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実務・開業2027年版

社労士の開業|登録の手続・費用・自宅開業・副業・独立後の売上の実態【2027年版】

2027年版の解説です。手続・費用・統計の対象時点は、本文と各出典に記載しています。

社労士として開業するには、試験に合格し、2年以上の実務経験か事務指定講習の修了で登録の要件を満たしたうえで、事務所を1か所定めて社会保険労務士名簿に開業の登録を受けます。登録の費用は登録免許税3万円と登録手数料3万円で、ほかに都道府県の社労士会の入会金・年会費がかかります。連合会の2024年度実態調査では、開業事務所の年間売上の中央値は550万円でした。手続から業務の組み立て、開業後の義務まで順に説明します。

公開日
2026年11月6日
更新日
2026年11月6日
情報確認日
2026年11月6日
社労士の開業の記事カバー
この記事でわかること

迷いやすい判断を、具体的な行動に変えます

  • 社労士として開業するには何が必要ですか
  • 勤務やその他の登録から開業に切り替えるには
  • 開業登録の流れと必要書類

01社労士として開業するには何が必要ですか

結論から書くと、開業に必要なのは「社労士となる資格」「事務所」「開業の登録」の3つです。資格は、社労士試験に合格し、労働社会保険諸法令に関する事務に通算2年以上従事するか、連合会が実施する事務指定講習を修了して満たします(社会保険労務士法第3条)。そのうえで事務所を定め、業務を始める前に、事務所の名称と所在地も含めて社会保険労務士名簿に登録を受けます(第14条の2第2項)。

登録を受けると、事務所の所在地がある都道府県の社会保険労務士会の会員に当然になります(第25条の29第1項)。この記事では、開業の登録の手続、費用、事務所の決まり、副業での開業、業務の組み立て方、開業事務所の売上の実態を扱います。社労士の業務の範囲や独占業務は「社労士とは」、試験合格から登録までの要件の詳細は「社労士になるには」の記事で説明しています。

登録の要件:合格+実務2年か事務指定講習。事務所を決める:1か所・継続的に業務を行う場所。開業の登録:社労士会経由。登録費6万円+会費。顧問契約を積む:売上の約7割が顧問契約(平均)
図解要点の流れ。詳細と条件は本文で確認してください。拡大して見る ↗

02勤務やその他の登録から開業に切り替えるには

社労士の登録は、氏名・生年月日・住所などの基本の事項に、働き方に応じた事項を加える仕組みです。開業する人は事務所の名称・所在地など(第14条の2第2項)、事業所に勤務して社労士の事務に従事する人は勤務先の名称・所在地など(同条第3項)を登録し、どちらでもない人は「その他」の区分になります。区分ごとの違いは「社労士とは」の記事で説明しています。

勤務やその他で登録した人が後から開業するときは、登録を受けた事項に変更が生じたので、遅滞なく変更の登録を申請します(第14条の4)。事務所が別の都道府県にあって所属する社労士会が変わる場合は、変更の登録を受けた時に元の会を当然に退会し、新しい会の会員になります(第25条の29第2項)。区分を切り替えるときの書類や入会金の扱いは、所属することになる社労士会に確かめます。

03開業登録の流れと必要書類

登録申請書は、社労士となる資格を証する書類を添付し、社労士会を経由して連合会に提出します(第14条の5)。申請は、入会予定の都道府県会に紙で出す方法と、マイナポータルからオンラインで出す方法があり、どちらも連合会に直接は出せません。紙申請では、都道府県会が受付・審査をして連合会に進達し、連合会が審査して名簿と証票を作ります。毎月の受付締切日は入会予定の会に確かめます。

紙申請で求められる主な書類は、登録申請書(様式第1号)、個人番号カードの両面の写しなど、試験の合格証書の写し、従事期間証明書(様式第8号)又は事務指定講習修了証の写し、写真票(縦3cm・横2.4cm)です。合格証書などの氏名と住民票の氏名が異なる人や、通称の併記を希望する人は、戸籍抄本なども必要です。入会する都道府県会によって、ほかの書類を求められる場合もあります。

連合会は、名簿に登録したときに社会保険労務士証票を交付し(第14条の6第3項)、登録した旨を官報で公告します(第14条の11)。連合会の登録申請Q&Aは、証票を登録日(休日の場合は翌営業日)に自宅あてに簡易書留で発送し、官報の公告は1日付の登録が当月末、15日付の登録が翌月末の予定と案内しています。開業の日取りは、この登録日を見込んで決めます。

