民法
請負・委任などの典型契約
請負は仕事を完成できなくても、可分な部分で注文者が利益を受ける限度で割合的報酬を請求できます。委任は無償でも善管注意義務を負うのに、無報酬の受寄者は自己の財産と同一の注意で足りるという注意義務の段差も要注意です。
要点 8件・基本問題 8問読む → 覚える → 解くまでこのページで完結
行政書士試験での出題
出題ランク B対応する一問一答 11問
収録している過去問には、この論点に直接あたる問題はありません。 下の確認問題で押さえてください。
危険負担
改正により債権者主義を定めていた旧534条は削除された。当事者双方の責めに帰することができない事由により履行が不能となったときは、債権者は反対給付の履行を拒むことができる(536条1項)が、反対給付債務そのものが消滅するわけではなく、消滅させるには解除を要する(542条1項1号)。債権者に帰責事由があるときは履行を拒めず、債務者は自己の債務を免れたことによって得た利益を償還する(536条2項)。
覚え方拒めるだけで消えない。消すには解除
混同注意・比較表
請負と委任の違い
最初に見るのは報酬が何に対して支払われるかです。請負は仕事の完成、委任は事務の履行が基準で、途中で終わったときの計算も解除の要件も変わります。
| 事由 | 請負契約 | 委任契約 | 理由・判断ポイント |
|---|---|---|---|
| 契約の目的 | 一方が仕事を完成することを約し、相手方がその結果に対して報酬を支払う契約(632条) | 一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方が承諾することで成立する契約(643条) | 完成という結果が求められるのが請負、事務の処理そのものが目的なのが委任です。 |
| 報酬の支払時期 | 仕事の完成後、目的物の引渡しと同時に支払われる(633条本文) | 特約がなければ請求できず、委任事務を履行した後でなければ請求できない(648条1項・2項) | 委任は特約がなければ無報酬が原則で、報酬があっても後払いです。 |
| 途中で終わったときの報酬 | 注文者の責めに帰することができない事由で完成できなくなったときなどは、可分な部分について注文者が受ける利益の割合に応じて請求できる(634条) | 委任者の責めに帰することができない事由で履行できなくなったときや中途で終了したときは、既にした履行の割合に応じて請求できる(648条3項) | どちらも割合的な報酬が認められますが、請負は「注文者が受ける利益」、委任は「履行の割合」が基準です。 |
| 任意解除最重要 | 注文者は、請負人が仕事を完成しない間は、いつでも損害を賠償して解除できる(641条) | 各当事者がいつでも解除でき、相手方に不利な時期の解除などは損害を賠償する(651条) | 請負の任意解除は注文者側だけで、しかも完成後は使えません。委任は双方がいつでも解除できます。 |
契約の目的
- 請負契約
- 一方が仕事を完成することを約し、相手方がその結果に対して報酬を支払う契約(632条)
- 委任契約
- 一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方が承諾することで成立する契約(643条)
判断ポイント
完成という結果が求められるのが請負、事務の処理そのものが目的なのが委任です。
報酬の支払時期
- 請負契約
- 仕事の完成後、目的物の引渡しと同時に支払われる(633条本文)
- 委任契約
- 特約がなければ請求できず、委任事務を履行した後でなければ請求できない(648条1項・2項)
判断ポイント
委任は特約がなければ無報酬が原則で、報酬があっても後払いです。
途中で終わったときの報酬
- 請負契約
- 注文者の責めに帰することができない事由で完成できなくなったときなどは、可分な部分について注文者が受ける利益の割合に応じて請求できる(634条)
- 委任契約
- 委任者の責めに帰することができない事由で履行できなくなったときや中途で終了したときは、既にした履行の割合に応じて請求できる(648条3項)
判断ポイント
どちらも割合的な報酬が認められますが、請負は「注文者が受ける利益」、委任は「履行の割合」が基準です。
任意解除
最重要- 請負契約
