行政法
執行停止と仮の救済
裁判所の執行停止は申立てが必須で職権ではできないのに対し、審査庁は上級行政庁または処分庁なら職権でもできます。「重大な損害」と「償うことのできない損害」、消極要件と積極要件の書き分けが最大の落とし穴です。
要点 8件・確認問題 8問読む → 覚える → 解くまでこのページで完結
行政契約
水道法15条1項は、水道事業者は正当の理由がなければ給水契約の申込みを拒んではならないと定める。最判平成11年1月21日(志免町給水拒否事件)は、需要量が給水量を著しく上回り給水能力を超えるおそれがあるときは、新規の給水申込みを拒む正当の理由があるとした。これに対し最決平成元年11月8日(武蔵野市長事件)は、指導要綱に従わせる手段として給水契約の締結を留保することは水道法15条1項に違反し違法であるとした。
覚え方水が足りないなら拒める、指導に従わせるためなら拒めない
01執行停止と仮の救済の重要暗記項目
行政契約
水道法15条1項は、水道事業者は正当の理由がなければ給水契約の申込みを拒んではならないと定める。最判平成11年1月21日(志免町給水拒否事件)は、需要量が給水量を著しく上回り給水能力を超えるおそれがあるときは、新規の給水申込みを拒む正当の理由があるとした。これに対し最決平成元年11月8日(武蔵野市長事件)は、指導要綱に従わせる手段として給水契約の締結を留保することは水道法15条1項に違反し違法であるとした。
覚え方水が足りないなら拒める、指導に従わせるためなら拒めない
ひっかけ注意「行政指導への不服従を理由とする給水拒否も水需要が逼迫していれば適法」とする肢。指導の実効性確保を目的とする拒否は正当の理由に当たらない。
義務的執行停止
審査請求人の申立てがあった場合において、処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるために緊急の必要があると認めるときは、審査庁は執行停止をしなければならない(25条4項本文)。ただし公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき、又は本案について理由がないとみえるときはこの限りでない(同項ただし書)。重大な損害を生ずるか否かの判断では損害の回復の困難の程度を考慮し、損害の性質・程度、処分の内容・性質も勘案する(同5項)。
覚え方重大な損害+緊急の必要=しなければならない(義務)
ひっかけ注意「償うことのできない損害」「回復の困難な損害」という旧法や仮の義務付けの文言に差し替える肢が典型。条文は「重大な損害」である。
審査請求前置の例外
8条2項は、審査請求前置が定められている場合でも、①審査請求があった日から3か月を経過しても裁決がないとき②処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる著しい損害を避けるため緊急の必要があるとき③その他裁決を経ないことにつき正当な理由があるときは、裁決を経ないで処分の取消しの訴えを提起できると定める。②の文言は執行停止の「重大な損害」ではなく「著しい損害」である点に注意する。
覚え方3か月放置・著しい損害・正当な理由。この三つで前置を飛ばせる
ひっかけ注意②の要件を執行停止の「重大な損害」や旧法の「回復の困難な損害」に差し替える肢。条文は「著しい損害」である。3か月を6か月とする改変も出る。
執行不停止の原則と執行停止
処分の取消しの訴えの提起は、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない(25条1項)。停止を求めるには申立てによる執行停止決定が必要であり、裁判所が職権で執行停止をすることはできない。執行停止の内容は処分の効力の停止・処分の執行の停止・手続の続行の停止の3種で、このうち処分の効力の停止は、処分の執行又は手続の続行の停止によって目的を達することができる場合にはできない(25条2項ただし書)という補充性がある。
覚え方裁判所は申立てがなければ動けない。効力の停止は最後の手段
ひっかけ注意行政不服審査法の執行停止と混同し「審査庁は職権でできるから裁判所も職権でできる」と誤らせる肢。裁判所は申立てが必要である。
執行停止の要件
