分野別対策2026年度試験対応
マンション管理費の滞納はどうなる|督促・差し押さえ・競売と時効【2026年度試験対応】
2026年度試験対応の解説です。法令の適用時点と試験情報の確認日は、本文・出典の記載をご確認ください。
マンションの管理費や修繕積立金の滞納は、払えなくなった本人にとっても、回収にあたる理事会にとっても重い問題です。どの段階で何が起き、どこから裁判所の手続になるのか、時効はあるのか、住戸を売ったら滞納はどうなるのか。この記事は、区分所有者と理事の方に向けて、区分所有法・民法・民事訴訟法・民事執行法と、国土交通省の標準管理規約のコメントで、滞納から回収までの流れを確かめます。
- 公開日
- 2026年11月8日
- 更新日
- 2026年11月8日
- 読了目安
- 約18分
- 法令基準日
- 2026年4月1日
- 情報確認日
- 2026年11月8日

先に結論
管理費等を滞納すると、まず管理組合から電話や書面、内容証明郵便で督促され、規約で定めた遅延損害金や督促の費用も請求されます。それでも払わなければ、支払督促・少額訴訟・通常の訴訟で判決などの債務名義を得て、預金や給料、住戸を差し押さえる強制執行に進みます。滞納の債権には区分所有法7条の先取特権があり、判決なしで住戸の競売を申し立てることもできます。どの方法でも回収できず、共同生活上の障害が著しいときの最後の手段が、59条の競売請求です。債権は住戸を買った人にも請求でき(8条)、時効は各支払期日から5年です。
迷いやすい判断を、具体的な行動に変えます
- 流れは、督促→財産の調査→支払督促・少額訴訟・訴訟→強制執行・先取特権の実行→59条の競売請求
- 遅延損害金・弁護士費用・督促費用は、規約に定めがあれば加算して請求できる(標準管理規約60条2項)
- 滞納の債権は住戸を買った人にも請求できる(区分所有法8条)
- 時効は5年。支払督促・訴訟・承認などで止められ、判決で確定すると10年になる
- 払えないときは、督促が進む前に管理組合へ相談し、分割払いを話し合う
01結論:督促から強制執行へ進み、最後は59条の競売請求もある
管理費や修繕積立金の滞納は、すぐに住戸を失うことにはなりません。最初は管理組合からの督促で、払えば終わります。ただし、払わないまま時間がたつと、遅延損害金が増え、裁判所の手続を経て預金や給料、住戸を差し押さえられる段階に進みます。
国土交通省は、標準管理規約のコメントで、管理費等の確実な徴収は管理組合の運営の根幹で、滞納者への措置は理事長の最も重要な職務の1つだとしています。管理組合が段階を踏んでとる措置は、コメントの別添3にフローチャートとして示されています。
この記事は、その順番に沿って、督促、費用の加算、支払督促と少額訴訟、強制執行、先取特権、59条の競売請求、買った人への請求、時効を確かめ、最後に払えないときの相談先を示します。
02滞納はどれくらい起きているか:3割のマンションに3か月以上の滞納
国土交通省の令和5年度マンション総合調査では、管理費・修繕積立金を3か月以上滞納している住戸があるマンションは30.1%でした。滞納が発生していないマンションは62.1%で、平成30年度の調査より滞納のあるマンションの割合が増えています。
完成年次が古いマンションほど、滞納のあるマンションの割合が大きくなる傾向もあります。築年数がたったマンションほど、理事会があらかじめ対応の手順を決めておく必要があります。
03払う義務:住んでいなくても、使っていなくても払う
区分所有法19条は、各共有者は規約に別段の定めがない限り持分に応じて共用部分の負担に任ずるとしています。標準管理規約25条は、区分所有者が管理費と修繕積立金を管理組合に納入しなければならないとし、額は共用部分の共有持分に応じて算出するとしています。
標準管理規約のコメントは、負担割合を決めるときに使用頻度などは勘案しないとしています。空き住戸にしている人や、エレベーターを使わない1階の人でも、払う額は持分で決まります。「使っていないから払わない」という理由は通りません。
また、60条7項は、納めた管理費等について返還や分割を請求できないとしています。住戸を売って管理組合から抜けても、過去に納めた修繕積立金は戻らない点にも注意が必要です。