- 注文者は、請負人が仕事を完成しない間は、いつでも損害を賠償して解除できる(641条)
- 委任契約
- 各当事者がいつでも解除でき、相手方に不利な時期の解除などは損害を賠償する(651条)
判断ポイント
請負の任意解除は注文者側だけで、しかも完成後は使えません。委任は双方がいつでも解除できます。
01請負・委任などの典型契約の重要暗記項目
危険負担
改正により債権者主義を定めていた旧534条は削除された。当事者双方の責めに帰することができない事由により履行が不能となったときは、債権者は反対給付の履行を拒むことができる(536条1項)が、反対給付債務そのものが消滅するわけではなく、消滅させるには解除を要する(542条1項1号)。債権者に帰責事由があるときは履行を拒めず、債務者は自己の債務を免れたことによって得た利益を償還する(536条2項)。
覚え方拒めるだけで消えない。消すには解除
ひっかけ注意特定物売買では引渡し前の滅失の危険を買主が負うとする旧534条の記述が誤りとして出る。同条は削除された。
共有物の使用と対価
249条1項は各共有者が持分に応じて共有物の全部を使用できるとし、2項は別段の合意がある場合を除き、自己の持分を超える使用について他の共有者に対価を償還する義務を定め、3項は共有物の使用にあたり善良な管理者の注意を課す。判例は従来、共有者の一人が単独で占有していても他の共有者は当然には明渡しを請求できないとしており(最判昭和41年5月19日)、対価償還の明文化はこれを補完するものである。
覚え方単独占有は追い出せないが、持分超過分の対価は取れる
ひっかけ注意過半数の持分を持つ共有者なら少数持分者に直ちに明渡しを請求できるとする誤りが狙われる。判例は当然の明渡請求を認めない。
委任の任意解除権
委任は各当事者がいつでも解除できる(651条1項)。相手方に不利な時期に解除したとき、および委任者が受任者の利益(専ら報酬を得ることによるものを除く)をも目的とする委任を解除したときは損害を賠償しなければならないが、やむを得ない事由があったときは不要である(同2項)。解除の効力は将来に向かってのみ生じる。委任は委任者・受任者の死亡や破産手続開始の決定、受任者の後見開始の審判により終了する(653条)。
覚え方いつでも解除できるが、不利な時期とやむを得ない事由の有無で賠償が決まる
ひっかけ注意受任者の利益をも目的とする委任は解除できないとする誤りが狙われる。解除自体は可能で、損害賠償の問題になる。
請負の報酬支払時期
報酬は仕事の目的物の引渡しと同時に支払うのが原則で、引渡しを要しないときは仕事を終了した後に請求できる(633条・624条1項)。634条は、注文者の責めに帰することができない事由により仕事を完成することができなくなったとき、および仕事の完成前に請負が解除されたときについて、既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなして割合的報酬を認める。注文者の責めに帰すべき事由で完成できなくなったときは536条2項により全額を請求できる。
覚え方引渡しと同時に報酬。途中でも注文者に利益があれば割合報酬
ひっかけ注意仕事が完成しなければ一切報酬を請求できないとする誤りが狙われる。634条の割合的報酬がある。
請負人の契約不適合責任
請負の契約不適合には売買の規定が準用され(559条)、注文者は追完(修補)請求・報酬減額請求・損害賠償請求・解除ができる。注文者の供した材料の性質または注文者の与えた指図によって生じた不適合については責任を追及できないが、請負人がその材料または指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは別である(636条)。期間制限は不適合を知った時から1年以内の通知である(637条1項)。最判平成9年2月14日は、瑕疵の修補に代わる損害賠償債権と報酬債権が同時履行の関係に立つとした。
覚え方注文者の材料・指図が原因なら請負人は免責、ただし知って黙れば責任
ひっかけ注意建物その他土地の工作物は瑕疵があっても解除できないとする改正前の旧635条ただし書の記述が誤りとして出る。同条は削除された。
受任者の義務
