行政法
行政書士の行政行為の効力|公定力・不可争力・無効の違い【2026年度試験対応】
行政行為の公定力・不可争力・不可変更力・自力執行力を比較。取消しと無効、重大かつ明白な瑕疵、出訴期間と職権取消しの混同を解説します。
要点 5件・基本問題 8問・解説の確認問題 3問読む → 覚える → 解くまでこのページで完結

記事内容を表す生成イメージ。
2026年度試験対応。法令基準日:2026-04-01。
まず押さえるポイント
行政行為の効力は、どの場面で誰の行動を制限するかで整理します。公定力は取り消されるまでの扱い、不可争力は期間経過による争い方の制限、不可変更力は一定の判断を行政庁自身が変更できない効力です。無効の処分や、自力執行に法律の根拠が必要なことを別枠で確認します。
法令基準日:2026-04-01 / 解説更新日:2026-09-12
4つの効力を一つの「強い効力」にまとめない

公定力・不可争力・自力執行力の意味を分ける。無効の処分は別で、自力執行には法律の根拠が必要。
図を大きく見る公定力とは、取消し得べき違法があっても、権限ある機関が取り消すまでは処分の効力を前提とする扱いを指します。行政が行った以上いつも適法だと確定する、という意味ではありません。無効の処分は、この扱いと区別します。
不可争力は、法定の不服申立期間や出訴期間の経過により、通常の取消しを求める争い方が制限される効力です。不可変更力は、不服申立てに対する裁決など争訟を裁断する一定の行政行為について、行政庁自ら自由に取り消し・変更できない効力を指します。全ての処分が発出後は一切変更できないという意味ではありません。
| 効力 | 何を区別するか |
|---|---|
| 公定力 | 取消しまでの効力の扱いと適法性 |
| 不可争力 | 期間経過による争訟の制限 |
| 不可変更力 | 裁決等をした行政庁自身による変更の制限 |
| 自力執行力 | 裁判手続を経ず義務を実現する力。法律の根拠が必要 |
無効の基本は重大かつ明白な瑕疵
違法な処分が全て当然無効になるわけではありません。判例の基本的な考え方では、重大かつ明白な瑕疵が必要です。明白かは、処分が成立した当初から、認定の誤りが外形上・客観的に明白であったかという観点で判断します。
令和7年度問8では、行政行為の無効を含む効力が出題されています。「重大なら明白でなくても常に無効」「後で誤りが分かれば全て初めから無効」と一般化しないでください。無効の判断には事案ごとの判例上の扱いもあるため、ここでは原則の枠組みを押さえます。
根拠:国税庁:税務訴訟資料 第264号-153(順号12534)、大阪地裁平成26年9月26日判決(印刷22頁)行政書士試験研究センター:公式問題原本
期間が過ぎても、違法が適法に変わるわけではない
取消訴訟は、行政事件訴訟法14条により、処分又は裁決があったことを知った日から6か月、処分又は裁決の日から1年が原則の期間です。正当な理由や不服申立てを経た場合など、条文上の例外を併せて確認します。
期間の経過は、取消しを求める手続の制限の問題です。瑕疵を消して処分を適法にするものではなく、不可争力だけを理由に行政庁の職権取消しが一律に不可能になるわけでもありません。無効等確認の訴えには36条の要件があり、取消訴訟の期間を過ぎれば誰でも無条件に使える制度ではありません。
公定力があることと、自力で強制できることは別
行政庁が命令を出したからといって、どの義務も当然に実力で実現できるわけではありません。義務を命じる根拠と、義務が履行されない場合に強制する根拠・要件を分けます。
行政代執行法2条は、他人が代わって行える行為の義務が履行されず、他の手段による確保が困難で、放置が著しく公益に反する場合などを定めています。金銭の支払義務や本人しかできない行為を、何でも同条の代執行で実現できるわけではありません。試験では「命令できるので、直ちに強制できる」という飛躍に注意します。
