憲法
司法権と違憲審査制
砂川事件は「一見極めて明白に違憲無効」という留保付きで審査を限定し、苫米地事件は留保なしに審査を否定しました。地方議会議員の出席停止が令和2年に判例変更され、常に司法審査の対象になった点も要注意です。
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行政書士試験での出題
出題ランク B対応する一問一答 4問
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統治行為論
最大判昭和34年12月16日(砂川事件)は、日米安全保障条約のように高度の政治性を有するものについては、一見極めて明白に違憲無効と認められない限り司法審査の範囲外であるとして、留保付きで審査を限定した。これに対し最大判昭和35年6月8日(苫米地事件)は、直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為は、たとえ法律上の争訟となり有効無効の判断が法律上可能である場合であっても司法審査権の外にあるとして、留保なしに審査を否定した。
覚え方「一見極めて明白」の留保が付くのは砂川事件のほう
最重要・比較表
司法審査の対象になるもの・ならないもの
法律上の争訟にあたっても審査されないことがあります。まず誰の判断に委ねられた事柄かを見て、次にその判断が一般社会に影響するかを確かめます。
| 事由 | 司法審査の対象 | そうなる理由と判例 | 理由・判断ポイント |
|---|---|---|---|
| 法律の制定の議事手続 | 審査されない | 両院の自主性を尊重すべき自律権の問題であり、有効無効を判断すべきでない(警察法改正無効事件) | |
| 衆議院の解散 | 審査されない | 直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為であり、法律的な判断が可能でも対象から除外される(苫米地事件) | 法律上の争訟にあたらないから審査しない、という理由づけではありません。 |
| 大学の単位の不認定 | 審査されない | 一般市民法秩序と直接の関係を有しない大学内部の問題にとどまる(富山大学単位不認定事件) | |
| 大学の専攻科修了の不認定 | 審査される | 専攻科の修了を認定しないことは、実質的に一般市民としての学生の国公立大学の利用を拒否するに等しく、一般市民法秩序と直接の関係をもつ(富山大学専攻科修了認定事件) | |
| 地方議会議員の出席停止最重要 | 審査される | 議員としての中核的な活動ができなくなるため、裁判所は常にその適否を判断できる(最大判令和2年11月25日) | 令和2年の判例変更で除名と同じ扱いになりました。国会議員の除名は自律権の問題として今も対象外です。 |
| 行政や立法の裁量に任された行為 | 原則として対象外 | 裁量権の逸脱または濫用があった場合に限って審査される(朝日訴訟・堀木訴訟) |
法律の制定の議事手続
- 司法審査の対象
- 審査されない
- そうなる理由と判例
- 両院の自主性を尊重すべき自律権の問題であり、有効無効を判断すべきでない(警察法改正無効事件)
判断ポイント
衆議院の解散
- 司法審査の対象
- 審査されない
- そうなる理由と判例
- 直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為であり、法律的な判断が可能でも対象から除外される(苫米地事件)
判断ポイント
法律上の争訟にあたらないから審査しない、という理由づけではありません。
大学の単位の不認定
- 司法審査の対象
- 審査されない
- そうなる理由と判例
- 一般市民法秩序と直接の関係を有しない大学内部の問題にとどまる(富山大学単位不認定事件)
判断ポイント
大学の専攻科修了の不認定
- 司法審査の対象
- 審査される
- そうなる理由と判例
- 専攻科の修了を認定しないことは、実質的に一般市民としての学生の国公立大学の利用を拒否するに等しく、一般市民法秩序と直接の関係をもつ(富山大学専攻科修了認定事件)
判断ポイント
地方議会議員の出席停止
最重要- 司法審査の対象
- 審査される
- そうなる理由と判例
- 議員としての中核的な活動ができなくなるため、裁判所は常にその適否を判断できる(最大判令和2年11月25日)
判断ポイント
令和2年の判例変更で除名と同じ扱いになりました。国会議員の除名は自律権の問題として今も対象外です。
行政や立法の裁量に任された行為
- 司法審査の対象
- 原則として対象外
- そうなる理由と判例
- 裁量権の逸脱または濫用があった場合に限って審査される(朝日訴訟・堀木訴訟)
判断ポイント
01司法権と違憲審査制の重要暗記項目
統治行為論
最大判昭和34年12月16日(砂川事件)は、日米安全保障条約のように高度の政治性を有するものについては、一見極めて明白に違憲無効と認められない限り司法審査の範囲外であるとして、留保付きで審査を限定した。これに対し最大判昭和35年6月8日(苫米地事件)は、直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為は、たとえ法律上の争訟となり有効無効の判断が法律上可能である場合であっても司法審査権の外にあるとして、留保なしに審査を否定した。
覚え方「一見極めて明白」の留保が付くのは砂川事件のほう
ひっかけ注意両判決の枠組みを取り違えさせる肢が出る。苫米地事件は留保を付けずに審査を否定している。
付随的違憲審査制
81条は最高裁判所を違憲審査の終審裁判所と定めるが、下級裁判所も違憲審査権を行使できる(最大判昭和25年2月1日)。わが国の制度は具体的な争訟事件の解決に必要な限りで審査する付随的違憲審査制であり、警察予備隊訴訟(最大判昭和27年10月8日)は具体的事件を離れて抽象的に違憲審査をする権限を否定した。審査の対象は一切の法律・命令・規則・処分であり、条約については高度の政治性を理由に審査が及ばない場合があるとされる。違憲判決の効力は個別的効力説が通説である。
