2026年11月試験対応2026年4月1日施行法令基準情報の正確さへの取り組み

憲法

行政書士の司法権・違憲審査制|法律上の争訟と審査の限界【2026年度試験対応】

行政書士試験の司法権と違憲審査制を、具体的な紛争、付随的審査制、最高裁と下級裁判所の役割から解説。統治行為と地方議会の出席停止を比較し、独自の○×3問で確認します。

要点 4件・基本問題 4問・解説の確認問題 3問読む → 覚える → 解くまでこのページで完結

司法権と違憲審査:具体的な争いから考える

2026年度試験対応。法令基準日:2026-04-01。

まず押さえるポイント

司法権は、具体的な紛争に法を適用して解決する裁判所の権限です。日本の違憲審査は具体的事件の解決に付随して行う仕組みで、最高裁判所だけでなく下級裁判所も担います。まず法律上の争訟に当たるかを確認し、そのうえで司法審査の限界が問題になるかを分けて考えます。2026年度行政書士試験に向け、2026年4月1日施行の法令と掲載判例を基準に整理します。

法令基準日:2026-04-01 / 解説更新日:2026-09-25

付随的違憲審査制|最高裁は「唯一」ではなく「終審」の裁判所

付随的違憲審査の流れ。具体的な争訟 → 適用法令の検討 → 必要な範囲で違憲審査

最高裁だけの権限ではない。要件と例外は本文でも確認できます。

図を大きく見る

憲法81条が最高裁判所を違憲審査の終審裁判所と呼ぶのは、憲法に関する判断を最終的に担うという意味です。下級裁判所も、具体的な事件を裁判するときに、適用する法令などが憲法に適合するかを判断できます。「終審」を「最高裁だけが審査できる」と読み替えないことが要点です。

警察予備隊訴訟の最高裁大法廷判決(昭和27年10月8日)は、具体的事件がないのに抽象的な合憲・違憲の判断をする権限を否定しました。例えば、ある罰則による刑事事件でその罰則の合憲性を争う場合と、事件から離れて法律全体の違憲宣言だけを求める場合を分けます。最高裁に直接訴えれば、具体的事件を必要としなくなるわけではありません。

根拠:e-Gov 日本国憲法76条・81条最高裁大法廷昭和27年10月8日判決・警察予備隊訴訟(1~2頁)

統治行為の判例|法律上の争訟と司法審査の限界は別問題

苫米地事件の最高裁大法廷判決(昭和35年6月8日)は、衆議院解散の効力について、歳費請求訴訟の前提問題としても裁判所の審査権の外にあるとしました。具体的な金銭請求があっても、その前提となる国家行為を必ず審査できるとは限らない例です。

この判決は、国家統治の基本に関わる高度に政治的な行為について、三権分立や裁判所の性格などから審査の制約を説明しています。「政治に関係する行政処分はすべて対象外」と広げることはできません。また、苫米地事件の法廷意見に、明白な違憲の場合は審査するという留保を付け加えて覚えないようにします。

根拠:最高裁大法廷昭和35年6月8日判決・苫米地事件(1~3頁)

地方議会の出席停止は審査対象|裁量があることとは区別する

令和2年11月25日の最高裁大法廷判決は、地方議会議員に対する出席停止の懲罰について、司法審査の対象となると判断し、従来の判例を変更しました。出席停止によって議員は会議や委員会に出席できず、議事に参加して議決するという中核的な活動を制限されるためです。

議会の自律性や懲罰についての裁量は尊重されますが、それだけで裁判所が適否を判断できなくなるわけではありません。「裁量がある」と「司法審査の対象外」を同じ意味にしないでください。また、司法審査の対象になることは、出席停止処分が当然に取り消されることを意味しません。審査を受けられるかと、処分が違法かは別の判断です。

根拠:最高裁大法廷令和2年11月25日判決・地方議会議員の出席停止(3~6頁)