根拠:行政代執行法
出題例の原本・年度別問題
過去の出題を手がかりに、判断する条件を整理します。このページの説明と確認問題は合トレのオリジナルです。
- 令和7年度 問8
行政行為の撤回・無効・不可変更力・職権取消し・瑕疵の治癒
公式の公表資料を確認する
オリジナル確認問題で判断する
○か×かを選び、理由を確認してください。実際の過去問を転載したものではありません。
この解説の一次資料
- 行政事件訴訟法確認日:2026-09-12
- 行政不服審査法確認日:2026-09-12
- 行政書士試験研究センター:公式問題原本確認日:2026-09-12
- 国税庁:税務訴訟資料 第264号-153(順号12534)、大阪地裁平成26年9月26日判決(印刷22頁)確認日:2026-09-12
- 行政代執行法確認日:2026-09-12
- 行政書士試験研究センター:令和8年度試験案内確認日:2026-09-12
行政行為の効力
行政行為には四つの効力がある。①公定力=取消訴訟の排他的管轄から導かれ、権限ある機関が取り消すまで一応有効として扱われる。②不可争力=出訴期間や審査請求期間の経過により私人の側から効力を争えなくなるが、処分庁による職権取消しは妨げられない。③自力執行力=行政代執行法1条により、義務を命ずる根拠とは別個の法律の根拠を要する。④不可変更力=審査請求の裁決など争訟裁断的行為にのみ生じ、行政庁自らの取消しを封じる。
覚え方不可争力は私人を縛り、不可変更力は行政庁を縛る
最重要・比較表
行政行為の4つの効力の使い分け
名称を覚えるだけでは肢が切れません。まず「誰を、いつから縛る効力か」を確かめると、国民を縛る効力と、私人の主張を封じる効力と、行政庁自身を縛る効力に分かれます。
| 事由 | 公定力 | 不可争力 | 不可変更力 | 執行力(自力執行力) | 理由・判断ポイント |
|---|---|---|---|---|---|
| どんな効力か | 瑕疵ある行政行為でも、権限のある行政機関または裁判所が取り消すまでは一応有効として扱われる | 一定期間が経過すると、相手方や利害関係人など私人の側からは効力を争えなくなる | 行政庁が行った行政行為を、行政庁が自ら変更することができなくなる | 義務を履行しない者に対し、裁判所の力を借りずに自力で内容を強制的に実現できる | 同じ「効力」でも、有効に扱う話・争えなくなる話・変えられなくなる話と中身が違います。 |
| 縛られるのは誰か最重要 | 国民の側。取り消されるまでは違法な処分でも有効なものとして扱われる | 私人の側。期間が過ぎても処分庁が職権で取り消すことは可能 | 行政庁の側。審査請求の裁決をした審査庁は、いったん下した裁決を自ら変更できない | 国民の側。義務の内容が行政庁の手で強制的に実現される | 不可争力は私人だけを封じる効力で、行政庁の職権取消しまでは封じません。 |
| どの行為に生じるか | 瑕疵ある行政行為一般。ただし重大かつ明白な瑕疵で無効な行為には公定力がない | 行政行為一般。無効な行為には生じず、期間の制限なくいつでも無効を主張できる | 審査請求の裁決など一部の行政行為に認められるもので、行政行為一般に認められるものではない | 義務を課す行政行為について問題になる。自力執行には別に法律の根拠が必要 | 無効な行政行為には公定力も不可争力も生じない、という線引きが出発点です。 |
