分野別対策2026年度試験対応
マンションの大規模修繕工事|周期・工事内容・進め方と費用の目安【2026年度試験対応】
2026年度試験対応の解説です。法令の適用時点と試験情報の確認日は、本文・出典の記載をご確認ください。
分譲マンションに住んでいると、いつか「大規模修繕工事」の説明会や総会の議案が回ってきます。足場がかかり、外壁や屋上を直す工事ですが、何年ごとに行うのか、いくらかかるのか、誰がどう決めるのかは、案内を読んでもつかみにくいものです。この記事は、区分所有者と理事の方に向けて、国土交通省の調査・ガイドライン・マニュアルと区分所有法で、周期・工事の中身・進め方・費用を順に確かめます。
- 公開日
- 2026年11月8日
- 更新日
- 2026年11月8日
- 読了目安
- 約18分
- 法令基準日
- 2026年4月1日
- 情報確認日
- 2026年11月8日

先に結論
大規模修繕工事は、長期修繕計画に沿って12〜15年程度ごとに、足場を組んで外壁・屋上防水・鉄部などをまとめて直す工事です。国の令和3年度調査では、修繕周期は13年が最も多く、約7割が12〜15年でした。戸当たりの工事金額は100万〜125万円が最も多い層です。進め方は、修繕委員会の設置、調査診断、設計と施工会社の選定、総会決議、工事の順で、準備から完成まで3〜5年程度かかります。外壁塗装や屋上防水などの計画修繕は、標準管理規約のコメントでは普通決議で実施できると考えられています。
迷いやすい判断を、具体的な行動に変えます
- 周期の目安は12〜15年。実際の時期は調査診断の結果で決める
- 費用は戸当たり100万〜125万円が最も多い層(令和3年度調査。共通仮設費と消費税を除く)
- 進め方は委員会・調査診断・設計と選定・総会決議・工事。準備から完成まで3〜5年程度
- 外壁補修・屋上防水・鉄部塗装などの計画修繕は普通決議で実施できると考えられている
- 設計監理方式でも、設計コンサルタントの中立性と選定手続の透明さを確認する
01結論:12〜15年ごとが目安。時期と中身は調査で決める
マンションの大規模修繕工事は、12〜15年程度ごとに行うのが一般的な目安です。国土交通省の長期修繕計画作成ガイドラインは、外壁塗装・屋上防水・シーリングなどの修繕周期の例を12〜15年としています。令和3年度の実態調査でも、修繕周期は13年が最も多く、全体の約7割が12〜15年でした。
ただし、周期は計画を作るための目安で、何年目に必ず工事をするという決まりではありません。ガイドラインは、既存のマンションでは建物と設備の劣化状況の調査・診断の結果に基づいて周期を設定するとしています。早すぎれば不要な工事になり、遅すぎれば劣化が進んで工事費が増えます。
工事を決めるのは管理組合で、最終的には総会の決議です。理事会や修繕委員会が専門家の力を借りて調査と設計を進め、施工会社の候補を選び、総会で工事の実施と予算を決めます。この記事では、この順番に沿って費用と注意点を確かめます。
02大規模修繕工事とは:計画修繕を足場を組んでまとめて行う工事
大規模修繕工事は、法律で定義された言葉ではありません。一般には、長期修繕計画に基づいて一定の年数ごとに行う計画修繕のうち、足場を組んで外壁・屋上・バルコニー・鉄部などを一度に直す工事を指します。国土交通省の実態調査は、計画的な修繕とグレードアップのための改修工事(耐震改修工事を除く)を対象にしています。
標準管理規約28条1項1号は、修繕積立金を取り崩せる使い道の1つ目に「一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕」を挙げています。日常の小さな補修は管理費で行い(27条6号の経常的な補修費)、大規模修繕工事は修繕積立金で行う、という分け方が基本です。
マンション改修マニュアルは、修繕に性能を高める改良を加えた工事を「改修工事」と呼び、回数を重ねるほど改良の割合を大きくする必要があるとしています。2回目・3回目の工事では、元の状態に戻すだけでなく、断熱やバリアフリーなどの改良を同時に検討するかが論点になります。
03周期の考え方:1回目15.6年、回を重ねると短くなる
実態調査では、大規模修繕工事の平均修繕周期は、1回目が15.6年、2回目が14.0年、3回目が12.9年でした。回数が増えるほど周期が短くなる傾向があります。648件のマンションの平均修繕周期の中央値は14.0年です。