04開業にかかる費用はいくらですか

金額が決まっている費用は、登録免許税30,000円と登録手数料30,000円で、合わせて60,000円です。紙申請では、登録免許税を収入印紙か税務署へ現金で納めた納付証明書で申請書に貼り、手数料は入会予定の都道府県会に振込み等で払います。オンライン申請では、両方をマイナポータルでまとめてクレジットカード決済でき、別に決済手数料がかかります。

これとは別に、都道府県の社労士会の入会金と年会費がかかります。連合会は、会ごとに手続や金額、納付方法に違いがあるとして、事前に入会予定の会へ問い合わせるよう案内しています。事務所の賃料、パソコンや複合機、電子申請の環境、名刺やウェブサイトなどの費用は開業のしかたで変わり、一律の目安はありません。個人事業主としての税務署への届出なども別に必要です。

05事務所は1か所だけ・自宅やバーチャルオフィスでもよいですか

開業社労士は、業務を行うための事務所を2以上設けてはなりません。特に必要がある場合に厚生労働大臣の許可を受けたときだけ例外が認められます(第18条第1項)。複数の拠点で業務をしたい場合は、従たる事務所を設けられる社労士法人の形を検討することになります。法人の仕組みは「社労士とは」の記事で説明しています。

連合会の登録申請Q&Aは、事務所を「開業社会保険労務士が継続的にその業務を執行する場所」とし、外部に対する表示、設備の状況、使用人の有無などの客観的事実から社会通念で判断すると説明しています。バーチャルオフィスなど名称にかかわらず、継続的に業務を執行する実態がなければ事務所に当たりません。自宅を事務所にすることを禁じる規定は社労士法にありませんが、迷う場合は入会予定の社労士会に事前に確かめます。

06会社員のまま・副業で開業できますか

他人の求めに応じ報酬を得て社労士の事務を業として行うなら、副業であっても、あらかじめ事務所を定めて開業の登録を受けます(第14条の2第2項)。確認した社労士法の条文には、会社員であることを理由にこの登録を禁じる規定はありません。先に確かめるのは勤務先の側で、就業規則の兼業・副業の定めや、本業の顧客・取引先と重ならないかが論点です。

開業の登録をすると、土日だけの営業でも開業社労士としての義務は同じです。正当な理由がなければ依頼を拒めず(第20条。紛争解決手続代理業務を除く)、帳簿の備付けと保存(第19条)や秘密を守る義務(第21条)もかかります。平日の日中に役所での手続が必要になることもあります。勤務の登録との関係など区分の扱いは、所属予定の社労士会に確かめてから申請します。

07公務員は社労士として副業・開業できますか

公務員は、社労士法より先に公務員法の兼業の制限を確かめます。国家公務員が報酬を得て事業に従事し、又は事務を行うには、内閣総理大臣と所轄庁の長の許可が要ります(国家公務員法第104条)。地方公務員も、任命権者の許可を受けなければ、自ら営利企業を営み、又は報酬を得て事業や事務に従事できません(地方公務員法第38条第1項。一部の非常勤職員を除く)。まず所属先の人事担当に確かめます。

社労士法にも公務員経験者に関わる定めがあり、国又は地方公共団体の公務員として職務上取り扱った事件については、社労士として業務を行えません(第22条第1項)。この規定に期限は付いておらず、退職して開業した後も及びます。労働局やハローワーク、労働基準監督署、自治体などで働いていた人は、在職中に扱った事件を受託しないよう、依頼を受ける段階で確かめます。

08開業社労士の仕事は顧問契約とスポット契約のどちらが中心ですか

連合会の2024年度社労士実態調査(2024年4月24日〜6月9日に全社労士45,401人を対象に実施、有効回収25,408人)によると、開業社労士の売上の内訳は平均で顧問契約が71.9%、スポット(単発)が28.1%でした。1事務所あたりの顧問契約社数は平均33.2社、中央値は10社です。顧問契約の継続収入を中心に事務所を運営する形が主流です。

顧問先の従業員規模は、29人以下が63.9%、30人以上99人以下が20.9%で、中小企業・小規模事業者が多くを占めます。一般に、顧問契約では入退社の手続や日常の労務相談を継続して受け、スポットでは就業規則の作成や助成金の申請などを単発で受ける形がとられます。連合会のよくある質問も、スポットの料金は事務所により異なると案内しています。

