2026年11月試験対応2026年4月1日施行法令基準情報の正確さへの取り組み

民法

遺言と遺留分

遺留分減殺請求は金銭債権としての遺留分侵害額請求に改められ、目的物が当然に共有になることはなくなりました。総体的遺留分は直系尊属のみなら3分の1・それ以外は2分の1で、この二つの割合の入替えが最頻出です。

要点 8件・基本問題 8読む → 覚える → 解くまでこのページで完結

行政書士試験での出題

出題ランク C対応する一問一答 13

収録している過去問には、この論点に直接あたる問題はありません。 下の確認問題で押さえてください。

最重要ポイント

相続による権利の承継と対抗要件

899条の2は平成30年改正で新設され、遺産分割・相続分の指定・特定財産承継遺言(相続させる旨の遺言)のいずれによる承継であっても、法定相続分を超える部分については登記・登録その他の対抗要件を備えなければ第三者に対抗できないとした。これにより、特定財産承継遺言があれば登記なしに対抗できるとしていた最判平成14年6月10日の法理は変更された。承継した権利が債権である場合は、承継人が遺言等の内容を明らかにして債務者に通知すれば足りる(同2項)。

覚え方法定相続分までは登記不要、超えた分は対抗要件が要る

最重要・比較表

法定相続分と遺留分の割合

最初に血族側の相続人が誰かを確かめます。子・直系尊属・兄弟姉妹の順で配偶者の取り分が増え、遺留分の割合と有無もここで変わります。

配偶者の法定相続分

最重要
配偶者と子
2分の1。残りの2分の1を子が取得する
配偶者と直系尊属
3分の2。残りの3分の1を直系尊属が取得する
配偶者と兄弟姉妹
4分の3。残りの4分の1を兄弟姉妹が取得する
直系尊属のみ
配偶者はいない

判断ポイント

配偶者は常に相続人となり、血族側の順位が下がるほど取り分が増えます。

血族側が複数いるとき

配偶者と子
子が3人いるときは、子の相続分2分の1を3等分したものが各自の相続分になる
配偶者と直系尊属
親が2人いるときは、直系尊属の相続分3分の1を2等分したものが各自の相続分になる
配偶者と兄弟姉妹
兄弟姉妹が複数いるときも、兄弟姉妹の相続分4分の1を人数で分ける
直系尊属のみ
配偶者も子もいないため、直系尊属だけが相続人となる

判断ポイント

嫡出子と嫡出でない子、実子と養子でも相続分は等しく、頭数で割るのが原則です。

遺留分の割合(相続人全体の総額)

配偶者と子
遺留分を算定するための財産の価額の2分の1(1042条1項)
配偶者と直系尊属
配偶者がいるため、直系尊属が相続人でも2分の1になる
配偶者と兄弟姉妹
遺留分を算定するための財産の価額の2分の1(1042条1項)
直系尊属のみ
直系尊属のみが相続人のときだけ3分の1になる(1042条1項)

判断ポイント

3分の1になるのは直系尊属だけが相続人のときに限られ、配偶者が加われば2分の1です。各人の遺留分は、この総額に自分の法定相続分を掛けて出します(配偶者と子なら各4分の1)。ただし兄弟姉妹に遺留分はないため、相続人が配偶者と兄弟姉妹のときは配偶者の遺留分がそのまま2分の1になります。

遺留分を持つ人

配偶者と子
配偶者と子の双方に遺留分が認められる
配偶者と直系尊属
配偶者と直系尊属の双方に遺留分が認められる
配偶者と兄弟姉妹
配偶者だけが持ち、兄弟姉妹には遺留分が認められない
直系尊属のみ
配偶者も子もいないため、直系尊属だけが遺留分権利者となる

判断ポイント

兄弟姉妹に遺留分がないため、全財産を配偶者に残す遺言があれば兄弟姉妹は何も取得できません。

血族側が誰かで配偶者の相続分が決まる。遺留分は直系尊属のみのときだけ3分の1で、兄弟姉妹にはない

法令確認:民法900条民法1042条1項(確認日 2026-08-05)

01遺言と遺留分の重要暗記項目

01
重要度 S / 収録過去問 4回

相続による権利の承継と対抗要件

899条の2は平成30年改正で新設され、遺産分割・相続分の指定・特定財産承継遺言(相続させる旨の遺言)のいずれによる承継であっても、法定相続分を超える部分については登記・登録その他の対抗要件を備えなければ第三者に対抗できないとした。これにより、特定財産承継遺言があれば登記なしに対抗できるとしていた最判平成14年6月10日の法理は変更された。承継した権利が債権である場合は、承継人が遺言等の内容を明らかにして債務者に通知すれば足りる(同2項)。