周期が短くなる理由は、この調査では分析されていません。平均の数字を自分のマンションにそのまま当てはめることはできません。時期は、長期修繕計画の予定年と、調査診断の結果を並べて判断する必要があります。
長期修繕計画は、ガイドラインでは30年以上で、かつ大規模修繕工事が2回含まれる期間以上で作ります。5年程度ごとに調査・診断を行って見直すことも求められています。周期の数字は、この計画の中で使われるものです。
04工事の中身:外壁・防水・鉄部・設備
大規模修繕工事の中心は、外壁と防水です。実態調査では、建築系工事の金額のうち、外壁関係(外壁塗装・外壁タイル・シーリング)が49.4%、防水関係(屋根防水・床防水)が32.0%を占めました。足場を使う工事をまとめることで、仮設の費用を何度も払わずに済みます。
ガイドラインの修繕周期の例を、主な工事項目ごとに表にしました。鉄部塗装は5〜7年と短く、大規模修繕工事の合間に別に行うこともあります。給水管・排水管の更生は19〜23年、取替は30〜40年で、2回目以降の工事で設備が大きな項目になります。
表の周期はあくまで例です。ガイドラインは、マンションの仕様や立地条件で周期が変わり、技術の進歩でも変わり得ることに注意するよう求めています。
表が画面幅より広い場合は、左右にスクロールして確認できます。
| 工事項目 | 主な内容 | 修繕周期の例 |
|---|---|---|
| 仮設 | 足場・養生ネット、現場事務所 | 12〜15年 |
| 屋上防水 | 補修・修繕/撤去・新設 | 12〜15年/24〜30年 |
| バルコニー・廊下の床防水 | 修繕 | 12〜15年 |
| 外壁塗装・タイル補修・シーリング | 塗替え・補修・打替え | 12〜15年 |
| 鉄部塗装 | 手すり・扉などの塗替え | 5〜7年 |
| 給水管・排水管 | 更生/取替 | 19〜23年/30〜40年 |
| 昇降機 | 補修/取替 | 12〜15年/26〜30年 |
この節・表の確認資料: 国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」(確認日 2026年11月8日)/国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン」(令和6年6月改定)(確認日 2026年11月8日)
05費用の目安:戸当たり100万〜125万円が最も多い
実態調査では、戸当たりの工事金額は「100万〜125万円」の層が27.0%で最も多く、次いで「75万〜100万円」が24.7%、「125万〜150万円」が17.4%でした。金額には共通仮設費と消費税が入っていない点に注意が必要です。
回数別の中央値は、1回目が110.2万円、2回目が106.1万円、3回目以上が97.0万円でした。平均は1回目が151.6万円で、中央値より大きくなっています。高額な工事が平均を押し上げるため、自分のマンションの目安には中央値と幅(下位25%値〜上位25%値)を見るほうが実態に近くなります。
この調査は、設計コンサルタント業務や施工を受注した企業に、直近3年間の工事を聞いたものです(200社・818件)。物価の上がった今の見積額は、この数字より高くなることがあります。調査の数字は相場の確認に使い、実際の額は自分のマンションの見積で確認してください。
表が画面幅より広い場合は、左右にスクロールして確認できます。
| 工事回数 | 戸当たり金額の中央値 | 下位25%値〜上位25%値 | 平均修繕周期 |
|---|---|---|---|
| 1回目 | 110.2万円 | 90.9万〜134.0万円 | 15.6年 |
| 2回目 | 106.1万円 | 87.8万〜129.8万円 | 14.0年 |
| 3回目以上 | 97.0万円 | 76.8万〜125.7万円 | 12.9年(3回目) |
この節・表の確認資料: 国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」(確認日 2026年11月8日)/国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査について(概要)」(確認日 2026年11月8日)
06費用の内訳:建築系が6割、足場などの仮設が2割強
総工事金額の内訳は、建築系工事が60.3%で最も多く、次いで仮設工事が22.8%、諸経費が10.3%でした。諸経費には、現場管理費・一般管理費・法定福利費などと、大規模修繕瑕疵保険の保険料が含まれます。