04滞納するとどうなるか:段階ごとの全体像
滞納からの流れを、起きることと根拠で表にしました。必ずこの順番で進むわけではありません。滞納者の財産の状況や、住宅ローンを貸した金融機関の動きによって、管理組合が選ぶ手段は変わります。
多くの滞納は、裁判所の手続に入る前の督促の段階で解決します。標準管理規約のコメントの別添3は、過去の実績では、うっかり忘れていたなど一時的な理由で滞納した人は3か月以内に解消するとしています。
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| 段階 | 起きること | 根拠 |
|---|---|---|
| 督促 | 電話・書面・訪問・内容証明郵便での請求 | 標準管理規約60条3項、別添3 |
| 費用の加算 | 遅延損害金、弁護士費用等、督促・徴収の諸費用 | 標準管理規約60条2項 |
| 裁判所の手続 | 支払督促・少額訴訟・通常訴訟で債務名義を得る | 民事訴訟法368条・382条以下 |
| 強制執行 | 預金・給料・不動産などの差押え | 民事執行法22条 |
| 先取特権の実行 | 判決なしで住戸の担保不動産競売を申し立てる | 区分所有法7条、民事執行法181条 |
| 競売請求 | 他の方法で回収できないとき、総会決議と訴えで住戸を競売 | 区分所有法59条 |
この節・表の確認資料: e-Gov法令検索「建物の区分所有等に関する法律」(2026年4月1日施行)(確認日 2026年11月8日)/e-Gov法令検索「民事訴訟法」(確認日 2026年11月8日)/e-Gov法令検索「民事執行法」(確認日 2026年11月8日)/国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)」(令和7年改正)とコメント・別添3(確認日 2026年11月8日)
05督促:1か月目から5か月目までの例
別添3は、督促の手順の例を月ごとに示しています。1か月目は電話と未納のお知らせ、2か月目は請求書、3か月目は催告書、4か月目は自宅訪問、5か月目は内容証明郵便です。あわせて、滞納が続けばさらに措置をとることを事前に伝えます。
同じ別添3は、管理費の滞納者の多くは住宅ローンの支払も滞っていることが多く、6か月以内に銀行が債権回収のため競売などに動き出すことが多いとしています。銀行の競売が始まったら、管理組合は裁判所に配当を求めて回収します。
督促の記録は、日付・方法・相手の反応まで残します。あとで訴訟や59条の競売請求を検討するときに、交渉の経緯を示す証拠になります。ただし、内容証明郵便による請求は民法150条の催告にとどまり、時効の完成を6か月猶予するだけである点に注意が必要です。
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| 時期 | 方法 |
|---|---|
| 1か月目 | 電話、書面(未納のお知らせ) |
| 2か月目 | 電話、書面(請求書) |
| 3か月目 | 電話、書面(催告書) |
| 4か月目 | 電話、書面、自宅訪問 |
| 5か月目 | 電話、書面(内容証明郵便) |
この節・表の確認資料: e-Gov法令検索「民法」(確認日 2026年11月8日)/国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)」(令和7年改正)とコメント・別添3(確認日 2026年11月8日)
06遅延損害金・弁護士費用・督促費用
標準管理規約60条2項は、期日までに納めない組合員に対し、未払金額に年利○%の遅延損害金と、違約金としての弁護士費用等、督促と徴収の諸費用を加算して請求できるとしています。利率は空欄で、各マンションの規約で決めます。
コメントは、管理組合の回収は金融機関の債権回収と違って手間や時間のコストが大きくなり得ることなどから、利息制限法や消費者契約法などの遅延損害金の利率より高く設定することも考えられるとしています。また、これらは請求しない合理的な事情がない限り請求すべきもので、弁護士費用等には司法書士費用も含まれるとしています。
