民法
債務不履行と契約の解除
損害賠償には債務者の帰責事由が要るのに、解除には要らない——改正民法で最も入れ替えられる要件です。催告解除のただし書(不履行が軽微なとき)と、その軽微性を主張立証するのが債務者である点も繰り返し狙われます。
要点 8件・確認問題 8問読む → 覚える → 解くまでこのページで完結
権限外の行為の表見代理
110条は、代理人がその権限外の行為をし、第三者に代理権があると信ずべき正当な理由があるときに本人の責任を認める。正当な理由とは第三者の善意無過失を意味する。前提として何らかの基本代理権が必要であり、判例は印鑑証明書下付申請の委任のような公法上の行為の代理権は原則として基本代理権にならないとする。夫婦の日常家事代理権については、最判昭和44年12月18日が110条の直接適用ではなくその趣旨の類推適用にとどめた。
覚え方基本代理権プラス正当な理由。日常家事は類推どまり
01債務不履行と契約の解除の重要暗記項目
権限外の行為の表見代理
110条は、代理人がその権限外の行為をし、第三者に代理権があると信ずべき正当な理由があるときに本人の責任を認める。正当な理由とは第三者の善意無過失を意味する。前提として何らかの基本代理権が必要であり、判例は印鑑証明書下付申請の委任のような公法上の行為の代理権は原則として基本代理権にならないとする。夫婦の日常家事代理権については、最判昭和44年12月18日が110条の直接適用ではなくその趣旨の類推適用にとどめた。
覚え方基本代理権プラス正当な理由。日常家事は類推どまり
ひっかけ注意夫婦の日常家事代理権を基本代理権として110条を直接適用するとした判例だと誤らせる出題が多い。判例は趣旨の類推適用である。
相隣関係と隣地の使用
令和3年改正後の209条1項は、境界またはその付近における障壁・建物その他の工作物の築造・収去・修繕、境界標の調査・境界に関する測量、233条3項による枝の切取りのために、必要な範囲で隣地を使用できるとする。改正前と異なり隣地所有者の承諾は不要で、原則としてあらかじめ目的・日時・場所・方法を通知すれば足りる(3項)。ただし住家への立入りには居住者の承諾が必要である(1項ただし書)。損害を受けた者は償金を請求できる(4項)。
覚え方隣地使用は通知でよい。住家に入るときだけ承諾が要る
ひっかけ注意隣地の使用に常に隣地所有者の承諾が必要とする改正前の記述が誤りとして出る。承諾が要るのは住家への立入りのみ。
履行遅滞の始期
履行遅滞の始期は、確定期限のある債務は期限の到来した時(412条1項)、不確定期限のある債務は債務者が期限の到来した後に履行の請求を受けた時と期限の到来を知った時のいずれか早い時(同2項)、期限の定めのない債務は履行の請求を受けた時(同3項)である。返還時期を定めなかった消費貸借では、貸主は相当の期間を定めて返還の催告をしなければならない(591条1項)。不法行為に基づく損害賠償債務は、催告を要せず損害の発生と同時に遅滞となる(最判昭和37年9月4日)。
覚え方確定期限は到来、不確定期限は請求か知った時の早い方、期限なしは請求
ひっかけ注意不法行為の損害賠償債務も期限の定めのない債務として催告時から遅滞になるとする誤りが狙われる。判例は不法行為時から遅滞とする。
債務不履行と帰責事由
415条1項本文は債務の本旨に従った履行をしないときまたは履行が不能であるときに損害賠償請求権が生じるとしつつ、ただし書で契約その他の債務の発生原因および取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは免責するとする。帰責事由の有無は単なる故意過失ではなく契約の趣旨から判断される。2項は、履行不能、履行拒絶の明確な表示、契約の解除または解除権の発生のいずれかがあれば履行に代わる損害賠償を請求できるとする。
覚え方賠償には帰責事由が要る。解除には要らない
ひっかけ注意解除にも債務者の帰責事由が必要とする誤りが定番。帰責事由が要求されるのは損害賠償だけである。
損害賠償の範囲
