管理実務
建物明渡しの手続とは?解除・判決・強制執行を整理【賃貸不動産経営管理士】【2026年度試験対応】
賃貸住宅の明渡しを、契約終了、任意の退去、裁判、強制執行に分けて解説。判決後の鍵交換や残置物処分が当然に許されるわけではない理由も確認します。
要点 8件・基本問題 8問・解説の確認問題 3問読む → 覚える → 解くまでこのページで完結
- 法令基準日
- 2026-04-01
- 最終確認日
- 2026-08-15
- 確認
- chintaikanrishi-critical-review-2026-08-15

2026年度試験対応。法令基準日:2026-04-01。
まず押さえるポイント
建物の明渡しは、契約が終了すれば管理会社が強制的に実行できるものではありません。任意に明け渡されない場合は、判決や和解調書などの債務名義に基づき、執行官による適法な強制執行の手続を検討します。
法令基準日:2026-04-01 / 解説更新日:2026-09-08
解除と明渡しは別の段階
賃料の滞納がある場合でも、まず契約を解除できるかを検討します。賃貸借では催告や信頼関係の破壊の有無が問題となり、一定の滞納月数だけで必ず解除できるという単純な判断はできません。
解除が有効でも、占有者が任意に退去しない場合は明渡しの実現手続が別に必要です。「契約が終わった」と「自分で室内の物を運び出せる」は同じ結論ではありません。
任意の解決から執行官による明渡しへ

契約終了:解除等の要件を確認:滞納だけで自動終了としない。明渡しの根拠:判決・和解調書等:通常の合意書と債務名義は別。強制的な実現:執行官による手続:管理会社が代わりに実力行使しない
図を大きく見る退去日や精算について合意し、任意に明渡しが行われれば、その内容を記録します。合意だけでは解決しない場合、建物明渡請求の訴訟等により、強制執行の根拠となる債務名義を得る手続を検討します。
強制執行は、執行文や送達証明書など事案に応じた必要書類を整え、執行官へ申し立てる仕組みです。確定判決だけでなく、裁判上の和解調書や調停調書などが根拠になる場合もあります。
| 項目 | 押さえる内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 契約終了 | 解除等の要件を確認 | 滞納だけで自動終了としない |
| 明渡しの根拠 | 判決・和解調書等 | 通常の合意書と債務名義は別 |
| 強制的な実現 | 執行官による手続 | 管理会社が代わりに実力行使しない |
判決があっても自力で鍵交換しない
明渡しを命じる判決を得たことは、管理会社に執行官の権限が与えられることではありません。占有が続いている部屋の鍵を無断で交換し、入居者を締め出すような行為を、判決だけで正当化することはできません。
室内の動産も同様です。残っている物が不要品に見えても、所有権が当然に消滅するわけではありません。明渡しの執行と動産の取扱いを、所定の手続に沿って進めます。
家賃の回収と部屋の明渡しを分ける
滞納家賃を請求することと、建物の占有を取り戻すことでは求める内容が違います。金銭請求の手続を知っていても、それがそのまま部屋の明渡しを実現する手続になるとは限りません。
令和3年度問22では、明渡判決を得た後の行動を含む対応が扱われています。本記事では手続の区別を確認し、家賃の額や敷金からの充当は、金銭債権の精算として別に考えます。
出題例の原本・年度別問題
過去の出題を手がかりに、判断する条件を整理します。このページの説明と確認問題は合トレのオリジナルです。
- 令和3年度 問22
明渡判決と自力救済を区別する
公式の公表資料を確認する
オリジナル確認問題で判断する
○か×かを選び、理由を確認してください。実際の過去問を転載したものではありません。
この解説の一次資料