644条の善管注意義務は無報酬の委任でも軽減されない。受任者は委任者の請求があればいつでも事務処理の状況を報告し、委任終了後は遅滞なく経過および結果を報告しなければならない(645条)。受け取った金銭その他の物および収取した果実を引き渡し、委任者のために自己の名で取得した権利を移転する義務を負う(646条)。無報酬の受寄者が自己の財産に対するのと同一の注意で足りる(659条)のと対比される。
覚え方タダでも善管注意。無償で軽くなるのは寄託だけ
ひっかけ注意無償委任の受任者の注意義務が自己の財産に対するのと同一の注意に軽減されるとする誤りが定番。
特定物の保存義務
400条は、特定物の引渡しが債権の目的であるとき、債務者は引渡しをするまで契約その他の債権の発生原因および取引上の社会通念に照らして定まる善良な管理者の注意をもって保存しなければならないとする。注意の水準は債務者個人の能力ではなく契約の性質・目的から客観的に決まる。「自己の財産に対するのと同一の注意」で足りるのは、受領遅滞中の保存(413条1項)、無報酬の受寄者(659条)、相続財産の管理(918条)などの例外に限られる。違反して滅失させれば415条の責任を負う。
覚え方原則は善管注意、自己の財産と同一の注意は例外規定があるときだけ
ひっかけ注意無報酬なら常に注意義務が軽減されるとする誤りが狙われる。無償委任の受任者は644条により善管注意義務を負う。
注文者の解除権
641条の解除は請負人の債務不履行を要件としない任意解除であり、注文者は請負人に生じた損害(既に支出した費用や得べかりし利益)を賠償しなければならない。仕事が完成した後は行使できない。注文者が破産手続開始の決定を受けたときは請負人または破産管財人が解除でき、請負人による解除は仕事の完成前に限られる(642条1項)。この場合の損害賠償の請求は、破産管財人が解除をしたときの請負人に限って認められる(同3項)。
覚え方完成前なら理由なく解除できるが、損害は賠償する
ひっかけ注意641条の解除に請負人の債務不履行が必要とする誤り、および仕事完成後も解除できるとする誤りが狙われる。
覚える数字と、狙われる引っかけ
- 請負の契約不適合 種類・品質の不適合を知った時から1年以内に通知(引渡し時に請負人が悪意・重過失なら制限なし)
- 委任の解除 効力は将来に向かってのみ生じる
- ひっかけ仕事を完成しなければ一切報酬を請求できないとする肢。634条の割合的報酬がある
- ひっかけ建物その他の土地の工作物は解除できないとする肢。旧635条ただし書は削除されている
- ひっかけ無報酬の受任者は自己の財産と同一の注意で足りるとする肢。無償寄託と混同させるもので、委任は無償でも善管注意義務を負う
押さえる判例
瑕疵の修補に代わる損害賠償債権と報酬債権は同時履行の関係に立つ
事務管理者が本人の名で法律行為をしても、本人が追認しない限りその効果は本人に帰属しない
02試験で正誤を分けるチェック順
- 1契約類型を確定する。仕事の完成が目的なら請負、事務の処理なら委任、物の保管なら寄託
問題文の限定語を先に拾い、上の暗記項目と照合してから結論を出します。
- 2請負なら報酬の発生時期を見る。引渡しと同時が原則で、完成しなくても634条の割合的報酬がありうる
問題文の限定語を先に拾い、上の暗記項目と照合してから結論を出します。
- 3解除の可否を確認する。注文者は完成前ならいつでも損害を賠償して解除でき、委任は各当事者がいつでも解除できる
問題文の限定語を先に拾い、上の暗記項目と照合してから結論を出します。
03この論点の根拠
- 関連法令
- 民法
- 情報確認日
- 2026年4月1日施行法令基準
- 復習方法
- 要点を確認した後、○×一問一答で条件の違いを見分ける
法改正により扱いが変わる場合があります。試験日程や申込みに関する情報は、 必ず公式案内も確認してください。
問題演習
請負・委任などの典型契約の○×一問一答
1/8問解答 0・正解 0
民法重要度 S頻出度 13/24(編集部の目安)
危険負担
建物の売買契約の締結後、買主の責めに帰すべき事由によって引渡し前にその建物が滅失した場合、買主は、建物の引渡しを受けられない以上、売主からの代金の支払請求を拒むことができる。
請負・委任などの典型契約の○×一問一答11問|問題と解説
この論点で収録している11問を、正誤と解説つきで通して読めます。 上の演習で迷った問題を見直すときに使ってください。
問1