| 落としやすい注意点 | 国家賠償請求訴訟や刑事訴訟で違法を主張するのに、あらかじめ取消判決を得ておく必要はない | 私人が争えなくなるだけで、期間経過後も行政庁が職権で取り消すことはできる | 裁決にも公定力と不可争力は働く。取り消されるまで有効で、期間が過ぎれば争えなくなる | 強制執行を自力で行うことを認めるだけで、法律の根拠なしに強制執行できる意味ではない | 公定力は取消しの話であって、金銭賠償を求める国家賠償には及びません。 |
どんな効力か
- 公定力
- 瑕疵ある行政行為でも、権限のある行政機関または裁判所が取り消すまでは一応有効として扱われる
- 不可争力
- 一定期間が経過すると、相手方や利害関係人など私人の側からは効力を争えなくなる
- 不可変更力
- 行政庁が行った行政行為を、行政庁が自ら変更することができなくなる
- 執行力(自力執行力)
- 義務を履行しない者に対し、裁判所の力を借りずに自力で内容を強制的に実現できる
判断ポイント
同じ「効力」でも、有効に扱う話・争えなくなる話・変えられなくなる話と中身が違います。
縛られるのは誰か
最重要- 公定力
- 国民の側。取り消されるまでは違法な処分でも有効なものとして扱われる
- 不可争力
- 私人の側。期間が過ぎても処分庁が職権で取り消すことは可能
- 不可変更力
- 行政庁の側。審査請求の裁決をした審査庁は、いったん下した裁決を自ら変更できない
- 執行力(自力執行力)
- 国民の側。義務の内容が行政庁の手で強制的に実現される
判断ポイント
不可争力は私人だけを封じる効力で、行政庁の職権取消しまでは封じません。
どの行為に生じるか
- 公定力
- 瑕疵ある行政行為一般。ただし重大かつ明白な瑕疵で無効な行為には公定力がない
- 不可争力
- 行政行為一般。無効な行為には生じず、期間の制限なくいつでも無効を主張できる
- 不可変更力
- 審査請求の裁決など一部の行政行為に認められるもので、行政行為一般に認められるものではない
- 執行力(自力執行力)
- 義務を課す行政行為について問題になる。自力執行には別に法律の根拠が必要
判断ポイント
無効な行政行為には公定力も不可争力も生じない、という線引きが出発点です。
落としやすい注意点
- 公定力
- 国家賠償請求訴訟や刑事訴訟で違法を主張するのに、あらかじめ取消判決を得ておく必要はない
- 不可争力
- 私人が争えなくなるだけで、期間経過後も行政庁が職権で取り消すことはできる
- 不可変更力
- 裁決にも公定力と不可争力は働く。取り消されるまで有効で、期間が過ぎれば争えなくなる
- 執行力(自力執行力)
- 強制執行を自力で行うことを認めるだけで、法律の根拠なしに強制執行できる意味ではない
判断ポイント
公定力は取消しの話であって、金銭賠償を求める国家賠償には及びません。
混同注意・比較表
許可・特許・認可の違い
条文の見出しが「許可」でも、講学上の分類は別物のことがあります。まず、本来禁止されていることを解除するのか、新しく権利を与えるのか、私人間の契約を完成させるのかを確かめます。
| 事由 | 許可 | 特許 | 認可 | 理由・判断ポイント |
|---|---|---|---|---|
| 行為の内容最重要 | 法令等で一般的に禁止されていることを、特定の場合に解除する行為 | 特定人のために新しく権利を設定したり、法律上の力や地位を付与する行為 | 当事者間の法律行為を補充して、その法律効果を完成させる行為 | もともと自由だったことを戻すのが許可、もともとない権利を与えるのが特許です。 |
| 分類上の位置づけ | 命令的行為。国民が本来有している自由を制限し、またはその制限を解除する行為にあたる | 形成的行為。国民が本来有していない権利や地位を与える行為にあたる | 形成的行為。私人の法律行為を補充して効果を完成させるものとして分類される | 命令的行為か形成的行為かで、そもそも与えているものが違うと分かります。 |