- e-Gov:民法の解除・賃貸借確認日:2026-09-08
- 裁判所:不動産の引渡し・明渡しの強制執行確認日:2026-09-08
- 試験実施団体:過去の試験問題確認日:2026-09-08

明渡しは催告と契約解除、明渡し訴訟と判決、執行官による強制執行の順で進めます。鍵交換や荷物処分による自力救済はできません。
自力救済の禁止
法律上の手続によらず実力で権利を実現する自力救済は原則として禁止され、緊急やむを得ない特別の事情がある場合に必要な限度で例外的に許されるにすぎない(最判昭和40年12月7日)。無断の鍵交換、室内の動産の搬出・処分、ドアの施錠は不法行為となり、損害賠償や刑事責任を問われる。特約があっても公序良俗に反し無効と解され、明渡しは債務名義を得て強制執行によらなければならない。
覚え方実力行使はだめ、特約があってもだめ、明渡しは判決から
混同注意・比較表
内容証明郵便と公正証書の違い
最初に見るのは、その書面だけで強制執行までできるかどうかです。どちらも証拠を残す道具ですが、債務名義になるかどうかで役割がはっきり分かれます。
| 事由 | 内容証明郵便 | 公正証書 | 理由・判断ポイント |
|---|---|---|---|
| 誰が何を証明するか最重要 | いつ、どのような内容の郵便を誰が誰に宛てて出したかを郵便局が証明する制度で、文書の内容の真実性までは担保しない | 公証人が作成する文書で、法律上・社会的に信頼できる文書として取り扱われる | 内容証明が証明するのは差出しの事実だけで、中身が正しいことではありません。 |
| 原本の保管 | 内容文書の原本は相手方に送付され、謄本2通のうち1通を差出人に交付、1通を郵便局が5年間保管する | 原本は公証人役場において、原則として20年間保管される | 5年と20年という保管期間の数字がそのまま出題されます。 |
| 強制執行ができるか | それ自体に強制力はなく、支払を強制するには別に債務名義を得る必要がある | 債務者の同意を得て「直ちに強制執行に服する」旨が記載されていれば債務名義となり、強制執行ができる | 公正証書でも、執行認諾の文言がなければ債務名義にはなりません。 |
| 使いどころと限界 | 催告や契約解除の意思表示を残す手段として使う。到達まで証明したいときは配達証明を併用する | 執行証書として使えるのは金銭の支払等の請求のみで、建物の明渡しを強制執行することはできない | 明渡しを実現したいときは、公正証書ではなく和解調書や判決が必要です。 |
誰が何を証明するか
最重要- 内容証明郵便
- いつ、どのような内容の郵便を誰が誰に宛てて出したかを郵便局が証明する制度で、文書の内容の真実性までは担保しない
- 公正証書
- 公証人が作成する文書で、法律上・社会的に信頼できる文書として取り扱われる
判断ポイント
内容証明が証明するのは差出しの事実だけで、中身が正しいことではありません。
原本の保管
- 内容証明郵便
- 内容文書の原本は相手方に送付され、謄本2通のうち1通を差出人に交付、1通を郵便局が5年間保管する
- 公正証書
- 原本は公証人役場において、原則として20年間保管される
判断ポイント
5年と20年という保管期間の数字がそのまま出題されます。
強制執行ができるか
- 内容証明郵便
- それ自体に強制力はなく、支払を強制するには別に債務名義を得る必要がある
- 公正証書
- 債務者の同意を得て「直ちに強制執行に服する」旨が記載されていれば債務名義となり、強制執行ができる
判断ポイント
公正証書でも、執行認諾の文言がなければ債務名義にはなりません。
使いどころと限界
- 内容証明郵便
- 催告や契約解除の意思表示を残す手段として使う。到達まで証明したいときは配達証明を併用する
- 公正証書
- 執行証書として使えるのは金銭の支払等の請求のみで、建物の明渡しを強制執行することはできない
