2026年11月試験対応2026年4月1日施行法令基準情報の正確さへの取り組み

民法

行政書士の売買と契約不適合責任|手付解除・1年の通知・危険移転【2026年度試験対応】

売買の手付解除、追完・代金減額・損害賠償・解除の要件を整理。契約不適合の通知期間と、受領拒絶後にも生じる危険の移転を具体例・比較表・独自○×3問で確認します。

要点 4件・基本問題 4問・解説の確認問題 3問読む → 覚える → 解くまでこのページで完結

売買の契約不適合責任:追完・減額・解除の関係

2026年度試験対応。法令基準日:2026-04-01。

まず押さえるポイント

契約不適合責任は、渡された物や移転した権利が契約内容に合わないときの売主の責任です。追完・代金減額・損害賠償・解除はそれぞれ要件が異なります。種類・品質の不適合では原則として知った時から1年以内の通知が必要ですが、数量・権利の不適合にこの1年制限を一律に当てはめません。

法令基準日:2026-04-01 / 解説更新日:2026-09-25

手付解除は「相手方が履行に着手したか」で判断する

2026年度試験の基準日である2026年4月1日施行の民法に従います。557条の手付解除では、買主は交付した手付を放棄し、売主は手付の倍額を現実に提供して契約を解除できます。ただし、解除する者の相手方が契約の履行に着手した後は、この方法では解除できません。

買主が10万円の手付を交付した例なら、買主からは10万円を放棄し、売主からは20万円を現実に提供します。売主が『後で20万円を払う』と言うだけでは足りません。また、着手を確認するのは相手方です。自分が履行に着手していても、それだけで手付解除が妨げられるわけではありません。

根拠:e-Gov 民法415条・541条・542条・557条・562~567条(2026年4月1日施行版)行政書士試験研究センター 令和8年度試験案内・法令基準日

追完・減額・賠償・解除は要件を分けて使う

代金減額請求の原則。追完の催告 → 相当期間内に追完なし → 代金減額を請求

追完不能などは催告不要。要件と例外は本文でも確認できます。

図を大きく見る

契約で定めた品質の機械が届かなかったなら、562条の追完として修補・代替物の引渡しなどを請求します。数量不足なら不足分の引渡しです。売主は、買主に不相当な負担を課さない場合、買主が求めた方法と異なる方法で追完することもできます。買主の責めに帰すべき事由による不適合では追完請求が認められません。

代金減額は原則として相当期間を定めた追完の催告を経て行いますが、追完不能や明確な拒絶など563条2項の場合は直ちに請求できます。損害賠償は415条、解除は541条・542条の要件で判断します。564条はそれらの請求・解除を妨げないとする規定であり、必ず追完・減額・賠償・解除の順に一段ずつ進むという意味ではありません。

契約不適合があるときの救済
手段条文主な確認点
追完請求562条修補・代替物・不足分。買主に帰責事由がないか
代金減額563条原則は追完の催告。不能・明確な拒絶などは催告不要
損害賠償564条・415条売主に帰責できない不履行では請求できない
契約解除564条・541条・542条催告解除と無催告解除の要件。売主の帰責性は必須ではない

根拠:e-Gov 民法415条・541条・542条・557条・562~567条(2026年4月1日施行版)

1年以内に必要なのは「知った時からの通知」

566条の1年は、目的物の種類・品質が契約に適合しない場合に、その不適合を知った時から数える通知期間です。引渡しの時から1年ではなく、1年以内に訴えを起こさなければならないという規定でもありません。売主が引渡し時に不適合を知っていた、又は重大な過失で知らなかった場合は、この通知制限が適用されません。

数量不足や移転した権利の不適合は566条の対象ではありません。ただし『1年の通知制限がない』ことは『いつまでも請求できる』こととは異なり、一般の消滅時効などを確認します。例えば100個の契約に対して90個しか届かない場合と、100個すべて届いたが品質が違う場合では、通知規定の対象が違います。

根拠:e-Gov 民法415条・541条・542条・557条・562~567条(2026年4月1日施行版)