覚え方下級裁判所も審査できる。ただし具体的事件がなければ動けない
ひっかけ注意「違憲審査権は最高裁判所のみが行使する」とする肢や、違憲判決に一般的効力を認める肢が出る。
部分社会の法理
最大判令和2年11月25日は、普通地方公共団体の議会の議員に対する出席停止の懲罰について、議員は住民の負託を受けて活動する責務を負い、出席停止はその中核的な活動をすることができなくさせるとして、常に司法審査の対象となるとし、出席停止を内部規律の問題として司法審査の対象外とした最大判昭和35年10月19日を変更した。なお最判昭和52年3月15日(富山大学事件)は、単位認定行為は原則として司法審査の対象外、専攻科修了認定は対象となるとしている。
覚え方出席停止も令和2年から審査対象。除名は従来から対象
ひっかけ注意変更前の昭和35年判決の結論を現在の判例として出す肢が典型。令和2年に判例変更があった点を押さえる。
裁判の公開
82条1項は裁判の対審および判決を公開法廷で行うと定める。判決は例外なく常に公開しなければならず、非公開とできるのは対審のみである。対審を非公開とするには裁判官の全員一致で公の秩序または善良の風俗を害するおそれがあると決する必要がある(同2項本文)。さらに政治犯罪、出版に関する犯罪、憲法第三章で保障する国民の権利が問題となっている事件の対審は常に公開しなければならない(同項ただし書)。
覚え方判決は絶対公開。非公開にできるのは対審だけで、しかも全員一致
ひっかけ注意「判決も非公開にできる」とする肢や、絶対的公開の三類型を落とす肢。非公開が問題となるのは対審に限られる。
覚える数字と、狙われる引っかけ
- ひっかけ砂川事件と苫米地事件の枠組みを取り違える肢。「一見極めて明白」の留保が付くのは砂川事件のほう
- ひっかけ地方議会議員の出席停止は司法審査の対象外とする肢。令和2年大法廷判決で変更され、常に対象となる
- ひっかけ違憲審査権は最高裁判所のみが行使するとする肢。下級裁判所も違憲審査権を行使できる
押さえる判例
高度の政治性を有する条約は、一見極めて明白に違憲無効と認められない限り司法審査の範囲外にあるとした
直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為は、法律上の争訟となり裁判所による審査が可能であっても司法審査権の外にあるとした
出席停止の懲罰は議員の中核的活動を妨げるものであり、常に司法審査の対象となるとして従前の判例を変更した
02試験で正誤を分けるチェック順
- 1法律上の争訟に当たるかをまず確認する。当たらなければ司法権は及ばない
問題文の限定語を先に拾い、上の暗記項目と照合してから結論を出します。
- 2当たっても司法権の限界に触れないかを見る。統治行為、部分社会の法理、議院の自律権などが問題になる
問題文の限定語を先に拾い、上の暗記項目と照合してから結論を出します。
- 3違憲審査は付随的審査制であり、下級裁判所も行使できる。違憲判決の効力は個別的効力説が通説である
問題文の限定語を先に拾い、上の暗記項目と照合してから結論を出します。
03この論点の根拠
- 関連法令
- 日本国憲法
- 情報確認日
- 2026年4月1日施行法令基準
- 復習方法
- 要点を確認した後、○×一問一答で条件の違いを見分ける
法改正により扱いが変わる場合があります。試験日程や申込みに関する情報は、 必ず公式案内も確認してください。
問題演習
司法権と違憲審査制の○×一問一答
1/4問解答 0・正解 0
憲法重要度 S頻出度 12/24(編集部の目安)
付随的違憲審査制
最高裁判所は、わが国の裁判所が具体的な争訟事件が提起されないのに将来を予想して憲法およびその他の法律命令等の解釈に対し存在する疑義論争に関し抽象的な判断を下す権限を有するものではないと判示した。
司法権と違憲審査制の○×一問一答4問|問題と解説
この論点で収録している4問を、正誤と解説つきで通して読めます。 上の演習で迷った問題を見直すときに使ってください。
問1
付随的違憲審査制重要度S最高裁判所は、わが国の裁判所が具体的な争訟事件が提起されないのに将来を予想して憲法およびその他の法律命令等の解釈に対し存在する疑義論争に関し抽象的な判断を下す権限を有するものではないと判示した。
答え:○(正しい)
解説
正しい。最大判昭和27年10月8日(警察予備隊訴訟)の判示であり、わが国の違憲審査制が具体的事件を前提とする付随的審査制であることを示す。
問2
統治行為論重要度S最高裁判所は、日米安全保障条約のように主権国としてのわが国の存立の基礎に極めて重大な関係をもつ高度の政治性を有する条約については、一見極めて明白に違憲無効と認められない限り、裁判所の司法審査の範囲外にあるとしている。
答え:○(正しい)
解説
正しい。最大判昭和34年12月16日(砂川事件)の判示である。最大判昭和35年6月8日(苫米地事件)は衆議院の解散について統治行為として司法審査を否定した。
問3
部分社会の法理重要度A最高裁判所は、地方議会が議員に対して行う出席停止の懲罰について、議員の権利行使の一時的制限にすぎず議会の内部規律の問題にとどまるから、司法審査の対象から除かれると判示した。
答え:×(誤り)
解説
誤り。最大判令和2年11月25日は、出席停止の懲罰は議員としての中核的な活動を制約するとして司法審査の対象になるとし、これと異なる従前の判例を変更した。
問4
裁判の公開重要度A裁判の対審は裁判官の全員一致で公の秩序または善良の風俗を害するおそれがあると決した場合には公開しないで行うことができ、政治犯罪や出版に関する犯罪に関する事件の対審についても、これと同様に扱うことができる。
答え:×(誤り)
解説
誤り。政治犯罪、出版に関する犯罪、憲法第3章で保障する国民の権利が問題となっている事件の対審は、常にこれを公開しなければならない(82条2項ただし書)。
司法権と違憲審査制の問題を続けて解く
この論点に対応する4問を絞り込んで出題します。