| 具体例 | 自動車運転免許、飲食店営業許可。いずれも一般的な禁止を特定の場合に解除している | 道路の占用許可、外国人の帰化許可、公有水面の埋立免許 | 農地の権利移転の許可、銀行の合併の認可、河川占用権の譲渡の承認 | 特許と認可の例には、条文上「許可」と書かれているものが混じっています。 |
| 条文の名称にだまされない例 | 自動車の運転免許は運転を認めるものなので、特許ではなく許可にあたる | 道路の占用許可は本来ない占用の権利を設定するものなので、許可ではなく特許にあたる | 農地の権利移転の許可は売買契約を補充して所有権移転を完成させるので、許可ではなく認可にあたる | 法律が「○○の許可」と書いていても、分類は与えている効果で決まります。 |
行為の内容
最重要- 許可
- 法令等で一般的に禁止されていることを、特定の場合に解除する行為
- 特許
- 特定人のために新しく権利を設定したり、法律上の力や地位を付与する行為
- 認可
- 当事者間の法律行為を補充して、その法律効果を完成させる行為
判断ポイント
もともと自由だったことを戻すのが許可、もともとない権利を与えるのが特許です。
分類上の位置づけ
- 許可
- 命令的行為。国民が本来有している自由を制限し、またはその制限を解除する行為にあたる
- 特許
- 形成的行為。国民が本来有していない権利や地位を与える行為にあたる
- 認可
- 形成的行為。私人の法律行為を補充して効果を完成させるものとして分類される
判断ポイント
命令的行為か形成的行為かで、そもそも与えているものが違うと分かります。
具体例
- 許可
- 自動車運転免許、飲食店営業許可。いずれも一般的な禁止を特定の場合に解除している
- 特許
- 道路の占用許可、外国人の帰化許可、公有水面の埋立免許
- 認可
- 農地の権利移転の許可、銀行の合併の認可、河川占用権の譲渡の承認
判断ポイント
特許と認可の例には、条文上「許可」と書かれているものが混じっています。
条文の名称にだまされない例
- 許可
- 自動車の運転免許は運転を認めるものなので、特許ではなく許可にあたる
- 特許
- 道路の占用許可は本来ない占用の権利を設定するものなので、許可ではなく特許にあたる
- 認可
- 農地の権利移転の許可は売買契約を補充して所有権移転を完成させるので、許可ではなく認可にあたる
判断ポイント
法律が「○○の許可」と書いていても、分類は与えている効果で決まります。
最重要・比較表
職権による取消しと撤回の違い
条文に「取消し」と書いてあっても、理由が後から起きた事情なら撤回です。まず、瑕疵が最初からあったのか、あとから生じた事情なのかを確かめてから効果を考えます。
| 事由 | 取消し | 撤回 | 理由・判断ポイント |
|---|---|---|---|
| 効力を失わせる理由 | 行政行為が行われた時点で存在していた瑕疵(原始的瑕疵)を理由とする | 行為の時点では瑕疵がなく、あとから生じた事情(後発的事情)を理由とする | 分類を決めるのは条文の言葉ではなく、瑕疵がいつからあったかです。 |
| 効力が失われる範囲最重要 | 遡及効。さかのぼって最初から効力がなかったことになる | 将来効。今後に向かって効力がないことになり、過去の効力は残る | 撤回の効果が処分時にさかのぼるとする肢は、ここで切れます。 |
| 法律の根拠 | 根拠は不要 | 根拠は不要 | 撤回にだけ明文の根拠が要ると誤らせる肢が出ますが、紙面はどちらも不要としています。 |
| 行政手続法上の聴聞 | 許認可等を取り消す不利益処分にあたるなら聴聞が必要(行政手続法13条1項1号イ)。相手方に不利益を課さない職権取消しには意見陳述手続は不要 | 許認可等を取り消す不利益処分にあたるため聴聞が必要(行政手続法13条1項1号イ) | 13条1項が要求する意見陳述の機会は、撤回にあたる場合にも及びます。 |