判断ポイント
明渡しを実現したいときは、公正証書ではなく和解調書や判決が必要です。
最重要・比較表
敷金・礼金・保証金・敷引きの性質と返還
最初に見るのは、そのお金が預かり金なのか渡し切りなのかです。ここが決まると、契約が終わったときに返ってくるかどうかも決まります。
| 事由 | 敷金 | 礼金 | 保証金 | 敷引き | 理由・判断ポイント |
|---|---|---|---|---|---|
| どんなお金か | 賃料の未払や物件の損傷による原状回復費用等、一切の債権を担保する目的で借主から貸主に預けられる金銭 | 賃貸借契約時に、返還されない一時金として借主から貸主に支払われる金銭 | 事業用のビル等の賃貸借で、契約の締結に際して授受される一時金。敷金と同趣旨のものと、金銭の貸借と判断されるものがある | 明渡し時に、預けておいた敷金から一定の額を控除する旨の合意。敷引特約や償却合意とも呼ばれる | 預かり金か渡し切りかで、以下の行の結論がすべて決まります。 |
| 契約が終わったとき返るか最重要 | 明渡しを受けた後に、未払賃料等を控除した残額が借主に返還される | 返還されない | 敷金と同趣旨なら返還されるが、金銭の貸借と判断される場合は約定に従う | 控除すると合意した額は、借主の故意・過失による損傷の有無にかかわらず返還されない | 礼金だけが最初から返還義務のない金銭で、他は預託金です。 |
| 返還・控除の時期 | 賃貸借が終了し、かつ賃貸物件の引渡しを受けたときに返還する。明渡しが先で、敷金の返還は後になる | 契約終了後の返還義務がないため、精算の問題は生じない | 敷金と同趣旨とされた場合は、明渡し後に未払賃料等を控除した残額が返還される | 賃貸物件の明渡し時に、預けておいた敷金から合意した額を差し引く形で処理される | 明渡しが先で敷金の返還が後、という順序は同時履行ではありません。 |
| 実務上の注意 | 貸主は明渡し前でも任意に未払賃料へ充当できるが、借主から充当を請求することはできない | 敷金や保証金のような預託金とは性質が異なり、担保としての機能を持たない | 法律に具体的な定めがないため、どのような目的で授受した金銭かを契約書に明確に定めておく | 借主が明確に認識して契約し、額が賃料等に比べて高額すぎなければ有効とされている | 借主から「敷金を最後の家賃に充ててほしい」と求めることはできません。 |
どんなお金か
- 敷金
- 賃料の未払や物件の損傷による原状回復費用等、一切の債権を担保する目的で借主から貸主に預けられる金銭
- 礼金
- 賃貸借契約時に、返還されない一時金として借主から貸主に支払われる金銭
- 保証金
- 事業用のビル等の賃貸借で、契約の締結に際して授受される一時金。敷金と同趣旨のものと、金銭の貸借と判断されるものがある
- 敷引き
- 明渡し時に、預けておいた敷金から一定の額を控除する旨の合意。敷引特約や償却合意とも呼ばれる
判断ポイント
預かり金か渡し切りかで、以下の行の結論がすべて決まります。
契約が終わったとき返るか
最重要- 敷金
- 明渡しを受けた後に、未払賃料等を控除した残額が借主に返還される
- 礼金
- 返還されない
- 保証金
- 敷金と同趣旨なら返還されるが、金銭の貸借と判断される場合は約定に従う
- 敷引き
- 控除すると合意した額は、借主の故意・過失による損傷の有無にかかわらず返還されない
判断ポイント
礼金だけが最初から返還義務のない金銭で、他は預託金です。
返還・控除の時期
- 敷金
- 賃貸借が終了し、かつ賃貸物件の引渡しを受けたときに返還する。明渡しが先で、敷金の返還は後になる
- 礼金
- 契約終了後の返還義務がないため、精算の問題は生じない
- 保証金
- 敷金と同趣旨とされた場合は、明渡し後に未払賃料等を控除した残額が返還される