覚え方法定相続分までは登記不要、超えた分は対抗要件が要る

ひっかけ注意「相続させる」旨の遺言による承継には対抗要件が不要とする改正前の判例法理が誤りとして出る。

02
重要度 S / 収録過去問 4回

遺留分の割合

遺留分権利者は兄弟姉妹以外の相続人、すなわち配偶者・子(およびその代襲者)・直系尊属である。総体的遺留分は直系尊属のみが相続人であるときは被相続人の財産の3分の1、それ以外の場合は2分の1である(1042条1項)。相続人が数人あるときは、この割合に各自の法定相続分を乗じて個別的遺留分を算出する(同2項)。遺留分を算定するための財産の価額は、相続開始時に有した財産の価額に贈与した財産の価額を加え、債務の全額を控除して算定する(1043条1項)。

覚え方直系尊属だけなら三分の一、それ以外は二分の一

ひっかけ注意直系尊属のみが相続人の場合にも2分の1とする誤りが定番。この場合だけ3分の1である。

03
重要度 S / 収録過去問 4回

遺留分侵害額請求権

改正前の遺留分減殺請求権は物権的効力を有し、行使により目的物が共有となる問題があった。改正後の遺留分侵害額請求権は金銭債権であり(1046条1項)、受遺者または受贈者は遺贈または贈与の目的の価額を限度として負担する。負担の順序は、受遺者が受贈者に先立ち、受遺者が複数のときはその目的の価額の割合に応じ、受贈者が複数のときは後の贈与から順次前の贈与にさかのぼる(1047条1項)。裁判所は受遺者等の請求により金銭債務の全部または一部の支払につき相当の期限を許与できる(同5項)。

覚え方請求すればお金が出る。まず受遺者、次に新しい贈与から

ひっかけ注意遺留分侵害額請求により目的物が当然に共有になるとする改正前の記述が誤りとして出る。効果は金銭債権である。

04
重要度 A / 収録過去問 5回

相続と登記

最判昭和42年1月20日は、相続放棄の遡及効は絶対的で、第三者に対しても登記等なくして対抗できるとした。これに対し遺産分割によって法定相続分を超えて取得した部分は、登記がなければ分割後の第三者に対抗できない(最判昭和46年1月26日)。899条の2第1項はこれを一般化し、遺言による承継も含め、相続による権利の承継は法定相続分を超える部分について対抗要件を備えなければ第三者に対抗できないとする。

覚え方放棄は登記なしで貫徹、分割・遺言は法定相続分を超えたら登記

ひっかけ注意相続放棄にも登記が必要とする誤り、逆に「相続させる」旨の遺言なら登記不要とする改正前の記述が誤りとして出る。

05
重要度 A / 収録過去問 3回

相続放棄と登記

最判昭和42年1月20日は、相続の放棄をした者は初めから相続人でなかったことになるから、放棄後に放棄者の債権者がその者の持分を差し押さえて登記をしても、他の共同相続人は登記なくして自己の権利を主張できるとした。放棄の遡及効は登記なしに第三者にも及ぶ絶対的なものだからである。これに対し遺産分割や相続分の指定によって法定相続分を超えて取得した部分については、899条の2により対抗要件を備えなければ第三者に対抗できない。

覚え方放棄は登記なしで貫徹、分割は登記がないと負ける

ひっかけ注意放棄後に現れた差押債権者に対しては登記が必要とする誤りが狙われる。判例は登記不要とする。

06
重要度 A / 収録過去問 3回

遺言書の検認

1004条1項は、遺言書の保管者またはこれを発見した相続人に対し、相続の開始を知った後遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して検認を請求すべき義務を課す。検認は遺言書の状態を確認し保存を確実にする手続であって、遺言の有効無効を判断するものではない。公正証書遺言と遺言書保管所に保管された自筆証書遺言には適用されない(同2項、保管法11条)。封印のある遺言書は家庭裁判所において相続人またはその代理人の立会いがなければ開封できない(同3項)。検認を怠っても遺言は無効とならないが、過料の制裁がある。