| 具体例 | 懲戒処分を受ける理由もないのにされた懲戒処分を取り消すこと | 道路交通法違反を理由に運転免許を取り消すこと。砂利採取業者が採取計画に従わないことを理由とする認可の取消しも撤回にあたる | 砂利採取法のように条文が「取り消す」と書いていても、分類上は撤回です。 |
効力を失わせる理由
- 取消し
- 行政行為が行われた時点で存在していた瑕疵(原始的瑕疵)を理由とする
- 撤回
- 行為の時点では瑕疵がなく、あとから生じた事情(後発的事情)を理由とする
判断ポイント
分類を決めるのは条文の言葉ではなく、瑕疵がいつからあったかです。
効力が失われる範囲
最重要- 取消し
- 遡及効。さかのぼって最初から効力がなかったことになる
- 撤回
- 将来効。今後に向かって効力がないことになり、過去の効力は残る
判断ポイント
撤回の効果が処分時にさかのぼるとする肢は、ここで切れます。
法律の根拠
- 取消し
- 根拠は不要
- 撤回
- 根拠は不要
判断ポイント
撤回にだけ明文の根拠が要ると誤らせる肢が出ますが、紙面はどちらも不要としています。
行政手続法上の聴聞
- 取消し
- 許認可等を取り消す不利益処分にあたるなら聴聞が必要(行政手続法13条1項1号イ)。相手方に不利益を課さない職権取消しには意見陳述手続は不要
- 撤回
- 許認可等を取り消す不利益処分にあたるため聴聞が必要(行政手続法13条1項1号イ)
判断ポイント
13条1項が要求する意見陳述の機会は、撤回にあたる場合にも及びます。
具体例
- 取消し
- 懲戒処分を受ける理由もないのにされた懲戒処分を取り消すこと
- 撤回
- 道路交通法違反を理由に運転免許を取り消すこと。砂利採取業者が採取計画に従わないことを理由とする認可の取消しも撤回にあたる
判断ポイント
砂利採取法のように条文が「取り消す」と書いていても、分類上は撤回です。
01行政行為の効力と瑕疵の重要暗記項目
行政行為の効力
行政行為には四つの効力がある。①公定力=取消訴訟の排他的管轄から導かれ、権限ある機関が取り消すまで一応有効として扱われる。②不可争力=出訴期間や審査請求期間の経過により私人の側から効力を争えなくなるが、処分庁による職権取消しは妨げられない。③自力執行力=行政代執行法1条により、義務を命ずる根拠とは別個の法律の根拠を要する。④不可変更力=審査請求の裁決など争訟裁断的行為にのみ生じ、行政庁自らの取消しを封じる。
覚え方不可争力は私人を縛り、不可変更力は行政庁を縛る
ひっかけ注意「取消判決を得なければ国家賠償請求はできない」とする肢。国家賠償は金銭賠償を求めるだけで処分の効力を否定しないから公定力は及ばない。
行政行為の分類
法律行為的行政行為は命令的行為(下命・禁止・許可・免除)と形成的行為(特許・認可・代理)に分かれる。許可は一般的禁止の解除にすぎないため、無許可でした行為も私法上の効力は原則として妨げられない(無免許者がした自動車の売買は有効)。認可は私人間の法律行為を補充してその効力を完成させる行為なので、認可を欠く行為は無効となる(知事の許可を欠く農地の売買は無効)。確認・公証・通知・受理は準法律行為的行政行為である。
覚え方許可を欠いても契約は生きる、認可を欠けば契約は死ぬ
ひっかけ注意法令上の「許可」「認可」という名称と講学上の分類が一致するかのように問う肢。農地法3条の「許可」は講学上の認可であり、無許可の売買は無効である。
行政行為の瑕疵
判例(最判昭和36年3月7日等)は、行政行為が無効となる要件として瑕疵の重大性と明白性の双方を要求する重大明白説を採る。明白性とは処分の外形上、客観的に誤認が一見看取し得る程度であることをいう。ただし課税処分については、第三者の信頼保護を考慮する必要のない特段の事情があるときに明白性を要しないとした判例もある(最判昭和48年4月26日)。取り消し得べき瑕疵にとどまる場合は、権限ある機関が取り消すまで有効に扱われる。