令和2年度問6の出題例|判例の対象と留保を確認する

令和2年度問6は衆議院解散を扱い、選択肢2で司法審査の限界を問い、公式正解は5です。解散についての苫米地事件の説明に、別の判例を思わせる留保が付いていないかを確かめる出題例として使えます。解散に関する政治制度全体の問題であり、付随的違憲審査制だけを問う一問と紹介するのは適切ではありません。

復習では、まず司法権の所在を憲法76条、違憲審査の終審性を81条で確認し、具体的な紛争と司法審査の限界を順に区別します。以下の独自問題で基本を確認した後、公式問題で判例の対象と判断枠組みを照合してください。令和8年度の法令基準日は試験案内の2026年4月1日に合わせています。

根拠:行政書士試験研究センター 令和2年度試験問題・問6行政書士試験研究センター 令和2年度公式正解最高裁大法廷昭和35年6月8日判決・苫米地事件(1~3頁)e-Gov 日本国憲法76条・81条行政書士試験研究センター 令和8年度試験案内

出題例の原本・年度別問題

過去の出題を手がかりに、判断する条件を整理します。このページの説明と確認問題は合トレのオリジナルです。

オリジナル確認問題で判断する

○か×かを選び、理由を確認してください。実際の過去問を転載したものではありません。

  1. 問1 憲法81条が最高裁判所を違憲審査の終審裁判所と定めているため、地方裁判所は具体的事件を裁判する際も法令の合憲性を判断できない。

    根拠:資料1資料2

  2. 問2 具体的な法律関係の紛争がなくても、憲法上重要な疑問であれば、最高裁判所に法律の抽象的な違憲判断だけを求めることができる。

    根拠:資料1

  3. 問3 地方議会議員に対する出席停止の懲罰は、議会に一定の裁量が認められるとしても、司法審査の対象となる。

    根拠:資料1

この解説の一次資料

最重要ポイント

統治行為論

最大判昭和34年12月16日(砂川事件)は、日米安全保障条約のように高度の政治性を有するものについては、一見極めて明白に違憲無効と認められない限り司法審査の範囲外であるとして、留保付きで審査を限定した。これに対し最大判昭和35年6月8日(苫米地事件)は、直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為は、たとえ法律上の争訟となり有効無効の判断が法律上可能である場合であっても司法審査権の外にあるとして、留保なしに審査を否定した。

覚え方「一見極めて明白」の留保が付くのは砂川事件のほう

最重要・比較表

司法審査の対象になるもの・ならないもの

法律上の争訟に当たるかを確認し、次に行為の類型ごとに司法審査を制約する根拠を検討します。裁量があること自体は、司法審査の対象外という意味ではありません。

法律の制定の議事手続

司法審査の対象
審査されない
そうなる理由と判例
両院の自主性を尊重すべき自律権の問題であり、有効無効を判断すべきでない(警察法改正無効事件)

判断ポイント

衆議院の解散

司法審査の対象
審査されない
そうなる理由と判例
直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為であり、法律的な判断が可能でも対象から除外される(苫米地事件)

判断ポイント

法律上の争訟にあたらないから審査しない、という理由づけではありません。

大学の単位の不認定

司法審査の対象
審査されない
そうなる理由と判例
一般市民法秩序と直接の関係を有しない大学内部の問題にとどまる(富山大学単位不認定事件)

判断ポイント

大学の専攻科修了の不認定

司法審査の対象
審査される
そうなる理由と判例
専攻科の修了を認定しないことは、実質的に一般市民としての学生の国公立大学の利用を拒否するに等しく、一般市民法秩序と直接の関係をもつ(富山大学専攻科修了認定事件)

判断ポイント

地方議会議員の出席停止

最重要
司法審査の対象
審査される
そうなる理由と判例
議員としての中核的な活動ができなくなるため、裁判所は常にその適否を判断できる(最大判令和2年11月25日)

判断ポイント

令和2年の判例変更で除名と同じ扱いになりました。国会議員の除名は自律権の問題として今も対象外です。

行政庁の裁量処分

司法審査の対象
裁量の範囲を前提に審査される
そうなる理由と判例
裁量権の範囲を超え、又はその濫用がある場合に、裁判所は処分を取り消すことができる(行政事件訴訟法30条)