危険は引渡し後だけでなく、適切な提供後にも移転する

特定された売買目的物が、引渡し後に当事者双方の責めに帰せない事情で滅失・損傷した場合、567条1項により買主はその滅失・損傷を理由に追完・減額・損害賠償・解除を求められず、代金の支払も拒めません。引渡し前から存在した契約不適合と、引渡し後に発生した事故は分けて考えます。

同条2項は、売主が契約に適合する目的物の引渡しを適切に提供したのに、買主が受領を拒み、又は受領できない場合にも同じ処理を定めます。例えば売主が約束どおり美術品を届けたのに買主の保管準備が整わず持ち帰り、その後に双方に責任のない火災で焼失した場合、実際の受領前でも買主は代金を拒めません。契約に合う物の適切な提供があったという前提が必要です。

根拠:e-Gov 民法415条・541条・542条・557条・562~567条(2026年4月1日施行版)

令和5年問32は受領拒絶後の危険移転が問われた

令和5年度問32の公式正解は4です。売主が弁済期に美術品を持参し、買主が管理の準備がないことを理由に受領を拒んだ後、隣人の過失による火災で滅失するという事例です。売主・買主双方に帰責できない事故であり、567条2項の履行提供後の危険移転を確認できます。

この出題を『危険は実際の引渡しが終わるまで絶対に移転しない』と覚えるのは逆効果です。まず提供の内容と受領拒絶、その後の滅失原因を時系列で並べます。契約不適合の通知を理解した後は、請負における仕事の不適合と1年の通知期間を比較すると整理できます。

根拠:e-Gov 民法415条・541条・542条・557条・562~567条(2026年4月1日施行版)行政書士試験研究センター 令和5年度試験問題・問32行政書士試験研究センター 令和5年度公式正解・問32=4

出題例の原本・年度別問題

過去の出題を手がかりに、判断する条件を整理します。このページの説明と確認問題は合トレのオリジナルです。

オリジナル確認問題で判断する

○か×かを選び、理由を確認してください。実際の過去問を転載したものではありません。

  1. 問1 売買目的物の数量不足についても、民法566条により、その不足を知った時から1年以内の通知をしなければ、必ず追完請求ができなくなる。

    根拠:資料1

  2. 問2 民法557条による買主の手付解除では、買主自身が履行に着手したかではなく、売主が履行に着手したかを確認する。

    根拠:資料1

  3. 問3 契約に適合する特定の目的物の引渡しを売主が適切に提供したのに買主が受領を拒み、その後、双方に帰責できない事情で目的物が滅失した場合、買主は代金の支払を拒めない。

    根拠:資料1

この解説の一次資料

最重要ポイント

手付による解除

557条1項は、買主は手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して契約を解除できるが、相手方が契約の履行に着手した後はできないとする。改正により売主側に現実の提供が必要であることが明文化された。最大判昭和40年11月24日は履行の着手を「客観的に外部から認識しうるような形で履行行為の一部をなし、または履行の提供をするために欠くことのできない前提行為をした場合」と定義し、自ら着手していても相手方が着手していなければ解除できるとした。

覚え方止めるのは相手の着手。自分が着手していても解除できる

最重要・比較表

契約内容不適合のときに買主ができる3つの請求

最初に確かめるのは催告が要るかどうかです。追完請求だけは催告なしででき、代金減額と解除は相当の期間を定めた催告が原則になります。

請求できる内容

履行の追完請求
目的物の修補、代替物の引渡し、不足分の引渡しを請求できる(562条1項本文)
代金減額請求
不適合の程度に応じて代金の減額を請求できる(563条1項)
契約の解除
債務不履行として415条の損害賠償を請求でき、541条・542条により契約を解除できる(564条)

判断ポイント

564条があるため、損害賠償と解除は追完請求や代金減額請求ができる場合でも重ねて使えます。

催告が必要か

最重要
履行の追完請求
催告は不要。修補・代替物・不足分のうち買主が方法を選んで請求する(562条1項本文)
代金減額請求
相当の期間を定めて追完を催告し、その期間内に追完がないときにできる(563条1項)
契約の解除
相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内に履行がないときにできる(541条本文)

