民法
表見代理の3類型|109条・110条・112条と無権代理の違い【行政書士】【2026年度試験対応】
表見代理の109条・110条・112条を、外観が生じた原因と相手方の要件で比較。無権代理の追認・取消し・責任との違いを図解と独自問題で確認します。2026年度行政書士試験対応。
要点 8件・基本問題 8問・解説の確認問題 3問読む → 覚える → 解くまでこのページで完結

2026年度試験対応。法令基準日:2026-04-01。
まず押さえるポイント
表見代理は、実際には代理権がない場合でも、本人側にある代理権の外観と相手方の保護要件により、本人に責任を負わせる制度です。代理権授与の表示、権限外の行為、代理権消滅後の行為を分けます。単に相手方が代理権を信じたというだけでは成立しません。
法令基準日:2026-04-01 / 解説更新日:2026-09-21
代理の原則は代理権・顕名・権限内の行為
代理人が権限内で本人のためにすることを示して行った意思表示は、本人に直接効力を生じます。代理人自身が契約の経済的な利益や負担を引き受けるのではありません。例えば、売却を委任された代理人が本人名義で売買を成立させれば、売主の地位は本人に帰属します。
本人のためにすることを示さなければ、原則は代理人自身のためにしたものと扱います。ただし相手方が本人のための行為だと知っていたか、知ることができた場合には本人への効果帰属を認める100条ただし書があります。
表見代理は外観が生じた原因で条文を選ぶ

図は判断の要点です。適用条件・例外は本文と一次資料を確認してください。
図を大きく見る109条1項は本人が第三者に代理権を与えた旨を表示した場合、110条は実際に代理権がある者がその範囲を超えた場合、112条1項は一度あった代理権が消滅した後の行為を扱います。どれも「無権限だった」で終わらせず、本人に関係する外観を具体的に確かめます。
109条1項と112条1項では相手方が代理権の不存在・消滅を知らず、知らないことに過失がないことが必要です。110条はその行為について代理権があると信じる正当な理由を要求します。また、授与表示の範囲を超える109条2項、消滅前の範囲を超える112条2項もあり、単に条番号三つを暗記するだけでは足りません。
| 類型 | 外観と保護要件 |
|---|---|
| 109条1項 | 本人の授与表示/相手方善意無過失 |
| 110条 | 権限外の行為/正当な理由 |
| 112条1項 | 代理権消滅後/消滅につき善意無過失 |
過去問で確認するポイント
令和7年度問28では、代理行為における代理権や権限の規律を判断する問題。
出題当時の法令と現在の法令は区別して確認してください。下の独自確認問題では、この解説で整理した条件を一つずつ判断し、誤った文はどの語句を直せば正しくなるかまで考えましょう。
出題例の原本・年度別問題
過去の出題を手がかりに、判断する条件を整理します。このページの説明と確認問題は合トレのオリジナルです。
- 令和7年度 問28
代理行為における代理権や権限の規律を判断する問題。
公式の公表資料を確認する
オリジナル確認問題で判断する
○か×かを選び、理由を確認してください。実際の過去問を転載したものではありません。
この解説の一次資料
- 民法(2026年4月1日基準)確認日:2026-09-21
- 行政書士試験研究センター・令和7年度公表問題 問28確認日:2026-09-21
無権代理と相続(無権代理人が相続)
最判昭和40年6月18日は、無権代理人が本人を単独相続したときは本人自ら法律行為をしたのと同様の地位を生じるとし、追認拒絶は信義則上許されないとした。これに対し最判平成5年1月21日は、共同相続の場合、追認権は共同相続人全員に不可分的に帰属するため、共同相続人全員が共同して追認しない限り、無権代理人の相続分に相当する部分においても当然に有効となるものではないとした。単独相続と共同相続で結論が分かれる。
覚え方単独相続なら本人と同視、共同相続なら全員そろわないと有効にならない
最重要・比較表
表見代理の3類型の要件と効果
最初に本人のどこに落ち度があったかを見ます。表示だけしたのか、別の代理権を与えていたのか、かつて与えていたのかで条文が変わり、相手方に求める要件は3つとも同じです。
混同注意・比較表
無権代理と相続で結論が入れ替わる4つの場面
最初に「誰が誰を相続したか」を確かめます。相続の向き、先に追認拒絶があったか、単独相続か共同相続かで、追認拒絶できるかどうかが入れ替わります。
