2026年11月試験対応2026年4月1日施行法令基準情報の正確さへの取り組み

民法

物権変動と対抗要件(登記・即時取得)

177条の第三者から外れるのは背信的悪意者だけで、単なる悪意者は保護されます。取消し・解除・時効取得・相続で「前」と「後」のどちらの第三者かにより処理が変わる点、即時取得では占有改定が使えない点が二大論点です。

要点 8件・基本問題 8読む → 覚える → 解くまでこのページで完結

行政書士試験での出題

出題ランク A対応する一問一答 12

収録している過去問には、この論点に直接あたる問題はありません。 下の確認問題で押さえてください。

最重要ポイント

不動産物権変動と対抗要件

物権変動は当事者の意思表示のみで効力を生じ(176条)、登記は第三者に対する対抗要件にすぎない(177条)。大判明治41年12月15日連合部判決は、177条の第三者を当事者およびその包括承継人以外の者で登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者に限定した。不法占拠者、無権利者およびその転得者、詐欺・強迫により登記の申請を妨げた者、他人のため登記を申請する義務がある者、背信的悪意者はこれにあたらない。

覚え方第三者は「登記がないと言う資格のある者」に限られる

最重要・比較表

即時取得された動産を元の所有者が取り戻せる場面

最初にその動産がどう手を離れたかを見ます。だまし取られたのか、盗まれたか落としたのかで、元の所有者が取り戻せるかどうかと、そのための条件が変わります。

買主の即時取得

だまし取られた動産・貸していた動産
192条の要件を満たせば成立し、元の所有者は所有権を失う
盗まれた動産・落とした動産
192条の要件を満たせば成立するが、回復請求という例外がある
盗品等を競売や公の市場で善意で買った場合
192条の要件を満たせば成立し、代価の弁償なしには取り戻されない

判断ポイント

占有改定では即時取得できず、現実の引渡し・簡易の引渡し・指図による占有移転なら成立します。

元の所有者の回復請求

最重要
だまし取られた動産・貸していた動産
できない
盗まれた動産・落とした動産
できる
盗品等を競売や公の市場で善意で買った場合
占有者が支払った代価を弁償しなければできない(194条

判断ポイント

回復請求が認められるのは盗品と遺失物だけで、詐取や貸借の場合には認められません。

請求できる期間と起算点

だまし取られた動産・貸していた動産
回復請求そのものが認められないため期間の定めもない
盗まれた動産・落とした動産
盗難または遺失の時から2年193条
盗品等を競売や公の市場で善意で買った場合
盗難または遺失の時から2年193条

判断ポイント

起算点は占有者が買った時ではなく盗難・遺失の時で、ここを入れ替える出題が定番です。

判断の順序:即時取得の要件を満たすか → 盗品・遺失物か → 2年以内か → 代価の弁償が要るか

法令確認:民法192条民法193条民法194条(確認日 2026-08-05)

01物権変動と対抗要件(登記・即時取得)の重要暗記項目

01
重要度 S / 収録過去問 6回

不動産物権変動と対抗要件

物権変動は当事者の意思表示のみで効力を生じ(176条)、登記は第三者に対する対抗要件にすぎない(177条)。大判明治41年12月15日連合部判決は、177条の第三者を当事者およびその包括承継人以外の者で登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者に限定した。不法占拠者、無権利者およびその転得者、詐欺・強迫により登記の申請を妨げた者、他人のため登記を申請する義務がある者、背信的悪意者はこれにあたらない。

覚え方第三者は「登記がないと言う資格のある者」に限られる

ひっかけ注意不法占拠者に対しても登記がなければ所有権を主張できないとする誤りが定番。不法占拠者は177条の第三者ではない。

02
重要度 S / 収録過去問 6回

二重譲渡と悪意者

自由競争の範囲内にある限り、単に先行する物権変動を知っているだけの悪意者も177条の第三者に含まれる。排除されるのは、登記の欠缺を主張することが信義に反すると認められる背信的悪意者に限られる(最判昭和43年8月2日)。したがって二重譲渡では、悪意であっても先に登記を備えた者が確定的に所有権を取得し、登記を得られなかった者は売主に対して債務不履行または不法行為に基づく損害賠償を求めるほかない。