判断ポイント

催告なしでよいのは追完請求だけです。減額と解除は「まず催告」が出発点になります。

催告なしでできる場合

履行の追完請求
催告の規定なし
代金減額請求
追完が不能なとき、売主が追完を拒絶する意思を明確に表示したとき、定期行為で時期を経過したときなど(563条2項)
契約の解除
債務の全部の履行が不能なとき、債務者が全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したときなど(542条1項)

判断ポイント

催告しても意味がない場面という発想は、563条2項と542条1項でほぼ共通しています。

買主に帰責事由があるとき

履行の追完請求
請求できない
代金減額請求
請求できない
契約の解除
解除できない

判断ポイント

不適合や不履行が買主(債権者)の責めに帰すべき事由によるときは、いずれの手段も使えません(562条2項・563条3項・543条)。

01売買(手付・契約不適合責任・危険負担)の重要暗記項目

01
重要度 S / 収録過去問 5回

手付による解除

557条1項は、買主は手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して契約を解除できるが、相手方が契約の履行に着手した後はできないとする。改正により売主側に現実の提供が必要であることが明文化された。最大判昭和40年11月24日は履行の着手を「客観的に外部から認識しうるような形で履行行為の一部をなし、または履行の提供をするために欠くことのできない前提行為をした場合」と定義し、自ら着手していても相手方が着手していなければ解除できるとした。

覚え方止めるのは相手の着手。自分が着手していても解除できる

ひっかけ注意自ら履行に着手した者は手付解除できないとする誤りが定番。判例は相手方の着手を基準とする。

02
重要度 S / 収録過去問 5回

契約不適合責任の期間制限

566条は、種類または品質に関する契約不適合について、買主が不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しないと、追完請求・代金減額請求・損害賠償請求・解除ができなくなるとする。売主が引渡しの時に不適合を知り、または重大な過失により知らなかったときはこの制限は適用されない。数量の不適合と権利の不適合には566条の適用がなく、一般の消滅時効(166条1項)で規律される。通知さえすれば、その後の権利行使は消滅時効の期間内であればよい。

覚え方種類・品質は知って一年以内に通知。数量と権利は時効だけ

ひっかけ注意1年以内に権利行使まで必要とする誤り、および数量不足にも1年の通知期間が及ぶとする誤りが狙われる。

03
重要度 A / 収録過去問 5回

同時履行の抗弁権

533条は双務契約の当事者の一方が相手方の債務の履行を受けるまで自己の債務の履行を拒めるとし、ただし書で相手方の債務が弁済期にないときを除く。抗弁権が存在するだけで履行遅滞の違法性が阻却されるため、相手方が履行の提供をしない限り遅滞責任は生じない。解除による原状回復義務相互(546条)、負担付贈与、弁済と受取証書の交付(486条)にも同時履行の関係が認められる。他方、賃貸借終了時の敷金返還と目的物の明渡しは同時履行の関係に立たない(最判昭和49年9月2日)。

覚え方抗弁権があるだけで遅滞にならない。敷金返還と明渡しは同時履行でない

ひっかけ注意敷金返還債務と明渡義務が同時履行の関係に立つとする誤りが定番。明渡しが先履行である。

04
重要度 A / 収録過去問 4回

目的物の危険の移転

567条1項は目的物の引渡しを危険移転の基準時とし、引渡し後に当事者双方の責めに帰することができない事由で目的物が滅失・損傷したときは、買主は追完請求・代金減額請求・損害賠償請求・解除をすることができず、代金の支払を拒むこともできないとする。同条2項は、売主が契約に適合する目的物の引渡しを提供したのに買主が受領を拒み、または受領することができない場合について同様に扱う。引渡し前であれば536条1項により買主は代金の支払を拒める。

覚え方引渡しか受領遅滞で危険は買主へ移る

ひっかけ注意危険の移転時期を所有権移転時や契約成立時とする誤りが狙われる。基準は引渡しである。

民法の暗記表をすべて見る →

覚える数字と、狙われる引っかけ

  • 契約不適合の通知 知った時から1年以内
  • 危険の移転 目的物の引渡しの時
  • ひっかけ566条の起算点を引渡しの時とする肢、必要な行為を権利行使や訴えの提起とする肢。知った時から1年以内の「通知」で足りる
  • ひっかけ手付解除の着手の判断対象を「自ら」とする肢。相手方が履行に着手していなければ、自ら着手していても解除できる
  • ひっかけ売主の手付解除に口頭の提供で足りるとする肢。倍額の現実の提供が必要である