01代理・無権代理と表見代理の重要暗記項目
無権代理と相続(無権代理人が相続)
最判昭和40年6月18日は、無権代理人が本人を単独相続したときは本人自ら法律行為をしたのと同様の地位を生じるとし、追認拒絶は信義則上許されないとした。これに対し最判平成5年1月21日は、共同相続の場合、追認権は共同相続人全員に不可分的に帰属するため、共同相続人全員が共同して追認しない限り、無権代理人の相続分に相当する部分においても当然に有効となるものではないとした。単独相続と共同相続で結論が分かれる。
覚え方単独相続なら本人と同視、共同相続なら全員そろわないと有効にならない
ひっかけ注意共同相続の場合に無権代理人の相続分だけ当然有効になるとする誤りが狙われる。判例はこれを否定する。
無権代理と相続(本人が相続)
最判昭和37年4月20日は、本人が無権代理人を相続した場合、本人は被相続人の無権代理行為の追認を拒絶しても何ら信義則に反しないとした。本人はもともと追認を拒める地位にあったからである。ただし最判昭和48年7月3日は、本人が無権代理人を相続したときは117条の無権代理人としての責任を承継し、これを免れないとする。追認拒絶はできるが履行または損害賠償の責任は負う、という二段構えが結論である。
覚え方本人が継いだら拒絶できるが、無権代理人の責任は背負う
ひっかけ注意「本人が無権代理人を相続すれば行為は当然有効になる」とする誤り、および「117条の責任も免れる」とする誤りの両方が狙われる。
制限行為能力者の詐術
21条は、制限行為能力者が行為能力者であると信じさせるため詐術を用いたときは取消しを認めない。最判昭和44年2月13日は、詐術は積極的な術策を用いた場合に限られず、制限行為能力者であることを黙秘していた場合でも、他の言動と相まって相手方を誤信させ、または誤信を強めたときは詐術にあたるとした。逆にいえば単に黙秘しただけでは詐術にならない。法定代理人の同意を得たと偽ることも詐術にあたる。
覚え方黙秘だけでは詐術にならず、他の言動と相まって初めて詐術
ひっかけ注意「黙秘していれば常に詐術にあたる」とする誤りが定番。他の言動と相まって誤信させたことが必要である。
自己契約・双方代理
108条1項は自己契約および双方代理を「代理権を有しない者がした行為とみなす」と定める。効果は無効ではなく無権代理であり、本人が追認すれば有効となる(113条・116条)。ただし債務の履行と本人があらかじめ許諾した行為は除かれるため、登記申請の双方代理は許される。108条2項は、自己契約・双方代理にあたらない場合でも代理人と本人の利益が相反する行為を同じく無権代理とみなす一般規定である。
覚え方自己契約・双方代理は無効ではなく無権代理。追認で生き返る
ひっかけ注意「双方代理は絶対に無効である」とする誤りが定番。債務の履行と本人の許諾がある場合は有効で、それ以外も追認可能である。
無権代理の相手方の催告権
114条の催告は相当の期間を定めて行い、本人が期間内に確答しなければ追認を拒絶したものとみなされる。制限行為能力者の相手方の催告(20条)が原則として追認擬制であるのと逆になる。相手方は本人が追認しない間は契約を取り消せるが、契約の時に代理権のないことを知っていた場合は取り消せない(115条)。催告権は悪意の相手方でも行使できる点が取消権と異なる。追認は原則として契約の時にさかのぼって効力を生じる(116条)。
覚え方無権代理の無応答は拒絶、制限行為能力者の無応答は追認
ひっかけ注意「悪意の相手方は催告もできない」とする誤りが狙われる。催告は悪意でも可能で、取消しだけが善意に限られる。
無権代理人の責任
117条1項は、代理権を証明できず本人の追認も得られない無権代理人に、相手方の選択に従い履行または損害賠償の責任を負わせる。故意過失を要しない無過失責任である。免責されるのは、相手方が代理権のないことを知っていたとき、相手方が過失により知らなかったとき(ただし無権代理人自身が代理権のないことを知っていたときは免責されない)、無権代理人が制限行為能力者であったときの3つに限られる(117条2項)。表見代理が成立する場合でも相手方は117条の責任を追及できる。
覚え方履行か賠償かは相手方が選ぶ。免責は悪意・有過失・制限行為能力の三つ
ひっかけ注意「表見代理が成立するときは117条の責任を追及できない」とする誤りが狙われる。相手方はいずれを選択してもよい。
限定承認の方式