規約に利率の定めがない場合は、民法419条により法定利率で計算します。法定利率は404条2項で年3パーセントとされ、3年ごとに見直す仕組みです。督促の諸費用は、内容証明郵便の郵便代と事務手数料、支払督促の申立ての印紙代や切手代などが例に挙がっています。
07誰が請求するのか:理事長と理事会の決議
標準管理規約60条4項は、理事長が理事会の決議により、管理組合を代表して、未納の管理費等の請求について訴訟その他の法的措置を追行できるとしています。支払督促や少額訴訟は、総会を開かなくても理事会の決議で進められます。
区分所有法26条4項も、管理者は規約または集会の決議により、職務に関して区分所有者のために原告または被告になれるとしています。規約に基づいて原告になったときは、遅滞なく区分所有者に通知しなければなりません(26条5項)。
一方、59条の競売請求の訴えは、総会の特別多数決議が必要です(標準管理規約47条3項4号)。管理会社に管理を委託していても、法的措置を決めるのは管理組合です。委託契約でどこまでの督促を任せているかを確認してください。
08支払督促:書類の審査だけで進む手続
支払督促は、金銭の支払を求める請求について、裁判所書記官が申立てに理由があると認めれば発する手続です(民事訴訟法382条)。審理のために裁判所へ出向く必要はなく、書類の審査だけで進みます。申立ては、相手の住所地を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官にします。
相手は支払督促を受け取ってから2週間以内に異議を申し立てられます。異議がなければ、管理組合は仮執行宣言の申立てができ、仮執行宣言が付くと強制執行を申し立てられます。仮執行宣言付支払督促を受け取ってから2週間以内に異議がなければ、支払督促は確定します。
ただし、異議が出ると通常の訴訟に移ります。滞納者が遠方に住んでいれば、その土地の裁判所で訴訟をすることになる点に注意が必要です。また、公示送達によらなければ送れない相手、つまり所在が分からない相手には使えません。2026年5月21日からは、書面と督促手続オンラインシステムに加え、民事裁判書類電子提出システム(mints)での申立ても加わりました。
09少額訴訟:60万円以下・原則1回の審理
少額訴訟は、60万円以下の金銭の支払を求める訴えを、簡易裁判所で原則1回の審理で解決する手続です(民事訴訟法368条)。最初の期日までに言い分と証拠をすべて出し、証拠はその場で調べられるものに限られます。同じ裁判所で1人が使えるのは年10回までです。
請求が認められても、分割払い・支払猶予・遅延損害金の免除の判決がされることがあります。判決に不服があるときは、受け取った翌日から2週間以内に異議を申し立てられ、控訴はできません。相手が通常の訴訟で審理するよう求めれば、通常の手続に移ります。

2つの手続を同じ項目で並べました。滞納額が60万円を超えていれば少額訴訟は使えません。相手が争いそうなら初めから通常の訴訟を選ぶ、という判断も一方であります。
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| 項目 | 支払督促 | 少額訴訟 |
|---|---|---|
| 対象の金額 | 上限なし | 60万円以下 |
| 申立先 | 相手の住所地の簡易裁判所の書記官 | 簡易裁判所 |
| 審理 | 書類の審査だけ。出頭は不要 | 原則1回の期日で審理し判決 |
| 相手が争うと | 督促異議で通常の訴訟へ移る | 異議後は通常の手続で審理。控訴はできない |
| 回数の制限 | なし | 同じ裁判所で年10回まで |
この節・表の確認資料: e-Gov法令検索「民事訴訟法」(確認日 2026年11月8日)/裁判所「支払督促」(確認日 2026年11月8日)/裁判所「少額訴訟」(確認日 2026年11月8日)
10強制執行と差し押さえ:債務名義が必要
判決や仮執行宣言付支払督促を得ても、それだけで滞納額が振り込まれるわけではありません。払われなければ、裁判所に強制執行を申し立てます。強制執行には、確定判決や仮執行宣言付支払督促などの債務名義が必要です(民事執行法22条)。