覚え方無効は重大かつ明白。課税処分だけは明白性を落とせる例外がある
ひっかけ注意「瑕疵が重大でありさえすれば無効となる」と明白性を落とす肢。原則は両要件がそろって初めて無効となる。
職権取消しと撤回
職権取消しは行為時に存在した瑕疵を理由に効力を遡って失わせるもので、処分庁のほか監督庁も行い得ると解される。撤回は瑕疵なく成立した行為を後発的な事情変更により将来に向かって失効させるもので、処分庁のみが行い得る。最判昭和63年6月17日(優生保護法指定医師事件)は、公益上の必要が高ければ法律に明文の根拠がなくても撤回できるとした。授益的行為の職権取消し・撤回は、相手方の信頼保護と公益との比較衡量により制限を受ける。
覚え方取消しは過去の瑕疵で遡り、撤回は後の事情で将来だけ効かなくなる
ひっかけ注意「撤回には常に明文の法律上の根拠が必要」とする肢や、撤回の効果が処分時に遡るとする肢。撤回は根拠不要かつ将来効である。
関連請求に係る訴訟の移送
13条は、取消訴訟と関連請求に係る訴訟が各別の裁判所に係属する場合、相当と認めるときは、関連請求に係る訴訟の係属する裁判所が申立て又は職権で当該訴訟を取消訴訟の係属する裁判所に移送できると定める。関連請求とは処分の原状回復・損害賠償請求など13条各号が掲げる6類型をいう。ただし取消訴訟又は関連請求に係る訴訟が高等裁判所に係属しているときは移送できない。移送の方向は関連請求側から取消訴訟側への一方向である。
覚え方移送は関連請求のほうを取消訴訟に寄せる。高裁係属なら移送不可
ひっかけ注意移送の方向を逆にして「取消訴訟を関連請求の係属裁判所へ移送する」とする肢。高裁係属時の除外も落としやすい。
覚える数字と、狙われる引っかけ
- 無効の要件 重大性+明白性
- 取消訴訟の出訴期間 知った日から6か月
- ひっかけ取消判決を得なければ国家賠償請求ができないとする肢。国賠は処分の効力を否定せず金銭賠償を求めるだけなので公定力は及ばない
- ひっかけ瑕疵が重大でありさえすれば無効になるとする肢。判例は重大明白説を採り、明白性も原則として必要
- ひっかけ不可争力が生じれば処分庁も職権取消しができないとする肢。不可争力が縛るのは争う側の私人だけ
押さえる判例
課税処分については、第三者の信頼保護を考慮する必要のない事情があるときは明白性を要しないとした
実質的に裁判に類する争訟裁断的行為には不可変更力が生じ、行政庁が自ら取り消すことは許されない
02試験で正誤を分けるチェック順
- 1誰を縛る効力かで仕分ける。私人を縛るのが公定力と不可争力、行政庁自身を縛るのが不可変更力
問題文の限定語を先に拾い、上の暗記項目と照合してから結論を出します。
- 2瑕疵が重大かつ明白なら無効として出訴期間の制限なく争え、それ以外は取消訴訟で期間内に争うと決める
問題文の限定語を先に拾い、上の暗記項目と照合してから結論を出します。
- 3公定力が及ばない場面かを確認する。国家賠償請求と刑事訴訟では、取消判決を経ずに処分の違法を主張できる
問題文の限定語を先に拾い、上の暗記項目と照合してから結論を出します。
03この論点の根拠
- 関連法令
- 行政事件訴訟法
- 情報確認日
- 2026年4月1日施行法令基準
- 復習方法
- 要点を確認した後、○×一問一答で条件の違いを見分ける
法改正により扱いが変わる場合があります。試験日程や申込みに関する情報は、 必ず公式案内も確認してください。
問題演習
行政行為の効力と瑕疵の○×一問一答
1/8問解答 0・正解 0
行政法重要度 S頻出度 14/24(編集部の目安)
行政行為の効力