限定承認は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務および遺贈を弁済すべきことを留保してする承認であり(922条)、熟慮期間内に相続財産の目録を作成して家庭裁判所に提出し、限定承認をする旨を申述しなければならない(924条)。相続人が数人あるときは共同相続人の全員が共同してのみできる(923条)。これに対し相続の放棄は各相続人が単独で家庭裁判所に申述してできる(938条)。この違いが実務上の使い勝手を分けている。
覚え方限定承認は全員そろって、放棄は一人でできる
ひっかけ注意限定承認を各相続人が単独でできるとする誤りが定番。共同相続人全員が共同してしなければならない。
代理行為の顕名
99条1項は、代理人が権限内で本人のためにすることを示してした意思表示の効果を本人に直接帰属させる。顕名を欠くと100条本文により代理人自身のためにしたものとみなされるが、ただし書で相手方が本人のためにすることを知り、または知ることができたときは99条1項が準用され本人に効果が帰属する。なお制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限を理由に取り消すことができない(102条本文)。代理人には意思能力が必要である。
覚え方顕名を落とせば代理人が当事者、相手が知っていれば本人に帰属
ひっかけ注意「未成年者を代理人に選任した行為は取り消せる」とする誤りが狙われる。102条本文により原則として取り消せない。
覚える数字と、狙われる引っかけ
- 無権代理の催告 確答がなければ追認を拒絶したものとみなす
- 制限行為能力者側への催告 法定代理人等や能力回復後の本人へなら追認擬制、被保佐人・被補助人本人へなら取消擬制
- ひっかけ無権代理と相続の向きを取り違える肢。無権代理人が本人を相続した場合と、本人が無権代理人を相続した場合で結論が異なる
- ひっかけ共同相続で無権代理人の相続分に相当する部分だけ有効になるとする肢。共同相続人全員が共同して追認しない限り有効にならない
- ひっかけ表見代理が成立すれば117条の責任を追及できないとする肢。相手方はどちらも選べる
押さえる判例
無権代理人が本人を単独相続したときは本人自ら法律行為をしたのと同様の地位を生じ、追認拒絶は信義則上許されない
本人が無権代理人を相続したときは追認を拒絶できるが、117条の無権代理人の責任は承継し、これを免れない
日常家事の範囲を超える行為には110条を直接適用せず、日常家事に属すると信ずる正当の理由があるときに限り110条の趣旨を類推適用する
02試験で正誤を分けるチェック順
- 1顕名と代理権の有無を確認する。顕名がなくても相手方が悪意・有過失なら本人に効果が帰属する
問題文の限定語を先に拾い、上の暗記項目と照合してから結論を出します。
- 2代理権がないなら表見代理(109条・110条・112条)の成否を見る。正当な理由とは第三者の善意無過失を意味する
問題文の限定語を先に拾い、上の暗記項目と照合してから結論を出します。
- 3表見代理が成立しなくても、相手方は117条により無権代理人に履行または損害賠償を選択して請求できる。ただし相手方が無権限を知っていたとき、過失により知らなかったとき(無権代理人が悪意なら除く)、無権代理人が制限行為能力者だったときは追及できない
問題文の限定語を先に拾い、上の暗記項目と照合してから結論を出します。
03この論点の根拠
- 関連法令
- 民法
- 情報確認日
- 2026年4月1日施行法令基準
- 復習方法
- 要点を確認した後、○×一問一答で条件の違いを見分ける
法改正により扱いが変わる場合があります。試験日程や申込みに関する情報は、 必ず公式案内も確認してください。
問題演習
代理・無権代理と表見代理の○×一問一答
1/8問解答 0・正解 0
民法重要度 S頻出度 11/24(編集部の目安)
無権代理と相続(無権代理人が相続)
無権代理人が本人を単独で相続した場合には、本人が自ら法律行為をしたのと同様の法律上の地位を生じ、無権代理行為は当然に有効となる。
代理・無権代理と表見代理の○×一問一答13問|問題と解説
この論点で収録している13問を、正誤と解説つきで通して読めます。 上の演習で迷った問題を見直すときに使ってください。
問1
無権代理と相続(無権代理人が相続)重要度S無権代理人が本人を単独で相続した場合には、本人が自ら法律行為をしたのと同様の法律上の地位を生じ、無権代理行為は当然に有効となる。