差し押さえる対象は、預金、給料、不動産などです。給料は、原則として支払期に受け取る額の4分の3に当たる部分の差押えが禁止されています(152条1項。4分の3に当たる額が政令で定める額を超えるときは、その額までが禁止)。財産が分からないときは、財産開示手続(197条)や、銀行等から預貯金の情報を得る手続(207条)を申し立てられる場合があります。
別添3は、強制執行の前に財産を十分に調べるよう求めています。いわゆる超過差押えは禁止されていて、例えば請求額が100万円なら、5つの銀行の預金を差し押さえるときは20万円ずつに割り付けるといった手当てが必要になるためです。
11先取特権:判決なしで住戸の競売を申し立てられる
区分所有法7条は、規約や集会の決議に基づいて区分所有者に対して持つ債権について、滞納者の区分所有権(共用部分の持分と敷地利用権を含む)と建物に備え付けた動産の上に先取特権を認めています。この先取特権は、共益費用の先取特権とみなされます(7条2項)。
そのため管理組合は、確定判決などの債務名義を取らなくても、先取特権の存在を証する文書を出して担保不動産競売を申し立て、ほかの一般の債権者に先立って弁済を受けられます。ただし、建物に備え付けた動産から回収しきれない場合に限って、区分所有権に対して実行できます。
一方、この先取特権は、公租公課と、登記された抵当権などの担保権に劣後します。住宅ローンの残高が住戸の価値を上回っていると、売っても管理組合に回る見込みがないとして競売手続が取り消される(いわゆる無剰余取消し)ことがあります。
12区分所有法59条の競売請求:ほかの方法で回収できないときの最後の手段
59条の競売請求は、滞納者を区分所有関係から外し、住戸を買った新しい所有者から滞納分を払ってもらうための手段です。要件は3つで、①6条1項の共同の利益に反する行為をしたこと、②それによる共同生活上の障害が著しいこと、③他の方法ではその障害を除いて共同生活の維持を図ることが困難であること、です。
別添3は、管理費等の著しい滞納は①の共同の利益に反する行為に当たると解されるとし、③を満たすには、先取特権の実行や財産への強制執行でも回収できない場合であることが必要だとしています。何か月滞納したら使えるという決まりはありません。②は、滞納の期間・額・交渉の経緯などから、最終的に裁判所が判断します。
手続は、総会での決議(区分所有者と議決権の各過半数が出席し、出席者の各4分の3以上)と、事前の弁明の機会が必要です。判決が確定してから6か月を過ぎると競売を申し立てられず、滞納者本人や、その計算で買おうとする人は買受けの申出ができません。住宅ローンの残高が住戸の価値を上回る場合でも、59条の競売は実施できる可能性があると別添3は解説しています。
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| 項目 | 先取特権の実行(7条) | 強制執行 | 競売請求(59条) |
|---|---|---|---|
| 債務名義 | 不要 | 必要(判決など) | 競売を認める判決が必要 |
| 対象 | 住戸と建物に備え付けた動産 | 預金・給料・不動産など | 滞納者の住戸 |
| 総会決議 | 不要 | 不要(理事会の決議で追行) | 特別多数決議と弁明の機会 |
| 注意点 | 抵当権などに劣後。無剰余取消しがある | 財産の調査が先 | 他の方法で回収できないことが必要 |
この節・表の確認資料: e-Gov法令検索「建物の区分所有等に関する法律」(2026年4月1日施行)(確認日 2026年11月8日)/国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)」(令和7年改正)とコメント・別添3(確認日 2026年11月8日)
13買った人(特定承継人)にも請求できる:区分所有法8条
区分所有法8条は、7条1項の債権は、債務者である区分所有者の特定承継人に対しても行うことができるとしています。標準管理規約26条も同じ趣旨です。住戸を売っても滞納はなくならず、管理組合は買った人にも請求できます。
