礎知識日本の政党と政治に関する次のア〜オの記述のうち、妥当でないものの組合せはどれか。 【ア】政党助成法に基づく政党交付金の交付の対象となる政党には、法人格を取得していない政党も含まれる。 【イ】政治資金規正法は、政治活動の公明と公正を確保し、民主政治の健全な発達に寄与することを目的として制定された。 【ウ】田中角栄内閣は、日本新党や日本社会党などによる非自民・非共産連立政権であった。 【エ】鳩山由紀夫内閣は、民主党、社会民主党、国民新党の3党による連立政権であった。 【オ】国政選挙などの際に、有権者が政策の実現性を明確に判断できるように、マニフェストと呼ばれる政策文書がつくられたこともある。
- 1ア・イ
- 2ア・ウ
- 3イ・オ
- 4ウ・エ
- 5エ・オ
正解:2
解説
正解は肢2です。アは、政党交付金の交付を受ける政党は、政党交付金の交付を受ける政党等に対する法人格の付与に関する法律により法人格を取得することとされており、法人格のない政党は交付の対象となりません。ウは、日本新党や日本社会党などによる非自民・非共産の連立政権は1993年に成立した細川護熙内閣であり、田中角栄内閣は自由民主党の単独政権であって妥当ではありません。イは政治資金規正法1条が政治活動の公明と公正を確保し民主政治の健全な発達に寄与することを目的として掲げており妥当です。エの鳩山由紀夫内閣が民主党・社会民主党・国民新党の3党連立であったこと、オのマニフェストの説明も妥当です。
問49
基礎知識日本の米価に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。 (注) * 主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律
- 1「米公方」と呼ばれた江戸幕府将軍・徳川綱吉は、米価を安定させて、犬などの生類の保護をしようとして、大阪の堂島米市場を公認するなどした。
- 2大正期に米価が急落すると、全国各地で米商人などによる政府機関へのテロ・襲撃が起きて大騒擾となり、「米騒動」と呼ばれた。
- 31970年代の日本の食糧管理制度では、政府は、米などの価格を規制する一方、米の過剰生産を抑えるために減反(生産調整)を行った。
- 41995年のいわゆる新食糧法*の施行によって、米価に関しては原則的に公定価格(生産者米価と消費者米価)によることとされた。
- 5米価の急騰を受けて、2025年から、米国政府国際開発庁(USAID;U. S.Agency for International Development)は、対日支援として備蓄米の放出を開始した。
正解:3
解説
正解は肢3です。食糧管理法に基づく食糧管理制度の下では、政府が生産者米価と消費者米価を決定して米の流通を管理する一方、消費の減少による過剰在庫に対応するため、1970年から本格的に減反(生産調整)が実施されました。肢1は堂島米市場を公認し「米将軍」「米公方」と呼ばれたのは徳川吉宗であり、生類憐みの令の徳川綱吉ではありません。肢2の1918年の米騒動は米価の急騰が原因です。肢4の新食糧法は公定価格制を廃して市場原理を導入したものであり、肢5のような米国政府機関による備蓄米の対日放出という事実もないため、いずれも妥当ではありません。
問50
基礎知識自由貿易体制と関税に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。
- 1第二次世界大戦後に「関税及び貿易に関する一般協定」(GATT)が締結され、現在では世界貿易機関(WTO)が設立されている。
- 2環太平洋経済連携協定(TPP)は、日本が離脱した後、新たにアジア太平洋経済協力(APEC)として締結された。
- 3輸入の急増によって国内産業に重大な損害を与える、あるいは与える恐れがある場合に、輸入数量制限や関税引き上げ等を行うことを、セーフガードと呼ぶ。
- 4関税以外の手段で行われる、自由貿易を妨げる障害を総称して非関税障壁と呼ぶ。
- 5国内産業保護のために、相殺関税やアンチダンピング関税が用いられることもある。
正解:2
解説
正解は肢2です。TPPは米国が2017年に離脱した後、日本を含む11か国が環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)として2018年に発効させたものです。日本は離脱しておらず、またAPECは1989年に発足した別個の経済協力の枠組みであって、TPPが名称を改めたものではありません。肢1のGATTからWTOへの流れ、肢3のセーフガード、肢4の非関税障壁、肢5の相殺関税及びアンチダンピング関税の説明は、いずれも妥当な記述です。
問51
基礎知識経済に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。
- 1需要曲線とは、ある財について、ある消費者が一定期間に消費したい量を、その財の価格の関数として描いた曲線を意味する。