仮設工事は、一般に、足場や養生ネットを組む直接仮設と、現場事務所や工事用の電気・水道などの共通仮設に分かれます。ただし、この調査の工事金額は共通仮設費を含みません。それでも仮設が2割強を占めるので、足場を使う工事を同じ時期に集めることには経済的な意味があります。一方、ガイドラインは、工事を集約しすぎると修繕積立金が一時的に不足することにもつながると注意しています。
見積書を読むときは、総額だけでなく、仮設・建築・設備・諸経費の割合を比べます。国の調査の割合から大きく外れる項目があれば、その理由を説明してもらう必要があります。
07費用の出どころ:修繕積立金・一時金・借入れ
大規模修繕工事の費用は、原則として修繕積立金から出します。標準管理規約28条1項は、計画修繕のほか、不測の事故による修繕や共用部分の改良などに限って修繕積立金を取り崩せるとしています。取崩しは総会の決議事項です(48条10号)。
積立金が足りないときは、一時金の徴収、借入れ、工事内容や時期の見直しを検討します。標準管理規約28条3項は、これらの経費に充てるために借り入れたときは、修繕積立金から返済できるとしています。借入れも総会の決議が必要です。
修繕積立金の額の決め方と、不足したときの値上げの考え方は、別の記事で扱います。ここでは、工事の検討を始める時点で、積立残高と長期修繕計画の予定額の差を確かめることが重要だという点だけ押さえてください。
08進め方の全体像:検討・計画・実施の3段階
マンション改修マニュアルは、改修工事を「検討段階」「計画段階」「実施段階」に分け、段階を踏んで合意のレベルを高めていくことが重要だとしています。準備から工事完成までは、一般的に3〜5年程度かかる長期の取組です。
検討段階では、調査診断の費用を予算化し、専門家の支援を受けて建物の状況と居住者の要望をつかみ、改修の基本計画をまとめます。計画段階では、設計図書を作り、資金計画を立て、施工会社を選びます。実施段階では、総会決議の後に契約し、工事説明会を開いて着工します。

急いで工事会社を決めるより、調査と設計に時間をかけるほうが、あとで工事内容をめぐる対立が起きにくくなります。各段階で何を決めるかを表にまとめました。
表が画面幅より広い場合は、左右にスクロールして確認できます。
| 段階 | 主な作業 | 総会・理事会で決めること |
|---|---|---|
| 検討段階 | 委員会の設置、専門家の選定、調査診断、アンケート、基本計画 | 調査診断費の予算、修繕委員会の設置 |
| 計画段階 | 改修設計、資金計画、施工会社の募集・選定、説明会 | 設計費の予算、工事の実施と工事費(総会決議) |
| 実施段階 | 契約、工事説明会、着工、工事監理、竣工 | 契約の締結、追加・変更工事の承認 |
この節・表の確認資料: 国土交通省「マンション改修マニュアル」(令和8年3月改訂)(確認日 2026年11月8日)
09修繕委員会:理事会の諮問機関として置く
理事会だけで数年がかりの工事を進めるのは、知識と時間の面で限界があります。マンション改修マニュアルは、理事会の諮問機関として修繕委員会などの専門委員会を置き、継続して取り組むことを勧めています。
標準管理規約55条は、理事会が専門委員会を置いて特定の課題を調査・検討させ、結果を理事会に具申させることができるとしています。ただし、検討が理事会の権限を越える場合や、理事会活動に認められた経費を超える費用が要る場合は、委員会の設置に総会の決議が必要です。
委員会は決定機関ではありません。調べて提案するのが役割で、方針を決めるのは理事会、工事の実施を決めるのは総会です。委員の構成には、歴代の理事や建築・設備に詳しい区分所有者を含め、会議の内容を広報で知らせる運営が望まれるとされています。
10調査診断:劣化の程度を先に確かめる
大規模修繕工事の前には、建物と設備の調査診断を行います。マンション改修マニュアルは、大規模修繕の実施にあたり、調査・診断で劣化や損傷の程度を正確につかみ、必要な工事の内容を検討することが重要だとしています。あわせて、居住者へのアンケートで不具合や改善の要望を集めます。
調査診断の結果は、工事の範囲と時期を決める根拠になります。長期修繕計画で予定した年が来ても、劣化が軽ければ時期を延ばし、逆に予定より早く傷んでいれば前倒しします。調査の結果に基づいて、長期修繕計画も見直します。
実態調査では、調査診断・設計・施工会社の選定協力・工事監理などを含む設計コンサルタント業務の実施期間は、中央値が21.0か月でした。専門家に依頼してから業務が終わるまで、2年近くかかる例が中心だと見ておく必要があります。
