民法
行政書士の取得時効・消滅時効|期間・起算点と完成猶予・更新の違い【2026年度試験対応】
取得時効の10年・20年、債権の5年・10年、生命身体の侵害の特則を表で整理。時効の起算点、催告と承認の違い、令和5年問27の出題例を独自○×3問で確認できます。
要点 4件・基本問題 4問・解説の確認問題 3問読む → 覚える → 解くまでこのページで完結

2026年度試験対応。法令基準日:2026-04-01。
まず押さえるポイント
取得時効は一定期間の占有によって権利を取得する制度、消滅時効は一定期間権利を行使しないことで権利が消滅する制度です。消滅時効は期間だけでなく、何の権利か、いつ行使できたか、いつ知ったかを確認します。完成猶予は完成を待たせること、更新はそれまでの経過期間を改めて数え直すことです。
法令基準日:2026-04-01 / 解説更新日:2026-09-25
取得時効は原則20年、占有開始時に善意無過失なら10年
2026年度試験は2026年4月1日施行の法令が基準です。民法162条の所有権の取得時効では、所有の意思をもって平穏・公然に占有することが共通要件となり、原則の期間は20年です。占有開始時に善意かつ無過失なら10年に短縮されます。善意無過失は占有開始時の要件で、途中で他人の所有物と知っただけで直ちに短期取得時効の要件が失われるわけではありません。
例えば、借りていると認識して土地を使い続けているだけでは、所有の意思をもつ占有と同じには扱えません。また、186条は所有の意思・善意・平穏・公然などを推定しますが、無過失まで同条で推定する規定ではありません。10年という数字の前に、占有の性質と開始時の認識を確認します。
根拠:e-Gov 民法145条・150~152条・162条・166条・167条・186条・724条・724条の2(2026年4月1日施行版)行政書士試験研究センター 令和8年度試験案内・法令基準日
債権の5年・10年は二つの時計を並べる
通常の債権は、権利を行使できることを知った時から5年、又は権利を行使できる時から10年のいずれかが満了すると消滅時効が完成します。二つを足して15年とするのではありません。例えば権利行使が可能になってから7年後にそのことを知ったなら、特別な事情がなければ客観的な10年の方が先に満了します。
生命・身体の侵害による損害賠償請求権では、167条によって客観的期間が20年となります。不法行為では724条が別に適用され、通常は『損害及び加害者を知った時から3年』『不法行為の時から20年』です。生命・身体を害する不法行為は724条の2により主観的期間が5年となるため、契約上の請求権の起算点と混ぜないようにします。
| 権利の種類 | 主観的な起算点と期間 | 客観的な起算点と期間 |
|---|---|---|
| 通常の債権(166条) | 行使できることを知った時から5年 | 行使できる時から10年 |
| 生命・身体侵害の損害賠償請求権(167条。不法行為以外) | 行使できることを知った時から5年 | 行使できる時から20年 |
| 通常の不法行為(724条) | 損害及び加害者を知った時から3年 | 不法行為の時から20年 |
| 生命・身体を害する不法行為(724条の2) | 損害及び加害者を知った時から5年 | 不法行為の時から20年 |
根拠:e-Gov 民法145条・150~152条・162条・166条・167条・186条・724条・724条の2(2026年4月1日施行版)
催告は6か月の完成猶予、承認は更新

催告だけでは更新しない。要件と例外は本文でも確認できます。
図を大きく見る催告をすると、その時から6か月を経過するまでは時効が完成しません。ただし、催告による猶予期間中に再び催告しても、さらに6か月の完成猶予を積み重ねる効力はありません。例えば完成間近の貸金について支払を求めた場合、催告を送り続けるだけでは期限を延ばし続けられません。
これに対し、債務者が権利を承認すると、その時から時効が新たに進行します。152条2項により、承認には相手方の権利を処分する行為能力や権限までは必要ありません。『催告だから更新する』『処分権限がないから承認も無効』という読み方を避け、完成猶予と更新の根拠を分けます。
根拠:e-Gov 民法145条・150~152条・162条・166条・167条・186条・724条・724条の2(2026年4月1日施行版)
協議の合意と援用を期間計算の後に確認する