危険負担重要度S建物の売買契約の締結後、買主の責めに帰すべき事由によって引渡し前にその建物が滅失した場合、買主は、建物の引渡しを受けられない以上、売主からの代金の支払請求を拒むことができる。
答え:×(誤り)
解説
誤り。536条2項により、債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は反対給付の履行を拒むことができない。
問2
委任の任意解除権重要度A委任者が、専ら報酬を得ることによるものを除き受任者の利益をも目的とする委任を解除した場合であっても、やむを得ない事由があったときは、委任者は相手方の損害を賠償する必要はない。
答え:○(正しい)
解説
正しい。651条2項ただし書は、やむを得ない事由があるときの損害賠償義務を否定している。
問3
請負人の契約不適合責任重要度A請負人が引き渡した建物に契約の内容に適合しない点がある場合、注文者は、その不適合が重大でありかつ建物が社会経済的な価値を失っているときに限り、契約を解除することができる。
答え:×(誤り)
解説
誤り。改正により建物等の解除を制限していた旧635条ただし書は削除され、541条・542条の要件を満たせば解除できる。
問4
請負の報酬支払時期重要度A請負人が仕事を完成することができなくなった場合であっても、既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、請負人は、注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができる。
答え:○(正しい)
解説
正しい。634条1号は、注文者の責めに帰することができない事由による仕事の未完成でも割合的報酬を認めている。
問5
受任者の義務重要度A報酬の支払について特約のない無償の委任契約においては、受任者は、委任の本旨に従うべきものではあるが、自己の財産に対するのと同一の注意をもって委任事務を処理すれば足りる。
答え:×(誤り)
解説
誤り。644条は報酬の有無を区別せず、受任者に善良な管理者の注意をもって事務を処理する義務を課している。
問6
注文者の解除権重要度B請負人がいまだ仕事を完成しない間は、注文者は、請負人に債務不履行がなく仕事が順調に進行している場合であっても、請負人に生ずる損害を賠償して契約を解除することができる。
答え:○(正しい)
解説
正しい。641条は、仕事の完成前であれば注文者が損害を賠償していつでも解除できるとしている。
問7
特定物の保存義務重要度A債権の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、その引渡しをするまで、自己の財産に対するのと同一の注意をもってその物を保存すれば足りる。
答え:×(誤り)
解説
誤り。400条は、契約その他の債権の発生原因および取引上の社会通念に照らして定まる善良な管理者の注意による保存を求めている。
問8
包括受遺者の地位重要度B包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。
答え:○(正しい)
解説
正しい。990条は包括受遺者に相続人と同一の権利義務を認めており、遺産分割にも参加し債務も承継する。
問9
寄託・組合・和解重要度C寄託契約において当事者が寄託物の返還の時期を定めたときは、寄託者は、その時期が到来するまでの間、受寄者に対して寄託物の返還を請求することができない。
答え:×(誤り)
解説
誤り。662条1項により、返還の時期を定めていても寄託者はいつでも返還を請求することができる。
問10
死亡保険金と特別受益重要度C死亡保険金請求権は原則として特別受益に当たらないが、共同相続人間に著しい不公平が生ずる特段の事情があるときは、持戻しの対象となる。
答え:○(正しい)
解説
正しい。最高裁平成16年10月29日決定は、著しい不公平が生ずる特段の事情がある場合に903条の類推適用を認めた。
問11
無効行為の追認重要度B無効な行為を当事者がその無効であることを知って追認したときは、その行為は初めから有効であったものとみなされる。
答え:×(誤り)
解説
誤り。119条ただし書は新たな行為をしたものとみなすとしており、遡及効は生じない。
請負・委任などの典型契約の問題を続けて解く
この論点に対応する11問を絞り込んで出題します。