覚え方知っていても登記が早い者の勝ち。負ける相手は売主に賠償請求

ひっかけ注意「悪意者は177条の第三者にあたらない」とする誤りが狙われる。単純悪意者は保護され、背信的悪意者だけが排除される。

03
重要度 S / 収録過去問 6回

背信的悪意者

最判昭和43年8月2日は、実体上の物権変動があった事実を知る者において、登記の欠缺を主張することが信義に反すると認められる事由がある場合、その者は177条の第三者にあたらないとした。第一譲受人を害する目的で買い受けた場合や、不当な利益を得る目的で高値の転売を図った場合が典型である。背信的悪意者は無権利者ではなく、権利は取得するが登記の欠缺を主張できないにすぎないと解される。

覚え方背信的悪意者は無権利者ではなく「登記がないと言えない者」

ひっかけ注意背信的悪意者を無権利者と同視する誤りが狙われる。権利自体は取得しており、この違いが転得者の処理に効いてくる。

04
重要度 S / 収録過去問 6回

時効取得と登記

時効完成後に登場した第三者とは対抗関係に立ち、時効取得者は登記がなければ対抗できない(最判昭和33年8月28日)。これに対し時効完成前に登場した第三者は時効取得者にとって当事者と同視され、登記なくして対抗できる(最判昭和41年11月22日)。時効の起算点は現実の占有開始時に固定され、任意に選択できない(最判昭和35年7月27日)。ただし完成後の譲渡でも、譲渡時から改めて時効期間が経過すれば登記なく対抗できる(最判昭和36年7月20日)。

覚え方完成前は当事者扱い、完成後は対抗問題。起算点はずらせない

ひっかけ注意占有者が起算点を都合よく選んで常に「完成前の第三者」に持ち込めるとする誤りが狙われる。判例は起算点の選択を認めない。

05
重要度 S / 収録過去問 6回

即時取得と占有改定

192条の要件は、取引行為によること、平穏かつ公然、善意かつ無過失、動産の占有を始めたことである。占有取得は現実の引渡し・簡易の引渡し・指図による占有移転では足りるが、占有改定では足りない(最判昭和35年2月11日)。指図による占有移転で即時取得を認めた判例もある(最判昭和57年9月7日)。前主が無権利であることが必要で、無権代理や意思無能力・行為能力の制限といった瑕疵は即時取得では治癒されない。

覚え方即時取得は外から見える占有移転が必要。占有改定では足りない

ひっかけ注意無権代理人から買った場合も即時取得できるとする誤りが狙われる。即時取得が補うのは前主の無権利だけである。

06
重要度 S / 収録過去問 5回

取消し・解除と登記

解除前の第三者は545条1項ただし書で保護されるが、判例は権利保護資格要件として登記を要求する(最判昭和33年6月14日)。解除後に現れた第三者との関係は解除による復帰的物権変動と構成され、177条により登記の先後で決する(最判昭和35年11月29日)。取消しも同様で、取消前の第三者は96条3項等の要件で処理し、取消後の第三者とは対抗関係となる(大判昭和17年9月30日)。前か後かで処理の枠組みが切り替わる。

覚え方前は第三者保護規定プラス登記、後は対抗問題で登記の先後

ひっかけ注意解除後の第三者にも545条1項ただし書を適用して善意悪意で決するとする誤りが狙われる。解除後は177条の対抗問題である。

07
重要度 A / 収録過去問 4回

背信的悪意者からの転得者

最判平成8年10月29日は、背信的悪意者から不動産を譲り受けた転得者について、転得者自身が第一譲受人との関係で背信的悪意者と評価されるのでない限り、その所有権取得を第一譲受人に対抗できるとした。背信的悪意者は無権利者ではなく、登記の欠缺を主張する正当な利益を欠くという相対的な地位にとどまるため、背信性の評価は転得者ごとに個別に判断される。転得者が単純悪意にすぎなければ保護される。