最高裁判所は、違法な行政処分によって損害を受けた者が国又は公共団体に対して損害賠償を請求するに当たっては、あらかじめ当該行政処分について取消し又は無効確認の判決を得ておく必要はないとしている。
行政行為の効力と瑕疵の○×一問一答8問|問題と解説
この論点で収録している8問を、正誤と解説つきで通して読めます。 上の演習で迷った問題を見直すときに使ってください。
問1
行政行為の効力重要度S最高裁判所は、違法な行政処分によって損害を受けた者が国又は公共団体に対して損害賠償を請求するに当たっては、あらかじめ当該行政処分について取消し又は無効確認の判決を得ておく必要はないとしている。
答え:○(正しい)
解説
正しい。最判昭和36年4月21日は、国家賠償請求は処分の効力を否定するものではないから取消判決を経る必要はないとした。
問2
行政行為の瑕疵重要度A行政行為の瑕疵が法規の重要な部分に関する違反であり、かつ、その瑕疵の存在が処分成立の当初から外形上客観的に明白である場合には、当該行政行為は無効となり、出訴期間の経過後もその効力を否定することができる。
答え:○(正しい)
解説
正しい。判例は重大明白説を採り、瑕疵が重大かつ明白なときは処分は当然に無効で、公定力も不可争力も生じないとする。
問3
行政行為の分類重要度S農地の権利移動についての農業委員会の許可は一般的な禁止を解除する講学上の許可に当たるから、この許可を受けないでされた農地の売買契約であっても、当事者間においては有効に所有権移転の効力を生じる。
答え:×(誤り)
解説
誤り。農地法上の許可は講学上の認可であり、これを受けない権利移動は法律上の効力を生じないとされている。
問4
職権取消しと撤回重要度A最高裁判所は、実子あっせん行為を行った医師に対する指定医師の指定について、撤回によって当該医師の被る不利益を考慮してもなお撤回すべき公益上の必要性が高いと認められるときは、明文の規定がなくとも指定を撤回することができるとしている。
答え:○(正しい)
解説
正しい。最判昭和63年6月17日は、明文の根拠がなくても、公益上の必要が相手方の不利益を上回るときは撤回できるとした。
問5
行政行為の効力重要度A行政行為には自力執行力が認められるから、行政庁は、義務を命ずる行政行為の根拠規定さえあれば、別に強制執行についての法律の根拠がなくとも自ら義務者に対して強制執行をすることができる。
答え:×(誤り)
解説
誤り。義務を課す根拠規定とは別に、強制執行を行うための法律の根拠が必要である(行政代執行法1条参照)。
問6
行政行為の効力重要度A審査請求に対する裁決のように争訟を裁断する性質を有する行政行為については、これをした行政庁は、たとえその判断に誤りがあると気づいたとしても、自らこれを取り消し又は変更することはできない。
答え:○(正しい)
解説
正しい。争訟裁断的行為には不可変更力が生じ、処分庁による職権取消し・変更が封じられる(最判昭和29年1月21日)。
問7
関連請求に係る訴訟の移送重要度B取消訴訟と関連請求に係る訴訟とが各別の裁判所に係属する場合、関連請求に係る訴訟の係属する裁判所は、申立てによりまたは職権で、その訴訟を取消訴訟の係属する裁判所に移送することができる。
答え:○(正しい)
解説
正しい。13条本文が定める関連請求に係る訴訟の移送であり、職権による移送も認められる。
問8
行政行為の瑕疵重要度B最高裁判所は、法人税の更正処分に付記された理由に不備がある場合であっても、その後の審査裁決において当該処分の具体的根拠が明らかにされたときは、当該理由付記の瑕疵は治癒されるとしている。
答え:×(誤り)
解説
誤り。最判昭和47年12月5日は、理由付記制度の趣旨に照らし、審査裁決で根拠が示されても瑕疵は治癒されないとした。
行政行為の効力と瑕疵の問題を続けて解く
この論点に対応する8問を絞り込んで出題します。