416条1項は債務不履行によって通常生ずべき損害を、2項は特別の事情によって生じた損害のうち当事者が予見すべきであったものを賠償範囲とする。改正前の「予見し、又は予見することができたとき」は「予見すべきであったとき」に改められ、現実の予見の有無ではなく規範的評価によることが明確になった。予見の主体は債務者であり、予見すべき時期は債務不履行の時と解されている。金銭債務については419条により損害の証明が不要で、不可抗力の抗弁も許されない。
覚え方通常損害は当然、特別損害は「予見すべき」かで判断
ひっかけ注意予見の主体を「当事者双方」、時期を「契約締結時」とする誤りが狙われる。判例・通説は債務者・不履行時とする。
債務不履行と過失相殺
418条は、債権者に過失があったときは裁判所はこれを考慮して損害賠償の責任およびその額を定めると規定する。過失相殺は必要的であり、責任そのものを否定することもできる。これに対し不法行為の過失相殺(722条2項)は「損害賠償の額を定めることができる」と任意的で、対象も額の減額に限られる。判例は、420条の賠償額の予定がある場合にも過失相殺の適用を認めている(最判平成6年4月21日)。
覚え方債務不履行は必ず考慮・責任否定まで可、不法行為は任意・額だけ
ひっかけ注意債務不履行の過失相殺を「額の減額にとどまる」とする誤りが狙われる。418条では責任自体を否定できる。
賠償額の予定
420条1項は当事者が債務不履行について損害賠償の額を予定できるとし、2項で賠償額の予定は履行の請求または解除権の行使を妨げないとし、3項は違約金を賠償額の予定と推定する。改正により「裁判所はその額を増減することができない」との旧2項が削除され、公序良俗違反(90条)や消費者契約法9条による減額の余地が明確になった。予定があれば債権者は実際の損害額を証明せずに予定額を請求できる。
覚え方違約金は賠償額の予定と推定。裁判所が減額する余地は残る
ひっかけ注意「賠償額の予定があると裁判所は一切増減できない」とする改正前の記述が誤りとして出題される。
受領遅滞の効果
受領遅滞の効果は、特定物の保存義務が自己の財産に対するのと同一の注意に軽減されること(413条1項)、増加した履行費用を債権者が負担すること(同2項)、受領遅滞中に当事者双方の責めに帰することができない事由で履行不能となったときは債権者の責めに帰すべき事由によるものとみなされること(413条の2第2項)である。その結果、債権者は反対給付の履行を拒めず(536条2項)、解除もできない(543条)。受領遅滞自体は債務不履行ではないため、原則として損害賠償や解除は認められない。
覚え方受領遅滞で注意義務は軽く、費用は債権者持ち、危険も債権者に移る
ひっかけ注意受領遅滞を理由に債務者が直ちに契約を解除できるとする誤りが狙われる。原則として解除も損害賠償も認められない。
02試験で正誤を分けるチェック順
- 1損害賠償か解除かを分ける。賠償は415条1項ただし書の帰責事由が要り、解除は543条により債権者に帰責事由がある場合だけができない
問題文の限定語を先に拾い、上の暗記項目と照合してから結論を出します。
- 2解除なら催告解除か無催告解除かを決める。全部不能・明確な履行拒絶・定期行為の時期の徒過などは無催告で解除できる
問題文の限定語を先に拾い、上の暗記項目と照合してから結論を出します。
- 3催告解除では不履行が軽微でないかを確認する。軽微性を主張立証するのは債務者の側である
問題文の限定語を先に拾い、上の暗記項目と照合してから結論を出します。
03この論点の根拠
- 関連法令
- 民法
- 内容の基準日
- 2026年4月1日
- 復習方法
- 要点を確認した後、下の○×問題で条件の違いを見分ける
法改正により扱いが変わる場合があります。試験日程や申込みに関する情報は、 必ず公式案内も確認してください。
問題演習
債務不履行と契約の解除の○×一問一答
1/8問解答 0・正解 0
民法重要度 S頻出度 15/24(編集部の目安)
債務不履行と帰責事由
債務の履行が不能となった場合において、その不履行が契約その他の債務の発生原因および取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、債権者は、損害賠償を請求することができない。
全784問から、分野・重要度で解く
行政法240問、民法180問、憲法60問、商法・会社法40問、基礎法学20問、基礎知識80問を収録。