覚え方背信性は人ごとに判定。悪の連鎖は引き継がれない

ひっかけ注意背信的悪意者からの転得者は常に保護されないとする誤りが狙われる。転得者自身の背信性で判断する。

08
重要度 A / 収録過去問 4回

盗品・遺失物の回復

193条の回復請求期間は盗難または遺失の時から2年であり、占有者が取得した時からではない。194条により、占有者が競売もしくは公の市場において、またはその物と同種の物を販売する商人から善意で買い受けたときは、被害者等は代価を弁償しなければ回復できない。金銭には193条の適用がない。判例は、回復されるまでの間も所有権は被害者に留まるとしつつ、占有者は代価の弁償を受けるまで目的物を使用収益できるとする(最判平成12年6月27日)。

覚え方盗まれてから二年。市場・商人からの善意購入は代価弁償が必要

ひっかけ注意2年の起算点を占有者の取得時とする誤り、および金銭にも回復請求できるとする誤りが狙われる。

民法の暗記表をすべて見る →

覚える数字と、狙われる引っかけ

  • 盗品・遺失物の回復請求 盗難・遺失の時から2年
  • 占有回収の訴え 占有を奪われた時から1年
  • ひっかけ背信的悪意者を無権利者と説明する肢。権利は取得するが登記の欠缺を主張できないだけなので、その転得者は個別に判断される
  • ひっかけ時効完成の前後を入れ替える肢。完成前の第三者には登記なく対抗でき、完成後の第三者とは対抗関係になる
  • ひっかけ占有改定でも即時取得できるとする肢。178条の対抗要件とは別で、即時取得には現実の引渡し等が要る

押さえる判例

背信的悪意者最判昭和43年8月2日

登記の欠缺を主張することが信義に反すると認められる事由がある者は、177条の第三者に当たらない

背信的悪意者からの転得者最判平成8年10月29日

転得者自身が第一譲受人との関係で背信的悪意者と評価されるのでない限り、その所有権取得を対抗できる

相続放棄と登記最判昭和42年1月20日

相続放棄の効力は絶対的であり、登記がなくても放棄後に利害関係を持った第三者に対抗できる

02試験で正誤を分けるチェック順

  1. 1
    相手が177条の第三者かを判定する。無権利者・不法占拠者・背信的悪意者は外れるが、単なる悪意者は含まれる

    問題文の限定語を先に拾い、上の暗記項目と照合してから結論を出します。

  2. 2
    取消し・解除・時効・相続では、第三者の登場が原因行為の前か後かで分ける。後なら対抗関係として登記の先後で決する

    問題文の限定語を先に拾い、上の暗記項目と照合してから結論を出します。

  3. 3
    動産なら178条の引渡し(占有改定を含む)と192条の占有取得(占有改定は不可)を区別して当てはめる

    問題文の限定語を先に拾い、上の暗記項目と照合してから結論を出します。

03この論点の根拠

関連法令
民法
情報確認日
2026年4月1日施行法令基準
復習方法
要点を確認した後、○×一問一答で条件の違いを見分ける

法改正により扱いが変わる場合があります。試験日程や申込みに関する情報は、 必ず公式案内も確認してください。

問題演習

物権変動と対抗要件(登記・即時取得)の○×一問一答

1/8解答 0・正解 0

民法重要度 S頻出度 16/24(編集部の目安)

不動産物権変動と対抗要件

不動産の所有権を取得した者は、その不動産を何らの権原なく占有している者に対しては、登記を備えていなくても所有権の取得を対抗することができる。

物権変動と対抗要件(登記・即時取得)○×一問一答12問|問題と解説

この論点で収録している12問を、正誤と解説つきで通して読めます。 上の演習で迷った問題を見直すときに使ってください。

  1. 1

    不動産物権変動と対抗要件重要度S

    不動産の所有権を取得した者は、その不動産を何らの権原なく占有している者に対しては、登記を備えていなくても所有権の取得を対抗することができる。

    答え:○(正しい)