権利について協議する旨を書面等で合意した場合、151条の完成猶予が使われます。猶予の終点は、合意から1年、1年未満の協議期間を決めた場合の満了、書面等による協議拒絶通知から6か月のうち最も早い時です。再合意はできますが、本来の時効完成時から通じて5年を超えて延ばすことはできません。
催告による猶予中に協議の合意をしても、また協議合意による猶予中に催告しても、151条3項の制限があります。さらに時効は、期間が過ぎたという理由だけで裁判所が当然に適用するわけではなく、145条の援用が必要です。計算の後に、猶予・更新がなかったか、援用する者が誰かを確認します。
根拠:e-Gov 民法145条・150~152条・162条・166条・167条・186条・724条・724条の2(2026年4月1日施行版)
令和5年問27は生命・身体の侵害の特則が分かれ目
令和5年度問27は消滅時効を問う問題で、公式正解は4です。生命・身体を害する不法行為による損害賠償請求権について、損害及び加害者を知った時からの期間を、通常の不法行為と同じ3年としてよいかがポイントです。724条の2では5年とされています。
この出題例では、取得時効の10年・20年と、消滅時効の特則を一つの暗記表に混在させないことが役立ちます。次は物権変動と登記の論点で、取得時効の完成前・完成後に現れた第三者への対抗を確認すると、時効完成後の権利関係までつながります。
根拠:e-Gov 民法145条・150~152条・162条・166条・167条・186条・724条・724条の2(2026年4月1日施行版)行政書士試験研究センター 令和5年度試験問題・問27行政書士試験研究センター 令和5年度公式正解・問27=4
出題例の原本・年度別問題
過去の出題を手がかりに、判断する条件を整理します。このページの説明と確認問題は合トレのオリジナルです。
- 令和5年度 問27
消滅時効。通常債権と生命・身体侵害、不法行為の主観的・客観的期間を比較する。公式正解4。
公式の公表資料を確認する
オリジナル確認問題で判断する
○か×かを選び、理由を確認してください。実際の過去問を転載したものではありません。
この解説の一次資料
- e-Gov 民法145条・150~152条・162条・166条・167条・186条・724条・724条の2(2026年4月1日施行版)確認日:2026-09-25
- 行政書士試験研究センター 令和8年度試験案内・法令基準日確認日:2026-09-25
- 行政書士試験研究センター 令和5年度試験問題・問27確認日:2026-09-25
- 行政書士試験研究センター 令和5年度公式正解・問27=4確認日:2026-09-25
債権の消滅時効
166条1項は、債権者が権利を行使できることを知った時(主観的起算点)から5年、権利を行使することができる時(客観的起算点)から10年の二本立てとし、いずれか早い方の満了で時効が完成する。人の生命または身体の侵害による損害賠償請求権は、167条により客観的起算点からの期間が20年に伸長される。債権または所有権以外の財産権は行使できる時から20年である(166条2項)。所有権そのものは消滅時効にかからない。
覚え方知って五年・行使できて十年、生命身体は十年が二十年に
最重要・比較表
消滅時効の期間と起算点
最初に何の権利かを確認します。債権は主観的起算点と客観的起算点の二本立てで早い方の満了により完成し、不法行為では3年と20年に数字が変わります。
| 事由 | 一般の債権(166条1項) | 不法行為による損害賠償請求権(724条) | 債権・所有権以外の財産権(166条2項) | 理由・判断ポイント |
|---|---|---|---|---|
| 知った時からの期間 | 権利を行使できることを知った時から5年 | 損害および加害者を知った時から3年 | 規定なし | 主観的起算点は「知った時」であり、権利が発生した時ではない点に注意します。 |
| 行使できる時からの期間 | 権利を行使することができる時から10年 | 不法行為の時から20年 | 権利を行使することができる時から20年 | 所有権そのものは消滅時効にかからず、所有権に基づく物権的請求権も同様です。 |
| 人の生命または身体の侵害の場合最重要 | 行使できる時からの期間が10年ではなく20年になる(167条) | 知った時からの期間が3年ではなく5年になる(724条の2) | 規定なし | どちらの構成でも「知った時から5年・起算点から20年」にそろうよう調整されています。 |