執行停止の積極的要件は、本案訴訟が係属していること、および処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があることである(行政事件訴訟法25条2項)。重大な損害を生ずるか否かの判断では損害の回復の困難の程度を考慮し、損害の性質・程度、処分の内容・性質をも勘案する(同3項)。消極的要件は、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき、又は本案について理由がないとみえるときである(同4項)。行政不服審査法25条4項も同じ枠組みである。
覚え方積極は重大な損害と緊急の必要、消極は公共の福祉と本案の理由なし
ひっかけ注意改正前の「回復の困難な損害」への差替えが最頻出。仮の義務付け・仮の差止めの「償うことのできない損害」との取り違えも狙われる。
執行停止の手続
執行停止の決定は疎明に基づいてされ(25条5項)、口頭弁論を経ないですることができるが、あらかじめ当事者の意見を聴かなければならない(同6項)。申立てに対する決定には即時抗告ができるが(同7項)、その即時抗告には決定の執行を停止する効力がない(同8項)。管轄は本案の係属する裁判所である(28条)。執行停止の決定が確定した後にその理由が消滅し事情が変更したときは、裁判所は相手方の申立てにより決定をもって執行停止の決定を取り消すことができる(26条1項)。
覚え方疎明で足りる。即時抗告しても停止決定は止まらない
ひっかけ注意「即時抗告があれば執行停止決定の効力は止まる」とする肢。25条8項が明確に否定している。事情変更による取消しを職権でできるとする肢も誤りである。
内閣総理大臣の異議
内閣総理大臣は、執行停止の申立てがあった場合および執行停止の決定があった後に、裁判所に対し異議を述べることができる(27条1項)。異議には理由を付さなければならず(同2項)、理由においては処分の効力を存続する等の必要がある旨を示す(同3項)。異議があったときは裁判所は執行停止をすることができず、既にした執行停止の決定を取り消さなければならない(同4項)。異議はやむを得ない場合でなければ述べられず、述べたときは次の常会において国会に報告しなければならない(同6項)。
覚え方異議が出たら裁判所は従うほかない。報告先は次の常会
ひっかけ注意「裁判所は異議の理由の当否を審査できる」とする肢。裁判所に審査権はない。報告先を「直近の国会」とする改変も狙われる。
仮処分の排除
44条は、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為については、民事保全法に規定する仮処分をすることができないと定める。行政作用に対する暫定的救済は、執行停止(25条)と仮の義務付け・仮の差止め(37条の5)という行政事件訴訟法固有の制度に一元化されている。他方、公法上の当事者訴訟を本案とする場合には仮処分の余地があると解されており、44条が排除するのは公権力の行使に当たる行為に関する仮処分である。
覚え方公権力の行使には仮処分を使えない。使えるのは執行停止と仮の救済
ひっかけ注意平成16年改正で仮の義務付け・仮の差止めが創設されたことから、仮処分の排除規定が削除されたと誤らせる肢。44条は現在も存置されている。
02試験で正誤を分けるチェック順
- 1行政不服審査法と行政事件訴訟法のどちらの話かを分ける。裁判所は申立てが必要、審査庁は立場によって職権でもできる
問題文の限定語を先に拾い、上の暗記項目と照合してから結論を出します。
- 2積極要件(本案の係属・重大な損害を避けるため緊急の必要)と消極要件(公共の福祉への重大な影響・本案について理由がないとみえる)を当てはめる
問題文の限定語を先に拾い、上の暗記項目と照合してから結論を出します。
- 3求める措置を選ぶ。効力の停止は、執行の停止や手続の続行の停止で目的を達せられる場合にはできないという補充性がある
問題文の限定語を先に拾い、上の暗記項目と照合してから結論を出します。
03この論点の根拠
- 関連法令
- 行政事件訴訟法
- 内容の基準日
- 2026年4月1日
- 復習方法
- 要点を確認した後、下の○×問題で条件の違いを見分ける
法改正により扱いが変わる場合があります。試験日程や申込みに関する情報は、 必ず公式案内も確認してください。
問題演習
執行停止と仮の救済の○×一問一答
1/8問解答 0・正解 0
行政法重要度 S頻出度 23/24(編集部の目安)
執行停止の要件
執行停止をするためには、処分、処分の執行または手続の続行により生ずる回復の困難な損害を避けるため緊急の必要があることを要する。
全784問から、分野・重要度で解く
行政法240問、民法180問、憲法60問、商法・会社法40問、基礎法学20問、基礎知識80問を収録。