- 敷引き
- 賃貸物件の明渡し時に、預けておいた敷金から合意した額を差し引く形で処理される
判断ポイント
明渡しが先で敷金の返還が後、という順序は同時履行ではありません。
実務上の注意
- 敷金
- 貸主は明渡し前でも任意に未払賃料へ充当できるが、借主から充当を請求することはできない
- 礼金
- 敷金や保証金のような預託金とは性質が異なり、担保としての機能を持たない
- 保証金
- 法律に具体的な定めがないため、どのような目的で授受した金銭かを契約書に明確に定めておく
- 敷引き
- 借主が明確に認識して契約し、額が賃料等に比べて高額すぎなければ有効とされている
判断ポイント
借主から「敷金を最後の家賃に充ててほしい」と求めることはできません。
最重要・比較表
未収賃料を回収する法的手段の使い分け
最初に決めるのは、何を求めるかです。お金だけを回収したいのか、建物の明渡しまで必要なのかで、使える手続と最後に得られる債務名義が変わります。
| 事由 | 支払督促 | 少額訴訟 | 即決和解 | 理由・判断ポイント |
|---|---|---|---|---|
| 使える請求 | 金銭その他の代替物または有価証券の一定の数量の給付を求める請求に使える | 訴額60万円以下の金銭の支払を求める請求に限られる | 裁判外で話し合いができていれば、金銭の支払でも建物の明渡しでも使える | 金額の上限があるのは少額訴訟だけで、支払督促に金額の上限はありません。 |
| 申立て先と進み方 | 簡易裁判所の書記官に申し立て、相手方の言い分を聴かずに支払を命じる支払督促が発せられる | 簡易裁判所に提起し、原則として口頭弁論の当日に審理を終えて即日判決が言い渡される | 裁判所に申し立て、合意の内容が適切と認められて和解が成立すると和解調書が作成される | 支払督促は相手の言い分を聴かずに出る点が、他の二つと決定的に違います。 |
| 相手が争ったとき | 受け取ってから2週間以内に督促異議を申し立てられると、通常の訴訟手続に移行する | 被告は通常の手続に移行させる旨を申述できる。判決に控訴はできず、同じ裁判所への異議申立てのみできる | 裁判外で合意ができていることが前提の手続なので、合意がまとまらなければ使えない | 少額訴訟は控訴ができず、異議申立てで同じ裁判所に判断し直してもらう形です。 |
| 建物の明渡しに使えるか最重要 | 仮執行宣言付き支払督促は金銭・有価証券・その代替物の請求にしか使えず、明渡しには使えない | 金銭の支払請求に限られるため、明渡請求訴訟には使えない | 和解調書は金銭の支払だけでなく明渡請求にも使えるため、明渡しの実効性を高める手段になる | 明渡しまで実現したいなら、支払督促と少額訴訟はどちらも選べません。 |
| 得られる債務名義 | 異議がなければ仮執行宣言の申立てができ、仮執行宣言付き支払督促が債務名義となる | 言い渡された判決が債務名義となる。支払猶予や分割払、遅延損害金の免除を定める判決もあり得る | 和解調書が債務名義となり、記載された合意内容によって強制執行ができる | どの手続でも、債務名義を得てはじめて強制執行に進めます。 |
使える請求
- 支払督促
- 金銭その他の代替物または有価証券の一定の数量の給付を求める請求に使える
- 少額訴訟
- 訴額60万円以下の金銭の支払を求める請求に限られる
- 即決和解
- 裁判外で話し合いができていれば、金銭の支払でも建物の明渡しでも使える
判断ポイント
金額の上限があるのは少額訴訟だけで、支払督促に金額の上限はありません。
申立て先と進み方
- 支払督促
- 簡易裁判所の書記官に申し立て、相手方の言い分を聴かずに支払を命じる支払督促が発せられる
- 少額訴訟
- 簡易裁判所に提起し、原則として口頭弁論の当日に審理を終えて即日判決が言い渡される
- 即決和解