11設計監理方式と責任施工方式の違い
専門家の関わり方は、大きく2つに分かれます。調査診断と設計を設計事務所などの専門家に任せ、工事は別の施工会社に発注する「設計監理方式」と、調査診断から工事までを1社に任せる「責任施工方式」です。実態調査の818件では、設計監理方式が80.1%、責任施工方式が12.6%でした。

設計監理方式は、設計と施工が分かれるため、工事内容と工事費の透明性を確保しやすく、競争で施工会社を選べます。一方、設計・監理の費用が別にかかります。責任施工方式は、専門家の費用がかからず、初めから施工のしやすさを考えた検討ができますが、工事内容と費用の関係が見えにくくなりやすいとマニュアルは注意しています。
どちらを選んでも、専門家は管理組合のパートナーで、意思決定の主体は管理組合です。責任施工方式を選ぶなら、検討結果の情報開示と、項目ごとの費用の内訳を受けることが重要です。調査では、戸数が少ないマンションほど責任施工方式の割合が高い傾向がありました。
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| 項目 | 設計監理方式 | 責任施工方式 |
|---|---|---|
| 調査診断・設計 | 設計事務所などの専門家 | 施工会社 |
| 工事 | 競争などで選んだ別の施工会社 | 同じ施工会社 |
| 工事監理 | 設計した専門家が管理組合の立場で行う | 施工会社の監理部門 |
| 費用 | 設計・監理の費用が別にかかる | 専門家の費用はかからない |
| 注意点 | 設計コンサルタントの中立性 | 工事内容と費用内訳が見えにくい |
| 818件での割合 | 80.1% | 12.6% |
この節・表の確認資料: 国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」(確認日 2026年11月8日)/国土交通省「マンション改修マニュアル」(令和8年3月改訂)(確認日 2026年11月8日)
12施工会社の選び方:公募と見積の中身の比較
実態調査では、施工会社の選定方法は、管理組合が仕様・工事項目・数量などの条件を示して見積を集める「見積合わせ方式(条件提示型)」が61.6%で最も多く、次いで価格以外の要素も評価する「競争入札方式(総合評価型)」でした。
マンション改修マニュアルは、選定の透明性の観点から、公募サイトや業界紙などでの公募が望ましいとしています。見積は総額の大小だけでなく、工事項目・数量・仕様が条件どおりか、施工の品質や工期が担保されているかを確かめます。
候補が絞れたら、ヒアリングで現場代理人の経験や工事中の居住者対応を確かめます。選定の経過は理事会と委員会の記録に残し、総会で説明できるようにしておく必要があります。
13受注調整(いわゆる談合)への注意:国土交通省の注意喚起
国土交通省は、平成29年1月27日の通知で、管理組合の利益と相反する立場に立つ設計コンサルタントがいると指摘しました。例として、格安のコンサルタント料で受託し、自社にバックマージンを支払う施工会社が受注できるよう工作して、割高な工事費や過剰な工事項目に誘導する事例が挙げられています。
令和8年9月28日には、関東地方の大規模修繕工事の発注をめぐり、設計コンサルタント業務の受託者と工事の受注者が、公正取引委員会から独占禁止法違反として排除措置命令を受けたことを踏まえ、国土交通省が管理組合向けに相談窓口を改めて周知しました。設計監理方式を採る場合は、受注予定者や受注金額の事前調整などが行われないよう、設計コンサルタントの中立性を確保し、適正な手続で受注者を選ぶことが重要だとしています。
対策の1つとして、国土交通省は令和7年6月26日の事務連絡で、談合が認められた場合に受注者が違約金を払う特約条項を請負契約に入れられると周知しています。ただし、特約を入れても訴訟や不払いのリスクは残るため、弁護士などの専門家に相談して決めるよう勧めています。
- 相談窓口:住宅リフォーム・紛争処理支援センター(住まいるダイヤル。見積チェックサービスは無料)
- 相談窓口:マンション管理センター(建物・設備の維持管理の相談)
- 地方公共団体の専門家派遣や相談窓口も、まず住んでいる自治体で確かめる
表が画面幅より広い場合は、左右にスクロールして確認できます。