09手続代行・就業規則・給与計算・相談:どの業務の割合が高いですか

同じ調査で、受託業務の内訳(平均)は、手続業務(手続に関連する相談を含む)が41.5%で最も高く、労働・社会保険の相談業務が14.3%、給与計算業務が14.2%、各種規程の作成・改定が10.4%、コンサル業務が7.3%、助成金業務が4.8%、執筆・講演業務が2.1%でした。社労士の独占業務である書類の作成・提出代行が、今も事務所の業務の柱になっています。

5年前と比べて需要が「増えた」(やや増えたを含む)と答えた開業社労士の割合は、相談業務が71.5%、規程の作成・改定が66.2%、手続業務が59.1%、コンサル業務が57.7%でした。調査は、法改正や働き手のニーズの多様化で労務管理が複雑になり、社労士への相談が増えていると分析しています。紛争解決手続の代理は特定社労士だけが行える業務で、「特定社労士」の記事で扱います。

10助成金の申請代行で気をつけることは何ですか

雇用調整や高年齢者の雇用などに取り組む事業主への助成は、雇用保険の雇用安定事業として雇用保険法第62条に定められています。こうした労働社会保険諸法令に基づく申請書類の作成や提出の代行は、社労士の業務として受けられます。ただし前の節のとおり、助成金業務の受託割合の平均は4.8%で、手続業務ほど大きくはありません。

厚生労働省は、社労士や代理人など申請・書類作成に関わった者が不正行為をした場合でも、事業主の不正受給に当たると注意を呼びかけています。不正受給をした事業主は、返還を求められるだけでなく、事業主名が原則公表され、5年間助成金を受けられなくなります。社労士自身も不正受給の指示や相談に応じることを禁じられ(第15条)、罰則もあります(第32条)。要件の確認と書類の裏付けは依頼の段階で行います。

11開業後に守る義務と、やめた後も続く義務は何ですか

開業社労士には勤務社労士にない義務があります。主なものは、業務の帳簿を備えて事件の名称、依頼を受けた年月日、受けた報酬の額、依頼者の住所・氏名などを記載すること(第19条第1項)、正当な理由なく依頼を拒まないこと(第20条)、業務で知った秘密を守ること(第21条)です。各条の内容と罰則は「社労士とは」の記事でまとめているので、ここでは開業の準備に関わる点を補います。

帳簿は関係書類とともに帳簿閉鎖の時から2年間保存し、開業社労士でなくなったときも同じく保存します(第19条第2項)。守秘義務も、開業社労士でなくなった後まで続きます(第21条)。職員を雇う場合は、使用人その他の従業者にも同じ守秘義務がかかります(第27条の2)。帳簿の様式、書類の保管場所、職員への守秘の取り決めは、開業前に決めておきます。

12開業社労士は儲かりますか:独立後の売上の実態

連合会の2024年度実態調査では、開業社労士の事務所あたりの年間売上は平均約1,658万円、中央値は550万円でした(n=14,469)。1,000万円未満が全体の6割程度、1,000万円以上が3割強で、1億円以上売り上げる事務所も2%程度あります。平均は一部の大きな事務所に引き上げられるので、典型的な水準を見るには中央値が目安になります。

ここでの数字は事務所の売上で、職員の給与や事務所の経費を差し引く前の金額です。開業した本人の手取りの年収とは一致しません。また、事務所の体制は開業社労士本人を含めて「1人」が56.4%で、平均は2.7人でした。勤務社労士の働き方や年収の話題は「社労士の年収」の記事で扱います。

13独立して何年くらいで売上は伸びますか

調査では、年代・開業年数ごとに事務所の売上が上位25%の位置にいる社労士を「事業拡大モデル」として示しています。30歳前後で開業した場合の売上は、開業5年未満で600万円、5〜9年で2,800万円、10〜14年で2,700万円でした。40歳前後で開業した場合は700万円、1,800万円、1,898万円、50歳前後で開業した場合は500万円、1,000万円、1,200万円です。

これは上位25%の値で、開業した人の多くがこの水準になるという意味ではありません。調査は、開業する年代が若いほど、開業年数を重ねるにつれて売上や顧問契約社数が伸びやすい傾向にあるように見受けられる、とまとめています。開業1年目から顧問先が十分にそろうことは前提にせず、数年かけて顧問契約を積み上げる計画で考えるのが現実的です。

14「開業は難しい」「後悔した」という声は本当ですか

調査で開業社労士が職業生活の不安やストレスとして「当てはまる」(やや当てはまるを含む)と答えた割合は、顧客獲得の難しさが63.7%、経営面での責任の重さが61.1%、顧客との関係構築が61.0%、業務量の多さが60.8%、経済面の不安定さが47.1%でした。開業後に苦労しやすいのは、試験の知識よりも顧客を得て関係を保つ部分だと読めます。

