借地借家法・民法
賃貸借の対抗要件とは?建物の引渡し・所有者変更を図解【賃貸不動産経営管理士】【2026年度試験対応】
建物賃貸借の対抗要件を、引渡し、所有者変更、抵当権との前後関係で解説。新しい所有者への家賃支払と、登記の意味を比較表で確認します。
要点 3件・基本問題 5問・解説の確認問題 3問読む → 覚える → 解くまでこのページで完結
- 法令基準日
- 2026-04-01
- 最終確認日
- 2026-08-15
- 確認
- chintaikanrishi-critical-review-2026-08-15

2026年度試験対応。法令基準日:2026-04-01。
まず押さえるポイント
建物の賃貸借は、登記がなくても建物の引渡しを受ければ、その後に建物の権利を取得した第三者に対抗できます。ただし、抵当権などとの優劣は権利関係が成立した順序も確認します。
法令基準日:2026-04-01 / 解説更新日:2026-09-08
対抗要件は第三者に権利を主張するための条件

契約の成立:貸主と借主の合意等:第三者への対抗とは別。建物の対抗要件:建物の引渡し等:契約書の日付だけで決めない。権利の優劣:抵当権設定登記等との前後関係:後から取得した権利か確認
図を大きく見る貸主と借主の間で賃貸借契約が有効に成立することと、その権利を第三者に主張できることは別です。「登記がないから賃貸借契約そのものが無効」と読むのは誤りです。
借地借家法31条は、建物の引渡しを受けた借主を保護します。契約書へ署名した日と、実際に引渡しを受けた日が異なる場合は、契約日だけを見て対抗できると判断しないようにします。
| 項目 | 押さえる内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 契約の成立 | 貸主と借主の合意等 | 第三者への対抗とは別 |
| 建物の対抗要件 | 建物の引渡し等 | 契約書の日付だけで決めない |
| 権利の優劣 | 抵当権設定登記等との前後関係 | 後から取得した権利か確認 |
所有者が変わったら賃貸人の地位はどうなる?
対抗要件を備えた不動産賃貸借があるときに建物が譲渡されると、原則として賃貸人の地位も譲受人へ移ります。新しい所有者だからという理由だけで、保護される借主を退去させられるわけではありません。
一方、新しい所有者が賃貸人の地位の移転を借主に対抗するには、所有権移転登記が必要です。借主が自分の賃借権を主張するための引渡しと、新所有者が賃貸人として主張するための登記を区別します。
抵当権との関係は時系列で並べる
抵当権の設定登記より前に借主が対抗要件を備えたのか、後なのかによって、競売時の扱いは異なります。「建物の引渡しがあれば、どんな先行権利にも勝てる」というわけではありません。
抵当権者に対抗できない建物賃貸借でも、民法395条の要件を満たす場合には買受けから6か月の明渡猶予が認められます。これは賃貸借がそのまま長期間存続する制度ではなく、猶予と契約の存続を分けて覚えます。
誰の、何を主張するための要件かを読む
例えばA所有の建物をBが借りて引渡しを受け、その後AがCへ売った事例では、Bの賃借権の対抗と、Cの賃貸人地位の対抗を別々に検討します。登場人物ごとに主張と必要条件を書き出すと整理できます。
令和4年度問25では、建物の譲渡や抵当権との関係が扱われています。契約日、引渡し、抵当権設定登記、所有権移転の順序を並べ、時系列を入れ替えた場合に結論が変わる理由まで確認してください。
出題例の原本・年度別問題
過去の出題を手がかりに、判断する条件を整理します。このページの説明と確認問題は合トレのオリジナルです。
- 令和4年度 問25
引渡し・所有者変更・抵当権の時系列を確認する
公式の公表資料を確認する
オリジナル確認問題で判断する
○か×かを選び、理由を確認してください。実際の過去問を転載したものではありません。
この解説の一次資料
- e-Gov:借地借家法31条確認日:2026-09-08
- e-Gov:民法395条・605条の2確認日:2026-09-08
- 試験実施団体:過去の試験問題確認日:2026-09-08
賃借権の対抗要件
民法605条の賃借権の登記に加え、借地借家法31条は建物の引渡しに対抗力を認める。実際に引渡しを受けていれば、その後に建物を取得した者や競売で買い受けた者にも賃借権を主張できる。ただし賃貸借より先順位の抵当権に基づく競売で買受人が取得した場合は対抗できず、民法395条の建物明渡猶予制度により買受けの時から6か月の明渡猶予を受けるにとどまる。