判断ポイント

司法審査の対象となることと、審査の結果として処分を取り消せることは別です。裁量処分の不当さだけを理由に取り消せるわけではありません。

01司法権と違憲審査制の重要暗記項目

01
重要度 S / 収録過去問 4回

統治行為論

最大判昭和34年12月16日(砂川事件)は、日米安全保障条約のように高度の政治性を有するものについては、一見極めて明白に違憲無効と認められない限り司法審査の範囲外であるとして、留保付きで審査を限定した。これに対し最大判昭和35年6月8日(苫米地事件)は、直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為は、たとえ法律上の争訟となり有効無効の判断が法律上可能である場合であっても司法審査権の外にあるとして、留保なしに審査を否定した。

覚え方「一見極めて明白」の留保が付くのは砂川事件のほう

ひっかけ注意両判決の枠組みを取り違えさせる肢が出る。苫米地事件は留保を付けずに審査を否定している。

02
重要度 S / 収録過去問 4回

付随的違憲審査制

81条は最高裁判所を違憲審査の終審裁判所と定めるが、下級裁判所も違憲審査権を行使できる(最大判昭和25年2月1日)。わが国の制度は具体的な争訟事件の解決に必要な限りで審査する付随的違憲審査制であり、警察予備隊訴訟(最大判昭和27年10月8日)は具体的事件を離れて抽象的に違憲審査をする権限を否定した。審査の対象は一切の法律・命令・規則・処分であり、条約については高度の政治性を理由に審査が及ばない場合があるとされる。違憲判決の効力は個別的効力説が通説である。

覚え方下級裁判所も審査できる。ただし具体的事件がなければ動けない

ひっかけ注意「違憲審査権は最高裁判所のみが行使する」とする肢や、違憲判決に一般的効力を認める肢が出る。

03
重要度 A / 収録過去問 3回

部分社会の法理

最大判令和2年11月25日は、普通地方公共団体の議会の議員に対する出席停止の懲罰について、議員は住民の負託を受けて活動する責務を負い、出席停止はその中核的な活動をすることができなくさせるとして、常に司法審査の対象となるとし、出席停止を内部規律の問題として司法審査の対象外とした最大判昭和35年10月19日を変更した。なお最判昭和52年3月15日(富山大学事件)は、単位認定行為は原則として司法審査の対象外、専攻科修了認定は対象となるとしている。

覚え方出席停止も令和2年から審査対象。除名は従来から対象

ひっかけ注意変更前の昭和35年判決の結論を現在の判例として出す肢が典型。令和2年に判例変更があった点を押さえる。

04
重要度 A / 収録過去問 3回

裁判の公開

82条1項は裁判の対審および判決を公開法廷で行うと定める。判決は例外なく常に公開しなければならず、非公開とできるのは対審のみである。対審を非公開とするには裁判官の全員一致で公の秩序または善良の風俗を害するおそれがあると決する必要がある(同2項本文)。さらに政治犯罪、出版に関する犯罪、憲法第三章で保障する国民の権利が問題となっている事件の対審は常に公開しなければならない(同項ただし書)。

覚え方判決は絶対公開。非公開にできるのは対審だけで、しかも全員一致

ひっかけ注意「判決も非公開にできる」とする肢や、絶対的公開の三類型を落とす肢。非公開が問題となるのは対審に限られる。

憲法の暗記表をすべて見る →

覚える数字と、狙われる引っかけ

  • ひっかけ砂川事件と苫米地事件の枠組みを取り違える肢。「一見極めて明白」の留保が付くのは砂川事件のほう
  • ひっかけ地方議会議員の出席停止は司法審査の対象外とする肢。令和2年大法廷判決で変更され、常に対象となる
  • ひっかけ違憲審査権は最高裁判所のみが行使するとする肢。下級裁判所も違憲審査権を行使できる

押さえる判例

砂川事件最大判昭和34年12月16日

高度の政治性を有する条約は、一見極めて明白に違憲無効と認められない限り司法審査の範囲外にあるとした

苫米地事件最大判昭和35年6月8日

直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為は、法律上の争訟となり裁判所による審査が可能であっても司法審査権の外にあるとした