一方で、専門性の高い仕事ができるは87.6%、他から干渉されずに自由で独立した仕事ができるは78.4%、自分の労働時間を管理できるは77.1%でした。自由な働き方と経営の責任が表裏の関係にあるといえます。「なんとかなる」かどうかは人によって違うため、開業前に最初の顧客の見込みと、売上が立つまでの生活費の手当てを確かめておくことが一般に勧められます。

15未経験から開業する場合は何を準備すればよいですか

実務経験が2年に満たない人も、連合会の事務指定講習を修了すれば登録の要件を満たせます。受講の案内は、試験合格者あてに送られる登録の案内に同封されています。連合会のQ&Aによると、合格後の登録申請に有効期限はなく、従事期間証明書や事務指定講習の修了も同様です。合格してすぐ開業する人も、勤務で経験を積んでから開業する人もいて、どちらにするかは家計と顧客の見込みで判断します。

未経験で開業するときに不足しやすいのは、届出の期限を守って処理する段取りです。資格取得届や算定基礎届など、届出の多くには法令で期限があります。開業前に、よく受ける手続の期限の一覧、電子申請の操作、契約書と料金表、帳簿の様式を用意しておきます。試験で学んだ届出の期限や数字は、合トレの数字シートや比較表で科目をまたいで見直すと、実務の段取りづくりにも使えます。

よくある質問

社労士は会社員のまま(働きながら)開業できますか?

確認した社会保険労務士法の条文には、会社員であることを理由に開業の登録を禁じる規定はありません。先に勤務先の就業規則の兼業・副業の定めを確かめます。開業の登録をすると、土日だけの営業でも依頼に応ずる義務(第20条)、帳簿の備付けと保存(第19条)、守秘義務(第21条)がかかります。区分の扱いは所属予定の社労士会に確かめてください。

副業で社労士の仕事を受けるにも開業の登録は必要ですか?

他人の求めに応じ報酬を得て社労士の事務を業として行うなら、副業でも、あらかじめ事務所を定めて開業の登録を受けます(社会保険労務士法第14条の2第2項)。勤務先の事務に従事するだけなら勤務の登録です。

公務員は社労士として副業できますか?

国家公務員が報酬を得て事業や事務に従事するには内閣総理大臣と所轄庁の長の許可(国家公務員法第104条)、地方公務員は任命権者の許可(地方公務員法第38条第1項)が要ります。まず所属先の人事担当に確かめます。また社労士は、公務員として職務上取り扱った事件について業務を行えません(社会保険労務士法第22条第1項)。

開業社労士は儲かりますか?

連合会の2024年度社労士実態調査では、開業事務所の年間売上は平均約1,658万円、中央値550万円でした。1,000万円未満が6割程度、1,000万円以上が3割強です。売上は経費や職員の給与を差し引く前の金額で、本人の手取りの年収とは異なります。

社労士の開業に必要な費用はいくらですか?

登録に必要な金額が決まっている費用は、登録免許税30,000円と登録手数料30,000円です。オンライン申請では別に決済手数料がかかります。このほか都道府県の社労士会の入会金・年会費がかかり、金額は会ごとに異なります。事務所や機器の費用は開業のしかたで変わります。

社労士は何年で独立できますか?

開業までの年数を定めた規定はありません。試験に合格し、2年以上の実務経験か事務指定講習の修了で登録の要件を満たせば、開業の登録を申請できます。合格後の登録申請に有効期限はありません。

自宅で開業できますか?

自宅を事務所にすることを禁じる規定は社会保険労務士法にありません。連合会は、事務所かどうかを、名称にかかわらず継続的に業務を執行する場所かどうかで判断すると説明しています。迷う場合は入会予定の社労士会に確かめます。

実務経験がなくても開業できますか?

できます。実務経験が2年に満たない場合は、連合会の事務指定講習を修了すれば登録の要件を満たせます。ただし開業初日から届出の期限を守る運用が求められるので、よく受ける手続の期限と電子申請の操作を開業前に確かめておきます。

助成金の申請代行だけで開業できますか?

業務として受けることはできますが、実態調査で助成金業務の受託割合の平均は4.8%で、売上の中心は顧問契約(平均71.9%)でした。社労士や代理人が不正に関わった場合も事業主の不正受給に当たり、事業主名の公表や5年間の不支給につながるため、要件の確認を慎重に行います。

確認した公的情報

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