- 裁判所に申し立て、合意の内容が適切と認められて和解が成立すると和解調書が作成される
判断ポイント
支払督促は相手の言い分を聴かずに出る点が、他の二つと決定的に違います。
相手が争ったとき
- 支払督促
- 受け取ってから2週間以内に督促異議を申し立てられると、通常の訴訟手続に移行する
- 少額訴訟
- 被告は通常の手続に移行させる旨を申述できる。判決に控訴はできず、同じ裁判所への異議申立てのみできる
- 即決和解
- 裁判外で合意ができていることが前提の手続なので、合意がまとまらなければ使えない
判断ポイント
少額訴訟は控訴ができず、異議申立てで同じ裁判所に判断し直してもらう形です。
建物の明渡しに使えるか
最重要- 支払督促
- 仮執行宣言付き支払督促は金銭・有価証券・その代替物の請求にしか使えず、明渡しには使えない
- 少額訴訟
- 金銭の支払請求に限られるため、明渡請求訴訟には使えない
- 即決和解
- 和解調書は金銭の支払だけでなく明渡請求にも使えるため、明渡しの実効性を高める手段になる
判断ポイント
明渡しまで実現したいなら、支払督促と少額訴訟はどちらも選べません。
得られる債務名義
- 支払督促
- 異議がなければ仮執行宣言の申立てができ、仮執行宣言付き支払督促が債務名義となる
- 少額訴訟
- 言い渡された判決が債務名義となる。支払猶予や分割払、遅延損害金の免除を定める判決もあり得る
- 即決和解
- 和解調書が債務名義となり、記載された合意内容によって強制執行ができる
判断ポイント
どの手続でも、債務名義を得てはじめて強制執行に進めます。
最重要・比較表
自力救済として禁止される行為と、とるべき手続
最初に確認するのは、その行為に裁判所が関与しているかどうかです。関与のない実力行使は、契約書に特約があっても違法となり、損害賠償や刑事責任につながります。
| 事由 | 禁止される行為(自力救済) | とるべき法的手続 | 理由・判断ポイント |
|---|---|---|---|
| 滞納した借主を部屋に入れないこと最重要 | 借主の承諾を得ずに部屋の鍵を交換したり、錠にカバーをかけて入室を阻止し、実質的に支払を促すことは禁止される | 催告をしたうえで契約を解除し、判決等の債務名義を得て明渡しの強制執行を申し立てる | 滞納の月数がどれだけ長くても、実力で締め出すことは認められません。 |
| 室内の私物・残置物の扱い | 滞納時や長期不在時に、借主の承諾を得ずに室内の私物を売却・廃棄することは、他人の財産を勝手に処分する行為にあたる | 明渡し後の残置物は借主が所有権を放棄したと考えられるため、所有権放棄の念書があれば粗大ゴミ程度のものは貸主が処分できる | 明渡しの前か後かで、残置物に手を付けられるかどうかが変わります。 |
| 督促のやり方 | 勤務先等に電話して督促すること、督促のため居宅を訪問し借主から退去を求められたのに退去しないことは禁止される | 催告は口頭でもできるが証拠として残すため書面で行い、解除まで求めるときは配達証明付きの内容証明郵便を使う | 督促は正当な権利行使でも、方法と場所が相当な範囲を超えれば違法になります。 |
| 契約書に定めがあるとき | 契約終了後1か月以内に退去しない場合や賃料を滞納した場合に貸主が鍵を交換できるとする規定は、公序良俗に反し無効となる | 1か月でも滞納すれば催告を経ずに解除できる旨の特約があっても、まずは支払の催告をしたうえで解除手続を執る | 特約があるという一事では、実力行使も無催告解除も正当化されません。 |
| 違反したときの責任 | 民法では不法行為に基づく損害賠償責任が生じ、刑法では住居侵入罪や器物損壊罪、場合によっては建造物損壊罪にあたるおそれがある | 債務名義に執行文の付与を受けたうえで強制執行を行う。執行文は裁判所の書記官または公証人が付与する | 勝訴判決を得た後でも、自分で搬出すれば自力救済として違法になります。 |