| 日付 | 文書 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 平成29年1月27日 | 相談窓口の周知の通知 | 利益相反の設計コンサルタントの事例、設計監理方式の注意点 |
| 令和7年6月26日 | 談合違約金特約条項の事務連絡 | 談合があった場合に受注者が違約金を払う条項の例 |
| 令和8年9月28日 | 相談窓口の周知等(報道発表) | 排除措置命令の事案を踏まえ、相談窓口と専門家の活用を周知 |
この節・表の確認資料: 国土交通省「設計コンサルタントを活用したマンション大規模修繕工事の発注等の相談窓口の周知について」(平成29年1月27日)(確認日 2026年11月8日)/国土交通省 報道発表「マンション大規模修繕工事の発注等に関する相談窓口の周知等について」(令和8年9月28日)(確認日 2026年11月8日)
14総会の決議:計画修繕は普通決議が基本
区分所有法では、共用部分の変更のうち形状または効用の著しい変更を伴うものは17条の特別多数決議、それ以外の管理は18条により集会の決議(普通決議)で決めます。2026年4月1日施行の改正後は、17条の決議は、区分所有者と議決権の各過半数が出席し、出席した区分所有者と議決権の各4分の3以上で決します。
標準管理規約のコメントは、計画修繕工事について、鉄部塗装・外壁補修・屋上等防水・給排水管の更生と更新・照明設備・共聴設備・消防用設備・エレベーター設備の更新は普通決議で実施できると考えられるとしています。窓枠・窓ガラス・玄関扉の一斉交換も普通決議の例に挙がっています。
一方、集会室や駐車場の増改築で大規模なものや著しい加工を伴うものは特別多数決議です。また、普通決議は議決権総数の4分の1超の賛成で成立し得るため、コメントは、大規模修繕工事のように多額の費用を要する事項は、規約で要件を重くすることもできるとしています。自分のマンションの規約で必ず確認してください。
表が画面幅より広い場合は、左右にスクロールして確認できます。
| 工事の例 | 決議 | 要件(標準管理規約47条) |
|---|---|---|
| 外壁補修・屋上防水・鉄部塗装・給排水管の更生と更新 | 普通決議 | 議決権総数の過半数が出席し、出席組合員の議決権の過半数 |
| 窓枠・窓ガラス・玄関扉の一斉交換 | 普通決議 | 同上 |
| 集会室・駐車場の大規模な増改築 | 特別多数決議 | 組合員総数と議決権総数の各過半数が出席し、出席者の各4分の3以上 |
| 外壁の剥離などの瑕疵の除去に必要な変更 | 特別多数決議(緩和) | 同じ出席要件で、出席者の各3分の2以上 |
この節・表の確認資料: 国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)」(令和7年改正)とコメント(確認日 2026年11月8日)/e-Gov法令検索「建物の区分所有等に関する法律」(2026年4月1日施行)(確認日 2026年11月8日)
15工事中の生活:窓・バルコニー・洗濯物
大規模修繕工事は、住みながら行う「居ながら工事」が普通です。マンション改修マニュアルは、設計の段階で、工事中の窓の開閉の制限、バルコニーの使用制限、仮住居への引っ越しの必要の有無など、日常生活への支障の程度も検討する必要があるとしています。
着工前には工事説明会が開かれ、工程、作業時間、足場と安全対策、注意・お願い事項が説明されます。工事中は掲示板やチラシで、洗濯物を干せるかどうかやバルコニーの使用制限が案内されます。バルコニーの床防水や手すりの工事では、置いてある物を動かすよう求められることがあります。
工事中は、管理組合・施工会社・工事監理者による工事報告会を月1回程度開き、進み具合や追加・変更工事を確認するとされています。標準管理規約23条により、工事のために専有部分や専用使用部分への立入りを求められたときは、正当な理由がなければ拒否できません。
16マンション管理士の試験ではこう問われる
マンション管理士の試験では、大規模修繕工事そのものより、それを支える数字と決まりが問われます。建物と設備の分野では、長期修繕計画の計画期間(30年以上で、かつ大規模修繕工事が2回含まれる期間以上)と、5年程度ごとの見直し、修繕周期の考え方が典型です。
標準管理規約の分野では、修繕積立金を取り崩せる場合(28条)、専門委員会の位置づけ(55条)、工事ごとの決議の区別(47条とコメント)を区別します。区分所有法の分野では、17条の特別多数決議と18条の普通決議の違いと、2026年4月施行の改正で出席者が母数になった点が重要です。