地方議会議員出席停止事件最大判令和2年11月25日

出席停止の懲罰は議員の中核的活動を妨げるものであり、常に司法審査の対象となるとして従前の判例を変更した

02試験で正誤を分けるチェック順

  1. 1
    法律上の争訟に当たるかをまず確認する。当たらなければ司法権は及ばない

    問題文の限定語を先に拾い、上の暗記項目と照合してから結論を出します。

  2. 2
    当たっても司法権の限界に触れないかを見る。統治行為、部分社会の法理、議院の自律権などが問題になる

    問題文の限定語を先に拾い、上の暗記項目と照合してから結論を出します。

  3. 3
    違憲審査は付随的審査制であり、下級裁判所も行使できる。違憲判決の効力は個別的効力説が通説である

    問題文の限定語を先に拾い、上の暗記項目と照合してから結論を出します。

03この論点の根拠

関連法令
日本国憲法
情報確認日
2026年4月1日施行法令基準
復習方法
要点を確認した後、○×一問一答で条件の違いを見分ける

法改正により扱いが変わる場合があります。試験日程や申込みに関する情報は、 必ず公式案内も確認してください。

問題演習

司法権と違憲審査制の○×一問一答

1/4問解答 0・正解 0

憲法重要度 S頻出度 12/24(編集部の目安)

付随的違憲審査制

最高裁判所は、わが国の裁判所が具体的な争訟事件が提起されないのに将来を予想して憲法およびその他の法律命令等の解釈に対し存在する疑義論争に関し抽象的な判断を下す権限を有するものではないと判示した。

司法権と違憲審査制の○×一問一答4問|問題と解説

この論点で収録している4問を、正誤と解説つきで通して読めます。 上の演習で迷った問題を見直すときに使ってください。

  1. 問1

    付随的違憲審査制重要度S

    最高裁判所は、わが国の裁判所が具体的な争訟事件が提起されないのに将来を予想して憲法およびその他の法律命令等の解釈に対し存在する疑義論争に関し抽象的な判断を下す権限を有するものではないと判示した。

    答え:○(正しい)

    解説

    正しい。最大判昭和27年10月8日(警察予備隊訴訟)の判示であり、わが国の違憲審査制が具体的事件を前提とする付随的審査制であることを示す。

  2. 問2

    統治行為論重要度S

    最高裁判所は、日米安全保障条約のように主権国としてのわが国の存立の基礎に極めて重大な関係をもつ高度の政治性を有する条約については、一見極めて明白に違憲無効と認められない限り、裁判所の司法審査の範囲外にあるとしている。

    答え:○(正しい)

    解説

    正しい。最大判昭和34年12月16日(砂川事件)の判示である。最大判昭和35年6月8日(苫米地事件)は衆議院の解散について統治行為として司法審査を否定した。

  3. 問3

    部分社会の法理重要度A

    最高裁判所は、地方議会が議員に対して行う出席停止の懲罰について、議員の権利行使の一時的制限にすぎず議会の内部規律の問題にとどまるから、司法審査の対象から除かれると判示した。

    答え:×(誤り)

    解説

    誤り。最大判令和2年11月25日は、出席停止の懲罰は議員としての中核的な活動を制約するとして司法審査の対象になるとし、これと異なる従前の判例を変更した。

  4. 問4

    裁判の公開重要度A

    裁判の対審は裁判官の全員一致で公の秩序または善良の風俗を害するおそれがあると決した場合には公開しないで行うことができ、政治犯罪や出版に関する犯罪に関する事件の対審についても、これと同様に扱うことができる。

    答え:×(誤り)

    解説

    誤り。政治犯罪、出版に関する犯罪、憲法第3章で保障する国民の権利が問題となっている事件の対審は、常にこれを公開しなければならない(82条2項ただし書)。

次の学習

司法権と違憲審査制の問題を続けて解く

この論点に対応する4問を絞り込んで出題します。

○×一問一答へ