覚え方建物は引渡しで対抗、先順位抵当の競売なら六か月の明渡猶予だけ
最重要・比較表
建物が売られたとき住み続けられるかは対抗要件の先後で決まる
最初に、借主の引渡しや賃借権の登記と、買主の所有権登記や抵当権の登記のどちらが先かを確認します。先に対抗要件を備えた方が優先します。
| 事由 | 借主が先に対抗要件を備えていた場合 | 買主の登記や抵当権の登記が先の場合 | 理由・判断ポイント |
|---|---|---|---|
| 対抗要件になるもの | 不動産登記に加えて、借地借家法により賃貸物件の引渡しも対抗要件として認められる | 買主は所有権の移転登記、銀行等は抵当権の登記が対抗要件になる | 借主は賃借権の登記を貸主に強制できないため、引渡しが実質的な対抗要件です。 |
| 賃貸借契約はどうなるか最重要 | 新所有者を貸主として、賃貸借契約はそのまま継続する | 買主や競売の買受人には引き継がれず、賃貸借は終了する | 契約が引き継がれるかどうかが、以下の敷金や明渡しの結論を決めます。 |
| 新所有者からの明渡し請求 | 請求できない | 請求できる | 先に対抗要件を備えた方の権利が優先する、という原則をそのまま当てはめます。 |
| 敷金の扱い | 敷金に関する権利義務は当然に新貸主へ承継され、返還債務も新貸主が負う | 新所有者は貸主にならないため、敷金を承継しない | 敷金が移るのは、賃貸人たる地位が移った場合に限られます。 |
| 借主に残される保護 | 所有権が他の者に移ったときは賃貸借が終了する旨の特約を定めても、借主に不利な特約として無効になる | 抵当権の実行による競売では、買受けの日から6か月間だけ建物の明渡しが猶予される | 6か月の明渡猶予は住み続けられる権利ではなく、退去までの猶予にすぎません。 |
対抗要件になるもの
- 借主が先に対抗要件を備えていた場合
- 不動産登記に加えて、借地借家法により賃貸物件の引渡しも対抗要件として認められる
- 買主の登記や抵当権の登記が先の場合
- 買主は所有権の移転登記、銀行等は抵当権の登記が対抗要件になる
判断ポイント
借主は賃借権の登記を貸主に強制できないため、引渡しが実質的な対抗要件です。
賃貸借契約はどうなるか
最重要- 借主が先に対抗要件を備えていた場合
- 新所有者を貸主として、賃貸借契約はそのまま継続する
- 買主の登記や抵当権の登記が先の場合
- 買主や競売の買受人には引き継がれず、賃貸借は終了する
判断ポイント
契約が引き継がれるかどうかが、以下の敷金や明渡しの結論を決めます。
新所有者からの明渡し請求
- 借主が先に対抗要件を備えていた場合
- 請求できない
- 買主の登記や抵当権の登記が先の場合
- 請求できる
判断ポイント
先に対抗要件を備えた方の権利が優先する、という原則をそのまま当てはめます。
敷金の扱い
- 借主が先に対抗要件を備えていた場合
- 敷金に関する権利義務は当然に新貸主へ承継され、返還債務も新貸主が負う
- 買主の登記や抵当権の登記が先の場合
- 新所有者は貸主にならないため、敷金を承継しない
判断ポイント
敷金が移るのは、賃貸人たる地位が移った場合に限られます。
借主に残される保護
- 借主が先に対抗要件を備えていた場合
- 所有権が他の者に移ったときは賃貸借が終了する旨の特約を定めても、借主に不利な特約として無効になる
- 買主の登記や抵当権の登記が先の場合
- 抵当権の実行による競売では、買受けの日から6か月間だけ建物の明渡しが猶予される
判断ポイント
6か月の明渡猶予は住み続けられる権利ではなく、退去までの猶予にすぎません。
01賃借権の対抗力の重要暗記項目
賃借権の対抗要件
民法605条の賃借権の登記に加え、借地借家法31条は建物の引渡しに対抗力を認める。実際に引渡しを受けていれば、その後に建物を取得した者や競売で買い受けた者にも賃借権を主張できる。ただし賃貸借より先順位の抵当権に基づく競売で買受人が取得した場合は対抗できず、民法395条の建物明渡猶予制度により買受けの時から6か月の明渡猶予を受けるにとどまる。
覚え方建物は引渡しで対抗、先順位抵当の競売なら六か月の明渡猶予だけ
ひっかけ注意賃借権の登記がなければ対抗できないとする誤り、抵当権との先後関係を無視させる出題が狙われる。
賃貸人たる地位の移転