覚え方検認は有効性の判断ではない。怠っても遺言は無効にならない

ひっかけ注意検認を経ない遺言が無効になるとする誤りが定番。検認は証拠保全手続であり効力要件ではない。

07
重要度 A / 収録過去問 3回

相続させる旨の遺言

最判平成3年4月19日は、特定の遺産を特定の相続人に相続させる旨の遺言は、遺言書の記載から遺贈と解すべき特段の事情のない限り遺産分割の方法を定めたものであり、何らの行為を要せずに被相続人の死亡の時に直ちに当該遺産が当該相続人に相続により承継されるとした。現行法はこれを特定財産承継遺言と呼ぶ(1014条2項)。遺言執行者は対抗要件を備えるために必要な行為をすることができる。もっとも法定相続分を超える部分は899条の2により対抗要件を備えなければ第三者に対抗できない。

覚え方死亡と同時に承継。ただし超過分は登記がなければ対抗できない

ひっかけ注意特定財産承継遺言でも遺産分割の手続を経なければ権利が移転しないとする誤りが狙われる。判例は当然承継とする。

08
重要度 B / 収録過去問 2回

相続債務の承継

金銭債務のような可分債務は相続開始と同時に法定相続分に応じて当然に分割承継される。最判平成21年3月24日は、相続人の一人に全財産を相続させる旨の遺言により相続分の全部が指定された場合、相続人間では債務も全部承継されるが、相続債権者に対する関係では、債権者が指定された相続分に応じた債務の承継を承認しない限り、各共同相続人に対して法定相続分に応じた権利行使をすることを妨げられないとした。902条の2がこれを明文化している。

覚え方相続分の指定は債権者を縛らない。債権者は法定相続分で請求できる

ひっかけ注意相続分の指定により債権者も指定された割合でしか請求できなくなるとする誤りが狙われる。債権者の承認が必要である。

民法の暗記表をすべて見る →

覚える数字と、狙われる引っかけ

  • 総体的遺留分 直系尊属のみ3分の1・それ以外2分の1
  • 遺留分侵害額請求 知った時から1年・相続開始から10年
  • 兄弟姉妹に遺留分はない
  • ひっかけ遺留分侵害額請求により目的物が当然に共有となるとする肢。改正後は金銭債権である
  • ひっかけ検認を遺言の効力要件とする肢。検認を欠いても遺言は無効にならない
  • ひっかけ相続させる旨の遺言なら登記なしに対抗できるとする肢。899条の2により法定相続分を超える部分は登記が要る

押さえる判例

相続させる旨の遺言最判平成3年4月19日

特定の遺産を特定の相続人に相続させる旨の遺言は、特段の事情がない限り何らの行為も要せず、被相続人の死亡時に当該遺産が承継される

全部の相続分指定と相続債務最判平成21年3月24日

相続分の全部が指定されても、相続債権者は承認しない限り各共同相続人に法定相続分に応じた権利行使をすることができる

02試験で正誤を分けるチェック順

  1. 1
    遺言の方式を確認する。自筆証書は全文・日付・氏名の自書と押印が要り、財産目録だけは自書不要で毎葉に署名押印する

    問題文の限定語を先に拾い、上の暗記項目と照合してから結論を出します。

  2. 2
    検認の要否を見る。公正証書遺言と遺言書保管所に保管された自筆証書遺言は検認が要らない

    問題文の限定語を先に拾い、上の暗記項目と照合してから結論を出します。

  3. 3
    遺留分は割合を確定してから侵害額を算定する。負担は受遺者が受贈者に先立ち、受贈者が複数なら後の贈与から順に遡る

    問題文の限定語を先に拾い、上の暗記項目と照合してから結論を出します。

03この論点の根拠

関連法令
民法
情報確認日
2026年4月1日施行法令基準
復習方法
要点を確認した後、○×一問一答で条件の違いを見分ける

法改正により扱いが変わる場合があります。試験日程や申込みに関する情報は、 必ず公式案内も確認してください。

問題演習

遺言と遺留分の○×一問一答

1/8解答 0・正解 0

民法重要度 A頻出度 11/24(編集部の目安)

相続と登記

相続の放棄をした者の債権者が、放棄後にその者の法定相続分を差し押さえた場合であっても、他の共同相続人は登記なくして放棄の効力を主張することができる。

遺言と遺留分○×一問一答13問|問題と解説

この論点で収録している13問を、正誤と解説つきで通して読めます。 上の演習で迷った問題を見直すときに使ってください。

  1. 1

    相続と登記重要度A

    相続の放棄をした者の債権者が、放棄後にその者の法定相続分を差し押さえた場合であっても、他の共同相続人は登記なくして放棄の効力を主張することができる。

    答え:○(正しい)