押さえる判例

手付解除と履行の着手最大判昭和40年11月24日

履行の着手とは客観的に外部から認識しうる形で履行行為の一部をなし、または履行の提供をするために欠くことのできない前提行為をした場合をいう

他人物売買と相続最大判昭和49年9月4日

他人の権利の売主を相続した権利者は、信義則に反する特別の事情がない限り履行を拒絶できるが、売主の地位を承継するため損害賠償責任は免れない

02試験で正誤を分けるチェック順

  1. 1
    不適合の種類を分ける。種類・品質なら566条の1年の通知が必要、数量や権利の不適合なら一般の消滅時効による

    問題文の限定語を先に拾い、上の暗記項目と照合してから結論を出します。

  2. 2
    救済手段を選ぶ。追完請求が原則で、催告しても追完されないときや追完不能のときに代金減額請求へ進む

    問題文の限定語を先に拾い、上の暗記項目と照合してから結論を出します。

  3. 3
    危険の移転時期を確認する。引渡し後の双方無帰責の滅失・損傷なら、買主は代金の支払を拒めない

    問題文の限定語を先に拾い、上の暗記項目と照合してから結論を出します。

03この論点の根拠

関連法令
民法
情報確認日
2026年4月1日施行法令基準
復習方法
要点を確認した後、○×一問一答で条件の違いを見分ける

法改正により扱いが変わる場合があります。試験日程や申込みに関する情報は、 必ず公式案内も確認してください。

問題演習

売買(手付・契約不適合責任・危険負担)の○×一問一答

1/4問解答 0・正解 0

民法重要度 S頻出度 12/24(編集部の目安)

手付による解除

買主が売主に解約手付を交付した場合において、売主が既に履行に着手しているときであっても、買主自身がまだ履行に着手していない限り、買主は手付を放棄して契約を解除することができる。

売買(手付・契約不適合責任・危険負担)の○×一問一答4問|問題と解説

この論点で収録している4問を、正誤と解説つきで通して読めます。 上の演習で迷った問題を見直すときに使ってください。

  1. 問1

    手付による解除重要度S

    買主が売主に解約手付を交付した場合において、売主が既に履行に着手しているときであっても、買主自身がまだ履行に着手していない限り、買主は手付を放棄して契約を解除することができる。

    答え:×(誤り)

    解説

    誤り。最大判昭和40年11月24日は、557条1項ただし書の履行の着手を解除の相手方について判断するとしており、売主が着手していれば買主は解除できない。

  2. 問2

    契約不適合責任の期間制限重要度S

    売主が種類または品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合、買主は、その引渡しを受けた時から1年以内に不適合を理由とする損害賠償を請求しなければ、その権利を失う。

    答え:×(誤り)

    解説

    誤り。566条の起算点は買主が不適合を知った時であり、1年以内に必要なのは権利行使ではなく不適合の旨の通知である。

  3. 問3

    同時履行の抗弁権重要度A

    双務契約の当事者の一方は、相手方の債務が本来の給付ではなく履行に代わる損害賠償の債務に変わった場合であっても、その損害賠償の債務の履行が提供されるまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。

    答え:○(正しい)

    解説

    正しい。533条の括弧書は、履行に代わる損害賠償の債務の履行についても同時履行の関係を認めている。

  4. 問4

    目的物の危険の移転重要度A

    売主が特定した目的物を買主に引き渡した後、当事者双方の責めに帰することができない事由によってその目的物が滅失した場合、買主は、代金の支払を拒むことができない。

    答え:○(正しい)

    解説

    正しい。567条1項は、引渡し後の双方無帰責の滅失・損傷について買主の追完請求等を否定し、代金支払の拒絶も認めていない。

次の学習

売買(手付・契約不適合責任・危険負担)の問題を続けて解く

この論点に対応する4問を絞り込んで出題します。

○×一問一答へ