競売で住戸を買った人も特定承継人です。別添3は、銀行などの競売で配当を受けても全額を回収できない場合や、59条の競売の後は、買受人から回収するとしています。買受人が払わなければ、その人の財産に対して先取特権の実行や強制執行を行います。
中古マンションを買う人は、前の所有者の滞納がないかを契約の前に確かめる必要があります。前の所有者との精算は売買の当事者どうしの問題で、管理組合からの請求を断る理由にはなりません。
14時効は5年:止める方法と10年になる場合
最高裁は平成16年4月23日の判決で、管理組合が区分所有者に対して持つ管理費と特別修繕費の債権は、当時の民法169条の定期給付債権に当たり、5年の短期消滅時効にかかると判断しました。現在の民法166条1項1号も、権利を行使できることを知った時から5年で債権は消えるとしています。毎月の管理費は、それぞれの支払期日から5年と数えます。
ただし、時効は5年たてば自動的に消えるものではありません。滞納者が時効を援用して初めて効果が生じます(145条)。管理組合の側は、支払督促や訴訟で時効の完成を猶予させ、権利が確定すれば時効は新たに進み始めます(147条)。滞納者が債務を認めれば、その時から時効は新たに進行します(152条)。
判決などで確定した権利の時効は10年になります(169条)。一方、内容証明郵便による催告は6か月の猶予だけで、猶予の間に催告を繰り返しても効果はありません(150条)。5年が近い滞納には、早めに裁判所の手続をとる必要があります。
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| 方法 | 効果 | 条文 |
|---|---|---|
| 催告(内容証明郵便など) | 6か月だけ完成を猶予。再度の催告は効かない | 150条 |
| 支払督促・訴訟 | 手続の間は完成を猶予。権利が確定すると新たに進行 | 147条 |
| 強制執行・担保権の実行・財産開示 | 手続の間は完成を猶予し、終わると新たに進行 | 148条 |
| 債務の承認 | その時から新たに進行 | 152条 |
| 判決などで確定 | 時効期間は10年 | 169条 |
この節・表の確認資料: e-Gov法令検索「民法」(確認日 2026年11月8日)/マンション管理業協会 判例紹介(最判平成16年4月23日 民集58巻4号959頁に言及)(確認日 2026年11月8日)
15理事会の対応の順番:早く・記録を残して・段階を踏む
理事会が滞納に気づいたら、まず1か月目のうちに連絡します。別添3の督促の例に沿って段階を上げ、どの段階で何をするかを理事会で決めておくと、担当の理事が替わっても対応がぶれません。

督促と並行して、滞納者の住戸に抵当権が付いているか、ほかに不動産や預金があるかを調べます。別添3は、住戸の登記を確かめ、金融資産は本人の同意を得て銀行等から情報を得るよう努めるとしています。調べた結果で、先取特権の実行か、債務名義を取っての強制執行かを選びます。
どちらでも回収できない見込みになったら、59条の競売請求が適切かを判断します。この段階は総会の特別多数決議が必要で、専門家の関与が欠かせません。滞納者の名前を掲示などで知らせるかどうかは、個人情報の扱いを確かめてから判断してください。
16払えないときは:督促が進む前に管理組合へ相談する
管理費等が払えなくなったら、督促が進む前に、理事会か管理会社に事情を伝えて分割払いを相談してください。黙っていると、遅延損害金と督促の費用が増え、裁判所の手続に進みます。少額訴訟でも分割払いの判決がされることはありますが、話し合いで決めるほうが負担を調整しやすくなります。
分割払いを約束すると、債務の承認として時効は新たに進み始めます。また、約束どおりに払えないと、管理組合は裁判所の手続をとることになります。無理のない額で約束することが必要です。
住宅ローンも払えない場合は、金融機関にも早めに相談します。法律の相談は、日本司法支援センター(法テラス)でもできます。手取りの月収と預貯金などの資産が家族の人数ごとの基準以下であれば、同じ問題について3回まで無料で相談できます。生活が苦しいときは、住んでいる市区町村の生活の相談窓口も使えます。住戸を売る場合は、滞納分を売買の中で精算しておかないと、買った人に請求が回ります。