    解説

    正しい。最判昭和42年1月20日は、相続放棄の遡及効は絶対的であり登記なくして第三者に対抗できるとする。

  2. 2

    自筆証書遺言の方式重要度S

    自筆証書によって遺言をする場合において、これと一体のものとして相続財産の目録を添付するときは、その目録については自書することを要しない。

    答え:○(正しい)

    解説

    正しい。968条2項により財産目録はパソコン作成や通帳の写しでもよいが、毎葉に署名押印が必要である。

  3. 3

    遺留分の割合重要度S

    直系尊属のみが相続人である場合の遺留分は、遺留分を算定するための財産の価額の二分の一である。

    答え:×(誤り)

    解説

    誤り。1042条1項1号は直系尊属のみが相続人である場合の遺留分を三分の一とし、その他の場合を二分の一とする。

  4. 4

    遺留分侵害額請求権重要度S

    遺留分権利者が受遺者又は受贈者に対して有する権利は、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を求める債権である。

    答え:○(正しい)

    解説

    正しい。平成30年改正により権利は金銭債権とされ、目的物の返還や共有関係の発生は生じない(1046条1項)。

  5. 5

    相続による権利の承継と対抗要件重要度S

    相続による権利の承継は、法定相続分を超える部分については、登記その他の対抗要件を備えなければ第三者に対抗することができない。

    答え:○(正しい)

    解説

    正しい。899条の2第1項は、遺産分割によるものかどうかを問わず、法定相続分超過部分に対抗要件を要求する。

  6. 6

    相続放棄と登記重要度A

    共同相続人の一人が相続を放棄した場合、その放棄の効力は、登記がなくても第三者に対抗することができる。

    答え:○(正しい)

    解説

    正しい。最高裁昭和42年1月20日判決は、相続放棄の効力は絶対的で登記等の有無を問わず何人に対しても生ずるとした。

  7. 7

    自筆証書遺言書保管制度重要度A

    遺言書保管所に保管されている自筆証書遺言は、相続の開始後、家庭裁判所の検認を経ることなくそのまま執行することができる。

    答え:○(正しい)

    解説

    正しい。法務局における遺言書の保管等に関する法律11条は、保管中の遺言書に民法1004条1項を適用しないとする。

  8. 8

    遺言書の検認重要度A

    家庭裁判所の検認を経ないでされた自筆証書遺言は、その効力を生じない。

    答え:×(誤り)

    解説

    誤り。検認は遺言書の形状等を確認して偽造変造を防ぐ証拠保全手続にすぎず、遺言の効力要件ではない。

  9. 9

    相続させる旨の遺言重要度A

    特定の遺産を特定の相続人に相続させる趣旨の遺言があるときは、特段の事情のない限り、被相続人の死亡の時に直ちにその遺産が当該相続人に承継される。

    答え:○(正しい)

    解説

    正しい。最高裁平成3年4月19日判決は、当該遺言を遺産分割方法の指定と解し、分割手続を経ずに承継が生ずるとした。

  10. 10

    遺言の撤回重要度B

    前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなされる。

    答え:○(正しい)

    解説

    正しい。1023条1項は抵触する部分について後の遺言による撤回を擬制し、方式が異なっていても差し支えない。

  11. 11

    相続債務の承継重要度B

    相続人の一人に全財産を相続させる旨の遺言がされたときは、相続債権者は、他の共同相続人に対して法定相続分に応じた債務の履行を求めることができない。

    答え:×(誤り)

    解説

    誤り。最高裁平成21年3月24日判決は、相続債権者が各共同相続人に法定相続分に応じた履行を求めることを妨げないとした。

  12. 12

    扶養義務者の範囲重要度B

    三親等内の親族は、特別の事情の有無にかかわらず、当然に互いに扶養をする義務を負う。

    答え:×(誤り)

    解説

    誤り。当然に扶養義務を負うのは直系血族及び兄弟姉妹であり、三親等内の親族には家庭裁判所の審判が必要である(877条)。

  13. 13

    特別縁故者への財産分与重要度B

    特別縁故者に対する相続財産の分与の請求は、相続人捜索の公告に定められた期間の満了後一年以内にしなければならない。

    答え:×(誤り)

    解説

    誤り。958条の2第2項は、952条2項の期間の満了後三箇月以内に請求すべきものとしている。

次の学習

遺言と遺留分の問題を続けて解く

この論点に対応する13問を絞り込んで出題します。

○×一問一答