設計監理方式と責任施工方式の違いや、外壁・防水・シーリングの劣化と工法も、建物と設備の分野の論点です。日常の区分所有者として知っておくと役に立つ内容が、そのまま試験の論点になっています。
17理事・委員が最初に確かめること
大規模修繕工事の話が出たら、まず長期修繕計画の予定年、修繕積立金の残高と予定額の差、前回の工事の記録の3つを確かめます。修繕の履歴は標準管理規約32条6号で管理組合の業務とされていて、次の工事の調査診断の出発点になります。
次に、専門家の関わり方(設計監理方式か責任施工方式か)と、施工会社の選び方を、理事会で早めに話し合います。どちらの方式でも、選定の手続を記録し、総会で説明できるようにしておくことが必要です。
区分所有法や標準管理規約の決議の要件は、一問一答で繰り返すと区別しやすくなります。試験の準備をしている方も、理事として議案を読む方も、論点ごとに確かめてください。
よくある質問
マンションの大規模修繕工事は何年ごとに行いますか。
12〜15年程度ごとが目安です。国土交通省の令和3年度調査では修繕周期は13年が最も多く、約7割が12〜15年でした。1回目は平均15.6年で、回数を重ねるほど短くなる傾向があります。実際の時期は調査診断の結果で決めます。
大規模修繕工事の費用は1戸あたりいくらですか。
令和3年度調査では、戸当たり100万〜125万円の層が27.0%で最も多く、1回目の中央値は110.2万円でした。共通仮設費と消費税を含まない額で、物価の変動もあるため、実際の額は自分のマンションの見積で確かめます。
大規模修繕工事では何をしますか。
足場を組み、外壁塗装・タイル補修・シーリング、屋上とバルコニーの防水、鉄部塗装などをまとめて行います。建築系工事の金額のうち外壁関係が49.4%、防水関係が32.0%でした。2回目以降は給排水管などの設備も大きな項目になります。
大規模修繕工事は総会でどのように決めますか。
外壁補修・屋上防水・鉄部塗装などの計画修繕は、標準管理規約のコメントでは普通決議で実施できると考えられています。形状または効用の著しい変更を伴う工事は特別多数決議です。規約で要件を重くしている場合もあるので、自分のマンションの規約を確かめます。
設計監理方式と責任施工方式はどちらがよいですか。
どちらにも長所と注意点があります。設計監理方式は工事内容と費用の透明性を確保しやすい一方、設計・監理の費用がかかり、コンサルタントの中立性の確認が必要です。責任施工方式は専門家の費用がかからない一方、費用内訳が見えにくくなりやすいため、内訳の開示を受けます。
業者の談合が心配なときはどこに相談できますか。
国土交通省は、住宅リフォーム・紛争処理支援センター(住まいるダイヤル)とマンション管理センターを相談窓口として周知しています。前者は無料の見積チェックサービスも行っています。地方公共団体の専門家派遣制度も確かめます。
この記事の参照元
法令、制度、試験日程は変更される場合があります。受験・手続の前には、リンク先の最新案内も確認してください。
- 国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」確認日 2026年11月8日別画面で開く
- 国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査について(概要)」確認日 2026年11月8日別画面で開く
- 国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン」(令和6年6月改定)確認日 2026年11月8日別画面で開く
- 国土交通省「マンション改修マニュアル」(令和8年3月改訂)確認日 2026年11月8日別画面で開く
- 国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)」(令和7年改正)とコメント確認日 2026年11月8日別画面で開く
- e-Gov法令検索「建物の区分所有等に関する法律」(2026年4月1日施行)確認日 2026年11月8日別画面で開く
- 国土交通省「設計コンサルタントを活用したマンション大規模修繕工事の発注等の相談窓口の周知について」(平成29年1月27日)確認日 2026年11月8日別画面で開く
- 国土交通省 報道発表「マンション大規模修繕工事の発注等に関する相談窓口の周知等について」(令和8年9月28日)確認日 2026年11月8日別画面で開く