    解説

    正しい。不法占拠者は177条の第三者に当たらないため、登記なくして対抗できる(最判昭和25年12月19日)。

  2. 2

    二重譲渡と悪意者重要度S

    不動産が二重に譲渡された場合、第二の買主は、第一の売買があったことを知りながら買い受けたときは、先に登記を備えても所有権の取得を第一の買主に対抗することができない。

    答え:×(誤り)

    解説

    誤り。単なる悪意者も177条の第三者に当たるため、先に登記を備えれば対抗できる。

  3. 3

    即時取得と占有改定重要度S

    動産の譲受人が占有改定の方法により占有を取得したにとどまる場合であっても、その譲受人は民法192条による即時取得の保護を受ける。

    答え:×(誤り)

    解説

    誤り。最判昭和35年2月11日は、占有改定では外観に変化がないため即時取得は成立しないとする。

  4. 4

    背信的悪意者重要度S

    実体上物権変動があった事実を知る者が、登記の欠缺を主張することが信義に反すると認められる事情の下でその不動産を取得したときは、その者は民法177条の第三者に当たらない。

    答え:○(正しい)

    解説

    正しい。最判昭和43年8月2日は、背信的悪意者を177条の第三者から排除する法理を確立した。

  5. 5

    時効取得と登記重要度S

    取得時効の完成後に原所有者から当該不動産を譲り受けて登記を備えた第三者に対しては、時効取得者は登記がなくても時効による所有権の取得を対抗することができる。

    答え:×(誤り)

    解説

    誤り。最判昭和33年8月28日により、時効完成後の第三者とは対抗関係に立ち、登記がなければ対抗できない。

  6. 6

    取消し・解除と登記重要度S

    不動産の売買契約が解除された後に、買主から当該不動産を譲り受けた第三者は、登記を備えていなくても所有権の取得を解除した売主に対抗することができる。

    答え:×(誤り)

    解説

    誤り。最判昭和35年11月29日により、解除後の第三者と解除者は対抗関係に立ち、登記が必要となる。

  7. 7

    盗品・遺失物の回復重要度A

    占有物が盗品または遺失物であるときは、被害者または遺失者は、盗難または遺失の時から2年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる。

    答え:○(正しい)

    解説

    正しい。193条は、盗難・遺失の時から2年間の回復請求を認めている。

  8. 8

    背信的悪意者からの転得者重要度A

    背信的悪意者から不動産を譲り受けた転得者は、その転得者自身が背信的悪意者と評価されない場合であっても、第一譲受人に対して所有権の取得を対抗することができない。

    答え:×(誤り)

    解説

    誤り。最判平成8年10月29日は、転得者自身が背信的悪意者でない限り対抗できるとする(相対的構成)。

  9. 9

    動産物権変動の対抗要件重要度B

    動産に関する物権の譲渡の対抗要件である引渡しには、現実の引渡しのほか、簡易の引渡し、占有改定および指図による占有移転が含まれる。

    答え:○(正しい)

    解説

    正しい。178条の引渡しには観念的な引渡しも含まれ、占有改定でも対抗要件を備えられる。

  10. 10

    占有回収の訴え重要度B

    占有回収の訴えは、占有を侵奪した者の特定承継人に対しては、その承継人が侵奪の事実を知っていたときでも提起することができない。

    答え:×(誤り)

    解説

    誤り。200条2項ただし書により、悪意の特定承継人に対しては占有回収の訴えを提起できる。

  11. 11

    所有者不明土地管理命令重要度B

    所有者不明土地管理人は、所有者不明土地等について、保存行為および性質を変えない範囲内の利用・改良行為を超える行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。

    答え:○(正しい)

    解説

    正しい。264条の3第2項は、権限外の行為について裁判所の許可を要求している。

  12. 12

    夫婦間における財産の帰属重要度A

    夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定される。

    答え:○(正しい)

    解説

    正しい。762条2項は帰属不明の財産を夫婦の共有と推定しており、これは反証を許す推定である。

次の学習

物権変動と対抗要件(登記・即時取得)の問題を続けて解く

この論点に対応する12問を絞り込んで出題します。

○×一問一答