滞納した借主を部屋に入れないこと
最重要- 禁止される行為(自力救済)
- 借主の承諾を得ずに部屋の鍵を交換したり、錠にカバーをかけて入室を阻止し、実質的に支払を促すことは禁止される
- とるべき法的手続
- 催告をしたうえで契約を解除し、判決等の債務名義を得て明渡しの強制執行を申し立てる
判断ポイント
滞納の月数がどれだけ長くても、実力で締め出すことは認められません。
室内の私物・残置物の扱い
- 禁止される行為(自力救済)
- 滞納時や長期不在時に、借主の承諾を得ずに室内の私物を売却・廃棄することは、他人の財産を勝手に処分する行為にあたる
- とるべき法的手続
- 明渡し後の残置物は借主が所有権を放棄したと考えられるため、所有権放棄の念書があれば粗大ゴミ程度のものは貸主が処分できる
判断ポイント
明渡しの前か後かで、残置物に手を付けられるかどうかが変わります。
督促のやり方
- 禁止される行為(自力救済)
- 勤務先等に電話して督促すること、督促のため居宅を訪問し借主から退去を求められたのに退去しないことは禁止される
- とるべき法的手続
- 催告は口頭でもできるが証拠として残すため書面で行い、解除まで求めるときは配達証明付きの内容証明郵便を使う
判断ポイント
督促は正当な権利行使でも、方法と場所が相当な範囲を超えれば違法になります。
契約書に定めがあるとき
- 禁止される行為(自力救済)
- 契約終了後1か月以内に退去しない場合や賃料を滞納した場合に貸主が鍵を交換できるとする規定は、公序良俗に反し無効となる
- とるべき法的手続
- 1か月でも滞納すれば催告を経ずに解除できる旨の特約があっても、まずは支払の催告をしたうえで解除手続を執る
判断ポイント
特約があるという一事では、実力行使も無催告解除も正当化されません。
違反したときの責任
- 禁止される行為(自力救済)
- 民法では不法行為に基づく損害賠償責任が生じ、刑法では住居侵入罪や器物損壊罪、場合によっては建造物損壊罪にあたるおそれがある
- とるべき法的手続
- 債務名義に執行文の付与を受けたうえで強制執行を行う。執行文は裁判所の書記官または公証人が付与する
判断ポイント
勝訴判決を得た後でも、自分で搬出すれば自力救済として違法になります。
01明渡しと法的手続の重要暗記項目
自力救済の禁止
法律上の手続によらず実力で権利を実現する自力救済は原則として禁止され、緊急やむを得ない特別の事情がある場合に必要な限度で例外的に許されるにすぎない(最判昭和40年12月7日)。無断の鍵交換、室内の動産の搬出・処分、ドアの施錠は不法行為となり、損害賠償や刑事責任を問われる。特約があっても公序良俗に反し無効と解され、明渡しは債務名義を得て強制執行によらなければならない。
覚え方実力行使はだめ、特約があってもだめ、明渡しは判決から
ひっかけ注意「特約があれば鍵交換や残置物処分ができる」は誤り。滞納の月数も理由にならない。
建物明渡しの強制執行
勝訴判決は債務名義にすぎず、それ自体で実力行使が許されるわけではない。明渡しを実現するには執行文の付与を受けて執行官に強制執行を申し立てる。執行官はまず明渡しの催告を行い、原則として催告の日から1か月を経過する日を引渡し期限として定めて公示し、期限までに任意の明渡しがなければ断行日に強制的に搬出・明渡しを行う。残置された動産は保管・売却等の手続による。
覚え方判決は紙、実現は執行官。催告から原則一か月で断行
ひっかけ注意「判決があれば自分で搬出できる」は誤り。判決後も自力救済は違法である。
内容証明郵便の活用
内容証明郵便は差出日付・文書の内容・差出人・宛先を日本郵便が証明する制度であり、配達の事実までは証明しない。到達を証明するには配達証明を併用する。契約解除の意思表示や催告は相手方に到達して効力を生じるため、実務では内容証明郵便に配達証明を付けて発送する。催告には6か月の時効完成猶予の効力があるが、内容証明自体に強制力はなく、支払を強制するには債務名義が必要である。