対抗要件を備えた建物が譲渡されると賃貸人たる地位は当然に譲受人へ移転し、賃借人の承諾は不要である(605条の2第1項)。ただし賃借人への賃料請求や解除権の行使には所有権移転登記が必要となる。費用償還債務と敷金返還債務も譲受人が承継し、承継される敷金は未払賃料等に充当された後の残額である。譲渡人・譲受人が①地位を譲渡人に留保する旨と②譲受人が譲渡人に賃貸する旨をともに合意したときに限り移転しない。
覚え方地位の移転は承諾いらず、賃料を取るには登記が要る
ひっかけ注意「賃借人の承諾が必要」「登記なしでも賃料請求できる」の両方向で狙われる。地位の留保に二つの合意が必要な点も罠。
使用貸借の対抗力と費用負担
使用貸借は無償契約であるため借地借家法の保護が及ばず、対抗要件も認められない。建物が第三者に譲渡されれば借主は明渡しを求められる。また使用貸借の借主は借用物の通常の必要費を負担し(595条1項)、賃貸借と異なり貸主は原則として修繕義務を負わない。書面によらない使用貸借は、貸主は借主が借用物を受け取るまで解除することができる(593条の2)。
覚え方使用貸借は借地借家法の外、対抗力なし・通常の必要費は借主持ち
ひっかけ注意賃貸借の対抗要件(引渡し)を使用貸借にも当てはめる誤りが定番。必要費の負担が賃貸借と逆である点も狙われる。
02試験で正誤を分けるチェック順
- 1建物賃貸借は建物の引渡しがあれば、その後に物権を取得した第三者へ対抗できる
問題文の限定語を先に拾い、上の暗記項目と照合してから結論を出します。
- 2対抗要件を備えた賃貸借では、賃貸不動産の譲受人へ賃貸人の地位が原則として移転する
問題文の限定語を先に拾い、上の暗記項目と照合してから結論を出します。
- 3賃貸人の地位の留保合意や賃料請求には別の要件があるため、所有権移転だけで一律に結論を出さない
問題文の限定語を先に拾い、上の暗記項目と照合してから結論を出します。
03この論点の根拠
- 内容の基準日
- 2026-04-01
- 復習方法
- 要点を確認した後、○×一問一答で条件の違いを見分ける
法改正により扱いが変わる場合があります。試験日程や申込みに関する情報は、 必ず公式案内も確認してください。
問題演習
賃借権の対抗力の○×一問一答
1/5問解答 0・正解 0
借地借家法・民法重要度 A
賃借権の対抗要件
建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対抗することができる。
賃借権の対抗力の○×一問一答5問|問題と解説
この論点で収録している5問を、正誤と解説つきで通して読めます。 上の演習で迷った問題を見直すときに使ってください。
問1
賃借権の対抗要件重要度A建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対抗することができる。
答え:○(正しい)
解説
正しい。借地借家法31条により、建物の引渡しが建物賃借権の対抗要件となる。
問2
賃貸人たる地位の移転重要度A対抗要件を備えた賃貸建物が譲渡され賃貸人たる地位が譲受人に移転した場合であっても、敷金返還債務及び費用償還債務は旧賃貸人に残り、譲受人には承継されない。
答え:×(誤り)
解説
誤り。民法605条の2第4項により、費用償還債務と敷金返還債務は譲受人が承継する。
問3
賃貸人たる地位の移転重要度A対抗要件を備えた賃貸建物が譲渡され賃貸人たる地位が譲受人に移転した場合、譲受人は所有権移転登記をしなければ、賃借人に対して賃料を請求することができない。
答え:○(正しい)
解説
正しい。賃貸人たる地位の移転は所有権移転登記をしなければ賃借人に対抗できない(民法605条の2第3項)。
問4
賃貸人たる地位の移転重要度B対抗要件を備えた賃貸建物が譲渡された場合、賃貸人たる地位が譲受人に移転するためには賃借人の承諾が必要である。
答え:×(誤り)
解説
誤り。賃貸人たる地位は当然に譲受人へ移転し、賃借人の承諾は不要である(民法605条の2第1項)。
問5
使用貸借の対抗力と費用負担重要度B建物の使用貸借の借主は、建物の引渡しを受けていれば、その後その建物を取得した第三者に対して使用借権を対抗することができる。
答え:×(誤り)
解説
誤り。使用貸借には借地借家法の適用がなく、引渡しによる対抗力(借地借家法31条)は認められない。
賃借権の対抗力の問題を続けて解く
この論点に対応する5問を絞り込んで出題します。