- 2需要の価格弾力性とは、ある財の価格が1%上昇した際の、需要の減少率を意味する。
- 3機会費用とは、ある財の取引機会を利用するために必要な、取引相手の探索や条件の交渉などにかかる費用を意味する。
- 4完全競争とは、多数の生産者と多数の消費者が市場に参加しており、その結果として、個別の経済主体の行動が価格に与える影響が無視できるほど小さい状態を意味する。
- 5市場の失敗とは、ある財の市場において外部性が発生するなどの理由により、市場が効率性の達成に失敗する状態を意味する。
正解:3
解説
正解は肢3です。機会費用とは、ある選択をしたことによって断念せざるを得なかった選択肢から得られたはずの利益、すなわち次善の代替案の価値をいいます。取引相手の探索や条件の交渉などに要する費用は取引費用と呼ばれるもので、両者は別の概念です。肢1の需要曲線、肢2の需要の価格弾力性、肢4の完全競争における経済主体のプライステイカーとしての性格、肢5の外部性などによる市場の失敗の説明は、いずれも標準的な定義に沿う妥当な記述です。
問52
基礎知識ジェンダーと平等に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。 (注) * 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律
- 1英国では、19世紀末から20世紀初頭にかけて、参政権を求めて女性たちが抗議活動を行い、厳しい取締りを受けた。
- 2米国では、1969年に、同性愛者らが集まるとされる特定のバーへの取締りを機に、同性愛者らによる抗議運動が起きた。
- 3日本では、2019年に、性暴力に反対するフラワーデモが各地で行われ、多くのひとたちが集まった。
- 4国連の女性差別撤廃委員会(CEDAW:Committee on the Elimination ofDiscrimination Against Women)は、日本政府に対して、女性が婚姻後も婚姻前の姓を実質的に保持できるよう、法律を改正することを勧告した。
- 5日本の男女雇用機会均等法*では、妊娠や出産を理由とする解雇は禁止されていない。
正解:5
解説
正解は肢5です。男女雇用機会均等法9条3項は、妊娠、出産、産前産後休業の取得その他の事由を理由とする解雇その他不利益な取扱いを禁止し、同条4項は妊娠中及び出産後1年を経過しない女性労働者に対する解雇を原則として無効としています。禁止されていないとする肢5が妥当ではありません。肢1の英国における女性参政権運動、肢2の1969年のストーンウォール事件、肢3の2019年に各地で行われたフラワーデモ、肢4の女性差別撤廃委員会による日本政府への勧告は、いずれも妥当な記述です。
問53
基礎知識行政書士法に関する次のア~エの記述のうち、妥当でないものの組合せはどれか。 【ア】行政書士が、この法律若しくはこれに基づく命令、規則その他都道府県知事の処分に違反したとき又は行政書士たるにふさわしくない重大な非行があったときは、都道府県知事は、当該行政書士に対し、戒告処分をすることができる。 【イ】行政書士が、この法律若しくはこれに基づく命令、規則その他都道府県知事の処分に違反したとき又は行政書士たるにふさわしくない重大な非行があったときは、都道府県知事は、当該行政書士に対し、法定年数以内の業務の停止処分をすることができる。 【ウ】行政書士法人が、この法律又はこの法律に基づく命令、規則その他都道府県知事の処分に違反したとき又は運営が著しく不当と認められるときは、総務大臣は、当該行政書士法人の解散処分をすることができる。 【エ】行政書士が、この法律若しくはこれに基づく命令、規則その他都道府県知事の処分に違反したとき又は行政書士たるにふさわしくない重大な非行があったときに、都道府県知事が懲戒処分として業務を禁止した行政書士について、日本行政書士会連合会は登録を抹消することはできない。
- 1ア・イ
- 2ア・ウ
- 3イ・ウ
- 4イ・エ
- 5ウ・エ
正解:5
解説
正解は肢5です。ウは、行政書士法人に対する戒告・業務の停止・解散の懲戒処分をするのは主たる事務所の所在地を管轄する都道府県知事であり(行政書士法14条の2第1項)、総務大臣ではないため妥当ではありません。エは、業務の禁止の処分を受けた者は同法2条の2第6号の欠格事由に該当し、7条1項1号により日本行政書士会連合会はその登録を抹消しなければならないため妥当ではありません。ア・イは14条が戒告、2年以内の業務の停止、業務の禁止を都道府県知事の処分として定めており妥当です。なお令和7年法律第65号により、業務に関する規定は1条の2から1条の3以下へ繰り下がっています。
問54
基礎知識戸籍法に関する次のア〜オの記述のうち、妥当でないものの組合せはどれか。 【ア】出生の届出は、出生から3日以内にこれをしなければならない。 イ 「子の男女の別及び嫡出子又は嫡出でない子の別」は、出生の届書に記載しなければならない。 ウ 「出生の年月日時分及び場所」は、出生の届書の必須記載事項ではないが、記載することができる。 【エ】医師、助産師又はその他の者が出産に立ち会った場合には、原則として、医師、助産師、その他の者の順序に従って、そのうちの1人が作成する出生証明書を届書に添付しなければならない。 【オ】子の名には、常用平易な文字を用いなければならない。