覚え方内容証明は中身の証明、届いた証明は配達証明
ひっかけ注意「内容証明を出せば到達も証明される」「内容証明に強制力がある」はいずれも誤りである。
支払督促の手続
支払督促は、金銭その他の代替物又は有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について、債務者の住所地を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官に申し立てる手続で、債務者の審尋を経ずに発付される。債務者が送達を受けてから2週間以内に督促異議を申し立てなければ、債権者は仮執行宣言を申し立てることができ、これが債務名義となる。異議があれば通常訴訟に移行する。建物明渡しには利用できない。
覚え方支払督促はお金だけ、異議二週間で通常訴訟へ
ひっかけ注意明渡しに支払督促を使えるとする誤り、異議期間を1週間や1か月とする誤りが狙われる。
少額訴訟の要件
少額訴訟は訴額60万円以下の金銭の支払を求める請求に限られ、同一の簡易裁判所で同一年に10回まで利用できる。原則として最初の期日で審理を終えて即日判決を言い渡し、証拠は即時に取り調べることができるものに限られる。判決に対して控訴はできず、同じ簡易裁判所への異議申立てのみできる。分割払や支払猶予を定めた判決もあり得る。被告は通常訴訟への移行を申述できる。建物明渡しには利用できない。
覚え方少額訴訟は六十万・年十回・一回で判決・控訴なし
ひっかけ注意建物明渡しには使えない点、控訴ができない点が狙われる。訴額の上限を30万円とする誤りも多い。
占有移転禁止の仮処分
判決の効力は原則として当事者にしか及ばないため、訴訟中に賃借人が第三者へ占有を移すと、勝訴してもその者に対する訴訟をやり直すことになる。占有移転禁止の仮処分を得て執行しておけば、その後の占有者に対しても判決の効力を及ぼして明渡しの強制執行ができる(当事者恒定効)。仮処分は執行官が現地で公示書を掲示する方法で執行され、申立てには保証金の供託が必要となる。
覚え方訴える前に占有を凍結、判決を空振りさせない
ひっかけ注意「勝訴判決があれば誰に対しても執行できる」は誤り。仮処分を怠ると、占有の入替えで手続が振り出しに戻る。
明渡しの強制執行と残置動産
民事執行法168条5項は、執行官は明渡しの目的物でない動産を取り除いて、債務者・その代理人・同居の親族や従業者で相当のわきまえのある者に引き渡さなければならないとし、引き渡すことができないときは売却できると定める。引渡しも売却もしなかった動産は執行官が保管し、その費用は執行費用となる。売却したときは売得金から費用を控除した残余を供託する。搬出・保管の費用は債権者がいったん立て替える。
覚え方残された荷物は引き渡し、だめなら売却、それでも残れば保管
ひっかけ注意「執行官が断行日にその場で全部廃棄する」は誤り。手順を無視した処分は、賃貸人の不法行為責任につながる。
即決和解(訴え提起前の和解)
訴え提起前の和解は、相手方の住所地を管轄する簡易裁判所に申し立て、期日に和解が成立すると和解調書が作成される。この調書は確定判決と同一の効力を有し、明渡しや金銭支払の債務名義となるため、明渡し合意の実効性を高める手段として用いられる。和解が成立しない場合は、当事者双方の申立てにより訴訟に移行する。公正証書は金銭債権の執行力しかなく明渡しの強制執行はできない点と区別する。
覚え方即決和解の調書は判決と同じ効き目、公正証書は金銭だけ
ひっかけ注意公正証書があれば明渡しの強制執行ができるとする誤りが狙われる。執行力があるのは金銭債権のみである。
02試験で正誤を分けるチェック順