答え:○(正しい)
解説
正しい。最判昭和40年6月18日が、無権代理人による本人の単独相続について当然有効説を採っている。
問2
無権代理と相続(本人が相続)重要度S本人が無権代理人を相続した場合、本人は被相続人がした無権代理行為の追認を拒絶することができない。
答え:×(誤り)
解説
誤り。最判昭和37年4月20日は、本人が無権代理人を相続しても追認を拒絶できるとする。
問3
制限行為能力者の詐術重要度A制限行為能力者が自ら行為能力者であることを黙秘していたにすぎない場合であっても、その一事をもって民法21条の詐術に当たる。
答え:×(誤り)
解説
誤り。最判昭和44年2月13日は、単なる黙秘は詐術に当たらず、他の言動と相まって誤信させた場合に詐術になるとする。
問4
権限外の行為の表見代理重要度A権限外の行為の表見代理が成立するためには、代理人に何らかの代理権が現に存在していることを要する。
答え:○(正しい)
解説
正しい。110条は基本代理権の存在を前提とし、その権限を超えた行為について正当な理由を要求する。
問5
自己契約・双方代理重要度A同一の法律行為について当事者双方の代理人としてした行為は、本人があらかじめ許諾していた場合を除き、無効となる。
答え:×(誤り)
解説
誤り。無効ではなく、代理権を有しない者がした行為とみなされる(108条1項)。本人の追認により有効になりうる。
問6
無権代理の相手方の催告権重要度A無権代理行為の相手方が本人に対し相当の期間を定めて追認するかどうかを催告した場合において、本人がその期間内に確答をしないときは、追認したものとみなされる。
答え:×(誤り)
解説
誤り。114条後段により、確答がないときは追認を拒絶したものとみなされる。
問7
無権代理人の責任重要度A無権代理人が自己に代理権がないことを知っていた場合、相手方が過失によって代理権のないことを知らなかったときでも、相手方は無権代理人に対し履行または損害賠償の責任を追及することができる。
答え:○(正しい)
解説
正しい。117条2項2号ただし書により、無権代理人が悪意であれば相手方の過失は免責事由にならない。
問8
事務管理の要件と効果重要度B管理者が本人の名で第三者と法律行為をした場合であっても、事務管理は管理者と本人との間の対内関係を規律するにとどまるから、その行為の効果が当然に本人に帰属することはない。
答え:○(正しい)
解説
正しい。最判昭和36年11月30日は、事務管理が本人・管理者間の関係を規律するにとどまり代理権を生じさせないとした。
問9
占有の推定と承継重要度B動産の占有者が占有物について行使する権利は適法に有するものと推定されるから、即時取得を主張する者は自己が無過失であったことを立証する必要がない。
答え:○(正しい)
解説
正しい。最判昭和41年6月9日は、188条の推定により192条の無過失も推定されるとした。
問10
限定承認の方式重要度A相続人が数人あるときであっても、限定承認は各相続人が単独ですることができる。
答え:×(誤り)
解説
誤り。923条は相続人が数人あるときの限定承認を共同相続人の全員が共同してのみすることができるとしている。
問11
他人の権利の売買と相続重要度B他人の権利を売買の目的とした売主が死亡し、その権利の帰属主体である者が売主を相続した場合であっても、その相続人は、権利者としての立場に基づき買主への権利の移転を拒むことができる。
答え:○(正しい)
解説
正しい。最大判昭和49年9月4日は、権利者が他人物売買の売主を相続しても権利移転についての諾否の自由を失わないとした。
問12
代理行為の顕名重要度B代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、相手方が代理人が本人のためにすることを知っていた場合であっても、代理人自身のためにしたものとみなされる。
答え:×(誤り)
解説
誤り。相手方が知り、または知ることができたときは99条1項が準用され、効果は本人に帰属する(100条ただし書)。
問13
補助開始の審判と本人の同意重要度C本人以外の者の請求によって補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。
答え:○(正しい)
解説
正しい。15条2項は、本人以外の者の請求による補助開始の審判に本人の同意を要求している。
代理・無権代理と表見代理の問題を続けて解く
この論点に対応する13問を絞り込んで出題します。