| 二つの期間の関係 | 両方を併用し、いずれかが満了した時に時効が完成する | いずれかが満了した時に時効が完成する | 行使できる時からの20年という一本だけ | 後から知っても客観的期間の満了で完成するため、遅い方まで待てるわけではありません。 |
知った時からの期間
- 一般の債権(166条1項)
- 権利を行使できることを知った時から5年
- 不法行為による損害賠償請求権(724条)
- 損害および加害者を知った時から3年
- 債権・所有権以外の財産権(166条2項)
- 規定なし
判断ポイント
主観的起算点は「知った時」であり、権利が発生した時ではない点に注意します。
行使できる時からの期間
- 一般の債権(166条1項)
- 権利を行使することができる時から10年
- 不法行為による損害賠償請求権(724条)
- 不法行為の時から20年
- 債権・所有権以外の財産権(166条2項)
- 権利を行使することができる時から20年
判断ポイント
所有権そのものは消滅時効にかからず、所有権に基づく物権的請求権も同様です。
人の生命または身体の侵害の場合
最重要- 一般の債権(166条1項)
- 行使できる時からの期間が10年ではなく20年になる(167条)
- 不法行為による損害賠償請求権(724条)
- 知った時からの期間が3年ではなく5年になる(724条の2)
- 債権・所有権以外の財産権(166条2項)
- 規定なし
判断ポイント
どちらの構成でも「知った時から5年・起算点から20年」にそろうよう調整されています。
二つの期間の関係
- 一般の債権(166条1項)
- 両方を併用し、いずれかが満了した時に時効が完成する
- 不法行為による損害賠償請求権(724条)
- いずれかが満了した時に時効が完成する
- 債権・所有権以外の財産権(166条2項)
- 行使できる時からの20年という一本だけ
判断ポイント
後から知っても客観的期間の満了で完成するため、遅い方まで待てるわけではありません。
01取得時効と消滅時効の重要暗記項目
債権の消滅時効
166条1項は、債権者が権利を行使できることを知った時(主観的起算点)から5年、権利を行使することができる時(客観的起算点)から10年の二本立てとし、いずれか早い方の満了で時効が完成する。人の生命または身体の侵害による損害賠償請求権は、167条により客観的起算点からの期間が20年に伸長される。債権または所有権以外の財産権は行使できる時から20年である(166条2項)。所有権そのものは消滅時効にかからない。
覚え方知って五年・行使できて十年、生命身体は十年が二十年に
ひっかけ注意「所有権も20年で時効消滅する」とする誤りが狙われる。所有権は消滅時効にかからず、取得時効による反射的消滅があるにすぎない。
時効の完成猶予と更新
催告は6箇月の完成猶予を生じるが、猶予中に再度催告しても効力はない(150条)。協議を行う旨の書面または電磁的記録による合意は、合意から1年、当事者が定めた1年未満の協議期間、協議続行拒絶の通知から6箇月のいずれか早い時まで完成猶予を生じ、再度の合意で延長できるが本来の完成時から通算5年が上限である(151条)。裁判上の請求は事件終了まで完成猶予し、確定判決等で権利が確定すれば更新される(147条)。承認は更新事由で、処分の能力や権限を要しない(152条)。
覚え方催告は六箇月、協議合意は通算五年、承認は一発更新
ひっかけ注意催告を繰り返せば猶予が延びるとする誤りが定番。再度の催告に完成猶予の効力はない。
所有権の取得時効
162条1項は20年の長期取得時効を、2項は占有開始時に善意無過失であった場合の10年の短期取得時効を定める。善意無過失は占有開始時に判断すれば足り、途中で悪意になっても10年で足りる。186条1項により所有の意思・善意・平穏・公然は推定されるが、無過失は推定されないため占有者が立証する。占有の承継人は自己の占有のみを主張することも前の占有者の占有を併せて主張することもでき、併せる場合は瑕疵も承継する(187条)。
覚え方二十年は無条件、十年は始めに善意無過失。無過失だけ推定されない
ひっかけ注意善意無過失を時効期間中ずっと必要とする誤りが狙われる。占有開始時に備わっていればよい。
時効の援用