- 1ア・イ
- 2ア・ウ
- 3イ・オ
- 4ウ・エ
- 5エ・オ
正解:2
解説
正解は肢2です。アは戸籍法49条1項が出生の届出を14日以内(国外で出生があったときは3か月以内)としており、3日以内とする点で妥当ではありません。ウは同条2項2号が「出生の年月日時分及び場所」を届書の記載事項として掲げており、必須記載事項ではないとする点で妥当ではありません。イは同項1号が「子の男女の別及び嫡出子又は嫡出でない子の別」を記載事項とし、エは同条3項が医師、助産師、その他の者の順序で作成する出生証明書の添付を求め、オは50条1項が子の名に常用平易な文字を用いるべきことを定めており、いずれも妥当です。
問55
基礎知識ディープフェイクに関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。
- 1ディープフェイクは、生成AI技術によって作成されることがある。
- 2ディープフェイクは、著名人や公人以外の人にも被害を及ぼすことがある。
- 3ディープフェイクは、個人の能力や嗜好をAIで推測するための技術である。
- 4ディープフェイクは、詐欺などの犯罪行為に利用されることがある。
- 5ディープフェイクは、写真や動画の他、音声データとしても作成される。
正解:3
解説
正解は肢3です。ディープフェイクは、深層学習をはじめとする人工知能技術を用いて、実在する人物の顔や声を合成し、実際にはない言動があったかのような偽の情報を作り出す技術やその成果物を指します。個人の能力や嗜好を推測する技術はプロファイリングと呼ばれる別の概念であり、肢3が妥当ではありません。肢1の生成AI技術による作成、肢2の著名人以外にも被害が及びうること、肢4の詐欺などへの悪用、肢5の音声データとしての作成は、いずれも妥当な記述です。
問56
基礎知識インターネット上のなりすまし広告などを通じた近年の投資詐欺問題に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。
- 1被害者はインターネットを頻繁に利用する若年層が多く、半数以上が30歳未満である。
- 2被害に遭うきっかけとしては、投資サイトよりも、メッセージングサービスやソーシャルネットワークサービスが多くを占める。
- 3被害を避けるには、著名人のなりすましによる広告での勧誘ではないかを判断するために、本人の公式アカウントなどで情報を確認することが望ましい。
- 4詐欺の手段として、存在しない架空の暗号資産への投資勧誘が行われることがある。
- 5振込先として個人の口座が指定されたり、振込先の口座が頻繁に変わることがある。
正解:1
解説
正解は肢1です。警察庁が公表するSNS型投資詐欺の被害統計では、被害者は50歳代から60歳代を中心とする中高年層が多数を占めており、半数以上が30歳未満であるという事実はありません。したがって肢1が妥当ではありません。肢2は、被害のきっかけがSNSやメッセージングサービスの広告・ダイレクトメッセージであることが多いとされ妥当です。肢3の公式アカウントでの確認、肢4の架空の暗号資産への投資勧誘、肢5の個人名義口座の指定や振込先の頻繁な変更も、注意喚起として示されている典型的な特徴であり妥当です。
問57
基礎知識個人情報保護制度に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。 (注) * 個人情報の保護に関する法律
- 1個人情報保護法*では、民間事業者への罰則として、年間の売上高に応じた額を上限とした罰金が定められている。
- 2個人情報保護法には、刑事罰としての罰金以外に、制定時以来、課徴金が定められている。
- 3個人情報保護委員会は、いわゆるマイナンバーカード(個人番号カード)の交付事務を行っている。
- 4個人情報保護委員会は、個人情報保護法の定める行政機関等に対しては監視を行わない。
- 5個人情報保護委員会は、個人情報保護法の定める個人情報取扱事業者等に対して立入検査を行うことができる。
正解:5
解説
正解は肢5です。個人情報保護法146条1項は、個人情報保護委員会が、法の施行に必要な限度において個人情報取扱事業者等に報告や資料の提出を求め、又はその職員に事務所その他必要な場所へ立ち入らせて質問させ帳簿書類等を検査させることができると定めています。肢1のような年間売上高に応じた罰金の定めはなく、法人重科としての罰金額が定められているにとどまります。肢2の課徴金制度は導入されていません。肢3のマイナンバーカードの交付事務は市町村と地方公共団体情報システム機構が担い、肢4も同法が行政機関等に対する委員会の監視を定めているため誤りです。