17マンション管理士の試験ではこう問われる
マンション管理士の試験では、滞納の回収は区分所有法・民法・標準管理規約の3分野にまたがって問われます。区分所有法では、7条の先取特権の対象と、8条で特定承継人に請求できること、59条の競売請求の要件と決議(出席者の各4分の3以上、弁明の機会、判決確定から6か月)が典型です。
民法では、管理費等の債権の時効が5年であることと、時効の完成猶予・更新の区別が重要です。標準管理規約では、60条の遅延損害金と弁護士費用の加算、理事長が理事会の決議で法的措置を追行できること、59条の訴えには総会の特別多数決議が必要なことを区別します。
民事訴訟法の少額訴訟(60万円以下)や支払督促の仕組みも、管理実務の論点として出ます。条文の数字と、誰が決めるか(理事会か総会か)を対にして覚えると、選択肢の誤りに気づきやすくなります。
よくある質問
マンションの管理費を滞納するとどうなりますか。
管理組合から電話・書面・内容証明郵便で督促され、規約に定めがあれば遅延損害金や督促の費用も加算されます。払わなければ、支払督促や訴訟を経て預金・給料・住戸を差し押さえられ、最後は区分所有法59条の競売請求を受けることもあります。
管理費を何か月滞納すると競売になりますか。
法律に月数の決まりはありません。先取特権に基づく住戸の競売は判決なしで申し立てられ、59条の競売請求は、他の方法では回収できず、共同生活上の障害が著しいときに、総会の特別多数決議と訴えを経て認められます。
マンションの管理費の滞納に時効はありますか。
あります。各支払期日から5年です(民法166条1項1号。最判平成16年4月23日も5年と判断)。ただし、滞納者が援用しなければ効果は生じず、支払督促・訴訟・債務の承認などで時効は止まります。判決で確定すると10年になります。
前の所有者の滞納管理費は買った人が払いますか。
管理組合は、区分所有法8条により、買った人(特定承継人)にも請求できます。競売で買った人も同じです。前の所有者との精算は売買の当事者どうしで決めることなので、購入前に滞納の有無を確かめます。
管理費の滞納で給料を差し押さえられることはありますか。
判決などの債務名義を得た管理組合は、給料の差押えを申し立てられます。ただし、原則として受け取る額の4分の3に当たる部分は差押えが禁止されています(民事執行法152条1項)。
管理費が払えないときはどうすればよいですか。
督促が進む前に理事会か管理会社へ事情を伝え、分割払いを相談してください。法律の相談は法テラスでもでき、収入と資産が基準以下なら同じ問題について3回まで無料です。住戸を売る場合は、滞納分を売買の中で精算します。
この記事の参照元
法令、制度、試験日程は変更される場合があります。受験・手続の前には、リンク先の最新案内も確認してください。
- e-Gov法令検索「建物の区分所有等に関する法律」(2026年4月1日施行)確認日 2026年11月8日別画面で開く
- e-Gov法令検索「民法」確認日 2026年11月8日別画面で開く
- e-Gov法令検索「民事訴訟法」確認日 2026年11月8日別画面で開く
- e-Gov法令検索「民事執行法」確認日 2026年11月8日別画面で開く
- 国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)」(令和7年改正)とコメント・別添3確認日 2026年11月8日別画面で開く
- 裁判所「支払督促」確認日 2026年11月8日別画面で開く
- 裁判所「少額訴訟」確認日 2026年11月8日別画面で開く
- 国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果概要」確認日 2026年11月8日別画面で開く
- 国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状」確認日 2026年11月8日別画面で開く
- 法テラス「弁護士・司法書士による無料法律相談を受けたい方」確認日 2026年11月8日別画面で開く
- マンション管理業協会 判例紹介(最判平成16年4月23日 民集58巻4号959頁に言及)確認日 2026年11月8日別画面で開く