- 1支払督促は金銭等の請求手続であり、建物明渡請求そのものには使えない
問題文の限定語を先に拾い、上の暗記項目と照合してから結論を出します。
- 2契約解除の有効性と、判決・和解調書等の明渡しに必要な債務名義を確認する
問題文の限定語を先に拾い、上の暗記項目と照合してから結論を出します。
- 3無断の施錠・家財搬出を避け、明渡しは執行官による法的手続で実施する
問題文の限定語を先に拾い、上の暗記項目と照合してから結論を出します。
03この論点の根拠
- 内容の基準日
- 2026-04-01
- 復習方法
- 要点を確認した後、○×一問一答で条件の違いを見分ける
法改正により扱いが変わる場合があります。試験日程や申込みに関する情報は、 必ず公式案内も確認してください。
問題演習
明渡しと法的手続の○×一問一答
1/8問解答 0・正解 0
管理実務重要度 S
自力救済の禁止
契約書に「滞納が3か月に及んだときは貸主が鍵を交換して室内の動産を搬出できる」旨の特約がある場合、貸主は裁判手続によらずにこれを実行できる。
明渡しと法的手続の○×一問一答8問|問題と解説
この論点で収録している8問を、正誤と解説つきで通して読めます。 上の演習で迷った問題を見直すときに使ってください。
問1
自力救済の禁止重要度S契約書に「滞納が3か月に及んだときは貸主が鍵を交換して室内の動産を搬出できる」旨の特約がある場合、貸主は裁判手続によらずにこれを実行できる。
答え:×(誤り)
解説
誤り。自力救済は原則として違法であり、これを認める特約も無効と解される。
問2
建物明渡しの強制執行重要度S建物明渡請求訴訟に勝訴して判決が確定しても、賃借人が任意に明け渡さない場合、賃貸人が自ら室内の家財を搬出することはできない。
答え:○(正しい)
解説
正しい。確定判決を得ても、明渡しの実現は執行官による強制執行によらなければならない。
問3
少額訴訟の要件重要度A少額訴訟は訴訟の目的の価額が60万円以下の金銭の支払を求める場合に利用でき、同一の簡易裁判所において同一の年に10回を超えて利用することはできない。
答え:○(正しい)
解説
正しい。訴額60万円以下の金銭請求に限られ、同一簡裁で年10回までの利用制限がある。
問4
支払督促の手続重要度A支払督促は、金銭の支払を求める場合だけでなく、建物の明渡しを求める場合にも利用することができる。
答え:×(誤り)
解説
誤り。支払督促は金銭その他の代替物等の給付請求に限られ、明渡しには利用できない。
問5
内容証明郵便の活用重要度A内容証明郵便は、いつ、いかなる内容の文書を誰から誰あてに差し出したかを証明する制度であり、これにより相手方に配達された事実も当然に証明される。
答え:×(誤り)
解説
誤り。配達の事実を証明するには、別に配達証明を付ける必要がある。
問6
明渡しの強制執行と残置動産重要度A建物明渡しの強制執行の断行日に室内に残されていた動産は、執行官が直ちにすべて廃棄処分しなければならない。
答え:×(誤り)
解説
誤り。執行官は残置動産を債務者等に引き渡し、引き渡せないときは売却することができる。
問7
占有移転禁止の仮処分重要度A建物明渡請求訴訟を提起するにあたっては、訴訟中に賃借人が第三者に占有を移転して判決の効力が及ばなくなる事態に備え、占有移転禁止の仮処分を申し立てることが有効である。
答え:○(正しい)
解説
正しい。仮処分を経ておけば、訴訟中に占有者が替わっても判決に基づき執行できる。
問8
即決和解(訴え提起前の和解)重要度B訴え提起前の和解(即決和解)が成立して作成された和解調書は、確定判決と同一の効力を有し、強制執行の債務名義となる。
答え:○(正しい)
解説
正しい。即決和解の和解調書は確定判決と同一の効力を持ち、債務名義となる。
明渡しと法的手続の問題を続けて解く
この論点に対応する8問を絞り込んで出題します。