145条は、時効は当事者が援用しなければ裁判所がこれによって裁判をすることができないとし、消滅時効については保証人・物上保証人・第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を当事者に含める。判例は、後順位抵当権者は先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を援用できないとする。時効の利益はあらかじめ放棄できない(146条)が完成後の放棄は可能であり、時効完成を知らずに債務を承認した者は信義則上その時効を援用できない(最判昭和41年4月20日)。
覚え方援用できるのは正当な利益がある者だけ。完成後の承認で援用は封じられる
ひっかけ注意後順位抵当権者が先順位抵当権の被担保債権の時効を援用できるとする誤りが狙われる。判例は否定する。
覚える数字と、狙われる引っかけ
- 取得時効 20年・占有開始時に善意無過失なら10年
- 消滅時効 知った時から5年・行使できる時から10年
- 生命身体の侵害 客観的起算点から20年
- 協議を行う旨の合意 通算5年が上限
- ひっかけ善意無過失が時効期間を通じて必要とする肢。判断するのは占有開始時だけである
- ひっかけ催告を繰り返せば時効を無限に延ばせるとする肢。猶予中の再度の催告は効力を生じない
- ひっかけ後順位抵当権者が先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を援用できるとする肢。判例は援用権を否定する
押さえる判例
動産取引では188条により前主の権利が推定される結果、譲受人は無過失であると推定され、無過失の立証責任を負わない
02試験で正誤を分けるチェック順
- 1取得時効なら占有開始時の善意無過失の有無で20年か10年かを決める。途中で悪意になっても短期時効は妨げられない
問題文の限定語を先に拾い、上の暗記項目と照合してから結論を出します。
- 2消滅時効なら主観的起算点から5年と客観的起算点から10年を並べ、早く満了する方を採る
問題文の限定語を先に拾い、上の暗記項目と照合してから結論を出します。
- 3完成猶予と更新を仕分ける。催告は6か月の猶予にとどまり、承認は更新事由で処分の権限も行為能力も要らない
問題文の限定語を先に拾い、上の暗記項目と照合してから結論を出します。
03この論点の根拠
- 関連法令
- 民法
- 情報確認日
- 2026年4月1日施行法令基準
- 復習方法
- 要点を確認した後、○×一問一答で条件の違いを見分ける
法改正により扱いが変わる場合があります。試験日程や申込みに関する情報は、 必ず公式案内も確認してください。
問題演習
取得時効と消滅時効の○×一問一答
1/4問解答 0・正解 0
民法重要度 S頻出度 15/24(編集部の目安)
債権の消滅時効
債権は、債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき、または権利を行使することができる時から10年間行使しないときに、時効によって消滅する。
取得時効と消滅時効の○×一問一答4問|問題と解説
この論点で収録している4問を、正誤と解説つきで通して読めます。 上の演習で迷った問題を見直すときに使ってください。
問1
債権の消滅時効重要度S債権は、債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき、または権利を行使することができる時から10年間行使しないときに、時効によって消滅する。
答え:○(正しい)
解説
正しい。166条1項は主観的起算点から5年、客観的起算点から10年の二重の時効期間を定める。
問2
時効の完成猶予と更新重要度S催告によって時効の完成が猶予されている間に再度の催告をしたときは、その再度の催告によってさらに6箇月の完成猶予の効力が生じる。
答え:×(誤り)
解説
誤り。150条2項により、完成猶予中の再度の催告には完成猶予の効力がない。
問3
所有権の取得時効重要度S他人の物を所有の意思をもって平穏かつ公然に占有した者は、占有の開始時に善意無過失であれば、10年の経過によりその所有権を取得する。
答え:○(正しい)
解説
正しい。162条2項は、占有開始時に善意無過失であれば10年で所有権を取得すると定める。
問4
時効の援用重要度A消滅時効の援用をすることができる当事者には、保証人および物上保証人のほか、抵当不動産の第三取得者も含まれる。
答え:○(正しい)
解説
正しい。145条括弧書は、権利の消滅について正当な利益を有する者としてこれらを明示している。
取得時効と消滅時効の問題を続けて解く
この論点に対応する4問を絞り込んで出題します。